さて、心臓止まったときに使う電気マッサージ機(改造済み)を持ってバートンとナターシャのところに行ったら……
『いや、さすがに死ぬからやめてくれ。』
『あなたみたいに常人は電気に耐えられないのよ?』
って言われて追い出されちゃった、ぴえん。……もしかして私キャップとかハルクみたいな改造手術みたいなの受けた人間だと思われてる? スーパーパワーは耐電気能力です! って思われてる? マジだったら裁判レベルなんですけど! 納得いかねぇよなぁ!
「はぁ……、うだうだ言ってないで行動しよ。」
場所を移動してトニーの元へ、確かマリアが割り振った部屋ね。
トニーとスティーブがお話している時に『ロキの目的はニューヨーク! スタークタワーだ!』ってのを気づいたみたいでさっき『準備が終わったらすぐに出発するぞ。』って連絡来たのよ。……まぁ私映画見てたから知ってたんだけど。
それでスーツがさっきプロペラに巻き込まれて破損したわけだから修理のお手伝いでもしようかとやってきたわけなんですけど……、あ! いたいた。
「トニー!」
「ん? あぁツグミか。準備できたのか?」
あ。さっき言い訳に使ったやつね。一応バレないようにイヴが石井っちから私に救援要請があった履歴を残してもらったんだけど……、このレベルだとジャーヴィスとかに調べられたらすぐばれるね。S.H.I.E.L.D.にはギリギリバレない気がするけどイヴに触発されたのかジャーヴィスの性能原作に比べてかなり上がってるっぽいしヤバいな。……言い訳考えとこ。
「うにゃ、まだだけど大丈夫。イヴがすぐやってくれるし。……修理手伝った方がいい?」
「いや、問題ない。このスーツの役目は僕をタワーまで連れて行くだけだからな。その後は新型のお披露目パーティだ。好きだろ、こういうの?」
新型だって? 私のせいで試作品じゃなくて完成品になっちゃったあのMark7だって!? そりゃぁ素晴らしい! 今からツグミちゃんウキウキだぜ! テンション上がってきたァ!
「うんッ!!! 大好き! じゃあお邪魔したら悪いし私は私の準備するね!」
よ~し! 私も新型だしMark2のお披露目パーティ! トニーに負けないよう頑張るぞ!
目をキラキラさせながらはしゃぎ足で彼女が自身のラボへ帰っていく。Mark7の試作段階で彼女に色々意見を求めたし実物も見せてるのだが……、彼女のテンションはかなり高い。まぁ僕も気持ちが解らないわけじゃぁない。
「ジャーヴィス、新人の調子はどうだ?」
『万全ですよ。Mark7、すでに起動確認済みです。あちらに到着すればいつでも。』
「そりゃあいい。」
ヘリキャリアのでっかいプロペラ君にすりおろし林檎にされそうになったスーツ、手に持っていた機器の電源を落としヘルメットを修理し終わる。まぁリパルサーの調子は悪いがタワーまでは持つだろう。最初はツグミに運んでもらうかクインジェットにでも乗ろうかと一瞬考えたが、彼女にお姫様だっこされるとかシュール過ぎるしクインジェットは輸送機だから遅い。修理一択だったわけだ。
「修理完了。よしジャーヴィス。出発だ。」
『はい、トニー様。皆様にもご連絡いたします。』
◇◆◇◆◇
自身の部屋の扉を蹴り開ける、目の前には青く輝く白き鎧。
「イヴ!」
『Tail1からTail9まで順次起動、スーツ内部リアクター起動開始、システムチェックも開始いたします。少々お待ちください。……マスター、“パック”の方はいかがなさいますか?』
「“お着替えパック”、“お仕置きパック”、“お出かけパック”全部! 最初の決戦だよ! 出し惜しみなし! 私がどこまでできるか勝負勝負!」
Mark2の前面が開き、内部が顕わになる。それと同時に勝手に改造した部屋の各地から白いコンテナが浮き上がり、中から白い円柱。私たちの動力源であるTailがそこに収められていた。
イヴによって彼女だけの城になったこの部屋の機器はすべて彼女の手中、トニーのタワーに備え付けられた着脱機構のようにTailにあらかじめ決められたものが格納されていく。Mark1のような非殺傷武器はそこにはなく、ただ何か強大なものと戦うための武装。
『Tail3及びTail4。バスター・ランチャーⅡ格納完了、充電用リアクター規定量装填完了。着脱機構及び補助ブースター確認完了。』
アスガルドの技術によって作られたデストロイヤー、その技術を現時点で吸い上げられるだけ吸い上げ、反映した打ち倒すための火砲。彼女が前世で見た最大出力で山を吹き飛ばすことはまだ無理だが空を浮かぶ鉄の塊ぐらいなら吹き飛ばせる。二本合わせて弾数6、冷却の問題はあるが主力として使えるだろう。
『Tail5及びTail6。強化ミニ・ガン格納完了、弾帯すべて確認済み。空飛ぶ愚かな豚のように詰まらせることなど起きえないと断言させていただきます。』
日本の裏社会でヤクザ向けに流れ始めた拠点防衛用のミニ・ガン、M134を改良・大型化したもので、すでに“ミニ”ではなくなっているが威力はお墨付き、ミニどころかメガと言うべきガンだ。まぁここで言うミニは本来の戦闘機などに付ける機関銃を歩兵用に小型化したからミニであって、ツグミが少し大型化してしまったため『ちょっとだけミニガン』というのが正しいのではあるが。
本来持つ利点である信頼性・発射速度はそのままに火力を上げドロッセル・スーツに最適化された二基である。
『Tail7及びTail8。小型追尾ミサイル及び対戦闘機中型ミサイル、第一及び第二補助外部動力格納完了、スタークインダストリー謹製のミサイルです、弾数合わせて800と2。雑兵でも戦闘機でも、お好きなようにお使いくださいませ。』
トニー・スタークが作り出した小型追尾ミサイル、この小ささからは想像できない威力で敵を狙い撃つ。Mark7の肩部に収納されていたもの。そして戦闘機などの高速飛行物体相手に使うミサイルがTailごとに一本ずつ。
『Tail9。分離後のメイン動力、および各種ユニットとの結合機能。確認終了。』
他の円柱型に近いフォルムと違い、Tail9は円錐型、しかも機構から折れ曲がることが推察できる。そして……
『最後に、Tail1及びTail2。メイン動力起動完了。こちらに輸送済みの全6種のユニットから戦闘用ユニット3種を格納……、完了いたしました。』
オブルチェフ、ベリンダ、ヨーゼフ。その名を冠する三つのユニットが収められた。
『連結いたします。』
その言葉と共に九つすべてのTailが動き出し、Mark1より流線的なフォルムに。古きロボットのイメージのような角が取り払われたスーツ。その頭部に装着されていく。
「見た目はさながらメデューサってところ? あ、でもイヴはイヴだしヘビとか駄目か。」
『石化能力などございませんし私は機械ですので林檎やヘビに対して好き嫌いはございません。』
「あはは! ま、そうだよね。それにメデューサって名前つけちゃうとキャップかソーあたりに討伐されそうだしヤメヤメ。そのままMark2でいいや。」
『その通りかと。……本体内部の補助動力起動完了、連結部及び動力システムオールグリーン。各種チェック項目確認終了。マスター、お待たせいたしました。』
「ありがと。……すぅ はぁ っと、よし。」
呼吸を整えスイッチを切り替える、こっから先は戦場。命のやり取りをするところ。たとえ相手が礼儀を弁えない侵略者だろうとそれは同じ、ただいつも通り冷静に。
スーツの前に立ち、背を向ける。そのまま一歩下がると私は二度包まれた。
灯る、青い炎。
「さ、行こっか。」
◇◆◇◆◇
ヘリキャリアから出発しニューヨークのスタークタワーへ。やはりミンチになりかけたのが不味かったのかちょくちょくリパルサーが止まるがまぁ大丈夫だろう。
『ねぇトニー、やっぱ私がスーツごと運んだほうが良かったんじゃない?』
「おいおい、冗談はよしてくれ。絵面を考えて見ろ。」
後ろから彼女の新型を片手に付いてくるツグミ、頭に彼女のトレードマークともいえるツインテールがたくさんついていて今やナインテール。……重心とか大丈夫なのか?
まぁ彼女のことだ、対策はしているんだろうと考えていると愛しのスタークタワーが見えてくる。
『タワーのアークリアクターを停止しました、しかし装置はすでに起動しています。』
「そう、か。」
なら、作った本人に止めさせればいい。
『セルヴィグ博士、その装置を止めろ。』
僕がタワーの屋上で装置を稼働させているセルヴィグに警告を発していると後ろからついてきた彼女も到着する。洗脳された一般人VSスーパーアーマーを着た天才二人だ。どっちが強いかは幼稚園児でもわかることだろう。
できれば他の奴らも呼びたかったがクインジェットは僕たちに比べればゆっくりだしソーもハルクも行方不明。……ま、時間が経てばみんな集まるだろ。そういうものらしいからなヒーローは。
「ふっ! もう遅い!」
「もう止まらんよ! こいつが見せてくれる……真の宇宙をな。」
『そうかい。』
『夜に空でも見上げれば十分!』
セルヴィグの否定の言葉に合わせてリパルサーを二人で放射する。ジャーヴィスとイヴのサポーターコンビが合わせたおかげで息ぴったりの攻撃だ。だが……
放射した光線が受け止められ……、そのまま跳ね返される。
『エネルギーバリアです、破れません。』
『でしたら屋上の床、タワー内部を掘削するなどして足場からの破壊はどうでしょう? 最悪爆破もありかと。』
「ちょっとイヴ! ここ日本じゃないよ!」
「あぁ、わかった。それとツグミはその物騒なのを抑えとけ。……プランBだ。」
視線を移す、スタークタワーのプライベートルームにあるベランダ。そこにコールソンを殺したロキの姿があった。ご丁寧に杖まで持っている。
『Mark7ですね、トニー様が開きたいとおっしゃっていた披露宴にピッタリかと。』
「しっかり色も塗ってあるからな。」
「たのしみれしゅ!」
また幼児退行し始めたのは放っておいてベランダにある着脱機構に着陸する。リングが開き、徐々にMark6を格納。対になるような動きで僕とロキは室内に入った。
これからどうするかについて、作戦はツグミに話していないが彼女のことだ。いつもと同じように僕の意図を汲み、彼女もスーツを脱ぐ。ま、このタワーにはツグミ用の収納スペースはないからベランダに置きっぱなしなのはクールじゃないが。
「私の人間性に訴える気なのか?」
「いや、お前を脅す気だ。」
「ふっ! なら何故二人ともスーツを脱いだ?」
おっと、そういやツグミの言い訳考えてなかったな。僕はアドリブ大得意だが彼女は……
「スーツあってもロキちゃんがガチで勝負仕掛けてきたら勝てないでしょ、だってアスガルドだし。魔法使えるし。……まだ実力隠してるでしょ?」
なるほど、及第点だ。でもその不貞腐れた顔は評価できる。
「それに僕のスーツはあちこちガタがきてたし、その杖の秘密は何も解ってない。……飲むかい?」
僕がバーカウンターの内側へ周り彼女はカウンター席へ。机を背に肩を掛け、両手を上げて怪しい動きはしませんのポーズだ。この間に僕は酒を用意しよう。
「はッ、時間稼ぎか?」
「いやいや脅しだよ。……飲まないの? じゃあ失礼して。」
「……ロキって飲めないの?」
彼女の指摘を無視するロキ、その間に僕は気付け代わりにウイスキーをグラスに注ぐ。何度かマリブにある家に来てるツグミがそこまで呑まないのは知ってるから彼女の分はなし。それに彼女の役目は僕の手元を見せないようにすることだけ。あとはまぁ……みんな大好きアドリブだ。
「……じきチタウリが来る、私は無敵だ。恐れるものはない。」
「アベンジャーズは?」
沈黙、おっと通じなかったか。
「知らないの? おっくれってる~! 地球最強のヒーローチームの事!」
「あぁ、なるほど。顔見知りだ。」
「だろ?」
奴は今油断している、だって頼りにしていた軍隊がすぐにやってくるんだからな。勝ち確ってやつだ。そういう奴ほど足元掬われる。
「チームが纏まるには時間がかかる、だが頭数は多いぞ。神様モドキのアンタの兄貴だろ?」
ロキが舌打ちをしながら視線をそらした、ここだ。カウンターに置いてあるブレスレットを両手へ。
「蘇り、生きた伝説となった超人兵士。」
「怒ると暴走しちゃう男に、イカれた天才イタズラガール。……まぁ僕には劣るが。」
「それに、腕利き殺し屋カップル。」
「それを! アンタは、よくもまぁ……、一人残らず怒らせたもんだ。」
「それが狙いだ。」
「やり過ぎたな。」
酒を片手にカウンターから外へ。ゆっくりと歩を進める。
「チームが来たら、……その時アンタは終わりだ。」
「軍隊がある。」
「こっちはハルクだ。」
「あいつはどこかへ消えただろ。」
「解ってないなぁ。あいにくだが! アンタが玉座に就くことは……、絶対にないんだ。たとえどんな軍隊が来ようと我々はアンタだけを狙う。」
「地球を滅ぼして見ろ必ず報復してやるぞ。」
……おっともしかして僕の方が言いすぎたか? ロキの顔がッ
「君の仲間は忙しくなる、君を相手に戦うからな。」
「ッ! トニー!」
ロキが近寄ってきて、僕の胸に杖を当てる。
カツン。
固まる空気、不思議そうにしながらもロキがもう一度杖の先端を胸に当てる。
カツン。
「……なぜ効かない。」
「性能不足って奴だな、まぁ気にするなそういうこともッ!」
顎を掴まれ投げ飛ばされる。……ちょっとこれは痛い奴だな。
「そこの小娘は一歩も動くなよ、少しでも動いたらすぐにこいつごと吹き飛ばしてくれる。」
「ジ、ジャーヴィス。いつでもッ!」
もう一度顎を掴まれる、杖はツグミの方を向いてるし絶体絶命って奴だな。……にしてもこいつ顎好きなのか? フェチ? おっと例の彼女みたいになるからこの辺でやめとくか。
「貴様らは! ひれ伏すのだ! 私にッ!」
掴まれたまま窓ガラスへ投げ飛ばされ、そのまま落下。これが紐なしバンジージャンプって奴? おっと、いくらMark7は新型と言っても無理なものはある。姿勢がブレないように手は軽く上げたままにしておこう。
上から衝撃音とガラスが砕け散る音、そして僕のブレスレットめがけて赤外線。いい子だジャーヴィス。
ツグミのTailを参考にスーツをMark5のように円柱状に纏めたMark7、その封印が解かれ人型へ変化、手にあるブレスレットを起点とし装着するために赤外線を飛ばし、認証完了。
手首を起点とし、スーツが体を覆い尽くしていく。胴体、足、そして手のひら。最後に顔。フェイスがしまった瞬間にディスプレイ起動、後は地面に向かってリパルサーを噴射して戻るだけだ。
「な、簡単だろジャーヴィス。」
『次の機会ではぜひ安全紐を付けてください。』
「考えとく。」
――さぁ、小娘。後は貴様だけだ。
ロキがトニーを外に放り投げたあと、その言葉を紡ごうとした瞬間に奥のラボに繋がる扉が開け放たれロキを強襲する。そのせいで小娘のこ、ぐらいしか言えずに吹き飛ばされたがまぁ言いたいことは解るから相手してあげよう。
「ロキは色々と舐めすぎなんだよね。」
忌々しい顔でこちらを見つめるロキ、まだくつろいでる私。そんなほのぼの空間にスーツ同伴で戻ってきたトニー。……あ、やば。かっこいい。限界化しそう。
『それに、もう一人お前が怒らせた奴がいる。フィルという男だ。』
セプターでの攻撃をしようとしたロキに先んじてリパルサー放射。これで一時ダウンってわけだ、……ついでに蜘蛛糸で縛っとくか。
最近日本で日中でも襲われることが増えて来たのでイヴに持たされていたスパイダーウェブを投射して身動きを取れなくしとく、まぁたぶん魔法かなんかですぐ脱出されるんだろうけど。
勝利のハイタッチ、正確に新型を間近で見せてもらおうとトニーに近寄ろうとし、彼もそれを受け入れようと部屋の中に入ろうかと思った瞬間。屋上を発生源にして轟音が走る。
ゲートが起動したようだ。
ニューヨークの空に、虚空が開かれる。
その先には無数のチタウリ、人型でありながら機械と昆虫の両方の性質を持つ謎のエイリアンたち。
その侵攻が今、始まる。
『オブルチェフ』『ベリンダ』『ヨーゼフ』
次回はGW中に必ず、お待ちを。