ちなみにですがドロッセルつぐみお嬢様は非常に頑張って顔を取り繕っています。推しに迷惑かけるわけにはいかないし、立場的にS.H.I.E.L.D.の外部協力職員だし会社の社長だしヤクザの親分だしアベンジャーズの七人目予定者ですので全能力を導入してできるだけ普通であれるように頑張ってます。
でもボディタッチとかカッコイイシーンとか見せられるとすぐに決壊して限界オタクになります。仕方ないね☆
「それで? いつの間にスーツを新しくしたんだツグミ?」
「あ、やっぱ解っちゃう?」
イヴによって精神を強制再起動された私は憧れの人トニーと楽しくお話し中、あの最初の邂逅から何度かお会いしてるけどやっぱりこの至福の時間は何物にも代えがたい。自分以上の科学者であり開発者で探究者でもあるトニー、私が投げた話題に必ずホームランを返してくれる安心感。
イヴからジャーヴィスを通してMark2の設計図を送る、採点の時間だ。
「パッと見だがリアクターも全部新型に変えたんだろ? 数が多いから単純なエネルギー量なら僕のスーツより高い。だが、まだ洗練されてない場所が多々ある。スーツ内部での空間の使い方が美しくない上、君ならもう少し小型化できたであろう部分もある。たくさんあるエネルギーも宝の持ち腐れになってるし……、ま、ギリギリ B- ってとこだな。」
「あはは……、今度は A もらえるように頑張るね。」
リアクター。トニーが『アイアンマン2』で作り上げた新元素“バッドアシウム”で動くリアクター、トニーを苦しめた廃液は出ないし発電量も驚異的にアップ。まさに夢を超えた一品に仕上がってる。私が初めてトニーと会った時にもらった設計図は古い方だったんだけど、その後なんやかんやあって私の技術力と精神性? を認めてもらったみたいで無事新型の設計図を教えてもらった。
正確には“バッドアシウム”作成のヒントを投げられて「君なら作れるだろ?」だったけど。くっっっっっそ!! 嬉しかった。
「おっと、落ち込むなよドロッセルくん。僕のテストは非常に難関と有名だし合格者は今のところ君しかいない。まぁ受講者も君しかいないが。とにかく今度新しく出来たスターク・タワーにでも来ると良い、僕の新作を見せてやろう。」
「ほんと!? やった~!!!」
新しくできた(まぁこの後プライベートエリア破壊されるんだけど)ニューヨークのスタークタワー、その特別入場権利を頂いた私は大はしゃぎ。破壊されるのを知ってる身からすればちょっと申し訳ない気持ちはあるけどお呼ばれは素直に嬉しいのだ。あ、ちなみに私はスーツから降りて生身だしトニーとキャップもヘルメット外したラフスタイルだお!
『それで、何か聞き出せたのか?』
「いえ、何も。」
『できるだけ早く連れてこい。』
おっと、通信が入ったせいで楽しい雰囲気がすぐに真面目になっちゃった。みんな切り替え速いのね。とっても深刻そうな顔をするスティーブに同じく切り替えが終了したトニー。あと切り替えが出来なくて笑みが抑えられない私。あ、雰囲気的に邪魔ですか? ならスーツ着てお顔隠して端の方に避けときますね~?
「……腑に落ちない。」
「コスプレ野郎が簡単に降参したのがか?」
「あまりにもあっけなかったからだ。……何かあるんじゃないか?」
まぁ確かに何かあるのかないのかって言ったらあるよね。たしかロキがここで“わざと”捕まったのは陽動が目的だったわけだし。……かといってここで正解を教えちゃった場合この世界がどんな道をたどるのかがわからないし、数十年前からこの私たちの星は安全なんかじゃないってことをアベンジャーズは勿論すべての人に知ってもらう必要がある。
ファイアボールとしての活動をしてて理解させられたことだけど、いくら周りより戦う力があったとしても人間は一人じゃ戦えないし全部を守ることはできない。私一人だけだったら今ごろニンジャに切り殺されてお魚を数える仕事をしてたと思う。
S.H.I.E.L.D.とかの戦える仲間だけじゃなく、一般の人たちの理解も一定数必要。ただ隠れて守るだけの時代は終わった。そのことを理解してもらうためにも、そもそも外敵に対抗するアベンジャーズを作り上げるためにも、私はニューヨーク決戦まで口を出さない。それが最善で唯一の正解。
と、いうわけでお気楽イタズラガールことドロッセルお嬢様は傍観するのだ。トニーやスティーブに『なんか思い当たることある?』って目で聞かれても“私バカだからわかんない”のジェスチャーしかしないのだ! ゆるちて!
「ま、アンタが年の割に動けたのも……、あるんじゃないか? もしかしてピラティスでもやってんの?」
「……なに?」
「運動の一種さ、ものを知らないねぇ……。長年、キャプテンアイスだったからな。」
……大変申し訳ございません。我が神トニー。……実は私もピラティス良く知らないです……。いまイヴちゃんが調べてくれたのをディスプレイに表示されるまで知らなかったです……。ご゛め゛ん゛な゛さ゛い゛!!! ちなみにピラティスってのは西洋版ヨガみたいなエクササイズだって! 詳しくはwikiで頼む!
黙って置物と化す私を放っておいて馬鹿にされたから語気を強くするスティーブ。
「君が来るとは聞いてなかった。」
「あぁ、フューリーは色々隠すからな。ま、最近は彼女のおかげで色々漏れ出てるが。」
話を振られたので生産者表示みたいに『私が犯人です!』のポーズをする私。ついでにダブルクオーテーションマークで協調もしておこう。ほら両手の人差し指と中指でクイクイするやつ。
ちなみにだけど私がトニーとかナターシャとかバートンとかマリアに漏らしてる情報ってニックがブチギレない漏らしても大丈夫なやつ、つまり『知るのがちょっと早いけどいつか情報開示する予定だった』ものしか漏らしてナイデス。ま、そういう漏らしたらダメなやつ外部放出しちゃうと消されちゃうんで……。
と、こんな風にお話をしてたらまあ来ますよね。えっと、新しい色紙はどこにしまったけ? 雷神様に書いてもらわないと……
「何なの急に……。」
先ほどまで曇り空だったが、雨などの予兆はなかった。しかし急に発生する雷音。クインジェットのすぐそばに雷が通り過ぎた。それに反応したのか先ほどまで全く動きを見せなかったロキが何かを探るような行動を見せる。
「どうした、雷が怖いのか?」
「この後にくる奴が嫌いでね。」
スティーブの問いに嫌味というかほんとにお兄ちゃん好きじゃないんだろうなぁという感情をこめて返答するロキ。まぁ“ガチキライ、顔も見たくない”ってわけではないんだけど“とってもライク”ではないでしょうな。
と、そんなことを考えてたらゴンッ、と強めの衝撃。さっきまで揺れずに飛んでいたはずのクインジェットが初めて揺れる。
一応戦闘準備しとかないとなので私が座っていた近くにある盾をキャップにお渡しして、トニーはマスクをかぶる。この後原作では所謂“3トップ”による戦闘があるんだけど……、どうしよっか。出来たら私は撮影班に回りたいんですけど……だめ?
トニーが迎え撃つために後部ハッチを開けるがそれと同時に金髪の雷神様、ソーがエントリー。トニーがリパルサーで吹き飛ばそうとするも名前忘れた例のすごいハンマーで吹き飛ばされる。私が何もしなかったのもあるけど瞬く間にロキちゃんが連れ去られていっちゃった。かなしいね……。
「また一人増えたか……。」
「またアスガルドから!?」
立ち上がりながらつぶやくトニーにハッチが開けられたせいで風が吹き荒れる畿内で声を上げるナターシャ。
「アレは味方か!」
「関係ない、奴がロキを逃がすか殺すかすればキューブは失われる。」
「それなら計画を練らないと!」
「計画ならある、戦う。いくぞツグミ。」
「Yes,my Lord!!!」
振り向きざまにそう言われたら従うしかないよね! だって推しの命令は絶対だもの!
そうして、トニーが飛び立った後に続けて私はお空にダイブしたのであった。
……あ。キャップの
「神は一人だ、あんな衣装着た奴は神じゃない。」って台詞聞きそびれた……。どうしよ、何というか無茶苦茶惜しいことした気がする。……これ全部終わったら落ち着いたところでもう一回言ってもらお。どっか録音できるスタジオ貸切って。
◇◆◇◆◇
両肩を掴み、何とか説得を試みようとする兄。一方通行ながらもただ家族のためを思う心がそこにあった。
「国へ帰って来い、ロキ。」
「キューブは持ってない。」
しかしながら説得に至るには時間が経ち過ぎていた。彼の心が離れるもっと前、その出生やアスガルドにおける秘密。この世界の理を知る前であればまだ引き返せたかもしれない。だがすべてもう遅い。兄をバカにするような笑みを浮かべながらソーが聴きたいこと、“事実”だけを伝える。
「残念だな、アレは預けてある。私もどこにあるかは知らない。」
利き手を水平に伸ばし彼の神器であるハンマー、ムジョルニアをその手に呼び戻すソー。手荒な真似になってしまうが間違った道を進もうとしている家族を時には殴ってでも止めるというのはある意味間違っていない選択なのかもしれない。まぁ、アスガルドの文化はよくわからないので我々の社会では通用しないかもしれないが。
「良く聴け弟よ、俺はッ!」
ほらね? 通用しなかった。
まぁ正確には横やりが入っただけだけど。
「ん? 聞いてるぞ?」
ロキの馬鹿にしたような返答だけがその場に響いたのだった。
「トニー! どうする? 私も手伝った方が良さげ?」
『いや、大丈夫だ。そっちはロキを見張っておいてくれ、他に仲間がいるかもしれないからな。あ、何だって? 「二度と俺に触れるな?」じゃあ「二度と獲物を横取りするな。」だ。』
あ? マジ? 私鑑賞に回っていい感じ? じゃあイヴちゃんカメラ全力で回して頂戴! 撮影タイムですわよ! おっとその前におしごとしないと。
「はい、じゃあ神様ちょっとだけ拘束させていただきますねぇ~? 蜘蛛糸はお好き? まぁ嫌いでもやめないけど。」
私と言えば蜘蛛糸、というわけではないけど便利過ぎてついつい使ってしまうスパイダーウェブ。数時間で消えちゃうってデメリットがあるからニューヨーク決戦では使えないけど(あれどれだけ長丁場かわからんからね、しかも拘束より破壊した方が安全だし。)こういうちょっとしたときにはとっても便利。
「貴様たちの下らんおもちゃか。それで? 小国の王となった気分はどうだ世界の異物よ。」
「……でもそのおもちゃに拘束されてるのは神様でしょ? もしかしてロキちゃんってマゾ? もしそうだったとしたら近づかないでほしいんだけど……。」
「そうやって自分の心を隠すためにすぐに道化に成り下がる、いかにも弱小な人間らしい思考だ。」
「……。」
「さぞかし気持ちよいものだろうよ。徒労と解ってながらも自身が得た成果、屍の山の上に立つ玉座。まさに愚かな民に相応しい愚かな指導者といったところだろう。」
「でもロキちゃんはその“愚かな民”の王様になりたいんでしょ? ブーメラン?」
「だからこそ導いてやるのだよ、この星も! アスガルドも! だがまぁ貴様を見る限り無駄骨だったかもしれんな! あまりにも弱い! 肉体も! 精神も! 私が治めるのにふさわしくない!」
「人間はそこまで弱くない。 鉄の男だっているしスーパーお爺ちゃんに緑のマッチョメン、最強の弓使いパパに日本でモデルさんしてた美人エージェント。君のお兄ちゃんだって助けてくれるし、より取り見取り。私は弱くてもみんながいるもんね。」
「ははは! 自身の弱さを仮面と軽口で隠し最後には他人任せ、実に人間らしいな。それほどまでに他愛ない雑魚であったのならチタウリなど必要がなかったかもしれんな!」
「弱小? よわよわ? ざ~こざ~こ? ……メスガキロキ。ふむ!」
「いやそこまでは言ってないが?」
脳内に思い浮かべるのは女体化してロリ化したロキ。……アリだな。このアイデアを日本の防人であるツワモノたちに流せばさぞ夏の祭りは楽しいものになるだろう。
「ロキって神様だから人間の法には触れないよね? つまりプライバシーとか名誉とか肖像権とかそういうのが人間の法に縛られない、もとい保護下じゃない。」
「……おい、貴様。何を考えている!?」
「いやぁ、ね? ちょっとした異文化交流って大事だよねって話。」
何というかこれ以上喋らせたらダメな気がするので口に向かって蜘蛛糸を発射させる私。ほら、ロキちゃんってイタズラの神様だからお口達者だし変なこと吹き込まれるかもしれないからね? 一人だとちょっと不安なのもあるし黙らせちゃうわけです。
今は下で戦ってる二人、あと途中からもう一人の戦いをゆっくりファンとして鑑賞したい。そも私は憧れだった人たちと戦うなんて嫌だし“見”に徹する。メスガキと化したロキちゃんが日本における最大級の祭りに置いて壁一面にグヘヘなイラストが掲載されるのを夢見ながら鑑賞すると致しましょう。
“世界の異物”、……か。
『マイクオフ。バイタルイエロー、大丈夫ですかマスター?』
「……うん、まだ平気。余計なことは考えちゃだめだね。」