「一応忠告はしておくが……、逃げられはしないぞ。」
巨大空中空母、ヘリキャリア内に作られた少し特殊な部屋。巨大な水槽のような一室、その物々しさから誰が見ても牢屋の一種と判別できるその部屋にアスガルドの王の子にして世界の危険を私たちに教えてくれる男、ロキが捕らえられていた。
S.H.I.E.L.D.の長官であるニックがわざわざ一人でこの牢屋の前までやってくるあたりよほど頑丈にこの牢屋は作られているのだろう。材質の耐久力試験に関わり、自身の持つ力では破壊できないことを確認しているツグミは『でもあれソーがハンマーで頑張ったら壊されるんだよね。……神様こわ。』なんてことを思っていた。
「そのガラスをひっかきでもしたら……、その穴から真っ逆さまだ。ここは高度一万メートル、どうなるかわかるよな。」
牢屋の前の機器を操作する長官、すると部屋の床の下のハッチが開かれ遠く離れた地面が覗けるようになる。しかしそれを見ながら動じていない辺りもし落とされたのしても何かしらの脱出方法があるのだろう。もしくはこの後の展開を理解しているからか。
「“アリ”と“ゾウ”だ。」
牢屋と手元の操作盤を順に差し、ロキが今置かれている状況をわかりやすく教えてあげるニック。しかしながら小学生でもわかるたとえが解らなかったのか笑い出すロキ。……まぁそんなわけないんだけど。
「ハハハハハ! ……だがこの牢屋は、私用ではないのだろう?」
「お前よりももっと強いもののために作った。」
「あぁ、あれか。」
そう言いながら憎たらしい笑みと共に監視カメラの方を見つめるロキ。まぁ見られてるの解ってるからそうしたんだろうけど正直さっきの事も含めてマジでぶん殴ってやりたい。……理由話したらみんなゴーサイン出してくれそうなんだけどそれするとマジで私が異分子なこと説明する羽目になるし、ニックから今まで稼いだ信頼度とかそういうのが消える可能性だってある。だからガマン。
『あの獣か、人間のふりをしている。貴様はどれほど必死なのか、あれほど得体のしれない化け物どもを集めて何を守る? 幼子の作った砂の城さえ無理だろうに。』
『どれだけ必死かって? ……お前は戦争を仕掛け、制御不能なエネルギーを奪い、安らぎと言いながら面白半分に人を殺す。我々としても必死にならざるを得ない。それがお前にとって砂の城でもな。……自分のしたことを後悔させてやる。』
長官の少し怒りの感情が混じった言葉に返すロキの言葉は逆、その感情を逆なでするような声と顔で会話を続ける。
『おぉ……、あとちょっとだったのに惜しかったな。』
『もう少しで四次元キューブの力が君の手の中に、無限のパワーだ。……だが何に使う? 全人類を照らし温めるためか? パワーは王が持ってこそ価値があるものだ。』
『……フッ。ではその王とやらが雑誌でも読みたくなったら言ってくれ。』
それを最後にその場から立ち去る長官、それを全く気にせずにまた監視カメラの方に視線を向けるロキ。そこで映像は途切れてしまった。
「ロキは面白い奴だね。」
「彼は時間稼ぎをしている、つまり……」
感じたストレスを経験をもとにうまく受け流すブルースが軽口を叩き、スティーブが自身の考えを話す。視線は自然とロキの関係者であるソーだ。
「ソー、君はどう思う?」
「ロキは軍隊を待っている、チタウリという異世界の軍隊だ。そいつらを率いて戦争を仕掛け地球を手に入れる。見返りにキューブをくれてやるんだろう。」
「異世界から……、軍隊を呼ぶのか。」
「ウチの国のコミックみたいだね、ライダーか戦隊でも呼ぶ?」
ちょっと雰囲気が深刻化してきたので私もここでお口を挟む。……たぶんスティーブには絶対伝わってないと思うけどね? でもほんとに戦隊シリーズやライダーシリーズの人いたらマジでここ呼んできてほしい。あと日本ちゃんと守って? ニンジャ多すぎるんですけど!
「なるほど、だから通路が必要なのか。そのためにセルウィグ博士を……」
「セルウィグ?」
「あぁ、宇宙物理学者の。」
「……友人だ。」
「ロキの魔法で操られてるのよ。……S.H.I.E.L.D.の仲間も。」
セルウィグ博士、確かS.H.I.E.L.D.に協力して四次元キューブの研究とか色々してた人だよね? 宇宙物理学ってことはウチのパピィと話合いそうだな。……これ終わったらちょっとお話聞きに行っても面白いかも。
「だが、何故ロキはみすみす。囚われの身になったんだ?」
「彼に惑わされない方がいい。彼の頭の中はしっちゃかめっちゃか、かなりクレイジーだ。」
「言葉に気を付けろ、あれでもロキはアスガルドのものだぞ。我が弟だ。」
「……二日間で80人も殺されたのよ。」
「あと私もチビって言われた……、気にしてるのに……。」
ここぞとばかりにロキに意地悪された過去を捏造していくぅ! ナターシャに教えてもらったウソ泣きの技術がここで役立つとは思いませんでした。隣にいる師匠のナターシャにはバレてるけど全力で『わたしすっごく傷つきました!』って顔して下向きながらお目目うるうるさせる。
「……それは何か複雑な事情が……。」
「あ~、テクノロジーの面から考えよう。イリジウムだ、何故イリジウムを狙ったのか。」
背後から感じる最推しの雰囲気、足音。あ、トニーじゃん。
「安定剤になる。……週末ポートランドへのジェットを出してくれ「解った」必ずだぞ?「あぁわかった」…… つまり通路を安定させるのに必要なんだ。あとツグミはカルシウムだ、牛乳でも飲んでおけ?」
「は~い!」
トニーに言われたので私の毎日の不可逆タスクに牛乳を飲むことが追加された。だって推しに言われたんだぜ? 死んでも牛乳飲むわ。私今22だから望み薄だけど。……え? 私22? え? 年行きすぎじゃない? いつの間に成人した???
私が年齢のギャップというか現実を受け止められずに混乱しても残酷だが時間は進む。
「怒るなサーファーくん、いいパンチだった。」
さっき私が傍観していた戦闘の礼にそんなお言葉と共にかれの腕を軽くたたくトニー。……ソーは私と違ってトニー崇拝者じゃないみたいなので気絶もしないし喜びもしない。代わって?
「さらに通路の幅も広げ、持続時間も好きなだけ伸ばせる。……あ~右のマスト上げて、トップマスト。」
ちょっとだけ凍る空気、職員さんたちに『何言ってんのお前?』みたいな顔で見られる我が神。ごめんなさいトニー、ヘリキャリアの機器トニーのお家みたいにハイテクじゃないの。
「そこギャラガやってるだろ。バレないと思った? お生憎様、……ツグミ? フューリーはどうやってこっち見る?」
「我が神まことにお手数ですが体の向きを変えてくださいませ。あとギャラガくんは来月の査定楽しみにしておくように。」
「体力使うな、あと神様呼ばわりはやめろと言ったはずだぞ?」
怒られて(´・ω・`)する私、私のせいで来月の給料減少が確定したギャラガくんも(´・ω・`)、体を動かすトニーも面倒で(´・ω・`)。ここに(´・ω・`)三銃士が結成されたわけだ。
「他の材料はバートンが簡単に手に入れられるものばかり。あと必要なものとすれば動力源だな、高密度エネルギーの奴。」
流れるようにハッキング用の機器を取り付けるトニー。……あれ? 私に言ってくれればすぐに持ってこれるのに原作と同じように自分でハッキングするみたい。これは私がどっちかというとS.H.I.E.L.D.側ってことだからかな? 言われればトニーの方に付くのに……。
「で、キューブを。活性化させる。」
「……いつから熱核反応物理学のプロになったの?」
「夕べから、資料を見てセルウィグのメモ。抽出物理学の論文、おいおい読まされたのは僕だけか?」
「で、ロキが狙いそうな動力源は?」
元気よく手を挙げた私、でもキャップの声に遮られてなんだか場違いな反応しちゃった。すすすとお手手降ろして私の一部始終全部見て可哀そうなものを見る目をしている隣のナターシャの胸に飛び込む。ア! イイニオイ! ピャゲポ!
「クーロン障壁を破るにはキューブを一億二千万ケルビンまで加熱しないと。」
「セルウィグが量子トンネル効果を安定させられるなら別だが。」
「それが可能なら重イオン核融合を簡単に起こすことができる。」
「いたよ、言葉の通じる奴が。……もう一人の方はおねんねしてるな。うん、寝る子はよく育つ。」
トニーがバナー博士に近寄り握手、この地球における二大科学者の握手だ。どんな学会でも見ることができない歴史的瞬間だね! え? ナターシャどうしたの? さっきの話解るかだって? うん、一応核融合関連は個人の趣味で色々やってたし昔リアクターに代わるエネルギーを作ろうとしてた時にやってたからある程度は理解できるよ?
……え、どうしたのナターシャ、『そういえばこの子も天才の側だったわ。』みたいな顔して。あとキャップも『えぇ!? 君ほんとにこの話解ってるの? うそぉ!』みたいな顔しないでください! 耳元で基礎から教えちゃうぞ! あ、でも対ナターシャみたいに私の耐性できてからね?
「初めましてバナー博士、あなたの反電子衝突の研究は実に素晴らしい。だぁいファンですよ、羽目を外して巨大化する辺りもね。」
「わたしもファンでしゅ!」
「……ありがと。」
トニーのちょっととげのある言い方に少し腹が立ったのか、それともナターシャのお膝元で限界化してる私の崩壊具合に引いたのかは解らないけどちょっと含みのある感謝を返す博士。そこにみんな大好き眼帯肌黒ハゲ~季節のおひげを添えて~、ことニックがやってくる。
「バナー博士はキューブを追跡するためにお呼びしたんだ、君も協力してくれ。」
「ロキの杖を調べたらどうだ、魔法の色がヒドラの武器とよく似てるから何か関係があるのかも。」
「そこまでは解らんがアレはキューブから動力を得ている。……なぜ私たちの優秀な仲間がロキに従順な空飛ぶサルになったのかも別だ。」
「……サル? 何のことだ?」
キャップの疑問にすぐに答えてあげるニック、ついでにちょっとしたジョークも付け足してくれる。ニックのこういうお茶目なところ私は好きよ?
「解った! オズの魔法使いだろう?」
そしてたとえの答えが分かったからすごくうれしそうな声で答えを言うキャップも好きよ? 後ろの見えないところでトニーが白目剥いてるしバナー博士が優しそうな顔してても。
「地球にある有名な物語からの引用ですよ雷神さん、キャップが言った『オズの魔法使い』ってお話なんです。」
「なるほど、機会があれば読んでみるとしよう。それと“ソー”でいい。」
「じゃあ私もツグミでいいです。色々と限界化すると思いますけど気にしないでくださいね? あ、あと時間あるときにサインください。……バナー博士のはドイツ行く前にもらったのであとソーのでコンプ♪ あ、ハルクのサインまだもらってなかったや、不覚!」
お話についていけてない神様に文化交流を完了させる。アベンジャーズで話してなかったのはあとソーだけだったし、さっき戦ってるの見てたから今回は限界化せずに済んだ。もしくはさっきナターシャのお胸で一回限界化してからの復帰直後だったから耐えられたのかもしれない。……失礼かな? ちょっと待ってね今から限界化するから。
「あ~、読書感想会の開催はまた今度にして僕たちはそろそろ行こうか。ツグミも来るだろ?」
「あ、は~い! 行きます!」
「解った、案内しよう。」
◇◆◇◆◇
「数値はセルウィグが調べた数値と一致している、だが演算に何週間かかるか……。」
「メインフレームをすっ飛ばしてクラスタに直結させればスピードアップできるだろう。ツグミ、そっち主導で頼む。600テラでロックだ。」
「あいあいさー!」
ヘリキャリア内部にあるラボの一つ、そこで私たちはロキが持っていた魔法の杖。セプターだっけ? それの調査をしているわけです。原作は物語として知ってたわけだけど科学者としては初めての経験、マジでこの未知に触れる感覚はたまらんね。
能力的にバナー博士やトニーと比べると私はまだ一段劣るって感じだから完全にお手伝いに回ってるけど得られる経験は普段と比べると桁違い。だって地球を代表する頭脳の持ち主二人からマンツーマン×2で授業受けてるようなもんだもん。科学の徒としてスイッチ切り替えてなければすぐに尊みで爆発するところだ。
「はは、すぐに帰れると思ったのに。」
「終わったらスターク・タワーを見に来てくれ。上十階は全部ラボだ、夢の国だよ。」
「ありがとう、でもこの前ニューヨークに行った時はハーレムで……。ちょっと壊しちゃって。」
トニーは今手を離してるけどバナー博士は喋りながら作業してる。すみっこでスペース貰って作業してる私がナントカついていける速度の内容をおしゃべりしながらやってる。まぁ私の場合作業に必要な知識を一つずつ思い出したり確認しながらやっとこさ付いて行ってるわけだから仕方ないとこはあるけど……、混ざりたいねぇ。
「じゃあストレスのない環境を約束するよ、ドッキリもなし。えい。」
「うわぁ! え、なに!?」
トニーが何かの器具をバナー博士に軽く突き刺し響く電流の音。その音自体はイヴとかナターシャのおかげで聞きなれてたものだけど博士の声につられて私もビクッってなっちゃった。トニーにとって私はまだ保護されるべき子供のように見られがちなのであぁいうのされたことないからちょっと憧れる。
「おい!」
「変化なし?」
「気は確かか!?」
そこにちょうどこっちの様子を見に来たキャップがお怒りと共に登場。……まぁ正直ここで博士がハルクに変身しちゃったらスーツがないトニーも私もヤられる可能性が非常に高いので怒るのは仕方ないと思う。私個人としてはさっき博士からサイン貰ったしハルクにもサインというか力士さんみたいに色紙に手形もらいたいんだけど……、ここで追撃して怒らせたらだめ? だめかぁ……。
「どうかな? にしても凄いねぇ、怒りを収める秘訣は? メロージャズ? ボンゴ? 薬?」
「私みたいに何か推しがいるとか?」
口を挟んじゃったせいで視線が私に集まる。あ、やっぱり違う? ……ごめんなさい、自分の作業に戻るね……。
「……何でもジョークにするのか?」
「面白きゃね。」
「みんなの命を危険に晒して何が面白い。」
みんなの命を危機にさらす……、つまり自分の命がトニーと博士に握られてるってこと? ……いいな、すごくいい。最推しと科学者としても人としても尊敬してる推しに命を握られてるこの感覚。ヤバ、考えてたら動悸がヤバい。呼吸もクッソ早くなってきた!
「あ~、彼女は大丈夫なの?」
「いつものことだよ博士、たまに気が付いたらあぁなってる。ロマノフ君によるとほっときゃ治るらしいから好きにさせとこう。それにたぶん僕たちが近づくのは逆効果だ。」
あ、ダメ。意識が! 目の前が真っ白になってきた! アッ!アッ!アッ!
「……失礼博士。」
「いいんだ、つつかれたくらいじゃ平気さ。じゃなきゃここには来ないよ。」
「はは、そうビクビクしないで。ゆったり構えよう。」
すでに気絶して隅っこの方で役に立たない置物と化したツグミを放置し進む会話、スティーブからは見えない位置で限界化してるため彼はずっとチームの和を乱しているトニーにお怒りだが、バナー博士からは「あの子過呼吸になった後に気絶したけどホントに大丈夫?」と心配げ。
トニーからすればいつものことだしバイタルは彼女のジャーヴィスであるイヴがしっかり監視している。本当に危篤なのならば連絡が来るはずなので放置、バナーも「付き合いの長いトニーが放置してるならいいのかな?」と思い、作業を進めながらもツグミから目を離さないようにしている。やさしい。
「いいから君は自分の仕事をしてろ。」
「してるさ、そもそもフューリーは何故今我々を呼んだ? 何を企んでる、情報がそろわなきゃ答えは出ない。」
「何か隠してるのか?」
「奴はスパイだ。秘密諜報員だぞ、なにか裏がある。」
そう言いながらラボに隠していたお菓子を頂戴するトニー、確かそれツグミが持ってきた結構お高い奴だったと思うんですけど……、まぁ本人喜んで献上するだろうしそもそも今気絶してるからいいのか。
「彼も不安になってる。」
「あ~~~~~、僕はただ仕事を早く終わらせたいだけで。」
「博士。」
トニーに話を振られごまかそうとしたが、スティーブに咎められる。
「全人類を照らし温めるってロキはキューブの使い方をバカにしていたが……、あれは君のことだね?」
そうトニーに問いかける博士、トニーは持っていたお菓子の袋を博士に差し出して肯定。なんで今? という顔をしながらも受け取るバナー博士。それ美味しいですからおすすめですよ、と語り掛けるツグミのゴースト。まぁ聞こえてないが。
「ロキはタワーのことを知ってたんだろう。ニュースでも大騒ぎだったから……」
「スターク・タワーか。あの品のない……、ニューヨークのビルか?」
スティーブが品のない、と口にしたときさすがのトニーも不満さをお顔でアピール。まぁトニーは自分の事馬鹿にされるの嫌いだしそもあのタワーの12%は大事なペッパーが作ったんだもん。怒って当然なのかもしれない。
「アークリアクターが動力源なんだろ? あれでどれくらい持つ? 一年か?」
「まだ試作段階。クリーンエネルギーを開発してるんだよ、ウチが最先端。」
「なのにS.H.I.E.L.D.は彼をプロジェクトに入れなかった。」
「そこで伸びてる彼女もだ、僕よりS.H.I.E.L.D.に近い存在だしリアクターも作れる。優秀さはちょっと劣るけど僕の代わりぐらいにはなった。」
「なるほど……、でも、そもそもなぜS.H.I.E.L.D.がエネルギービジネスを?」
博士が疑問を言語化したことでS.H.I.E.L.D.への不信感を募らせる三人、S.H.I.E.L.D.は決して世界の電力会社になろうとしているわけではないのは明白。力の使い方が非常に気になるところだ。
「その辺調べてみたいね、S.H.I.E.L.D.の機密データうまくハッキングできればだが。」
「今なんて……。」
一瞬スティーブの頭の中でよみがえるあの情景、そこでいつの間にか気絶している少女がやらかした“ファンシー事件”、艦橋がピンクと可愛らしい謎生物の海に呑まれた事件だ。……さすがにこのいい年した大人が同じことしないよね?
「実は今ジャーヴィスがずっと探してるんだ。ほらツグミ、そろそろ戻って来いよ?」
「ひゃい! おきまひた!」
「ハッキングはたまにおかしくなるこの子の専売特許だが僕だって負けてない、後数時間でS.H.I.E.L.D.のたくらみが明らかになる。食うか?」
……あれ? もしかして私また勝手に気絶して名場面見逃した? イヴ、ちゃんと録画……、あ。してくれてる。さっすがイヴ! 私のしてほしいことをちゃんとわかってるぅ! レイブンクローに5000兆ジンバブエドル!
「だからS.H.I.E.L.D.は君を敬遠するんだ。」
「高い知能を煙たがる組織なんて歴史的にみてもロクなもんじゃない。」
「ロキは我々を煽ってるんだ、戦争を前に仲間割れをすれば思うつぼだぞ。」
トニーの『高い知能を……』のあたりですっごく嫌そうな顔をするキャップ。まぁ確かにトニーとキャップ結構相反する性格してるもんね。正直このことを考えると後々の仲間割れ思い出しちゃうから考えるのやめるけど仲良くしてほしいものです。
「我々は使命を、全うするべきだ。」
「僕のスタイルじゃないね。」
「そんなに自分のスタイルが大事か?」
「……クイズ、この中でダサい服なのは誰でしょう。役立たずは誰でしょう。」
「なぁ、スティーブ。」
ちょっと険悪な雰囲気が一触即発レベルまでになってきたので声を上げる博士。……え? 私? いまちょっと持ってきた荷物漁ってるの。ちょっと後でキャップに渡そうと思ってたやつね? 私の遊び相手であるハッキング対策部がもしかしたら仕様変更してるかもだし最終確認しようと思って。
「君は何か怪しいとは思わないのか。」
「キューブを見つけろ。」
……うん、普通に使えそうだね。あ! キャプテン! ちょっとまって~!
私に任されたタスクをイヴに任せて部屋から出ていくスティーブを追いかける。今からしようとするのに必要なもの渡すからお待ちを!
「……ん? どうしたんだいツグミ。」
「はいキャプテン、プレゼントです!」
私から彼に渡すのは今は使われていないS.H.I.E.L.D.の一部職員が持っているセキュリティカード、防犯の都合上奪われたら危ないので使われなくなったもの。
「これは……。」
「所謂フリーパス! セキュリティでロック掛かってる部屋に暗証番号とか指紋とか確認するやつあるでしょ? そこにこのカードをタッチするとこの船のお部屋大体全部入れるよ! あ、私の部屋はカンベンね!」
少し驚いたような顔、ちょっと見たことのないような顔で私を見るキャップ。……これはなんで僕の考えてることが分かったのか? ってことかな?
「トニーたちの話聞いてこの組織に対して不満が出て来たんでしょ? 強いエネルギーを利用するものと言えばやっぱり兵器、もしかしたら実験用に作られた試作品とかがこの船の中にあるかもしれないから探そう。……あ、もしかして間違ってた?」
「……いや、合ってる。もしかして君は心が読めるのかい?」
「にゃはは! そんなミュータントじゃないんだから! 普通に考えて予測しただけだよ! ほら! この船何回か来てるし構造上どこに何があるか大体わかるから案内するよ!」
そうそう、アルファベットの後ろから三番目ぐらいの文字を使うヒーローチームがいないことははっきり確認してる。そういうヤバい新人類みたいなのはいないはずなのです。あ、でもデップーはいたらちょっと面白いから会いたいかも。
……タイフォイドちゃん? あ~、彼女はなんというか例外みたいなやつで、うん。あ~もう! 今私にとって天国みたいな状態なのに嫌なこと思い出しちゃった! 多分何かしらの方法で復活したりニンジャサイボーグとかになって復活してくるだろうけど! わぁ~すれよ!
おまけシリーズ
☆ドロッセルお嬢様式拷問術(前編)
「あ! ニック~!」
あの後ロキちゃんを無理やり黙らせたままトニー、スティーブ、ソーの戦いを鑑賞した後。私たちはクインジェットに乗ってヘリキャリアに帰ってきた。ちょっと調子戻るまで時間かかっちゃったせいでナターシャやトニーから心配されたけどまぁうん。たぶん大丈夫。
んでその後何人かヒドラの構成員が混じってる警備部隊によってハルク用ガラスケースに連れていかれたロキ。そして今話しかけてるニックは『雑誌が読みたくなったら教えてくれ』って言ってた私たちの長官様ね?
「……どうしたツグミ。」
「も~! そんなに警戒しないでよニック!」
ちなみにトニーとナターシャを引き連れたドリームチームです。ちょ~とね? 思いついてしまったことがありましてね? ロキちゃんが何を知ってるのか解んないけど嫌がらせ受けたらお返ししてあげるのが私の流儀。結果として何が起きるのかは解らんけど単にこれ面白そうじゃね? ということで手伝ってくれそうな二人と許可出してくれる大人の前にやってきました。
「おいおいツグミ、わざわざフューリーの元まで連れてくるなんていったいどうしたんだ?」
「まぁ確かに、理由ぐらい聞かせなさいよね。」
トニーとしてはまぁニックの事あんまり好きじゃないからちょっと不機嫌なるのはまぁごめんなさい。でも大丈夫、今からやるのでちゃんとお釣り来ると思うし。ニックもニックで『今度は何をやらかすつもりだ?』って顔しないの!
「ねぇねぇニック! 拷問とか尋問って相手に対して何らかの負担を与えた後で譲歩したりして情報引き出すのあるでしょ!」
まぁ存在してるな、という風に頷くニック。
「それで今ロキは捕まえたけどストレスとか与えてない訳じゃん。しかも相手洗脳とか魔法とか使えるからあんまり尋問とか難しいわけでしょ! ストレス与えられない訳でしょ!」
「あぁ、だから少し時間を置くつもりだった。」
「だったらこのつぐみちゃんにいいアイデアあるよ! 皆さんお耳を拝借……、あ。やっぱゴメン顔近づけないで、特にトニー。尊みで爆発するから。うん、それぐらいで。」
◇◆◇◆◇
「……それで? なんで僕たちここに呼びだされたんだ?」
「……君も聞いてないのか?」
ロキ君専用の牢屋の前、そこには警備の人たち以外にもキャプテンアメリカとソーがやってきていた。本来なら洗脳などの危険性を鑑み無人にする予定だったのだが急遽予定が変更されたのだ。
かなりガチガチに固めている警備員たちのため軽い雑談をするような雰囲気でもなし、また副長官から『ちょっと準備終わるまで待ってて。ソー、あなたには悪いけどロキが何を言っても応じないように。』と言われているためロキと話すこともできない。
そんな気まずい雰囲気の二人は置いといて私は今何をしているのかというと……。
「……ねぇマリア。こんなにガチでする必要あった?」
「相手はアスガルドよ? やるからには本気じゃないと。」
「それはそうだけど明らかにマリアの趣味は言ってる気がするんだよなぁ?」
はい、鏡の前ににらめっこしてます。いつも私の髪型はボブみたいな短めの黒髪なんだけど今日は上から長くて外にはねるウィッグを装着、それに普段しないようなお化粧とかをマリア&ナターシャの女子チームによって完全武装。最近の趣味に『ツグミを着せ替え人形にすること』が追加されているマリアの私室に会った北欧系のお姫様が着るようなおべべを身にまとっています。
……いやそういう趣味に口出しするのは駄目だから言いたかないけど自室のクローゼットいっぱいに私用の服があるのはどうかと思いますけどね副長官。いくら私の背が低くて同顔でお人形さんみたい(マリア談)だからと言ってもねぇ?
「わぉ! 見違えたな、君の国のことわざに馬子にも衣裳ってのがあったと思うけどまさにそれだね。」
「トニ~!」
「おっと、僕はノータッチ。こういう時の女性陣は怖いって学んだからな。」
いや確かに提案したの私ですけどね? ここまでやらんでも良かったんじゃと思います、はい。目的はロキへのストレス増加なんだけどこれ私へのお仕置き的意味もあるんじゃないかと思う次第。……ニックだからあり得るしさぁ!
「……よし、これでOKね。どこからどう見ても北欧のお嬢様だわ。あとツグミ? あなた素材はいいんだから肌のケアとかしっかりしなさいって言ってたわよね?」
「副長官様ご勘弁を……。」
そう言いながらお化粧してた椅子から逃げ出す私、もうこのままトニーに例の部屋連れてってもらって作戦開始しないとマリアのお小言が大変なことになる。たしかにスキンケアとか大事だろうけど私ニンジャや研究やなんやらかんやらでスキンケアどころか健康もすっ飛ばしてる身だから……、うん、仕方ないね☆
「はぁ、ちゃんと野菜ジュースのも。」
「お肌の保護に野菜ジュースか? なら僕が教えてやろう、野菜ジュースには一家言ある。……それにしてもツグミ、名前の方はヨルムンガンドで良かったのか? 性別的にヘルじゃない?」
「あ~、いやヘルって死の女神でしょ? 縁起悪いかなって。」
「蛇もどうかと思うがね。」
このお洋服来ている間は私はヨルムンガンド、つまりそういうことだ。ちなヘルにしなかったのはトニーに説明した縁起担ぎ的側面もあるんだけどヘラっていう特大の地雷が引っかかっちゃう危険性を考えたから、ってのが理由。一文字違いだけど聞き間違えられたりしたらどんな因果つながるかわからんし今回のイタズラは個人的な仕返しに近いからね。あんまり危ないことはしないのだ。
「ではトニー様、お父様のところにご案内頂けますかしら?」
「おっと、ではお嬢様。お手を拝借……しない方がいいかい?」
「うん! 爆発するから!」
バクハツスルゾー!!!(日本兵)
〇ツグミ=オオゾラ(大宙つぐみ)の容姿
身長150㎝ほど、作者の趣味でギリギリ150あるかないかまで縮んだ。お胸は色々と期待できそうにない。髪型は基本邪魔にならないようにしているため短め、おかっぱやボブのような感じ。顔は丸っぽい同顔でよく年齢を間違われる。