前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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血みどろのチミチャンガ

 

 

 

 

 

「へー、それでいろんな世界から私が大集合してるわけか。」

 

「そういうことだ、貴殿が元の世界でアメリカにいたから出現位置があちらになったのだろう。」

 

「なるほどねぇ。」

 

 

スパイダーな私への説明を魔術師な私に任せ、その場を離れる。

 

やぁ、私が多すぎてこんがらがっちゃうだろうから自己紹介。この世界の私こと“超越者な私”という感じで呼ばれることが多そうな大宙つぐみお嬢様だよ! よろしくー!

 

つぐみ3を迎え入れた後に続々と集まってきた私たちを収容というかおもてなしするために今日は色々と大忙し、おうちのビル内部の空間を無理やり拡張して巨大なパーティー会場を生成。自分が楽しめたり交流できるように椅子やら軽食やら娯楽やらをこれでもかと積み込んで、数百人単位でやってくる私を迎える準備を整えた。

 

ストレンジ先生のやらかしがこっちの想定よりも大きかったみたいで、当初考えてた『100人くらいこればいいかなぁ?』という思いは軽く飛び越えた現状。マルチバース関連の問題は全く気にしなくてもいいんだけど、ホストとしての仕事が立て込んでて困る。

 

 

「しかもみんな個性が濃いせいで色々とヤベー、のよね。」

 

「まぁ皆さまマスターの同位体でございますし、致し方ないかと。」

 

 

そんな私の独り言に答えるのはどこから取り出したのかクラシックなメイド服に身を包んだイヴ、無茶苦茶ノリノリで姉妹たちの指揮を取り会場を回している。目というか肌からやる気がひしひしと感じられるのはいいのだが、さすがに鼻血を流すのはやめようね。

 

 

「大変失礼しました、“性に奔放な”マスターに言い寄られまして。」

 

「……あぁ、あの子か。」

 

 

伸ばした視線の先に移るのは、今も元気に自分の同位体にR18な交渉を仕掛けようとしている私。なんというかアレも自分の一つの可能性なわけで。アレでもまだましな方なぶっ飛び方だけど頭が痛くなってくる。

 

 

「……酷かったら個室にぶち込んでおきなさい。」

 

「かしこまりました。」

 

 

イヴから手渡された飲み物への礼を言いながらそれを伝えておく、背後に非常ににこやかな笑みを浮かべてヴィラン用の拘束装置片手に待機している娘たちがいるあたり実行の時は近いだろう。……ま、それは置いておいてまだ挨拶してなかった私にでも会いに行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

少し歩を進め、他の私と話していた子のところまで出向く。

 

基本呼び出し方が地面に生み出された亀裂から落ちてきた、という形なのでここに来る私は基本戦闘時の服装や私服だったりするんだけど、目的の彼女は非常にフォーマルなドレスを身を纏っていた。細々とした動作も非常に“お嬢様”って感じがしている。

 

 

「本日はお招き頂きありがとう……、と言っておけばいいですかね?」

 

「まぁそんな格式ばった言い方しなくてもいいけどね、大体私だし。」

 

 

丁寧な礼をしようとした彼女を押しとどめ、そんな言葉を交えておく。この場に来ているのは私か、その親族くらいだ。招く側として今いる場所のように一応格式高いエリアも用意しているが、そう言ったことを求めてはいない。それに明らかに呼んでいないはずのウマ耳邪神が勝手に入り込んで菓子類を独占しているのを見れば、もうどうでもよくなってくる。

 

 

「……あの彼女も私なのですか?」

 

「いや、あれは別口。まだ話は通じるからいいけど怒らせるのはやめてね、私でも無理だから。」

 

「“超越者な私”でもですか……、気を付けておきます。」

 

 

メイド服に身を包んだ娘たちが厨房から急いで菓子を運んだり、彼女にとっての危険物をどうにかして隠せないか悪戦苦闘しているのを眺めながら飲み物で口を濡らす。一応発見したときに『迷惑はかけない』と約束させたので大丈夫だとは思うんだけど……、全戦力を投入したとしても勝てる方法がわからないバケモノだからね、シカタナイネ。

 

 

「それで、どう? 息抜きは出来てる?」

 

「えぇ、他の自身と話すということで最初は戸惑いましたがやはり同じ存在なせいか、かなり話がはずみますね。前世観れずに悔しい思いをしていた新作も見放題なのは非常にありがたかったです。」

 

「まぁそうでもしないと知識の差がねぇ、アイアンマンすら見ずに転生しちゃった子もいるから。」

 

「時間操作でしたか? おかげさまでフルマラソンしても数秒しか経ってないというのは非常に助かります。」

 

 

そんなことを言いながら朗らかに笑う彼女、でも履歴を確認してみればマラソン中に一度も休憩を取っていない。……おかしいなぁ? この人フェーズ2以降全く見てない私だったはずなのに。スタミナお化けか?

 

 

「まぁでも……、自身と話していると基本愚痴か後悔の話になるのがたまに傷と言いますか。」

 

「あぁ、うん……。」

 

「そういう運命であるのは解っていましたが顔を合わせた大半が愚痴の話で盛り上がるのはなんというか非常に悲しくなりますね。どこでも私たちと言いますか、このマーベルという世界は“刺激”を求めているのかと。」

 

「正直どうしようもないのかもしれないよねぇ……。元がコミックスだし、刺激を観客に与えるのが役目だからさ。」

 

「ですね……、ですがやはりそれでも彼女を見れば私たちはまだ恵まれていたのだな、と考えずにはいられません。」

 

 

そう言いながら私たちの視線は一人に集中する、話を聞いているうちにおそらく私史上一番やばい世界にいることが確定した私こと『つぐみ2』、他の私たちと話しているうちにどんどん彼女の世界の凶悪さが表れて来て、ついたあだ名が“魔境の私”。

 

 

「完全に能力上位のマーベル世界のヴィランに、組織同士で対立しているおかげで世界征服がなされていない昭和ライダー敵組織、毎年何故か増える平成ライダーの化け物たちに、討伐されてないせいで暴れまわる戦隊モノの巨大生物たち、挙句の果てには一部の概念兵装でしか対抗できない女児向けプリティな謎生物。『ウルトラ怪獣がいなくてよかったよ~』などと言いながら笑っていらっしゃいましたが、それを笑い話にできるのはあなただけなんですよ……!」

 

「……言っちゃ悪いけど正直なんで彼女が生き残ってるのか私わかんない。何がどうなればそんなことになるんですかい。」

 

 

聞いた話によると日本の近畿近辺だけで、そのひどさらしいので首都である東京とか海外とかどんな地獄になっているのかはわからないらしい。色々情勢がひどすぎて各国どころか各地域との連絡は取れないし、彼女の生存地域である大阪とその近辺である近畿から外は出たことがない、というか出られないとのこと。

 

なんかもうさ、そこまで酷いことになってる彼女をさ、一回私殺しちゃってるわけでさ。

 

聞けば聞くほど申し訳なさというか、心の底から上がってくる感情が色々とヤバくて。しかも彼女は謝罪を求めてないとかいうからそう言うのもできなくて。

 

 

「まぁ全力で介入するよね。」

 

「ぜひ、そうしてください。」

 

 

実はすでに介入は進んでいて、魔境の私が把握していない敵や計画の消去や彼女に手渡す予定の手土産。装備などの最終調整などが現在急ピッチで行われている。“私”のことだから、今敵対しているヴィランを同じ私だけど部外者である私が全滅させるのは止めようとするだろう。こちらとしても彼女の意に反することはしたくない、だからこそ“お土産”は豪華にするつもりだ。

 

あ、あとユキがあっちの世界で自分を生やしていたというか復活させて、魔境の私の年齢と同じくらいまで成長させていたのは見ないことにしておく。その世界だけじゃなくて他の世界でも同じようなことをしてるけど、私は止められないし止める気にもなれない。まぁ最後の大事な意思は彼女たちに委ねてるからそんなに心配はしなくていいと思う。(一瞬止めようとして声をかけたら目が非常にヤバいことになっていたのは秘密。それを見て悲鳴上げちゃったのも秘密。)

 

 

「あぁ、そういえば。ウチの愚物はしっかりと仕事をしてますか?」

 

「ん、彼? 彼なら……。」

 

 

目の前の彼女の視線を遮っていた私の体、それをずらすことで話題の彼の姿を登場させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タコス~、タコスはいらんかね~? 俺ちゃん特製のおいしいタコス。ほらぱっくんチョすればもうおいしい。投げても楽しい、食べても楽しい。おいしいタコスはいらな…………、ゲェ! ドロッセル!」

 

「……ほう、どうやらまだ“教育”が足りてないようですねデッドプール?」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤いスーツにコックさんのエプロンと帽子、彼なりの販促行為なのかサブマシンガン片手に天井に向かって発砲しながら仕事をしていた彼。

 

肉片になった彼を回収させたはいいがこの彼をニューヨークに投入すると悪いことになりそうだし、こっちに来た・連れてきた以上追い返すのはマナー違反だ。とりあえず町を血と肉片で汚した罰として厨房で奉仕労働を行ってもらっていたのだが……。

 

目の前の彼女、さっきまで話していた私の姿を視界に入れたとたん汚い悲鳴と共に手に持っていた大量のタコスを地面にぶちまける彼。それを見てさっきまでの綺麗な顔に何本もの血管が浮き上がる私。

 

 

「な、な~んで俺ちゃんの世界のどどどドロッセルお嬢様がこちらにい、いらっしゃるので?」

 

「貴方が来ているのですよ、私が来れない訳がないでしょう。」

 

 

さっきまで身に着けていたエプロンをそーっと外しながら近くのテーブルに置く彼、もう手遅れだが銃器をエプロンの下に入れて隠した早業だけは評価できる。対して明らかにブチ切れてる私はどこから出したのか、その右手には綺麗な日本刀が握られていた。明らかにヤル気である。

 

 

「じ、時間戻せばぶちまけちゃったタコスも元通りだよ?」

 

「お気遣いは結構です“超越者の私”、いくら元通りにしても一度床に落としたものを食べたいと思う者はいないでしょう。……それにデッドプール、今日は所謂祭りの日です。顔を合わせるぐらいであれば見逃してあげましたが……、なんですかその職務態度は?」

 

「あの、俺ちゃんが真面目に働いてたらこれまで築いてきたイメージというかそう言うのが崩れちゃうので……。み、見逃してくれる?」

 

「地面に這いつくばってその首を差し出すのならば。」

 

 

瞬間始まる驚異の鬼ごっこ、人混みの方に逃げ込むデップちゃんに自力で身に着けたらしい超人に迫る身体能力で追いかける私。刀の扱いとかこなれてるなぁ。

 

 

「ち! ちなみに! なんで俺ちゃんが追われているのかわからない読者のみんなに説明すると! おれちゃんの一作目の映画覚えてるぅ!?」

 

「末端、しかもこちらの思想を全く理解せぬ粛清対象であったことは事実です。ですが私の組の者を殺した貴様に何のお咎めもないというのは示しがつかないのですよ!」

 

 

彼らが言っているのは『そう俺ちゃんの第一作! デッドプール! 見た? 見てるよね! そこで俺ちゃんが華麗にヤクザを切り殺すシーンあったよね? ……あれ、それってシルバーサムライの話だったけ? まぁいいや俺ちゃんがそこでズッタンバッコンとヤクザを殺しちゃったのよ! でも運が悪いことにそのヤクザ君たちウチの世界のお嬢様の傘下だったみたいでさ……、あれからずっと追われてるんだよね! あひょぉ! 俺ちゃん大人気! 人気者はつらいですよねぇ!』……、とまぁ勝手に割り込まれたがそういうことだ。

 

自身の技術の成長ではなく、自身の配下たちの長として進むことを選んだ私の同位体。その勢力を大きくさせながら裏の女帝としての地位を確固とした私、通称“女帝な私”。普段は猫を被ってお淑やかなお嬢様、という感じだが刀を握った彼女の攻撃は苛烈。どれだけ血を浴びようが敵を殺しつくす冷酷無比なヤクザクイーンへと早変わり。

 

 

「あ~、イヴ?」

 

「はい、ここに。」

 

「さすがに暴れらるのはマズいからちょっと労働の仕方を変えてあげて。」

 

「かしこまりました。」

 

 

私の声に反応して瞬時に横に現れた彼女が両手を右耳のあたりまで上げ、軽く音を鳴らす。その瞬間逃げ惑うデッドプールの元に刺股を装備した彼女の妹たちが出現し物理的に『刺す』という間違った使い方で鎮圧、またその首目掛けて刀を振り下ろそうとしていた“女帝な私”の攻撃がその一人に止められる。

 

 

『『デッドプール様、申し訳ございませんが労働契約の方を変更させていただきます。』』

 

 

「……あ、あの俺ちゃんのおしりと背中に刺股がぶっ刺さってるんですけど……。」

 

 

『『給仕のお仕事ができない、ということで娯楽の方のお仕事をしていただきます。』』

 

 

人の体を持ちながら、あえて機械のように冷たく話す娘たち。その間に“女帝な私”の後ろに移動して肩を叩く。少々はしゃぎ過ぎていたことを目線で謝罪してくれるが、気持ちはすごくわかる。彼面白いし、いい感じのサンドバックだからね……。ヒーローというよりはヴィランなお調子者だからやり過ぎてもそんなに心が痛まないのもいい。……う~ん、我ながら性格が悪い。

 

娘たち主導でデッドプールの周りの空間が削り取られ、他の空間へと転移させる。ついでにさっき開けた背中の穴を修復し、さっき置いて来たサブマシンガンを始めとした彼愛用の武器も返却してあげる。

 

 

『『今からデッドプール様には模擬戦闘を行っていただきます、ホログラムの敵ではありますが触れられる特殊なものです。勝利できれば商品としてお好きなものを差し上げましょう。』』

 

 

彼が連れてこられたのは荒野、所々に地球のテクノロジーによって作られたものではない船の残骸が落ちており、空は地球のような青を表してはない。

 

 

「……タイタン? え、ちょ、もしかして。」

 

 

彼の目の前に、青い石の力によって生成されたゲートが開かれる。そこから現れるのは……、紫の巨体。

 

 

「さ、サノスちゃんじゃんかぁぁぁ!!!」

 

 

『『では、お母様たちの娯楽としてせいぜい踊ってください、デッドプール様。』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うわ~、可哀そうなデッドプール。」

 

「だが勝利すれば手に入るものは大きいぞ?」

 

 

最初に会った、ということで行動を共にしているスパイダーな私と魔術師な私。他の同位体との情報共有やこの世界の元となったMCU作品の閲覧、自分の持つ技術よりも非常に進んだ科学の結晶。立ち止まって何もせずにいるのは惜しいと考えた私たちはこの大きな空間を色々と見学していた。

 

そこで目に付いたのが娯楽フロアで放送されているデッドプールとホログラムサノスとの戦闘、かなり手加減されてるみたいで彼と戦うサノスは石を戦闘に使わない設定だが明らかに相性が悪い。単純な身体能力の差もあるしねぇ……。

 

 

「そこのメイド、この世界の私の娘からもらったのだが。」

 

 

そう言いながら手に持つデバイスを弄り、画面を表示してくれる彼女。そこには『闘技場』の案内と豪華な賞品たちがこれでもかと装飾されて紹介されているページがあった。どうやら今デッドプールが戦っている相手は私達でも挑戦できるらしく、難易度によって素敵な景品がもらえるみたいだ。

 

ちなみに今デップが戦ってる石なしサノスの景品はナノスーツらしい。……ハァ? ナノスーツ!?

 

 

「え、これ、え? もしかしてこの世界のスパイディが着ていた奴!?」

 

「ちょっとまて……、どうやらそれよりもかなり性能がいいみたいだな。」

 

「えぇ……、ちょっとデップ君が終わったら私挑戦しよ。」

 

 

そんなことを思いながらデッドプールが戦う様子を眺める、思いっきり大剣で真っ二つにされてるけど彼は元気に戦っている。どうやらあのホログラムはサノスの思考を再現しているらしく、さっき叩き込まれた映画の中の彼が言いそうなことをデップに話しかけていた。

 

 

『おいおいおいおい! ジョシュ! ほらここは穏便にいこう! 一緒に農業しよう!』

 

『ジョシュとは誰だ。』

 

『じゃあケーブル? というか俺ちゃん一人でサノスの相手は無理だって! ジャンプの俺ちゃんでも無理だって! 誰か~! オールマイト呼んできてぇ~!』

 

 

 

 

 

「ジャンプ?」

 

「あぁ、なんでも彼の話が掲載されていた時期があったらしいぞ。……む? スカーレット・ウィッチのデータもあるのか。」

 

 

早く出番来ないかなぁ? と思いながらデップーがいじめられているのを見てると魔術師な私が何かを発見したみたい。

 

 

「なるほど……、覚醒した彼女と戦えるのか。」

 

「やるの?」

 

「いや、死んでもやりたくないな。せっかく自身の世界で大人しくなってくれたというのに、ここでも戦いたいと宣言するほど私はマゾではない。」

 

 

 

『ちょ! ちょっとまって! 今足くっつけてるから!』

 

『その騒がしい口を閉じてやろう。』

 

 

そう言いながら近づいて来たサノスに先ほど設置した即席地雷を踏ませることで結構なダメージを与えたデップーを二人で眺めながら雑談、先ほど強敵だったワンダの話が上がったことから自然と自分たちの苦労話へと舵が切られていく。

 

 

 

 

なお、赤タイツ君は普通に負けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「さて、私も動かなければ。」

 

 

スパイダーマンことピーター・パーカーに並行世界からの住人の確保を命じた彼は一人気合を入れていた。すでに暴走した魔術は立方体の魔術的装置の中に収め、保管している。後はサンクタムの地下でこの力を行使するだけなのだが、その前に彼には行わなければならないことがあった。

 

ドクター・ストレンジという名を持つ彼は至高の魔術師という地位についている。師から受け継いだ使命と共にこの世界を魔術的な観点、つまりマルチバースの脅威から守り続けていたのが彼だ。もちろんマルチバースではない自身の世界で巻き起こされた問題にも対処するが、基本は異世界の問題に対応するのが彼である。

 

今回、親しい友人でありともに戦い抜いた戦友でもあるピーターの願いを叶えるために魔術を行使し、失敗してしまった彼は目の前の問題を解消する前にしなければいけないことがあった。

 

 

「……気が進まないがな。」

 

 

それは、この問題が誰の原因で生じたのか、そして誰が解決するのか、ということである。

 

これをお読みの皆様、観測している皆様であればすでに理解なされているだろうがこの世界の顔とも呼べる存在はお嬢様である。原始以来の一番力のあるやつがトップ、という考え方ではなく他世界と積極的に交流を行っているのが彼女だからだ。超越者としてその力を行使し、他世界の超越者たちと交流。そしてマルチバース間の距離を安全な状態で管理しているのが彼女だ。

 

自身の失敗によって他世界から人を呼び込んでしまい、マルチバースという謎が多い世界に対して強い影響を与えてしまった。どう考えても彼女はこのことを察知しているであろう、もしかしたらすでに対応に動いているかもしれない。

 

彼の心境を分かりやすく表すのであれば……、『多くの企業が合同で行うプロジェクトで自身の指揮下にいた部下がプロジェクト自体が崩壊するレベルのミスをしてしまった、そのことについてどのように対応するか社長に説明に行く部長』の気持ち、と言ったところだろうか。まぁニュアンスだけ伝われば大丈夫である。

 

 

「行こうか。」

 

 

大きな円を描き、日本のオオサカ。ハイツレギスタの本社ビルの玄関前まで移動する。普段の彼であれば目標の目の前に出現することもできるのだが、今回は内容が内容だ。そもこのビルの内部は魔術に対するプロテクトが掛けられているせいで直接内部に移動することはできない。

 

魔術師としての正装に身を包み、自動ドアの前に進む彼。瞬時にシステムが目の前にいる存在を検索し、照会。無事にゲストとしての権限を付与された彼を開かれたドアが内部へと進ませる。

 

 

ハイツレギスタ本社のフロント、白を基調に広く開かれたそこはこの星有数の企業として相応しい姿で彼を迎える。近未来的な曲線を多く使うその内装はビル全体の大きさを錯覚させ、その技術力と資金力の高さを訪問者たちに見せつけるものになっている。

 

 

が、彼はそれを気にせず歩を進める。目的は社の制服に身を包んだ受付。

 

 

「ハイツレギスタにようこそおいでくださいました、ご用件をお伺いいたします。」

 

「ドクター・ストレンジというものだ。大宙つぐみ殿にお会いしたい。」

 

「かしこまりました、我らが母よりすでに要件の方は伺っております。迎えの者が来ますのでその場でお待ちください。」

 

「……わかった。」

 

 

彼が危惧していた通り、彼女はすでに察知していたようだ。しかも普段ならば普通の職員が受付をしているものなのに今日に限って目の前の彼女はかの者の娘、一人一人が世界を消滅しうる存在だと知っている彼からすれば気が気ではない。短絡的な考え方をするような存在でもないし、その思想は善であり、秩序を重んじるタイプだ。いきなり暴力的な行為に及ぶとは思わない、しかしながら今回のやらかしが広範囲に及び、被害も大きなものと考えると……、やはり精神は削られていく。

 

 

「? どうかなされましたか?」

 

「……いや、大丈夫だ。」

 

 

おそらく自身の顔色はかなり悪くなっているのだろう、心配しているような声、しかしながら一切目が笑っていない顔を向けられる。なんとか否定の言葉を紡ぐことができたが本当に心臓に悪い。

 

予め薬でも飲んでおくべきだったかと思いながら、前に手を組み受付から少し離れた場所で迎えを待つ。近くに椅子はあるが座れるような状況ではないし、さっきから受付の彼女がずっとこちらを観察、いや監視している。下手なことはできない。

 

数秒が何年にも感じられるような針のむしろを耐えるストレンジ先生。

 

そんな状況から彼を助け出したのは……。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、誰かと思えばこの世界の師か。」

 

 

 

目の前に黄金のゲート。

 

 

そこから現れたのは、自分と同じような魔術師の装飾に身を包んだ彼女。

 

 

 

「え? ストレンジいんの?」

 

「あ! 私もみたいみたい!」

 

「は? ベネディクト? 推しだが? ちょっと待てサイン用紙買ってくるっ!」

 

 

の後ろに数え切れないほどいる同じ顔。

 

彼にとってはその顔はこの世界にいる数少ない超越者のもので、彼女以外持てぬもので。そして“彼女たち”にとってはスパイダーマン=ピーター・パーカーなどという秘密は既知のもので。

 

実際はそんなことないのだが、彼から見えるその景色は様々な世界からやって来た超越者たちが自分のことを興味深そうに観察している。されているわけで。

 

 

 

 

 

 

 

正直、その場で気を失わなかったのを褒めて貰いたい。

 

 

 

 

 

 








〇R18な私

色々とぶっ飛んでる私、年齢制限の壁に阻まれているため発言に大幅な修正、また例の格付けの『映す価値なし』みたいにこちら側で観測できる映像から彼女だけ削られることもしばしば。詳しく言及できないので詳細はご想像にお任せする。

〇女帝な私

王ではなくすべてを統べる帝に至った彼女、科学者としてよりもヤクザの頭という側面が強くでたお嬢様。超人血清などのブーストを行っていない身体能力で比べると同位体の中でかなり上位に位置する戦闘能力を保有している。デッドプールがいる世界のドロッセルで、こちらの意図に反して行動する末端組織を彼につぶされたことから敵対関係に。いずれ粛清していたとは言え外部に壊されたとなれば面子の問題になってくるので、もうどうしようもない。普通にスーツも所有しているが、最近は生身の方が強いらしい。

〇ストレンジ先生

記憶は彼女から渡されていないが、何度かその本気を見せつけられるような事件、師から言伝があったことからお嬢様陣営に対して非常に苦手意識が強い。だってこの人たち単体で『あはー!』とか言いながら師匠完封できるし、なんかよくわからん闇の化け物折檻してお仕置きしてるし。未だ自身の力が及ばないマルチバース関連の問題や他並行世界との外交的窓口を担っていることは理解しているため、今回の件についての説明をしに行ったら全く知らない弟子がいた。

〇ヤツ

大邪神、早くお帰りください。







実は昨日から今日にかけて12時間ほど電車の中にいたんですよ、雪やら信号やらのトラブルで電車が止まっちゃいましてね。電車の中で初めて日を跨ぎました。私は運よく駅の中で電車が止まってくれたおかげでトイレとか食事とかはどうにかなったんですが……。まぁ皆さまお疲れさまでした、もう一度体験したくはありませんがよい経験になったと思います。

あ、それと何とか電車が動いた8時くらいの街の景色。雪化粧がとてもきれいで、それだけはとてもよかったです。皆様も寒くなってきましたのでご自愛くださいませ。


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