前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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他の英雄たちとイタズラ用意

 

 

 

「こっちは完了、あとはよろしく頼む。」

 

 

 

アメリカ100万ドルの夜景は霞み、数億ドルのスーツが空を飛ぶ。

 

 

 

「外部からの通信と電力供給は切った?」

 

「これからスタークタワーは自家発電のクリーンエネルギーで動くんだ。」

 

「う~ん、ホントにアークリアクターだけで賄えると思う?」

 

「もちろんだ、……ライトアップ。」

 

 

 

夜景を彩る光に新たなエネルギー、STARKの名が灯る。

 

 

 

「どんな感じ?」

 

「クリスマスみたいだ。僕の名前が、光ってる。」

 

「早速公表しなきゃ、あなたは記者会見を開いて。私は明日ワシントンに飛ばなきゃならないから後のことは……。」

 

「ペッパー、せかせかするな。僕が記者会見を開きなんてすれば熱烈なファンが文字通り飛んで来るぞ。」

 

「ふふ、そうね。一月後には日本で新しいあなたのタワーが建っちゃうかも。」

 

「それに……、この瞬間を楽しめよ。」

 

「あなたが帰ってきてからね。」

 

 

 

着地、金属音。スターク・タワーのプライベートルームに続く彼のためだけのロード。浮き上がるのは歩きながらスーツの着脱ができる機構。

 

 

 

『トニー様、S.H.I.E.L.D.のコールソン様からお電話です。それと早くもツグミ様からお祝いのメールをいただきました。』

 

「今外だと言え、ホントのことだ。イタズラガールには僕のスナップショットだ。」

 

『また気絶して病院に運ばれなければいいのですが……、またコールソン様がどうしても、と。』

 

「うまくやれジャーヴィス、デートなんだ。」

 

 

少しずつタワーに収納されていくアーマー、現れるはトニー・スターク。初期に開発されたスーツでは専用の防護服、といってもそれほどゴテゴテしたものではないが、それが必要だった。しかし今ではラフな格好にどんな靴を履いていても大丈夫。マーク4時点で解決していた事項だがもはや旧型になったマーク6でもそれは受け継がれている。

 

 

「レベルは安定している、たぶんね。」

 

「当然だろう、僕が設計したんだからな。そこで質問、天才で居るってのは……、どんな気分?」

 

「えぇ? 私が知るわけないでしょ。」

 

「どうして? アイデアの元は……、君だろ?」

 

「いいえ、アイデアの元は……、あなたのここね。」

 

 

指さされるのは彼の胸を守る青い心臓、彼がアフガニスタンで拉致されたときに埋まってしまった爆弾の破片、それが心臓に到達しないように守る働きをしている。そして彼の力であるスーツも。

 

 

「少しは自分の功績も、主張しろ。スタークタワーは君の子供みたいなものだ、12%は君の功績。」

 

「……12%?」

 

「足りなきゃ15%でもいい「それっぽっち?」あぁ、でも実際働いたのは僕だぞ? 重いもの運んだ。」

 

 

ほんの少しの一言でさっきまでの空気が消えてなくなる。彼の信奉者であれば『全部あなたの!』という返しをしただろうが彼の愛する人が求めた答えは違ったようだ。

 

 

「それにセキュリティだってゆるゆるだったのは君のせいだ。」

 

「あ~。」

 

「僕のエレベーター「私たちのでしょ?」ん、プライベートエレベーターに知らない男が乗ってたら……、ごめん、怒った? 後で体を張って埋め合わせをするからさ……」

 

「もので埋め合わせして?」

 

 

手渡されるグラス。

 

 

「じゃあこうしよう、次のタワーの名前は……、ポッツにする。」

 

 

『お楽しみのところ申し訳ありません、先ほどのお電話ですが無理やりシステムに割り込まれました。ハイツレギスタの技術です。』

 

 

「……今度あのイタズラガールにお仕置きだ。」

 

「あの子なら逆に喜びそうだけど?」

 

 

『「スターク、話がある。」』

 

 

電話から聞こえる音とさっき話題に上がっていたプライベートエレベーターから聞こえる音。すでにコールソン捜査官は正史よりも早く侵入していたようだ。

 

 

「フィル~、いらっしゃい。」

 

「フィル? 君ってそんな名前だっけ?」

 

「今お祝いしてるの!」

 

「スターク、これを見てくれ。」

 

 

フィル・コールソン捜査官からトニーへと渡される大きな箱のようなモノ。渡す方は真剣な面持ちだが受け取る方はとんでもなく嫌そうな顔である。

 

 

「あぁ、すまない。手渡しは「あぁ、いいのよ私は手渡し大~好き。交換ね。」」

 

「……ありがとうペッパー。んん! 業務委託の相談は毎週木曜8時から9時だ。」

 

「そんなことで来たんじゃない。」

 

「もしかしてアベンジャーズの事? あぁいえ、何にも知らないわよ? ただあの子と彼の会話の中で出てきたのをちょっと。」

 

 

手渡しからの交換で受け取ったデバイスを開き、彼の作業用デスクに向かいながら声を上げるトニー。

 

 

「アベンジャーズ計画はなくなったんだろ? 僕もツグミも二人とも試験とやらに落ちて計画ごとおじゃん。」

 

「……それも知らなかったわね。」

 

「なんでも僕は気まぐれだし、自意識過剰で、協調性がないと。彼女の方は機密情報の漏洩ぐせがある上にそもそも非合法組織のオーナーだ。まぁやってることは評価できるが。」

 

「……それは知ってた。」

 

「性格云々の話ではなくなった、もちろん彼女のハッキング癖も目をつむる。」

 

「あっそ、ポッツくん?」

 

「……ちょっと失礼。」

 

 

はにかみながら彼の元に駆け寄るペッパー、フィル君に大事なデートの時間を邪魔された上におしごとの話まで持ってきたもんだからかなりご機嫌斜めなトニー君。でもペッパーちゃんはそれを楽しんでいる感じですね。

 

 

「せっかくの水入らずで、過ごしてたのに。」

 

「12%の水入らず、でしょ? ……深刻そうよ、フィルがあそこまで焦ってるの初めて見た。」

 

「だからってこんな、仲良くしてる時に……。」

 

「この資料何なの? あなたの写真に、彼女の写真もあるわね。」

 

「これは……、こうだ。」

 

 

一瞬で広がる映像たち、S.H.I.E.L.D.が保有する秘密の映像。トニーがアイアンマンとして中東のテロ組織を破壊していた時の映像やツグミがドロッセルとしてニンジャたちと戯れている映像だけでなく、白黒の過去の超人兵士、緑色の怪物、金髪で雷を操るハンマーを持った男。厄ネタよりどりみどりとはこのことだろう。

 

 

「……今夜ワシントンに飛ぶことにするわ。」

 

「明日。」

 

「あなたは宿題しといて、全部チェックしなきゃ。」

 

「イヤだって、言ったら?」

 

「イヤって言ったら? ご褒美が欲しいの? そうねぇ……、帰ってきたら……。」

 

 

気まずそうに少しだけ目線をずらすコールソン捜査官、ちょっとした気遣いができる男は違いますね。

 

 

「……よし、じゃあ気を付けて。」

 

「がんばって。」

 

 

 

「フィル~、空港まで送ってくれない?」

 

「喜んで。」

 

 

だんだんと小さくなっていく彼女の声、まぁ仕方ない。決してご褒美とやらに釣られたわけじゃないが僕は優等生だからな。宿題ぐらい簡単に終わらせて見せるとも。もし必要そうならジャーヴィスと彼女のイヴとでスペシャルコンビ、いけ好かない眼帯の先生の答えを見に行ってもいい。常習犯の悪友もいることだしな。

 

 

「ん、これは……。」

 

 

目に留まる一つのホログラム、それは彼の胸に収まるリアクターの新元素。父の残した遺産からバットアシウムを作り出したその過程の時に見たあの物体。

 

 

「四次元キューブ。」

 

 

フェーズ1の終わり、六つの石をめぐる戦いが始まりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ここがヘリキャリアか。」

 

 

三次元的な作戦行動が可能なS.H.I.E.L.D.保有の特殊戦闘機・クインジェットからヘリキャリアに降り立つのは少々時代遅れの服装をした男性。平均身長を軽く上回りその体はまさに筋骨隆々という言葉が両足で立っていると言える。これで1940年代に主流だったであろう着古された皮のジャケットに派手なガラシャツを着ていなければ、と思ってしまう。

 

 

「いらっしゃいスティーブ。」

 

「あぁ、君は……。」

 

 

そんな彼、スティーブ・ロジャースことキャプテンアメリカを迎え入れるのはナターシャ・ロマノフと名乗る赤髪の女性。またの名をブラック・ウィドウだ。

 

 

「ちょっとごめんなさいね……、コールソン! 長官が呼んでるわ、すぐにデッキへ。」

 

「あぁ、了解した。」

 

 

クインジェットからちょうど降りて来たコールソンを迎えるのは長官からの新しいおしごと。昨晩はトニー・スタークの相手で今日は大ファンキャプテンアメリカのお迎えだ、まぁ今日の仕事は大変光栄なものだったけれども休む暇がないのは確か。それでも彼の頭に過るまさに死屍累々の情景、ハッキング対策部こと通称『ドロッセルのお遊戯部』よりはましだと思い直す。

 

 

そんな彼をよそにスティーブは資料で見た顔、バナー博士を見つけ彼の元へ向かう。今の自分の上司であるフューリーの希望は『パワーを持つ人間たちを集めチームとすること』。

 

事前に渡された資料の中で纏めるのが難しいと書かれていたのは、ハワード氏の息子であり性格に難があるらしいトニー・スターク、ハッキングというのはまだよくわからないが組織の和を乱している問題児ツグミ・オオゾラ、北欧神話での神の力を扱うらしいよくわからない男ソー、そして最後に自分の力の元になっている超人血清を研究し、事故にあったバナー博士。

 

これから一緒に仕事をする仲だ、挨拶はしっかりする。たぶんこれは今の時代でも必要で有用なはずだ。

 

 

「バナー博士!」

 

「あぁ、これはどうも。ブルース・バナーです。」

 

「スティーブ・ロジャースだ。」

 

 

握手の後に訪れるちょっとした静寂。片方は50年近く眠っていた相手に対してどうやって話を続けるか、もう片方は自分の生きた時代よりも50年先の住人に対してどうやって話を続けるか。今回は現在から過去の方が速かったようだ。

 

 

「あ~、この景色。君にとっては見慣れない、かな?」

 

「いや……、訓練の様子はいつになっても変わらない、僕の時代でもこんなものだった。……ん?」

 

 

戦闘機の整備、甲板上での訓練の様子を眺めていた二人だったがスティーブの方が早く異変に気付く、整備員たちが航空機にベルトを付け始め、訓練していた者たちは急いで艦内に戻り始める。

 

 

「お二人さん、そろそろ中に入らないと危ないわよ。」

 

「……もしかして海に潜るのか?」

 

「はっ、なるほど。僕みたいな怪物は海に沈めちゃうわけだ。」

 

「違うわよ。」

 

 

揺れ始める甲板、そしてそれまで見えていた海面が徐々に、徐々に下へ下がっていく。見え始めるのは船体の横に備え付けられた大きなプロペラ。そう、ヘリキャリアは空へ飛ぶのだ。

 

 

「……すごいな、これは。」

 

「海へ沈んでくれた方が良かったね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター、そろそろ到着いたします。ブースターoff、第3から第9テールをスリープ。“旅行カバン”へ収納します。』

 

「ふぁ、よく寝たって、ちょわっ! イヴ! 急に操縦変わんないでよ!」

 

 

微睡から徐々に脳が覚醒していき、視界がようやく開けた瞬間に受け渡されるスーツの操縦権。Mark1から重心バランスとかリパルサーの出力、補助ブースターの位置とか変えてるせいで『今からMark2の操縦するぞ!』って用意しておかないと昔の癖が出る私。おかげさまでまた海にドボンするところだった。わたしゃぁ潜水艦じゃないぞ!

 

 

『ですが宇宙空間でも活動できるよう密封と酸素の問題は解決しておりますよ? 深海など何のその、でございます。』

 

 

まぁそりゃそうですけど! もうちょっとなんというか手心というかそういうものが最近マジでなくなってきたよねイヴ。前までまだ“AI特有の不器用さ”だったのが“人間特有の意地悪”になってきた気がする。誰の影響受けたんだ? ……私以外いないじゃん。

 

 

『四六時中“お母様”と一緒にいますもんね。』

 

 

ま~たなんか含みある言い方! でもそんなところが好きだよイヴ! ただ単にまっすぐ進むだけじゃ面白さ半減だもんね! ひねくれ上等! まったく私好みの“娘”に育ったもんだ! まぁ私結婚どころか男すらいないけど!

 

 

『マスターはトニー様一筋ですもんね。』

 

「そりゃそうだ。まぁ他のヒーローに目移りしちゃうこともあるけど。」

 

 

今回はこの世界におけるすごく重要な戦いではあるけれど同時にすっごく大きなお祭りでもある。メインクエストだけじゃなくサブクエストも全部全部楽しまなきゃ! わっくわっくドキドキ! ……ん?

 

 

「イヴ、位置情報表示。高さもね?」

 

 

ディスプレイに表示される情報、目的地であるヘリキャリアの位置を確認すると……、うんやっぱり上昇してるし私から逃げようと飛行してるじゃん。ちょっとニック~! 私ちゃんと到着予定時間メールで送ったし何なら長官用のディスプレイにでかでかと到着時間表示するようにしてあげたのに無視して飛びやがったなアイツ!

 

 

『作戦行動としましてはバナー博士による四次元キューブ捜索、発見後にキャプテンアメリカ、ブラックウィドウによる攻撃が予定されています。アイアンマン及びドロッセルは遊撃に当てられていますが正確には何やらかすかわからないので放置のようですね。……まぁつまりヘリキャリアが今すぐ飛行する必要はないです。』

 

 

「あ~あ! 私怒っちゃった!」

 

 

すぐさまイヴの演算領域につないでハッキングと送り込むバグの用意開始。イタズラの内容はS.H.I.E.L.D.にハッキング対策部ができる前からたくさん考えてある。つまりそこまで時間はかからずに送り込めるってわけ。S.H.I.E.L.D.のセキュリティ? 強度はあるけどまだ穴はあるしヒドラ君が悪いことし始めようとした時に爆発する“置き土産2nd”はまだ誰にもバレてないからね!

 

とりま私の怒りを受け取るがいいニック! ファンシーの海に呑まれるのだ!

 

 

 






ひ、悲鳴が聞こえてくる……!
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