前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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最新話になります。


突入、そして見せかけの幸運

 

 

 

『目的地上空、到着いたしました。』

 

 

「あいあいありがと。にしてもでっかい武家屋敷だなぁ……。地元だけどこんなのあるなんて知らなかったや。」

 

 

『地元、と言いましてもマスターの生活圏からは離れていますから仕方ないかと。』

 

 

たしかに自分から関りを持とうとしたり、地元の深いところまで探検したりしない限り地元について知る機会がないわけだし、そういうもんか。前世もあんまり覚えてないけど地元について詳しく知っていたわけでもなかったし灯台下暗しって奴ですかね?

 

 

あの後、石井組のボスさんに握手を求めた私は無事彼の右手を手に入れること、つまりOKを貰うことが出来た。細かい取り決めについては後々だけど協力関係を結べたことは確か、ヤクザという戦力を手に入れられたわけである。

 

と、言っても彼らが保有している戦力。数は相手の倍以上なんだけど質と装備が問題ばかり。ニンジャに一般人に毛が生えた程度、正確にはある程度訓練された職業軍人が勝てるわけがないのは当たり前なのだ。

 

 

「ちょいとばかし性能がいい自動小銃とピストル。お馴染みドスと少量の日本刀。最後にほとんど意味をなさないお守り程度の対刀・対弾アーマー。まぁ生産できるのに限界があるし仕方ないことなんだろうけどねぇ……。」

 

 

ハッキリ言って貧弱。ボス石井がこっちの話を受け入れた理由も、このままぶつかった場合簡単にひねられてヤクザ全滅、大阪おしまいってことが良く解ってるからだと思う。

 

 

「かといって私がすぐさま用意できるわけじゃないしなぁ……。」

 

 

そもそもニンジャが多くても100人程度だと思っていた私は速度を重視して、殺傷能力がある武器の数を用意できていない。そしてヤクザグループ一つに武器提供することなんて考えてもいなかったから、彼らに渡してあげる武器すらない。残ってるなけなしのお金を使えばスターク社製の武器防具をある程度用意してあげられるけど届くまで時間がかかる。つまり今の装備人員で何とかしないといけないってこと。

 

相手側のニンジャが少なくても1000人いるということは私の存在、本拠地、動向などがバレるのは時間の問題。というかすでにバレていると考えてもいい。訓練された兵士よりも強くて闇に紛れる技術がある奴らが四桁だ、どうしようもない。

 

私が今できるのは奴らの本拠地を叩くこと。

 

石井さんの話では元々使ってた本拠地のお屋敷が現在ニンジャ陣営に占拠されてるとのこと。私ができるのはそこに居座る上田をしばいて内部にいるヤクザの洗脳を解く、その後ニンジャの数を減らすということ。

 

石井組のヤクザたちとの挟撃作戦ではあるけど中にニンジャがそれほどいなくても構わない、まぁいる方がありがたい話ではあるんだけど。本拠地を叩くことで相手側の動きを一時的に鈍くさせる、ようは時間稼ぎだ。

 

その間に私が頑張って武器防具を製作する、スーツの改良を行う、S.H.I.E.L.D.や現時点で活躍しているヒーロー……、トニー・スタークに助けを求める。最後のは一番したくない、彼の物語に余計なものを挟んでしまうからしたくないことなんだけど、助けを求めなかったせいで世界が狂うのならしないといけない。

 

 

「イヴ、ハッキングしたS.H.I.E.L.D.のデータベースもっかい繋いで。」

 

 

『かしこまりました。』

 

 

スーツ内部のディスプレイに表示される情報たち、……やっぱりだ。“すでに内容が変更されている”、“私が用意した置き土産が破棄されている”。仕事が早いし優秀だ、ヒドラに汚染されていることを除けばだが。

 

最初に侵入した時には見ることのできた情報、四次元キューブなどの情報は“見られても構わないもの”や“誤解させる嘘の情報”になっている。そして面白いことに“対人向けの武器”の情報が盛りだくさん。どう考えても常人に使ったらダメなやつだし、“耐久性が異様に高い人間向け”の武器たちだ。

 

 

「もしかして、と思ったけどマジだとはふつう思わないじゃん……、なして?」

 

 

開発理由は敵勢力を早期に、そして効率的に排除するためだって? どう考えても超人兵士に対抗するための奴ばっかじゃんか、明らかにニンジャ対策に使えって言ってるもんでしょ?

 

 

はぁ……、ほんと早まったなぁ、私。浮かれてたか? いやどっちみちこの時期に動いてなければ唯一ニンジャの勢力下になかった大阪がやられて奴らにバレてただろうしどうしようもなかったんだろうけども。しかもこの情報を開示してきてるってことは眼帯煮卵としては日本、というかヤミノテに戦力を割きたくない。もしくは面と向かって戦いたくないってことなんでしょ? だからこそ新しい勢力となりうる私に兵器の情報を提示することで支援する。『自分は面と向かって戦わないけど支援してあげるから頑張ってね』ってかぁ? ブリカスかよお前。助かるんだけどさぁ!

 

しかもこの対応の早さを見るにヤクザのどっかにS.H.I.E.L.D.潜入してそうだな。ヤミノテの方は江戸初期から裏の世界を生き続ける大組織だし、ニンジャの巣窟だからスパイは送れない。だからこそ唯一対抗していたヤクザ組織に諜報員送ってたわけだよな。……否定できないし絶対そうだろ。

 

 

「あ~あ、なんか最初からずっと長官殿の手の上だった気がするわ……。イヴ! S.H.I.E.L.D.の長官にメッセージを送って! 『私だけじゃどうしようもない。アべンジャー計画に参加してあげるし、S.H.I.E.L.D.の代わりにヤミノテと戦って国外に迷惑かけないようにしてあげるから救援頂戴。出来ればブラックウィドウかホークアイあたりの特記戦力で!』って!」

 

 

『かしこまりました。……送信完了。自動返信としてあちら側から秘匿通信アドレスが送られてきましたがいかがいたしますか?』

 

 

「……どこまで情報抜かれてんだ? 正直怖いんだけど……。」

 

 

『こちら側にハッキングされた痕跡は発見できませんでした。また閲覧記録に不自然な点は存在しません。情報の漏洩は考えられません。』

 

 

「……うん。今は考えるのなし。イヴ! ネットワーク閉じて切り替え! 戦闘システムいつでも開始できるようにしといて!」

 

 

『了解いたしました、ご武運を。』

 

 

 

 

どっちみちこの問題は今考えることじゃない。ややこしいことは後回しにして私は自分の仕事。『裏切者の上田を排除することで敵勢力内部にいるヤクザたちの洗脳を解除して騒ぎを起こす。その動乱に乗じて私が内部から、外から現在集結中の石井組ヤクザが突撃。敵本陣にいるニンジャを排除する』。

 

 

 

 

 

 

 

時代遅れの武家屋敷に、白い流星が舞い落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイフォイド様、ご報告です。」

 

 

「あぁ? なんだ?」

 

 

「監視していた敵勢力、石井組に動きあり。この地点に集結するつもりのようです。」

 

 

「はぁ?」

 

 

なんでこのタイミング? どう考えても奴らはじり貧。正面からぶつかっても裏でコソコソやり合っても全滅するのは確定。意味が解らない。

 

 

「……イシイのとこにいる奴からなんか報告あったか? 白いアイアンマンとかそういう他勢力から支援の予兆とか。」

 

 

「いえ、何も。ですが例の白いアイアンマンは姿を消す能力があるとのことです、ですので見落としもあるかと。そしてS.H.I.E.L.D.の方で動きがあったとの報告がございました。」

 

 

「なる程ねぇ……、上田はなんか言ってたか?」

 

 

「『よくある玉砕覚悟の花道、最後ぐらい奴の顔を立てなければオヤジに悪い。』とのこと。ここで迎え撃つとのこと。」

 

 

軽く舌打ち、これだからこの国の奴らの流儀が解らねぇ。雇われ幹部だからそこまで口挟めねぇし、上からウエダとの関係を守るように言われちまったからこの場所から手を引いたりウエダを囮に使うことが出来ねぇ。

 

 

「あっそ、んで? 今ここにどれぐらい兵いんの?」

 

 

「手勢500名が既に出陣の用意を済ませております。上田様方は未だ準備中とのことでしたがじきに完了するかと。」

 

 

500か……、白い奴のアジト探しに人員割いたのがマズったか? ヤクザどもと共闘すれば普通に勝てるがウエダが裏切らないとは限らねぇ。イシイんとこ殲滅した弾みでこっちを潰される可能性があるわけか。

 

 

「……おい、残りの散らばってる奴全部呼び集めろ。ウエダの奴が正面衝突望んでるんだったらこっちも乗ってやろうじゃねぇか。大事な大事なクライアント様だからなぁ。」

 

 

「かしこまりました、すぐに集結の知らせを。」

 

 

言い終わった瞬間、目の前に控えていたニンジャの姿が掻き消える。ヤクザもヤクザだがニンジャもニンジャだ、比較的ヤクザよりも自由度が高い奴らだけど私からしたら変、というかよくわからないしきたりだらけ。正直相手すんのめんどいというかしんどいというか……。

 

 

「金払いはいいけど好き勝手出来ない分ストレスが溜まるなぁ……、そろそろ引き上げ時かねぇ?」

 

 

そんな言葉が私の口から零れ落ちようとした瞬間、襖が勢いよく叩き開けられる。

 

 

「ご報告! 上田殿討ち死に! 敵方が既にこの場を包囲しております! お味方ヤクザの洗脳もあらかた解けた模様!」

 

 

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

武家屋敷、その名前の通りお武家様が住んでいた家。もしくは参考にしたお屋敷。もとの家主が大阪府一帯を勢力下にしていたヤクザの親分からか所々に外敵を排除するための仕掛けや部屋がたくさん存在している。

 

普通に侵入すればこのハイテクスーツがあっても結構苦戦するだろう。

 

でもどんなものにも弱点や欠点があるようにこのお屋敷にも弱みが存在する。それは……

 

 

 

「空から降ってくるハイテクスーツ美少女が透明化して侵入してくることを想定してないってことだァ!!」

 

 

「いやそりゃ無理でしょ……。」

 

 

 

若干やけくそになりながら潜入はとても丁寧に。ありがたいことに見回りが少なかったおかげであんまり物音をたてずに侵入&捕縛をすることが出来ました。辿り着いた裏切りヤクザボスである上田氏の護衛も彼自身もスパイダーウェブでぐるぐる巻きにしてやりました。あ、ちなみに場所は彼の執務室みたいなとこね! 結構調度品にお金かかってそうな部屋、高そうな壺とか絵とかあるし。

 

 

「んで? それが素?」

 

 

「んんッ! いや失礼。初めましてですよね、白いアイアンマン。私の名は……」

 

 

「え、ちょっと待って白いアイアンマン?」

 

 

なんだか名乗り始めようとしたけどそれを止めてぐっと彼の顔を覗き込む、なんかすごく恐れ多いこと言っていた気がするし、もしかしたらスーツの不具合かもしれない。もう一度聞こう、上田君。君は今何と?

 

 

「あ、名前知ってるのね……。あ、いえ。単に白いアイアンマンと……。」

 

 

「誰が言い始めたの?」

 

 

「う、ウチの部下があなたを見た時にかの御仁と似かよっているようにお見受けしたので……。」

 

 

「はぁ? 私が? アイアンマン!? おんどれ目ぇ腐ってんのちゃうんか!?」

 

 

「あ、いえ、はい、え?」

 

 

「どこを! どう見たら! 私がアイアンマンなんじゃ! 色も形もそもそも性別も全然違うだろが!」

 

 

「あ、その、すいません?」

 

 

「恐れ多すぎるんですよこちとらぁ! 同じ名称で呼ぶなワレェ!!!」

 

 

「あ、そっち……、いえ、ナンデモナイデス、ハイ。」

 

 

私なんかパチモンなんですよ、そもそも作り始めた時期というか用意し始めた時期が全く違うんです。トニーは例の洞窟誘拐から一年どころか数ヵ月もかからずにあの完璧なスーツを、リアクターを作り上げているんですよ。

 

私はその完成形を知っていて、そしてこの世界に生れ落ちてからずっとそれを完成させるために動き続けたのに“彼が現れた後”にしか作ることができなかった敗北者なんですよ! 敗北者だからデザインって言い訳してるこのツインテールという余計な動力炉が外部にはみ出てるんですよ! トニーなめとるんちゃうぞオラァ!!!

 

 

「あ、あの~。じゃあなんて呼べばいいんですかね? その白いアイ……、あ、もう言わないですからその光るのこっち向けないで、撃たないで。」

 

 

もう一度私のことをアイアンマンとかふざけたこと言いそうになった奴に向かってついリパルサーをオンにして向けてしまう。仏の顔も三度まで、次言ったらおしまいだから気を付けておくんだなぁ!

 

うん、にしても私の名前か。

 

さすがに本名をここで名乗るわけにもいかんし、かといってこれからの私を表す名前だから安易に決めるわけにはいけないよね。どうしよう、白。スーツ。ツインテ。……んにゃ、思いつかん。

 

 

「名前は未定。ま、追々考えるよ。」

 

 

「そ、そうですか。」

 

 

というかこの人ちょっとリアクション面白いな。

 

 

「んで? 私がここにいて、君がここで縛られてる。現状は分かるよね? わかるなら私がしてほしいことも解るかな上田君?」

 

 

「……石井の差し金ですか?」

 

 

「そ、簡単にいうとここのヤクザさんたちに洗脳仕掛けてんでしょ? それといてくれないかな~ってお願いしに来た。死にたくなかったら洗脳解いて、ヤクザまとめて、一緒にニンジャぶっ殺そうぜ? 元々あの石井君と一緒にニンジャと戦ってたんでしょ? だったら昔に戻るわけだから別にいいでしょ。ほらハリー! ハリー!」

 

 

「なるほど、そういうわけですか。」

 

「ですが勝算はあるのですか? もしあなた方の想定通りになったとしても奴らはこの街に1500、私が把握していない別動隊があるかもしれません。私の配下と石井の配下を合わせても4000に行くか行かないか。石井の奴は自身のシマの防衛もあるでしょうからこの屋敷に連れて来られるのも限界があります。」

 

 

「あなたはその差を埋められる存在なのですか?」

 

 

 

……なんかこの上田って奴キャラ急に変わったな。というか1500以上いるのか、ヤバくね? +500だって? 無理でしょ。S.H.I.E.L.D.に救援求めてよかったかもしんねぇ……、間に合うかわからんけど。

 

 

 

「ま、頑張るから何とかなるでしょ。というか上田だっけ? あんた案外すんなりこっちの要求飲むのね。正直絶対にこっちの要求呑まない!って暴れるかと思ってたんだけど。」

 

 

「ははは、まぁ外部の人間からそう思われても仕方ないかもしれませんね。私がオヤジの死後組を裏切ったのはひとえにこの街を、大阪を守るためです。……オヤジが死んだことで組は荒れた、その隙をニンジャどもに突かれて丸ごと潰されるぐらいなら勢力を二つに分けた方がいい、そして生き残った方がこの街を裏から守る。」

 

「石井がオヤジと同じ正面から立ち向かう道を選んだのなら、私は奴らの下について制御する。そして機会があればその喉元を食い破る道を選んだわけです。」

 

 

 

「なるほどねぇ……、つまりこうなる可能性も考えていたわけか。」

 

 

「ま、石井の奴が表の人間を連れてくるとは思いませんでしたが。」

 

 

 

ん~、なんか順調に、うまくいきすぎてる感じがするけど……、まぁ今考えるべきは対ニンジャか。この人こっちに味方してくれるってわけだしこの騒動をニンジャ側に知られる前にさっさと奇襲しに行こっと。

 

警戒しながらだけどこっちの言うことを聞いてくれる上田君のウェブをそこらへんに有ったライターで燃やして解いてあげる。解いた後も攻撃とか別に怪しいこともせずに彼の机からリモコンみたいなのを取り出して、手渡してきた。

 

 

「こちらが洗脳の解除リモコンになります。こちらを押していただけると配下の者たちの洗脳が解けるはずです。」

 

 

「なるほどねぇ……。」

 

 

時間も押しているので渡されてすぐにボタンを押す。ついでにスーツの機能を使ってイヴにこのリモコンについて解析させる。

 

 

『内部構造解析、詳細は分かりませんが特定の電波を広範囲に放射する装置のようです。電波は何らかの脳波パターンに類似しているようです。詳細な解析を行いますか?』

 

 

「ありがと、あと今は戦闘の方に集中したいからそっちに影響が出ない程度で。」

 

 

『かしこまりました。』

 

 

「じゃ、上田っちありがとさん。私はニンジャが集まってそうなとこに襲撃かましてくるから後よろしく! それと石井っちの方に連絡入れておくけど何か言っておくことある?」

 

 

 

 

「なるほど、では御武運を。それと石井に“今まで迷惑を掛けたな、また今度会う時はよろしく頼む”と。」

 

 

「? 了解。 じゃ、行ってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

そう言いながら光学迷彩を起動して部屋から出ていく。

 

 

 

この時はその後に戦うヤミノテ所属ニンジャの事で頭が一杯だったから気が付くことはできなかった、もっとその場でよく考えておけば、もしくは出合頭に彼の頭をぶち抜いておけば良かった、と私は後から後悔することになる。

 

 

 

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