前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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「新年、あけましておめでとうございま……、え? もう一月終わる? じゃあセッツブーン? 鬼のお尻におまめ詰めちゃうの? あ、自己紹介忘れてた。俺ちゃん。今日は前書きをハイジャックしてるの。好きでしょ、ハイジャック? あ、嫌い?」

「今日ね、実はちょっとお詫びしに来てるんだよ。ほら最近謝罪ブームだろ? テレビつけたらお偉いさんがずっとごめんなさいごめんなさいごめんなさい……、わぁお、蕁麻疹できちゃいそう! 俺ちゃんもデッドプールが興行収入アベンジャーズ超えなかったことに謝っとこ。」

(みんながもっと見に来ないからだよ! ちゃんと三回みた? みたの? なら通ってよし、アルストツカに栄光あれ!)

「実は前回の投稿でさ、俺ちゃん……、というかあのクソ作者が色々ミスしちゃったから俺ちゃんが代わりにごめんなさいしに来たのよ。誰だよ『私にいい考えがある!』っていったの。思いっきりミスってるじゃねぇか、もしかして爆発四散するコンボイ指令?  ……あ、心配しないで。いまあいつはそこで“死ぬほど疲れてる”から。起こしちゃだめだよ? 真っ赤なシーツは誰もみたくないでしょ?」

「俺ちゃん作中で『日本のヤクザぶっ殺しちゃった! “デッドプール”で!』みたいなこと口走ちゃったけど実際さっき本編見てきたら“デッドプール2”のシーンでした。う~ん俺ちゃん大失敗! もうこうなったらスパイディと楽しい結婚式上げるまで帰れな……」

(危険な“ピーター×MJ原理主義者たち”がインフィニティ・ストーンを掲げている、その後ろにはグウェン派も。)

「ごめんやっぱなし。」

「あ、あと俺ちゃんわざわざジャンプの俺ちゃんのネタ出したのに、サノス君に向かって『でも愛しのデスちゃんは俺の横で寝てるよ?』言うの忘れてたよね。めんごめんご。」

「というか実際サノスがデスに惚れてる世界線でそういうこと言ったら彼どうなるんだろうね。俺ちゃんちょっと、というかすごく気になるからちょっと今からマルチバースに……。」


デッドプールさーん、そろそろ撮影始まりますよ~。


「あ、マジ? つぐみちゃん役の子怒ったら怖いから俺ちゃんも急がないと。タカキも頑張ってたし!」

「いやさっきからここにいるんだけど私。なに? 目の前で煽る癖でもあった? 希望の花流してやろうか?」

「おっと……、ごめんってつぐみっち! 俺ちゃんが止まるんじゃねぇぞ、しても面白く……。いや面白そうだな、メモメモ。……というか一人何役かわからないくらいやってるけど大丈夫? 普段のつぐみちゃん役にマルチ―バースのつぐみちゃんも全部やってるけど。いや正確にはCG班の皆様のお仕事が大丈夫? って感じか。」

「あ~~、私はこれぐらい慣れてるけどCG班の人たちはどうだろうね……、それこそ『ハッキング対策部』みたいになっちゃうかも。軽く考えても十数人分私重ねて、スーツ着てる子ようにCGも付けて……。」

「……考えたくないね。働き過ぎはダメよ? 俺ちゃんとの約束。嫌な上司はトランクにでも詰めちゃうといい、ほら恋敵と一緒さ。」


ベネディクトさん現場入りまーす。


「あ、はーい! おいそろそろだから行くぞデップ。」

「あいあい。……そういえばユキちゃん役の子とはどうなのよ最近。この前二人で楽しそうにしてるの週刊誌にすっぱ抜かれてたじゃん。」

「……。」

「あれ? 無視? ほら一作目の撮影で監督から『今後続けばだけど、続編からはそういう関係性目指していくから』って言われて意識し始めて、二作目の撮影終了時点では完全に恋仲になって、三作目の脚本見たときに二人とも死にかけて。撮影終わってからは役作りのために次の撮影が始まるまでプライベートでも会わないし、SNSでも敢えて無視してるような関係性だったのに!? 前作の撮影終わった瞬間に二人で仲睦まじくしてるところをパパラッチにすっぱ抜かれたのに!?」

「……式にはちゃんと呼ぶから聞かないで。」








そろそろカオスはおしまい

 

 

 

 

 

「あはー、いやごめんね。」

 

「……金輪際こういったことはやめていただきたいのだが。」

 

「善処するよ。」

 

 

別世界の私に囲まれて完全にフリーズというか、膝をつきそうというか、もうおうち帰りたい的な目をしていたストレンジ先生を救出し、執務室まで連れてきた。たくさん私がいるほぼ無法地帯なパーティ会場と比べるとここは完璧な安全地帯、きっちりとしたお仕事の場所だ。彼と私以外人はいないし、それを覗くような私もいない。ほら毒なんか入ってないからお茶でも飲んでリラックスリラックス。

 

……まぁ無理矢理引きはがしたようなものだし、後でベネ様のサイン渡さないと暴動を起こしそうな私いるけど。

 

 

「それで、君がピーターと一緒に引き起こしちゃった問題だけど……。」

 

「解っている。彼はまだ子供で、庇護下にあるべきはずの青年だ。……確かに私の説明不足だったこともある。」

 

「ん? あぁ別に責任問題とかそういうことを言いたいわけじゃないよ?」

 

 

いきなり謝罪ムーブに入ろうとした先生を止める。彼は所謂自他ともに認めるヤベェ奴……、いや正確に言えば希望にも破滅にもつながる可能性のある人間というべきか。そういった人間ではあるが、最近豚箱で楽しそうにおひるねしてるヒドラ君みたいに悪い人じゃぁない、彼にとっての急所を刺激されなければ善き人物と言える。しかも普段なら問題を起こしても自分で解決するだろうし、わざわざどっかに謝りに来るようなタイプではない。まぁその人に実害が出てればごめんちゃい! ぐらいはするだろうけど。

 

まぁ別世界の可能性、娘の一人が傍観者の一人と交流したときに教えてもらった可能性を見てしまえば……、いや、この話はやめておこう。深い愛が原因ですべての歯車が狂ってしまうという可能性は私にも、私たちにもありうることだから。

 

ま、今回はことがことだ。彼の力が及ばないマルチバース広域に問題が引き起こされ、他世界から多数の人間を連れて来てしまっている。この彼はまだインカージョンについての知識はあんまりないだろうが、それでも各世界の均衡を崩してしまえばとんでもなく悪いことが起きるのは理解している様子。

 

 

「確かに君たちが引き起こした問題の尻拭いは私がしてる、他世界の超越者たちへの謝罪の電話や後々行う訪問の時に渡す手土産の選定、世界間の距離の安定や彼・彼女たちが元の世界に帰った時不都合がないように時間軸の調整。まぁ上げ始めればきりがないね。……おっと、こういった言い方は感じが悪いな、忘れて?」

 

 

世界によって私たちのような超越者、世界自体を自由に書き換えたり作り直したりできる存在がいない場所もある。そういったところから連れて来てしまった子たちが戻った時元居た場所、時間に返してあげるのも私の仕事だ。……まぁ人によって少し前の時間に飛ばす子もいるけどね? かえってただ死ぬだけというのはあまりにも救いがなさすぎる。

 

もちろんこの介入で起きてしまう問題もあるだろう。だけど……、そんなもの些細なことだ。爪楊枝をへし折るくらいの苦労が、割り箸を切れ込みに沿って割るぐらいの苦労になるぐらい。ま、つまりあんま変わんないってことだ。娘たちは傍観者くんが滅びる瞬間も見てるからね。“最後まで”ってのはひどく……、そう、ひどく重いんだ。

 

 

「だけど。そんなことは私にとって些細な事。別に謝りに来てもらうような案件ではないし、今後同じような問題を引き起こしてくれてもいい。……基本、というか私たちはこれからずっと暇だからね。逆にありがたいくらいさ。」

 

 

暇、言ってしまえばそうだ。『大いなる力には、大いなる責任が伴う。』この世界にいる誰にもこの言葉は突き刺さる。でも、一度すべてが終わるまで歩み続けてしまった娘たちの力は大きすぎる、少し望めばすべてを終わらせることができるほどに。

 

私が望んでしまえば、この世界から脅威はなくなる。誰もが悪という存在を忘れる。恒久的平和、ってやつだ。神の子の血が注がれた聖杯がいくらでも手に入る状態。何もかも、思い通りになってしまう。

 

 

「ま、そうなったら何も面白くないから。……私たちがやるのは“簡単な後始末”だけ。」

 

 

私たちが取るスタンスは基本、傍観。必要であれば動く、けどその判断は私たちがする。どうにもならないような存在に対しては動くけど、他の皆で何とかなると判断すれば動かない。永遠に生きることはほぼ決まっている、いや望まれているんだ。この大好きな世界をゆっくりと眺めるぐらいの楽しみぐらい残させてもらうおう。

 

 

「今回はピーターだけど、いずれ貴方にも大きな問題が伸し掛かる。あなたたちが課された試練、ちゃんと自分の手で乗り越えなきゃ。」

 

 

この世界の住人として、頑張ってくださいね。ドクター・ストレンジ。

 

 

「とりあえず、ストレンジ先生? あなたはあなたが正しいと思ったことをしてください。私たちのことは気にせず、自由に動いてくださってもらって大丈夫です。……もし私が貴方の前に現れるようなことがあれば、それはすなわち私以外ではどうしようもない壊滅的な被害が出ようとする時のみ。」

 

 

「ま、何も心配はいらないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まぁメタい話をするとこういった二次創作的な世界になると原作が更新されないと動けないというか世界が止まるというか……、あんまり改変しすぎると手に負えなくなるし、試練があるからこそドラマが生まれるわけで。せっかく自分の世界でそれが見れるのにわざわざ消すのは……、ねぇ?

 

それにあんまりやり過ぎると『シャンチーの持つテンリングスは実は10個ある内の指輪の一つに過ぎない! 多分! だからツラヤバに指輪持たせても大丈夫!』みたいな、的外れな考察で創作しちゃうこともあるし……。

 

いや~、『そっち』の世界を見ることができるようになって色々面白いこと増えたけどなんで動かされてるキャラがシナリオの心配しないといけなくなるんでしょ。

 

 

 

 

 

「安心して、貴方の仕事を。全てうまく行くよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、酷い目にあっちゃった……、俺ちゃんいつから悲劇のヒロインに?」

 

「まだ脳の修復が終わってないのですか貴方は。」

 

 

結構彼なりに頑張ってサノスと善戦していたデッドプールだったが、さすがに身体能力の差が大きすぎる。最終的に肉団子というか、スライムというか。『コロシテ……、コロシテ……』の状態になってシミュレーターから吐き出された彼。それを見た誰かが『乳幼児にレゴの人形渡した後魔改造された奴』と言っていたり。

 

そんな可哀そうなで可愛らしい俺ちゃんに話しかけてくれるのは同じ世界出身のドロッセル。

 

 

「それに、いつもなら毎秒下品なことを口走っているようなものですがどうしたのです? ついに治癒因子がバグりました? いやそれならそれでこちらとしては大助かりなのですが。」

 

「いや俺ちゃんも言いたいんだけどここに来る前ね?」

 

 

彼が言うには雇用契約を結んだ時に、その担当者だった娘の一人から『あ、一応一時的にファイアボールの構成員になるのですからそれ相応の言葉遣いというものが求められます。違反した場合はあなたの黒歴史を全マルチバースにばら撒き、それを見た方々の感想を直接あなたの頭に叩き込みますのでよろしく。』と言われたそうで。

 

 

「それは……、なんというか……。無慈悲ですね。」

 

「さ、さすがの俺ちゃんも羞恥は無理、お顔真っ赤になっちゃう。だからこそ前書きの方に避難したんだけどさ。」

 

「……真っ赤な腐ったアボカド、貴方にしては面白いジョークです。」

 

「しかもあいつら俺ちゃんが消したはずの『グリーンランタン』の完全版ブルーレイ持ってるんだぜ! せっかくタイムマシンで消し飛ばしたのに! あ、あれが全世界に放送されちゃったら俺ちゃん……、もうお外歩けない!」

 

 

おいおいと泣きながらそういう彼、まぁ確かにすごく叩かれちゃったみたいですし、わざわざ二作目でぶっ壊しに行っちゃったしねぇ……。というか私はどこでそのブルーレイ手に入れたんですか? ……通販?

 

 

「そういえば俺ちゃんこの後出番あるの? 後はクソカッコいい天才数学……、おっとこれは違う台本。天才魔術師のベンことストレンジちゃんが魔術的な箱もって俺ちゃん愛しのスパイディの前に登場するんでしょ?」

 

「どこでそれ聞いたんですか?」

 

「え? あのカメラの先でこっち見てる監督だけど。」

 

「相変わらずその意味不明な口はよく回りますね。……目の前の問題をすぐさま解決し、未然に大きな問題が起きるのを防ごうとするストレンジに、目の前にいるヴィランでも助けようとするピーター。その二人が対立することは避けられず、衝突。」

 

 

そう言いながら先ほど見た映画の映像を思い出していく彼女、ちなみに隣にいる死にかけくんはちょっとずつ体を治しながらどこから取り出したのかこの作品の脚本をペラペラとめくり、自分の出番を探しています。

 

 

「結果、その勝負はピーターの勝利に終わり彼は皆を助けるための行動を始める。ハッピーの家にある旧型の装置を使い1人1人助けるための特効薬を作っていくが……、グリーンゴブリンがそこで目覚めてしまう。」

 

「ここでクモちゃんは大事な叔母さんを亡くしちゃうわけだけど、お嬢様が実はこっそり延命措置させて物語終了付近では回復してる? ……あれ、俺ちゃんは? 俺ちゃんの出番は? ここ華麗に俺ちゃんが登場してスパイディを助けるシーンじゃないの? 『キミが、助けてほしそうな顔してた。』とか言うシーンじゃないの?」

 

「その後はまぁいい感じに他並行世界のピーターと合流して励まされて、って感じですか。……あ、そういえばスパイダーな私! 貴方はどうするので?」

 

 

 

「ふぇ! 私!?」

 

 

近場にあったバイキング形式の皿から好物の揚げ物を自身の皿に移していた彼女、明らかに成人男性が食べる量というかフードファイター級の量をさらに運んでいたせいか、急にかけられた声に驚いている。聞いた話によるとエネルギーを維持するために大量の食事が必要ということなのだが、さすがに自分の背丈より積み上げられた唐揚げは乙女の摂取カロリー的にダメだと思うの。お腹出るよ?

 

 

「貴方もスパイダーマンなのでしょう? この世界の彼に声掛けはしないのですか?」

 

「あ~、そういう? あ、すみませんメイドさん。このピラフ大皿でお願いできますか?」

 

 

“女帝な私”からの質問にどう答えるかを考え始める彼女、いや考えているのだろうけどそれよりも口にものを運ぶスピードの方が早い。しかも流れるように追加の注文をお願いしている。だから太るぞ?

 

 

「私は東映版だからなぁ……、それに彼らみたいに恨みや悲しみを乗り越えて。って感じじゃなくて普通に復讐しつくしちゃったタイプだし。……ほら! 『やらない復讐よりも、ヤル復讐!』『復讐の後には何も残らないがちょっとはスッキリする!』『判断が早い!』とかあるでしょ? さすがにそれを教えに行っちゃうわけにはいかないじゃん。」

 

「……そういえば俺ちゃん忘れてたけどお嬢様って基本重いというか一旦覚悟決めたら止まらないタイプだったじゃん。復讐とか殺しつくすまで止まらないタイプじゃん。こわぁ。」

 

「ふッ、さすが私ですね。全く持ってその通りです。」

 

 

同じ自分だからか、それともその精神を構成するものが同じなのか。完全に意気投合して固い握手を交わす“女帝な私”と“スパイダーな私”その間に挟まれてあわあわするデップちゃん。かわいいね。うん可愛い。シュレッダーに入れてぐちゃぐちゃにしたいぐらいかわいい。あ、想像したら……もう我慢できない!、アハ、アハハ! アハハハハハハハ!!!! かわいい! 可愛いねぇ! ずっと試験管の中に入れて眺めたいぐらいに可愛い! 治らないで! 治らないでよ! なんでそんな素敵な姿をやめちゃうの!

 

 

「……なんかナレーターさん可笑しくなってない? 大丈夫?」

 

「あぁ、確か“死体愛好家な私”が今日の担当らしいですよ。いつもの“超越者な私”が今ストレンジさんと会談中みたいなので代役で。」

 

「あ、そうなのね。……大丈夫? なんというか今回の章ずっとこんな感じで収集つく? カオスすぎるけど大丈夫?」

 

「大丈夫じゃないですね。……あぁ、そうだ愚物。よき案を思いつきました、実行に移すには“超越者な私”の許可がいりますが……、多分大丈夫でしょう。」

 

 







そろそろ物語を進めないと怒られそうなので次回から頑張る。

だから頑張れ、ピーター。



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