前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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なお推しが近くに居たり話しかけてくると尊みで爆発して作業が滞る模様。



迷惑はかけるけどちゃんと仕事はする

 

エージェント・ロマノフに連れられて、二人が足を運んだのはヘリキャリアのブリッジ。過去を生きたスティーブは勿論、今を生きそして様々なものを見たバナー博士でも見たことのないような近未来感。まるでSF世界の宇宙船みたいだとは誰がこぼした言葉だろうか。

 

そんなブリッジでは大空へ飛び立とうとするヘリキャリアの制御をするため職員たちが忙しそうに動き回っていた。

 

 

「動力、最大で稼働中。状態に問題なし、これよりS.H.I.E.L.D.の緊急プロトコル193.6を作動。……順調です長官。」

 

「よし、では消えるぞ。」

 

「逆反射パネル起動。」

 

 

S.H.I.E.L.D.副長官のマリアが指揮を執り、長官のニックに指示を仰ぐ。ニックやマリアのモニターにはドロッセルからの『この時間に到着するからちょっと待っててね?』のメッセージがでかでかと表示されているが彼らにとっては日常風景の一つ。マリアの「これ無視したらなんかヒドイことにならない?」という想いはよそにそのまま上昇を指示するニック。

 

ヘリキャリアの高度は上がり、逆反射パネルが起動。パネルの一枚一枚が空を表し、徐々にその違和感を消していく。……まぁ動力の熱源とか消えるわけじゃないんで見つけようと思ったら結構簡単に見つけられるんですけどね?

 

過程を見届けたニックは後ろへ振り返り、お客さんを出迎える。本当なら私もそこにいたはずなんだけどな~? 監視カメラ越しでしか見られないのは残念です。まぁあの場にいたら正気保てるか自信がないので逆に良かったかもしれんけど。

 

 

「ようこそ。」

 

 

……あ! キャップがニックにお金渡してる! たしか賭け事してたんだっけ? キャップが何見ても驚かないっていう賭け。いいよね無言でああいうやり取りするの。私も憧れちゃう! もし私が賭けるとしたら……、『トニーのファンサを受けても気絶しないこと?』

 

……無理だな。昨日スタークタワー建設祝いにメッセージとお花(あっちの業者に頼んだからたぶん数日後に届く)送ったお礼にトニーとペッパーの仲良しラブラブ顔寄せ写真が送られて来た。まぁ結果は普通に尊みで気絶、まぁ推しの、しかも公式推しカップルのオフショットなんかもらったら発狂か死ぬ以外の選択肢ないからね! 仕方ないね!

 

 

「博士、良くいらっしゃった。」

 

「ご丁寧なお誘いをありがとう。……で、僕はいつ帰れる?」

 

「キューブが我々の手に戻ったら、すぐにでも。」

 

「なるほどね……、で、現状は?」

 

 

おっと、お話が進んでますな。私としてはタイミング図ってる感じなのでいいタイミングが来てくれるとありがたいんですよね。キャップとバナー博士は初対面だし派手に行かないと。マスター・トニーの薫陶を受けた私に死角などなし!

 

 

「コールソン、説明を。」

 

「地球上のあらゆるカメラの映像をチェックしているところです。携帯電話、ラップトップ、衛星経由でつながるものならすべて見ることができます。」

 

「そんな探し方じゃ遅い。」

 

 

ジェネレーションギャップでお話についていけなくて、うろちょろしてるキャップをよそに話は進む。コールソンが答え、ナターシャが危惧する。そして博士が最善を持って来るってわけだ。……あ、ちなみにイヴ。全世界のカメラのデータ調査、これ手伝える?

 

『さすがに数が多いので絞らないといけませんね。それに現在日本国内でニンジャへの警戒を強めています、また石井様方では対処できない相手の襲撃に備えMark1を起動状態で待機させているためどこかで許容量をオーバーすることになるかと。まぁ近畿を取り戻す羽目になってもよろしいなら介入いたしますが。』

 

あ~ね。じゃあいいや。今残してるイヴの演算予備を使うまでもないし、S.H.I.E.L.D.だって私がいないと何もできない組織ってわけじゃぁない。まぁヒドラいるけど。

 

 

「範囲を狭めよう。使えるスぺクトロメータは?」

 

「いくつあればいい。」

 

「あらゆる研究室に連絡を取ってスぺクトロメータを屋上に設置させる、降線量スポットアルゴリズムは僕が作った。ある程度は場所を絞れるだろう。……どこで作業したらいい?」

 

「……エージェント・ロマノフ。博士をラボまでご案内しろ。」

 

 

 

ん~? あぁ、ここだな。イヴちゃん作戦開始!

 

『かしこまりました、“S.H.I.E.L.D.ファンシー大作戦”を開始します。』

 

 

 

 

ナターシャが立ち上がりバナー博士をラボまで連れて行こうとしたその瞬間、ブリッジすべての機器から警告音がけたたましく鳴り響く。

 

 

「何があった!」

 

「ハッキング攻撃を検知! すでに突破されています!」

 

 

それまで流れていた程よい緊張感が戦場のものへ変わる。……が、残念こっちはイタズラだ。

 

ニックが急いで駆け寄ったモニターにはでかでかとこの文字。

 

 

 

ど ろ っ せ る ち ゃ ん だ お !

 

 

 

表情を険しくするニック、天を仰ぐマリア、『あ、ハッキング対策部の人たち今日も眠れそうにないな』と達観するコールソン。ちょっと笑ってしまったナターシャ。そんな人たちの感情をよそにスピーカーから響きわたる私の声。

 

 

『はいは~い! ドロッセルちゃんだよ! ねぇねぇニック! そのおしごと私に頂戴? 数絞ってくれたならよわよわセキュリティしか作れないざ~こ♡よりは速くできるよ!』

 

「……つぐみ、今は戦争中だ。いつものようなおふざけにかまってる暇はない。」

 

『その割には結構余裕あるよねニック! まぁ返答もらわずに勝手にやるけど! メータ用意出来たら30分で調査してあげるから待っててね! 最後にイヴ! イタズラ開始の宣言をしろ!』

 

『イタズラ開始ィィィイイイイイ!!!!!』

 

 

瞬間、それまで青い光を灯していた近未来的なモニターがすべてピンク色に。文字もなんだか絵本に使われる文字のフォントに変わるしアイコンは可愛らしいお菓子の画像に。画面の端でユニコーンやら天使やらのメルヘンキャラが遊び回り、挙句の果てにはニックの証明写真が彼のモニターに映し出され虹やハートのペイントが張り付けられる始末。これはさすがに何名かの職員が耐え切れず噴き出した。

 

明らかにご機嫌斜めの長官、でもまぁちょっと面倒なおしごと引き受けてくれるみたいだし通常の作業進行は“とても目に優しくない”以外は何の問題もなし。+-で言ったら+の方が勝つから問題ないね!

 

 

「……ハッキング対策部はなんと?」

 

「あ、あの……、これまでと全く違ったアプローチからの攻撃らしく『とりあえず休暇ください、くれてもくれなくても三日以上かかります。』だそうです。」

 

 

 

 

「あ~、エージェント・ロマノフ? もしかして何かのドッキリか何か?」

 

「まぁ確かに彼女の存在がドッキリみたいなものかしら? 多分もう少ししたらここに来るだろうし博士も会うことになるわ。すこしネジが緩い……、いやそもそもネジ穴がない子だけど優秀で面白い子よ。」

 

「……わぉ、そりゃ楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、先ほどはふがいないところを。」

 

 

そうキャプテンに謝るのはコールソン。ブリッジはあの後勝手に戦闘機用の格納庫に穴をあけてお邪魔してきたツグミ本人によって元に戻され業務も順調に進んでいる。

 

なおさすがに穴をあけたのはガチで怒られていたので彼女はせっせと修理中である。本人によると自身はトニーに比べ何段も劣るらしいが手際よく、そして何もないようにヘリキャリアの修理を進めてすでに元通り、いや新品以上に整えてしまう辺り、彼と同じ天才のように思えてしまう。

 

しかも今回のハッキング騒動終了後もいつも通りきっちりと問題点と改善点をまとめ、専門外の私が見ても理解しやすいように書かれたレポート挙げてくるあたり怒るに怒れないというか怒っても肩透かしにあってしまうというか……

 

 

 

「あぁ、まぁ、なんだ? 厄介な味方という奴なのか彼女は。」

 

「いえ、とても優秀な人物です。まぁそれ以上に手がかかりますが。」

 

「なるほど、まぁ僕の時にもそんな奴はいたな。そしてそんな奴ほど憎めない。」

 

 

彼女の持ち込む厄介ごとはどこか子供らしいものが多い、年齢はすでに成人済みらしいがその落ち着きのない態度と日本人としても低めな身長、甲高い少女のような声を見聞きすればまだ守られるべき少女のように思える。

 

S.H.I.E.L.D.への貢献度が非常に高いからこそ成立するマスコットガール、ある意味私の隣にいる彼と同じ、一種の“象徴”なのかもしれない。

 

 

「話は変わりますが……。もし、面倒でなければ。」

 

「いや、構わないよ。」

 

「……ヴィンテージものでね。集めるのに何年もかかった。」

 

 

 

「新品同様、やや黄ばみはあるものの……」

 

 

「ヒットしました!」

 

 

コールソンがサインのおねだりをしようとしていた時、それを遮る声。どうやらロキと名乗った男が発見できたようである。優秀なエージェントであるコールソンは私事を切り上げ仕事のモードへ

 

 

「場所は?」

 

「ドイツのシュトゥットガルト、ケーニッヒ通り28です。堂々と現れた様子。」

 

 

敵がそこに、ならばやることは一つ。

 

 

「キャプテン、出番だ。」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「跪け。」

 

 

「誰がお前のような奴に。」

 

 

 

ドイツのシュトゥットガルト。ケーニッヒ通り28の近くで行われていたパーティ会場から逃げ出した人々は神のごとき力を扱う男に膝を折ることを強要されていた。幻術を操りどこに逃げようともロキがいる。彼らを守る警官は先ほど杖から放たれた閃光でパトカーごと吹き飛ばされてしまった。

 

 

「私のような奴に?」

 

「いつの世にもいる下種野郎だ。」

 

 

老人がただ一人、立ち上がり反抗する。皆自分の身可愛さに彼を助けようと動く者はいない。

 

 

「お前たち、見るがいい。」

 

 

多くの視線が動き、神が持つ彼の杖へ。その光は徐々に強くなり歯向かう老人に向かって放たれてしまう。

 

 

「見せしめだ。」

 

 

 

 

着地音、そしてヴィブラニウム特有の金属音。放たれた光弾は星条旗の盾によって弾かれロキの胸部に命中し吹き飛ばされる。

 

 

「確かこの前ドイツに来た時も地球を支配しようとしている奴がいたな。奴とは反りが合わなかった。」

 

 

星条旗のデザインが施されたスーツに星条旗の盾、先の時代の大戦でこの地を訪れた彼がまたこの地を訪れるその理由が戦争だとは何の因果か。

 

 

「来たな兵士……。ハハ、時代遅れな奴め。」

 

「時代遅れはどっちだ。」

 

 

そこに、ナターシャたちが乗るクインジェットが高度を下げ、武装を開放する。対象は勿論厄介ごとを持ち込んだ彼だ。

 

 

『ロキ、武器を捨てて降伏しなさい。』

 

 

ここで彼が降伏してくれれば万事解決なのだがやはりそう簡単にはいかない、何か企むような笑みを浮かべながら彼は杖を掲げ、光弾を放って来る。戦闘開始だ。

 

 

「はいはいイヴちゃん受け流すよ、試作エネルギーシールド起動。」

 

『かしこまりました。』

 

 

今回の任務はクインジェットの護衛と一般市民の避難誘導。その間にキャップが足止めしといて市民が避難し終わったら私も戦闘に参入して無力化ってわけ。ナターシャはサポート兼指揮官ね?

 

ちなみに今回持ってきたスーツにはツインテールが二本しかありません。まぁいつも通りってわけですな。Mark1からちょっと見た目というかデザインが流線的なものに変わったぐらい。

 

マリアに誘われたときに言ってた残りのツインテールはどこに行ったのかだって? ヘリキャリアに置いてきたよ? 今は邪魔だしアレ決戦用。Mark2の特徴としては最高で9本あるツインテール、いやこの多さだったらもうナインテール? それを自由に付け替えできるってこと。もちろんテール以外のアタッチメントも付けれるからオシャレに幅が出たってわけ。

 

 

 

さて! 意識を戦闘に戻しまして今日のために用意してきたシールドを右テールから取り出しロキからの光弾を受け止めて、後ろに受け流す。ナターシャの操縦技術だったら避けれたかもしれないけど飛行機なかったら帰れないしね。護衛大事。

 

 

『状況報告。接触面82%溶解、崩壊率48%、次は耐えられません。』

 

「あちゃ~、そっか。想定あまあまだったのね。……うん、切り替えて避難誘導しよ。ハァイ皆さん押さないで~! この白いロボット・ドロちゃんの指示に従ってね~!」

 

 

防御用に、ってことで持ってきたシールドだけどこの強度じゃ直してもニューヨークで使えそうにないかも。ナノテクの代わりにリアクターの驚異的発電力で無理やりエネルギーの膜を作って防御する機構だったけどダメか……、試作品だったし机上の空論の作品だったけど来るものがありますね。

 

実用化するまで一年近くかかった発明品が役に立たなかったので若干しょんぼりしてもお仕事はなくなりません。二次被害を起こさないためにも無理やり明るく振舞って切り替え切り替え! そんな私はさておきキャップとロキの戦いは過熱する。

 

 

 

市民に被害が出ないよう接近戦を挑むキャップ。盾の投擲を駆使し何とかダメージを与えようとするが無手と長物、超人兵士であることで生じる身体的アドバンテージもアスガルドの民が相手であれば消えてなくなる。不利なのはキャップの方だ。

 

手痛い一撃を食らい吹き飛ばされる彼、隙を作るために投擲した盾も弾かれてしまい、追い詰められてしまう。

 

 

「ひれ伏せ、兵士よ。」

 

「断る!」

 

 

とどめを刺すためか、それとも寝返りを期待したのか倒れ込んだキャップの後頭部に杖の石突を乗せるロキ。しかしそれは悪手、立ち上がると同時にその石付きを握りしめ相手を固定。強烈な回し蹴りをくらわす。

 

 

「……ツグミ、そろそろいけるかしら?」

 

『あ、は~い! そろそろ避難終わるし突撃いたしまっす!』

 

 

クインジェットからナターシャは状況を見定める、ロキとスティーブが戦っている間はクインジェットの武装は使えない、となると小回りの利く遊撃であるツグミが最適。本部から送られてきた監視カメラの映像が間違いでなければ相手は洗脳だけでなく幻術も扱える。注意してことに当たらないといけない。

 

そう思いツグミと連携して援護に回ろうとした瞬間、通信機器からここにはいないはずの彼の声が聞こえてくる。

 

 

『エージェントロマノフ、会いたかった。もちろんツグミもだ。』

 

『ひゃぁ! トニーだ! にゃまトニー! 尊い!』

 

 

指示を出せばある程度まともに動いてくれる遊撃が無力化され、今度は指示を聞かない遊撃がやってきた。しかも戦闘には似合わない音楽を付けスピーカーで流しだす。ナターシャが思わずため息をついてしまったとしても仕方のないことだろう。

 

 

通り一面に響き渡るミュージック、夜空に光る一つの流星。あと端の方でキャーキャーうるさい置物と化した白い何か。

 

 

地面に向かって急降下するとともにロキに向かってリパルサーを放射、そしてスーパーヒーロー着地。そしてゆっくりと立ち上がり、腕のロケットや徹甲弾、肩に仕込まれた追尾ミサイルに手甲のレーザー。すべての武装をロキへ向ける。

 

 

『さてどうするトナカイくん。』

 

 

まさに完璧な登場、完璧な制圧。私たちが全部前座だったかのような素晴らしさ。通りに存在する監視カメラは私によって全部トニーが映るようになってるしもちろん私のスーツも全力で録画している。これは永久保存版だな、間違いない。あとイヴ? 私まだ気絶してないからショック用の電撃用意するのやめて? 光栄なことに何度かお話ししたりお家にお邪魔させていただいたことあるし、最近何とか耐えれるようになってきたからね? ね?

 

 

『おりこうだ。』

 

 

着ていた鎧かなにかを魔法で解除し両手を上げるロキ。キャップにアイアンマン、あと後ろにアイアンマンモドキがいるからね! 降伏するのも無理はない話! というか今思ったけどトニーのリパルサー受けられるとかちょっと光栄過ぎない? めっちゃ羨ましんだけど。私も食らってみたいんだけど!!

 

 

「やぁスターク。」

 

『やぁキャプテン。』

 

 

 

 

 

『トニー! 私にもリパルサー撃ってぇぇぇえええ!!!』

 

「……いつもあんな感じなのか?」

 

『いや、いつもはもう少しまともと言うか控えめなんだが……。ちょっとカッコよく決め過ぎたみたいだな。ジャーヴィス?』

 

『すでにイヴから謝罪のメッセージと電流によるショック療法が行われているようです。』

 

『ならよし、じゃあお荷物二つを大事に持って帰るとしよう。』

 

 

 

 

 

 









〇出撃前に


「サインください! アッ、生キャップ! にゃま! にゃま!!!」


サインくださいの後から日本語が混じりだしたため何を言っているかわからないが、急に色紙とペンを差し出された。



新しく用意されたスーツを身にまといクインジェットと呼ばれる輸送機へ移動する僕、待っていたのは黒い全身を覆うスーツを着たエージェント・ロマノフと輸送機のパイロット。

そして僕の背丈よりも高い白い女性のようなロボットを機体に載せようとしている少女、今私にサインを求めているツグミ・オオゾラだ。正直目が怪しい薬をやっているのか疑うぐらいに大変なことになっているし、顔も年頃の少女がしてはいけないものだ。……これは年長者として注意した方がいいのか? そもそも彼女は戦える人間として数え、連れて行ってもいいのか?


「あ、スティーブ。出発までまだ時間かかるし書いてあげて、移動中ずっと色紙見つめて静かにしてると思うから。……できるわよねツグミ?」

「むり!!!」


「あ~、書くのは別にいいけど……。」


「ちなみにその子、成人済みのレディよ。身長は低いし精神も幼いけどね。」

「にゃ! にゃたーしゃ! それはいわにゃいおやくそく!」

「はいはい解ったからそのぐしゃぐしゃな顔早く元に戻しなさいな。脳みそに血は巡ってる? 呂律回ってないし薬でもキメた顔してるわよ。ほら。」


操縦席の基盤辺りをいじっていた彼女が後ろの僕たちの方までやってくる。ナターシャはツグミの口を拭き、両手で気合を入れるようにパチンとひと叩き。傍から見れば髪の色や顔は似ていないけれど年の離れた姉妹のよう。おそらくそのルーティンじみた動きでツグミが元に戻るのだな、と思っていたが……。

叩いた瞬間に小動物の断末魔のような奇声と共にツグミの意識が飛んだ。それにすかさずナターシャが彼女の首根っこを掴み手首を首へ。瞬間青い閃光、電気のほとばしる音。


「ひィみギャ!!」

「……もっかいやる?」

「わたしは しょうきに もどった! 大丈夫です!」


……んん???


「さっきはすみませんキャップ、ちょっと持病みたいなもので……。改めてサインしていただいてもいいでしょうか? あ、出来れば同志コールソンの分も。」


一応目に理性が戻った彼女からもう一度色紙を受け取る。いや受け取ってしまう。なんというか僕が眠ってる間に世界はものすごく変わっていたようだ。一緒に乗ってるパイロット全く動じてなかったしこれが普通ってことだろ? 現代解らん。



なお、ドイツまでの道のり、ツグミはサインを見ながらずっとニコニコして大人しかったそうな。言いつけ守れて偉いねツグミちゃん!

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