前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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〇東映版スパイダーマンたちが二度の名乗りを行った理由。

先代の東映版スパイダーマンは最初、いつものように名乗りを上げたのだが“スパイダーな私”の方はそうではない。初めて会う先代に高速で自己紹介を終了させるために頑張った、基本パターンの『地獄からの使者』ではなく『鉄十字キラー』を名乗ることで自身が鉄十字団と敵対関係であることを、そして目の前の先代と同じポーズをとることで先代との関係性を訴えている。その後“スパイダーな私”の方が二回目の名乗りを敢行するが、先んじた先代が『モンスター退治の専門家』と返すことで「鉄十字団まだ地球におったん?」と疑問を投げかけ、お嬢様が『キノコ狩りの女』と返すことで普通にまだ残っていること、そして使用機会が少ない名乗りを上げることで自身は先代のことを知ってますよ~、というアピールもしている。あと『許せる!』は「大体事情はわかった」とか「帰ったら鉄十字団殲滅する」とか「これまで私がいない間よく頑張ったね」みたいな意味が含まれていたりする。




……なにやってんのこの人たち。









更に先へ、そして奴らの魔の手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドタウン高校の屋上、この場所からは町が一望できる。

 

中心地から少し離れた場所にあるここには、余計な照明がない。そのおかげで夜の暗闇に沈みながら輝き続ける町を眺めることができる。……僕の、居場所だ。

 

 

「ピーター。」

 

 

いつまでこうしていたのだろうか、ずっとここに座って町を眺めていたら。MJやネッドがここまで来てくれていた。僕の傍まで近づいてくれた彼らは、抱きしめてくれる。僕のせいで二人ともひどい目にあったのに。僕のせいで滅茶苦茶になってしまったのに、隣に、いてくれる。……体に、熱が少しだけ戻ってくる。

 

 

「辛かったね。」

 

「ピーター、あなたに。会いに来た人が……。」

 

 

彼女に言われ、空を見上げる。屋上よりも高く、横にある時計塔の上には、四つの人影。彼らが、そこから飛び降りてくる。

 

 

「え、待った待った、これ……!」

 

 

ただ飛び降りるのではなく、体のばねを使って軽快に降りてくる彼ら。言葉にしなくても解る、彼らは……、僕と同じ存在だ。一人が、どこにでもいるような普通の服を。もう一人は僕みたいな親愛なる隣人としての服を。それに銀色の腕輪を付けた人に、白いスーツを着た女の人。みんな、僕と同じスパイダーマン。

 

 

「残念だった、叔母さんのこと。」

 

「お悔やみを……、ボクにはわかるよ、君の……。」

 

 

 

 

「……やめて、気持ちが解るとか言わないで。」

 

 

 

 

普通の服を着た彼と、スーツを着た彼が叔母さんのことを言ってくれる。でも……。

 

 

「そうか……。」

 

「死んだのは、僕のせいだ。……無意味に殺された。……最初からこうするべきだった。」

 

 

MJは、僕が預けてしまったあの箱を、ここに持ってきてくれている。僕が、あんなことを願わなければ。僕が、もっと考えてれば。誰かにもっと相談できていれば、もっと早く彼らを救っていれば、順番を彼からにしていれば。……間に合って、いれば。

 

こんなことには、ならなかった。

 

 

 

「ピーター。」

 

 

 

「止めないでほしい、貴方たちだって……。よそ者だ。送り返す。」

 

「奴らと同じところから来たんでしょう? そっちでやっつけて。」

 

「彼らの死に関わることは、そっちの責任だ、……僕は関係ないし、もうどうでもいい。手を引く」

 

 

 

 

 

「巻き込んで申し訳ないけど、もう帰ってもらうよ……。」

 

 

 

彼女が持つ箱を、受け取ろうとする。このボタンさえ押せば、あの魔術はなかったことになる。……全部がなかったことになるわけじゃない。でも、もう連れて来てしまった彼らのことを考える気にはなれない。今はただ、時間が欲しかった。

 

箱に手を掛ける。……けど、MJは渡してくれない。

 

僕の眼を見て、首を、振る。そして、その視線は彼らの方に。

 

 

 

「ベン叔父さんは殺された、僕のせいだった。」

 

 

「ボクは……、グウェンを、失った。僕のMJだ。……救えなかった。」

 

 

 

ピーター・パーカー(スパイダーマン)”と“ピーター・パーカー(アメイジング・スパイダーマン)”が言葉を紡ぐ。彼らにとって、喪失は一つの終わりで、一つの始まり。彼はその力の使い方を命をもって教えられ、もう一人は皆を救う過程で一番守りたかった人を失ってしまった。

 

 

 

「自分を一生許せないけど……、努力はしようとした。何とかして、親愛なる隣人の、スパイダーマンでいようって。それが彼女の望みだと思ったから。……でも、気づくと人を殴ってた、どんどん自制が効かなくなった。……怒りが溢れて、情け容赦なく。……とにかくボクみたいになってほしくない、君には。」

 

 

「ベン叔父さんがなくなった時……、僕は犯人と思われる男を追った。死んでほしかった。……その望みは叶ったけど……、心は晴れなかった。暗闇から抜け出すのにとても……、時間がかかった。」

 

 

 

人は、輝かしく戦う彼らの一面しか知らない。そのマスクの裏に何が隠されているのか、何が秘められているのか。正体を隠す以上に、流した涙を誰にも見られないように。前へ、前へと。皆と共に、親愛なる友人として。

 

 

 

「私は、父と命の恩人を失った。」

 

 

「……両親、親友、知り合い。顔も知らない人たち。」

 

 

 

この二人は、“ピーター・パーカー”ではない。だが、通って来た道は彼らに劣らぬほどに険しく、耐えがたいものだった。自身の過ちと、人が持つ悪意によって失ったのではなく。もっと大きな、世界が全てひっくり返ってしまいそうな悪意と、彼らは戦い続けてきた。

 

 

 

「戦えば戦うほどに親しくなった者たちが消えていく。心折れ、立ち止まりそうになったとしても奴らは待ってはくれなかった。自身の復讐のため、彼らの無念を晴らすため、地球から飛び出した今もその思いは変わらない。……だが、もしあの時何も起こらなければ、そう考えてしまうこともある。」

 

 

「奴らの新たな兵器となるために町一つがつぶされた。両親も、親友も、そこで死んだ。……私と先代は戦ってるのが組織だからね。相手の数も多いんだ……、殺して、ころして、コロシテ。ふと立ち止まって、同じくらいの年齢の子を見たりするとさ。自分もあぁなれたのかな、って思って。もうどうしようもないのに、受け入れたはずなのに、血まみれの体を見て、泣きそうになることもある。」

 

 

 

この世界ではなく、別の世界で。クモの力を得た彼女は“彼”に問いかける。

 

 

「あなたは今、何をしたいの。」

 

 

復讐鬼と化した彼女、その身に課された宿命に身を投じた彼、暗闇に落ちながらも立ち上がった彼、教えを胸に全てを乗り越えてきた彼。

 

 

 

“スパイダーマン”が、問いかける。

 

 

 

 

 

 

「奴を殺したい、八つ裂きにしてやりたい。」

 

 

でも。

 

 

 

「……叔母さんの声が耳に響く。叔母さんは最後まで、僕は間違ってないって言った。」

 

 

 

 

 

 

 

「大いなる力には、」

 

 

 

 

 

 

 

「大いなる責任が、伴う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「OK、必要なのがえ~と。コナーズ、マルコ、ディロン……。途中まで作ってた奴もあったんだけど設計図事あのビルの中に埋もれちゃって。」

 

「そう言うと思って、ほい!」

 

 

助けるための治療薬やデバイスを作ろうにも設計図や試作品すらない、本来の時間軸であれば機転を利かせたメイ叔母さんがその元となるデバイスたちを素早く鞄に収め逃げ出すことができたが、この世界ではライノの襲来などもあり不可能だった。

 

そのためどうしようかと頭を抱えるこの世界のピーターであったが、助け船を出すものが一人。

 

 

「にしし! ビルが倒壊しそうなのはニュースで見たからね! ちょっと復旧のお手伝いした駄賃にもらってきた。」

 

 

そう言うのは“スパイダーな私”。もう身内しかいないようなものだし、マスクを脱いだ彼女がいたずらっ子のように笑う。その顔がこの世界のドロッセルと同じことでちょっとした騒ぎも起きたが、すぐに収まり彼らの輪に入り込んでいる。ちなみに東映版の先代はスーツの形状的に脱ぐと着直すのが面倒ということなのでそのままだ。

 

 

「よし、後はどうやってデバイスを作っていくかだけど……。」

 

「あ~、もしも~し。空いてる?」

 

 

そう言いながら高校の実験室に入り込んでくる赤タイツの男。

 

 

「……誰?」

 

「Oh! そりゃないぜスパイディ! 俺ちゃんとユーはこんなにも強い絆で繋がれた仲なのにィ! コミックでの活躍とかアニメとか! 最近じゃ俺ちゃんの映画もあるのに! ひどい! ヨヨヨ……。もう! こうなったら俺ちゃん【以下自主規制】」

 

 

ようやくいつもの調子を取り戻してきた彼がそう返す。まぁこの世界のピーターからすればよくわからない武装した赤タイツが親しそうに喋りかけてくるもんだからたまったもんじゃないけれども。しかもMJどころか僕でも耳を塞ぎたくなるような内容のこと言ってるし。……何この人、不審者?

 

 

「ハイ、おつかれー。あとうるさいから黙れ。」

 

「もガァ!」

 

 

明らかに18歳以上お断りな発言が増えてきたため、お嬢様によってクモ糸をお口にプレゼント。ついでにもう彼の仕事は終わったので椅子に座らせた後糸でぐるぐる巻きにして完成。あとは肩をポンと叩き「明日から来なくてもいいよ。」のポーズだ。『しくしく、俺ちゃん頑張ったのに酷いや……!』でもあなた、あっちの世界でも換金できるように宝石類&貴金属の報酬前払いでもうもらったでしょ? はい、わかったならお黙り。

 

 

「こいつはデッドプール、ここにいる私たちの世界とはまた違う世界から来た……。ヴィランとヒーローを足して半分で割ったような存在? だね。この子に頼んで必要そうな部品を集めさせといた。これでいけるんじゃない?」

 

 

そう言いながら彼女はデップちゃんがあくせく働いて集めた品々を奪い取り、机にずらっと並べます。俺ちゃん機械の知識とかないから探すの大変だったんだよ? ほら頑張ったんだからお顔にチューぐらいしてくれても『死にたいの?』あ、ごめんちゃい。

 

 

「これなら……、いけると思う!」

 

「よし、コナーズのなら任せろ、直したことがあるからいけるはずだ。……ほんとだって。」

 

「よかった。」

 

「あぁ、助かる。」

 

 

ピーター・パーカー(アメイジング・スパイダーマン)”が集められた品々から必要そうなものを選び、設計図を受け取る。いつものクラシックスーツの上に白衣を着ているせいか少々滑稽なことになっているが、彼もピーター・パーカー。科学オタクにして優秀な科学者であることは間違いない。

 

 

「オズボーン博士の解毒剤なら作れると思う、ずっと考えてきたから……」

 

「……。」

 

 

そして原点である彼がそう続く。が、この世界の彼にとってすでにその人間を表す言葉は禁句に近い、どうしても叔母さんのことを思い出してしまう。その顔が強く歪んでしまうのも仕方のないことかもしれない。

 

大いなる責任を果たすことを決めたピーターであったが、自身の家族を失う原因となった彼も許す。その決断ができるほど彼はまだ冷静ではなかった。親愛なる隣人として、前へと進もうとしても、叔母さんのことを忘れられるわけがない。

 

 

「全員助けてやろ? な。」

 

 

「……えぇ。」

 

「それが僕らだ。」

 

 

原点である彼も一度通ったこと、彼を励ます言葉を掛け自身の仕事へ移っていく。

 

 

「よ~し、じゃあつぐみちゃんはマルコとかいう砂人間くんの特効薬でもやらせてもらおっか! にしし、これでも原子力グモを自力で作り出した天才だからね。ぱっぱとやっちゃいましょう。」

 

「……え、ちょっと待って。もしかしてキミあのクモ作ったの?」

 

「せやで! あたしちゃんすごいでしょ!」

 

 

“アンドリュー”からの問に胸を張って答える彼女、残念ながら胸を張るような突起は全くないが頭の出来に関してはこの世界のお嬢様も太鼓判を押している。心配ナッシングだ。……あと胸がないとか、身長が低いとか、見た目子供とか言ってる奴は後で体育館裏に来てください。これでも今年成人の二十歳だからな! 勘違いすんな!

 

 

「私も何か手伝いたいのだがあいにくこのようなことは専門外でな……。こう、機械の修理などなら手伝えるのだが。」

 

「あ! じゃあ先代手伝ってくださいよ! 私ついでにこの電気人間用のやつも作っちゃいますんで!」

 

「…………あれ、じゃあ僕のやることなくなる感じ?」

 

「ノン! ユーはデバイスの診断ツール作ってちょ! ……いける?」

 

「あ、うん。それなら。」

 

 

にっこりとした笑顔を返し、先代の手を引っ張って作業を開始する彼女。それを眺めながら、違う世界の彼女でもやっぱり似たようなところあるのかなぁと思ってしまうピーター。

 

視界に入ったMJのおかげで意識がこちら側に帰還し、何か気まずさを感じながら彼も作業を開始する。

 

 

(……ねぇ。もしかして俺ちゃん完成するまでずっと放置?)

 

 

“Exactly”

 

 

(ヒェ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴方にも親友いる?」

 

 

作業中、ピーターのクモ糸液の生成に必要な薬品を加熱している間。ネッドが“ピーター・パーカー(スパイダーマン)”にそう問いかける。単純に、異世界の自身がどんな人物なのかを知りたかったのだ。

 

 

「いたよ……。」

 

「……いたって。」

 

 

明らかに低い声色。聞いてはいけないことだったかと思う彼だったが、それよりも先に疑問が口に出てしまう。自身の作業を進めながら、ピーターは自身の親友であった彼。ハリー・オズボーンのことを思い出す。

 

 

「腕の中で死んだ、僕を襲った後だ。……打ちのめされたよ。」

 

「そっか……。」

 

 

自身が彼の父親を殺してしまった、スパイダーマンがノーマンを殺した。多くのすれ違いを経て、最後には協力することができたが、彼を失ってしまった。それは強く彼の心に圧し掛かっている。

 

 

 

 

 

「……よう。」

 

「……どしたの? あぁ、仮組した診断ツールなんだけど確認してもらってもいいかな。」

 

「……あぁ。」

 

 

ハリーとネッド、名前の違いを聞かなかったせいで『別世界では俺がピーターを襲って返り討ちにされて死ぬんだぁ……!』という勘違いをしてしまったネッド。最初は彼だけではなく、もう一人のピーターや他のスパイダーマンに話を聞こうと思っていたがもうそんな気分ではない。どうしようもなく、隠しきれない気まずさをそのままに黙々と作業に移る。

 

そんな彼を心配そうに見るこの世界のピーターだったが、まだ自分のやるべきことは残っている。次の作業に移ろうとしたとき、隣に席にMJが腰かけ、自身の方を向く。

 

 

「……大丈夫?」

 

「ん、あぁ。大丈夫だよ。……君を巻き込んだ、僕のせいで君の人生は……。」

 

「駄目、ダメ。私を見て。」

 

 

彼の頬をつかみ、その瞳を自身の瞳と合わせる。

 

 

「……私はここにいる、どこにも行かない。」

 

「絶対何とかなる、一緒に乗り越えよう。……いい?」

 

「わかった。……ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな若い彼らのことを眺めるおじさんたち。

 

 

「いいカップルだな。」

 

「あつあつ、アチュイ!」

 

「だね、……そういえばみんな恋人とかいる?」

 

 

首を振る東映版の彼に、舌をだしてうへぇ、という顔をするお嬢様。まぁこの彼女自分の世界に帰ったら死んだはずの親友が誰かさん(ユキ)のせいで復活してるし、運命がいい感じに変更されて恋仲に発展しやすいイベントが多数待ち受けているみたいなので気を付けてください。……ごめん、言い直すね。受け入れて♡

 

 

「いや。……時間がないよ、ピーター・パーカーとしての時間がね。キミは?」

 

「まぁ、ちょっと……、複雑で。」

 

 

そんな彼女の今後をよそに、ピーター・パーカーである二人が会話を進める。

 

 

「解るよ、僕らみたいな男には難しい。」

 

「僕は、諦めなかった。色々あったけど……、いい関係を見つけた。」

 

「そう。」

 

「あぁ、僕と、MJは……。あ~、僕のMJだ、紛らわしいよね。」

 

 

彼が、自身の世界の彼女とどのような関係を構築したかはわからない。だけど、その顔から決して悪いものではないことは解る。もう一人の自身がよい人生を歩めているようで、つい口元が緩んでしまう彼。その後ろでいい話だなぁと感心する先代に、原作を知っているからこそ『なんで映像化してないんですか! スパイダーマン4はよ! アメスパ3でもよし!』と心の中で叫んでいるお嬢様。

 

そんな手をしっかりと動かしながらも恋バナに話を咲かせている皆に、声が掛けられる。

 

 

 

「ピーター!」

 

 

「「「あ。……あぁごめん。」」」

 

 

「あ~、今のは所謂ピーター。」

 

 

「「「みんなピーター」」」

 

 

「ピーター・パーカー。」

 

 

「みんなピーター・パーカーだって。」「あぁ。」「同じだ。」

 

 

「じゃあスパイダーマン?」

 

 

「増えたな。」「正確には私スパイダーマンじゃないけどね。女だし。」

 

 

 

確かに自分の言い方が悪かったけどじゃあ何て呼べばいいの? と天を仰ぎたくなったネッド。でもまぁいっぱいいるし過半数はピーター・パーカーなので仕方ないね。でもスパイダーバースとかだったらもっと大変なことになってたし、これぐらいの量でよかったじゃん。

 

 

「あぁもうとにかく、分析が済んだ。」

 

「あぁ、ありがと。……準備完了。」

 

「りょ! こっちもできたし……、検査~!」

 

 

そういいながらお手製のデバイスを診断ツールに走らせる。画面の中で緑の文字が高速で流れ出し、作られたものが正常に動くかどうかの確認を進めていく。一応設計図通りに出せる全力を出した作品だ、彼女が昔生み出した失敗作の放射能汚染クモのようなことにはなっていないはず。せっかく直すのに私みたいに五感の一部が吹き飛ぶとか可哀そうだもんねぇ?

 

 

「ん~? 大丈夫そうかな? お~い、そっち二人はどんな感じ。」

 

「順調さ、もう少しで……、っと、これで完成。」

 

「あぁ、僕の方もだよ。」

 

 

そう言いながら最後の仕上げを済ませる二人、高校の実験室で。いくら外部から入手してきた部品があろうともここで時代がいくつも動きそうな代物を複数作ってしまうというのはなんというべきか、やはり“スパイダーマン”ってのは天才の集まりなんだなぁと客観視すればそう思ってしまう彼女。

 

まぁ上には上というか、このレベルで『幼児が積み木を並べたレベル』と言い切れる存在を知っているので全然自慢できないんだけど。それにあの人のことだから隠れてこっち見てるだろうし、このデバイスたちが失敗してたとしてもいい感じに作り直してるだろうなぁ。

 

(……バレてるじゃん。この世界のお嬢様もみてるよ~。)

 

そんな彼女たちの思いをよそに、スパイダーマンたちの話は進んでいく。

 

 

「それじゃあ次にすることは彼らをどこかにおびき寄せることなんだけど……、多分滅茶苦茶数がいると思うんだけどこの人数でいけるかな? 他にもヒーローがいるみたいだし助けを求めた方がいいかも。」

 

「……え、ちょっとまってどういうこと。」

 

 

アメイジングな彼が次のステップに進もうとしたとき、この世界の彼からストップがかかる。

 

 

「何ってほら、あの機械と生物を合体させたみたいな感じの……。え、その顔。もしかしてこの世界の……?」

 

「じゃないじゃない! 何それ! 僕そんなの知らないんだけど!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………鉄十字団。」」

 

 

この世界にやって来たヴィランが自身の捕まえた5人と、マンションを破壊した2人。合計7人だと思っていたこの世界の彼に、「え、ボクたち。デッドプールと一緒に戦った時20人くらいいたよ!?」と反論するアメイジングな彼。想定と違うことに困惑する原点の彼。

 

そんな困惑は、重い鉛のような、二人のつぶやきでかき消される。

 

 

 

「マシーンベムか、つぐみ君。」

 

「ですね、私たちが呼ばれた理由かと。……OKちょっと作戦を変えよう。」

 

 

 

手元にあるデバイス、ノート程の液晶を操作し元々の作戦とは別にもう一つの策を練っていく。当初の目的は箱を餌として使用し、この世界に迷い込んだヴィランたちを周辺住民に被害が出ない場所に隔離。そこでデバイスを使用し治療した後に、箱を使用することで元の世界に帰るというもの。

 

しかしながら鉄十字団の存在や、原作にはいなかったライノやショッカーと言ったヴィランの存在も考えるに、隔離しようにもできない可能性が考えられる。自由の女神がいるあの島に鉄十字団という団体様をお呼びするには少々広さが足りない。

 

 

「ま、マシーンベムって……。あなたたちの世界の?」

 

 

 

「あぁ、その通りだ。……マシーンベムは個体にもよるがその大半が巨大化する能力を持っている。大体60mほどだろうか。それを使用される前に倒し切ることも可能だが、それだけの数がこちらに来ている以上従来の策では難しいだろう。」

 

「そっちのピーターは姿見られてるんでしょう? なら今もずっと血眼になってこちらのことを探しているはず。……奴らにとって人の命は資源程度の価値しかない、正面からやらないと被害が増えちゃう。……しかも、あいつらのことだから魔術に対抗してこの世界に残るってことも考えられる……、この世界で殺し切らないと。」

 

「こ、殺すって……。」

 

 

それまでの親しみやすい雰囲気が一変、完全に戦う者、命を奪う者としての眼になった二人が話を進めていく。ネッドが思わず口にしてしまったが、その思いは彼ら以外のスパイダーマンも同じであった。“ピーター・パーカー”である彼らは不殺の信念のもとで動いている。だからこそ同じスパイダーマンであるはずの彼女たちが、あえて「殺す」という言葉を使ったことに動揺を隠せなかった。

 

 

「……奴らは、いや彼らは異星人によって改造された生物兵器だ。その材料には、人間が使われることもある。……何度か元の姿に戻そうと努力したが……、みな、死んでしまった。」

 

「マシーンベムはね、無理なの。完全に素体を材料としてしか見てないから脳自体全部中身を消去されて書き直されてる。元の人間のようにふるまうこともあるけど全部罠。……あはは! これでも親友の死体を開いて吐きながら調べたのよ。もうどうしようもないってことはね! ……楽にしてあげるためにも、やるしかないんだよ。」

 

 

方や、深刻な顔で。方や、誤魔化すために笑いながら。彼らは、“ピーター・パーカー”ではない。だからこそ、住む世界の根本が違う。ピーターたちの世界で行われているのは同じ種族同士の争いだが、彼女たちの世界で行われているのは一種の生存競争。殺すか殺されるか、復讐や怨念の積もり積もった世界だ。

 

 

 

「この世界のピーター。どう? 私を見て何思った?」

 

「貴方の眼に映る異様なもの、不気味に見えるもの、恐怖を感じるもの。」

 

「これが復讐に飲まれ、行きついた者の末路だよ。……こうなりたくなかったらよくよく考えなさいな。」

 

 

 

それは、行きついた者からの警告。もしあなたが怒りに飲まれてしまった時、復讐に取りつかれてしまった時、たどり着く場所は決して良いものではない。……この生き方に後悔はしていないが、傍から見ればおかしいものであることは理解できる。だからこそ、こんな復讐に取りつかれた姿は“親愛なる隣人”にはふさわしくない。

 

 

「……というわけでこれに関してはちょっと譲れない。ってわけでチーム分けしよっか! ほらみんな笑顔笑顔~!」

 

 

頬に指をあてて笑顔を作る彼女、怖い雰囲気にしてごめんねと謝りながら話を進める。マシーンベムがこちら側に来ている以上奴も来ていておかしくはない、何故来ているのかはわからないが相手は確殺が求められる相手。そうなると、自然とチームメンバーも決まってくる。原作通り治療を進めるピーターチームと、奴らを殺しに行く東映版チームだ。それと……

 

 

「デッドプール? お賃金言い値にしてあげるから働きなさいな。」

 

「お? ようやく俺ちゃんの出番? 暇すぎて魅惑の俺ちゃんタイムを始めるところだったぜ。」

 

「……詳細は言うなよ? さらにR指定が上がるからな?」

 

 

じゃあ、作戦を詰めていこう。

 

“ピーター・パーカー”の貴方たちには元の作戦通りに彼らの治療を進める。その間に私と先代は鉄十字団の相手。そしてデッドプール、貴方にはライノとショッカー。その相手をしてもらおっか。この二人は急に現れたせいでどんなふうに動くかわからないからね。それになんであの場に現れたのか、もしかしたらどっかと繋がってる可能性もある。……ま、遊撃ってわけだね。

 

 

「……俺ちゃんの負担多くない? え~! やだやだ! 俺ちゃん割に合わない仕事したくな~い!」

 

 

まぁ確かに多いけど……、その分見返りはあるし、救援の目途は付いてるから難しい仕事ではないでしょう? 『ちなみに救援はどんな感じの?』もちろんライノに合わせたパワータイプの予定さ、まぁ無理そうなら“保護者”が出てくるだろうし問題はなかろうよ。『となると俺ちゃんの相手はショッカーな感じか。まぁびりびり衝撃波黄色タイツマンなら……、』あなたならいけるでしょ?

 

 

「と思ったけどやっぱりうーけた! そのお仕事、俺ちゃんが完璧にこなしちゃいますぜ?」

 

「ってな感じでやりたいんだけど……、大丈夫?」

 

 

 

 






〇東映版スパイダーマン

なんか鉄十字団の気配がするのでやって来た。本編終了後地球から離れ外宇宙で活動している鉄十字団との戦闘に明け暮れている、基本スパイダー星で活動していたため、地球で奴らが復活していることに気が付かなかった。よくニコニコなどの動画サイトでネタにされたは削除されるを繰り返される男! しているが本編の内容は非常に辛いもの、親しくなった人とかが敵の改造人間にされて彼が倒さないといけない話とかも……。作者もちゃんと見たことはないので、ディズニー+あたりで見れるようにしてほしい。

彼は子供の未来に光を見た男! なので小さい子が被害にあってたりするとすぐに助けに来てくれる、だからこそ“スパイダーな私”の境遇には結構心を痛めてるみたい。というわけでモンスター教授♡ ソードビッカー。


〇D‐スパイダー

先代と会える機会ができたのはとてもうれしいし、他のスパイディと会えたのもうれしいんだけど鉄十字団連れてきちゃうのはどうかなぁ? と思ってる。『あれこのまま放置してたらあなたの世界で大反攻してた奴だよ。』……さいですか。じゃあもう先代いるしこっちで全部消し飛ばしてやりますよ!

グウェンスパイディのような白のクラシックスーツの上から黒の革ジャンを羽織り、ウェブシューターやデバイスを掛けて置くベルト、脚部にキック力増強装置であるキッカーを装備している。師匠である昭和ライダーの方々からしごかれたため、足技の能力は高い。マシーンベムは殺す、許さん!
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