前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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長いです、お気をつけて。


決戦、恐怖、勝利。そして次へ

 

 

 

 

 

 

ビルのそばを回り、あのデカい魚みたいなやつの顔にフレアを食らわせる。まぁチタウリとやらはスターウォーズみたいなブラスターしか使ってこないみたいだし使って大丈夫だろう。小型のミサイルだって使い切ってしまったしな。

 

にしてもほんとにサイズ比間違ってないかコレ?

 

 

「とりあえず、引き付けたけど。次どうすんだ。」

 

 

奴の目がこちらを完全にとらえている。速度は遅いがその装甲は僕の武器じゃ破壊できないぐらいに厚い。たぶんこりゃツグミのバスターランチャーでも無理そうだな。

 

 

「ジャーヴィス、広い道を選んでくれ。」

 

『かしこまりました。』

 

 

……緑のパワーくんが来るまでお散歩と行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホークアイの矢が飛び、ウィドウが敵から奪った武器を振り回す。数が多くまたナターシャ自身が持つ武装は対人用であるため効き目が薄い、ハンドガンをリロードしようにもその隙が作れない状態が続く。

 

なんとか体術と両手首に装着しているスタンガンで敵を無力化、持っていたビームガンみたいなもので応戦するけど埒が明かない。バートンだって普通の人間。エイリアンには少々分が悪い。

 

 

 

そこに星条旗の盾が飛んで来る、キャプテンのエントリーだ。初めて共闘するが三人ともその経験は豊富。実力を認め合っているからこそ背中を任せられる。計算されて投げた盾が帰ってきて、キャッチ。そのまま腕に装着しタックルを敢行。ホークアイに接近戦を挑もうとしていたチタウリを吹き飛ばす。

 

さらに雷鳴。そしてけたたましい銃撃音。ソーがロキから受けた腹部の傷をかばいながらムジョルニアでの雷撃、中身に誰もいないMark2のマシンガンによる砲撃だ。

 

打ち抜かれたチタウリは彼らの部品や体液を飛ばし、ソーの雷に貫かれた者たちはそのエネルギー量に耐え切れず丸焦げだ。

 

 

 

「ソー、上はどうなってる。」

 

「キューブを囲ってるバリアが破れない。」

 

『あぁ、だがまずはこいつらだ。』

 

 

キャプテンの問いかけに二人が答える。リパルサーの威力でもムジョルニアの威力でも無理となると何か特殊な方法でバリアを破る方法を考えなければならない。しかしながらそれを考える時間を用意するためにまずはチタウリ退治が優先。

 

 

「キャプテン、作戦は?」

 

「……チームワークだ。」

 

「待て、俺はロキとの決着がついてない。」

 

「あん? 俺が先だ。」

 

『出来たら私も一発ぐらい殴りたい。』

 

 

ロキの話題が出た瞬間に噛みつく二人。バートンは洗脳された仕返し、イヴが操るスーツ越しにツグミは侮辱されたことを報復したいと発言。正確に言えば、なぜその判断に至ったのかを個人的に聞きたい様子。

 

 

「まて、ロキがいなくなれば軍隊が暴走しさらに町への被害が拡大する。上で戦ってる二人を援護しないと。」

 

「……聞きたいのだが二人いないか?」

 

 

ちょうど援護の話が出た時にアイアンマンとドロッセルが空中で交差する。そのためキャップは二人と発言したのだが……、あれ? ここにもう一人いません? ソーが皆の疑問を代弁してくれた。

 

 

『ん? ほら普通に二つ運転してるだけだよ? 今こっちにいる方は中身空っぽ。普段は嵩張るからスーツ二枚重ねにしてるの。ほらマトリョーシカ。』

 

 

ちょうどスーツの顔部分を開いて内部が無人であることを伝える。と、そんな会話をしている時。待っていた彼の操るバイクの音が聞こえて来た。ブルース・バナーだ。

 

 

 

「やぁ……、ひどいことする奴がいるもんだね。」

 

「もっとひどいのもいるわ。」

 

「……すまない。」

 

「いえ、待ってたの。そういう、ひどいのを。」

 

 

ナターシャがバナーを呼びに行った時から少し特別な関係性が見て取れる。おかげさまでMark2のカメラ越しに見ていたツグミはこれからの二人の関係性を知っているあまり、まるで甘酸っぱい初恋青春アニメを見ている心持。空中戦闘中なのに軽く限界化してしまう事態に陥り、あわてたイヴが操縦を変わる始末である。早くもどっておいで……。

 

 

「スターク、来たぞ。」

 

『バナーか。』

 

「お待ちかねのな。」

 

『スーツを着ろって言え、今から愉快な仲間を連れてく。』

 

 

その言葉と共にストリートの向こう側からリパルサーの光。その後ろにビルを破壊しながら進む大きなチタウリ。リヴァイアサンがやってきている。

 

それを見たソーは戦闘のためすぐさまムジョルニアを呼び出しイヴは独自判断でバスターランチャーを二機とも起動し始める。

 

 

「どこが愉快な仲間なのよ……。」

 

 

ナターシャの呟きを無視しトニーは高度を地面ギリギリまで下げる。チタウリも自然とそれに合わせその巨体を道路に降ろし、道に残る車を轢きつぶしながらアベンジャーズの皆がいる場所まで突き進もうとする。

 

 

「バナー博士! ……今なら思いっきり怒ってもいいぞ。」

 

 

敵に向かって歩き始めていた博士が笑みを浮かべながら答える。

 

 

 

 

 

「僕の秘密を教えようか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつも怒ってる。」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、博士の体が緑に変色し膨張。一瞬でハルクの姿に変身しその丸太より太い腕をリヴァイアサンの頭部に叩きつける。その衝撃は大きく、慣性を働かせながらも敵の巨体を押しとどめ、体を上へ持ち上げた。

 

 

『『そのまま!!』』

 

 

リヴァイアサンの巨体が持ち上がり、ハルクのスマッシュによりその装甲がはがれだす。それを見逃すほど二人は優しくない。トニーが腕から小型のミサイルを射出し、ツグミは両腕から全力のリパルサーを撃ち込む。

 

 

 ――爆発。

 

 

その胴体は吹き飛ばされ、行き場のなくなった頭部だけが物悲しく道路の端へ、そして落下。爆発による影響もメンバーたちが物陰に隠れたり、キャプテンが盾で防御したためなし。

 

チタウリたちの理解できない叫び声が響く。

 

 

 

 

 

 

(あぁ、この瞬間をどれほど待ち望んだか。あはは、感無量とはこういうのを言うんだね。)

 

 

 

 

 

ハルクの叫び声がすべての音をかき消す。

 

 

新たな矢をつがえ敵に照準を絞るホークアイ。

 

 

分離していたスーツを再結合させ本来の姿に戻るドロッセル。

 

 

ハンマーを手に取り闘気を高めるソー。

 

 

ブラック・ウィドウは自身の武器を確認し、リロード。

 

 

キャプテン・アメリカは盾を構え周囲を見渡し状況を把握する。

 

 

最後に、リアクターの出力を絞り。着地、アイアンマンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(We are Avengers.)

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「援軍を送れ。」

 

 

 

ロキが乗るチタウリの乗り物、その通信機が起動され彼の声が届く。

 

 

そしてその言葉は非常に解りやすい形で現れた。

 

 

ゲートはすでに十分な大きさを保っている。その巨体を揺らしながらリヴァイアサンが二体同時に、しかも大量のチタウリを連れてやってきてしまった。

 

 

「見て。」

 

『……どうするキャプテン。』

 

 

 

 

 

「いいかみんな。通路が閉じるまで敵を押しとどめろ。」

 

「バートン、屋上へ行って上から見張れ。敵の位置を知らせろ。」

 

「スターク、君は外側だ。三ブロックから外に出る奴は押し戻すか灰にしてやれ!」

 

 

 

「なるほど、運んでくれ。」

 

『あぁ、飛ばすぞ。落ちるなよ!』

 

 

キャプテンの指示を聞き動き出す二人。ホークアイはアイアンマンに連れられ最寄りのビルの屋上まで運ばれていく。

 

 

「ソー、君はあの通路を頼む。出てくる奴を君の雷で、痺れさせてやれ。」

 

 

ゆっくりと頷きハンマーを回して目的地まで飛翔するソー。

 

 

「ツグミは内側を、タワー周辺を主にイタズラパーティだ。今日は叱る奴はいないぞ。」

 

『アイアイサー! ハロウィンよりも楽しい日にしてあげるね!』

 

 

空中へ舞い上がり、九つあるTailから二つを展開させマシンガンを両腕に装着するドロッセル。

 

 

「ナターシャはここで僕と戦闘を続ける、逃げ遅れた市民がいないか確認しながらだ。」

 

 

 

そして、

 

 

「ハルク!」

 

 

勢いよく振り向き、キャプテンを視界の中央に入れるハルク。その瞳に移る彼は指を上に立てながらこう、言ってきた。

 

 

 

「暴れろ。」

 

 

 

ニヤリとした良い笑みと共にチタウリが張り付くビルに向かってジャンプ。戦闘開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さ~てさてさて! キャップにお仕事もらえたわけだし早速始めて行かないと! 分離スーツはさっきリヴァイアサンに向かって撃ったリパルサーでエネルギー切れ。合体した状態である程度充電しないと使えない感じ!

 

 

「イヴ! Tail3、4起動!」

 

『バスター・ランチャーⅡ、起動します。』

 

 

私の頭部に連結されているTail、その3つ目と4つ目が起動する。その白い装甲が開かれ内部から浮き出るのはリアクターの青い光が漏れ出る砲身。ハルクの腕よりは細いけど極太の武器! 頭部の結合が解かれ、スライド。肘のところまで降ろし再結合。曲げた両腕の下にちょうど装着された感じだ。ちなみに目標はもちろんリヴァイアサン、ソーが今から増援を止めてくれるわけだしさっさとお掃除しちゃいましょう!

 

 

「さぁ歯磨きの時間ですよ~?」

 

『フレア放出、またフレアの残量が0になりました。ご注意を。』

 

 

フレアが気にくわないのか咆哮を上げるリヴァちゃん。そこにすかさずランチャーを叩き込む。装甲は貫けないけど口内は別、両腕から放たれた光弾は文字通り彼奴の頭部を吹き飛ばした。

 

 

「頭飛ばしても死なない奴じゃありませんように!」

 

 

頭を吹き飛ばされたリヴァはそのまま高度を落していく、どうやら『やったか!?』にはならないようで安心。避難が進んでるおかげで、デカブツをそのままポイしても下敷きになる人がいなくて安心。ダブル安心ってわけ。

 

 

『バスター・ランチャーⅡ放熱開始、次に使用できるのは2分後になります。』

 

 

う~ん、長い! 結構砲身に無理させる武器だから仕方ないけど2分は長い! でも設計者私! おいこら私もっとちゃんとした設計しろ! ……え? 地球上の物質でこの温度耐えれるのヴィブラニウムぐらい? あ、なら仕方ないですね。ガマン。

 

イヴに指示出ししてバスター・ランチャーを収納し元のTailに戻す、放熱のためにエネルギーをそっちに回しながら次に展開するのはさっきイヴに使ってもいいって言ってたガトリング砲。リパルサーだけで何とかなったみたいで弾は全く使われてない。ランチャーくんが冷えるまでこれをばらまくとしますか!

 

 

「イヴ、砲身交換!」

 

 

Tail5と6が先ほどの同じように起動、装甲が分割しガトリング砲が現れる。あとはそこら辺をビュンビュン飛び回ってるチタウリ君に鉛玉をプレゼントってお仕事だ。フュィ~、ドロッセルちゃんやっさし~! 呼んでないお客様にわざわざ鉛玉のお土産用意してあげるなんて! 地獄への片道切符だお?

 

 

 

 

「ツグミ、後ろから来てるぞ!」

 

 

 

 

え、ま?

 

 

 

声を出す前に後ろから衝撃。若干吹き飛ばされ、リパルサーの電源が落ちるがすぐに復帰。何とか体勢を立て直す。いちちち……

 

後ろを見るとチタウリ君が大量。みんな青い光の銃をこっちに向けてますね。リヴァちゃん倒しちゃったせいでヘイト集めちゃった?

 

 

 

「ご自慢のスーツはへこんでないか?」

 

『イヴちゃんによるとへこんでるって!』

 

「そりゃ残念。」

 

 

動かせるTailを起動し、後ろ向きのまま高速飛行開始。普通にイヴの処理が間に合わず攻撃されるとは……、やっぱスーツの演算+冷却+武器の変更+分離スーツの充電+周囲の確認+ニューヨーク全体の俯瞰は高負荷か。でもやめるわけにもいかんし。

 

そんなことを思いながら後ろ向きで鉛玉をばらまき続ける。チタウリの総量が増えて把握がきつくなってきてるイヴのために飛行はイヴ、照準は私で行っている。でもこれからもっと増えるわけか。……しゃあないね。イヴ、全体の俯瞰はやめてスーツ付近の警戒だけでお願い。

 

 

「ヒュー! そのデカいのいいな。俺の分は?」

 

『また今度ッ! 持って来るねッ!』

 

 

急な方向転換のせいで息が乱れる、まぁ舌噛まなかっただけいい方だけどもうちょっとやさしくならないイヴ? あ、優しくしたら撃ち落とされてジ・エンド? なら我慢する。

 

 

「今度ぉ? おいおい、二度もエイリアンはごめんだね……、おっとスターク。そっちにもついてきてるぞ。」

 

『把握してる。とりあえず、大通りから離す。』

 

「奴ら小回りが利かない、角に誘い込め。」

 

『それいいね、了解。』

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

戦闘は未だ続く。

 

ソーが雷でゲートからチタウリを追い返し、ハルクが摩天楼を飛び回り破壊の限りを尽くす。アイアンマンとドロッセルが空を飛び回るチタウリを打ち落とし、ホークアイがその隙間を埋めるため矢を放つ。地上に降り立った敵はブラック・ウィドウが敵の武器を奪いながら撃滅し、キャプテン・アメリカはその盾で市民を守り敵を倒す。

 

 

『わ! ナターシャいいの乗ってる!』

 

「喋ってる暇があったら後ろのどうにかして!」

 

『はいは~い!』

 

 

ウィドウが大本を絶つためにゲートを開いているキューブの元、つまりスタークタワー頂上への移動を開始する。方法は敵の乗り物を奪うという素晴らしい作戦。

 

ドロッセルとアイアンマンはT字路で一時合流することで背後に付きまとう敵集団同士をぶつけ大半を振り落とす。ウィドウに付きまとうストーカーを打ち落とせば、そのまま中央の戦場、キャプテンが戦う場所へ下降。

 

 

『よし、突撃だ。』

 

『イヴ! 分離!』

 

 

鉄の男は高度をさらに下げ自身を弾丸とすることでチタウリたちを吹き飛ばし、ドロッセルは空中で分離する。片方は空でもう片方は地上戦だ。

 

キャップは盾が空を切り裂き、雑兵を吹き飛ばす。目の前に立ちはだかる敵を殴り飛ばし、跳ね返ってきた盾をキャッチ。そしてその盾でアイアンマンが放つ光線を反射し一帯を殲滅。

 

破壊の限りを尽くすハルクはリヴァイアサンの背の上で。分厚い装甲板を力のみで剥ぎ取り巨体に突き刺す。そこにソーが着地し雷の力を込めたハンマーで打ち込み巨魚を体内から破壊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなアベンジャーズが必死の抵抗を行っている時、ニューヨークから離れた空中。ヘリキャリアではとある決定が下されていた。

 

 

『長官、これは世界安全保障委員会の決定です。』

 

「あなた方の決定であるということは承知しています。ですがあまりにも馬鹿馬鹿しい決定なので無視することにしたのです。」

 

 

S.H.I.E.L.D.は秘密組織ではあるが国連組織でもある。宇宙からの侵略者という強大な脅威のせいか、それともまた別の大きな悪意のせいか。ニック・フューリーよりも地位の高い理事たちはその決定を下した。

 

 

『長官、君が一番現場から近い。ジェット機を緊急発進し……』

 

「マンハッタン島を吹き飛ばせとおっしゃるのですか。チームが持ちこたえている間は、絶対に! 市民への核攻撃など命じることはできません。」

 

『ここで封じ込めないと人類は滅びる。』

 

「攻撃した時点で人類は終わりです。」

 

 

そう言い切り、もう話すことはないと通信を切るニック。

 

たしかに彼らの言う“封じ込め”は現場を知らない状態での判断としては間違っていることではない。核ごときで四次元キューブのエネルギーで開かれたゲートを破壊することはできない、また機器を破壊できたとしても暴走の可能性があるということを知らなければ、という前提があればの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……、来た。」

 

 

場面は元へと戻りニューヨークの上空。ブラック・ウィドウはチタウリの戦闘機を奪取し、それでスタークタワーの頂上まで向かおうとするが……、それをロキに発見される。現在彼女は後ろから追い回されており、撃ち落とされるのも時間の問題だ。

 

 

「ホークアイ!」

 

「……何やってる?」

 

「あ~、ちょっと助けて!」

 

 

ブダペストでの戦いでも共闘した二人、彼女が敵の戦闘機に乗りながらロキに襲われているというよく解らない現実に直面しても決断は早い。

 

ホークアイの手元にある弓、そのダイアルをいじり矢じりを変更する。

 

 

「……ふ、任せろ。」

 

 

素早く番えられた矢が放たれ、ロキの頭に吸い込まれるように飛んでいく。ビルの合間を高速で移動するロキを矢で射るとはさすがの技量。

 

しかしながら相手はアスガルドの民、容易くその矢は手で摘まみ取られてしまう。

 

 

口角を上げ勝ち誇ったような顔をするロキ、自分を洗脳した相手を射抜く絶好のチャンスをふいにしてしまったなという顔。……しかしながらホークアイの方が上手。

 

矢の先端に取り付けられた時限爆弾が起動、チタウリの戦闘機ごと吹き飛ばされるロキ。その頑丈さからか死には至らなかったがスタークタワーのベランダに落下しその痛みにもだえる。

 

『ロキの頭を矢で射抜く』という言葉をこぼしていたバートンもこれにはご満悦の様子。にこやかないい笑みを浮かべながら背後より近づくチタウリを目で見ずに打ち落とすあたりよっぽどのようだ。

 

 

 

そして、ロキの不運はまだ続く。

 

 

ナターシャが上空から飛び降り頂上へとたどり着いたころ、同時にロキの元へハルクが到着し着地と共に彼を吹き飛ばす。

 

トニーのプライベートルームに飛ばされた彼はそのまま転がり続け壁にぶつかりようやく止まる。それを見たハルクは好機と考え突撃を敢行、がしかし。

 

 

「やめろ!」

 

 

叫ぶロキ。

 

 

「下等な連中どもがよくも! 私は神だぞケダモノめ! お前らごときがこの私にっ」

 

 

だが、それは明らかな失策。ハルク相手に言葉は通じず最後まで言わせてもらえずにその足を掴まれる。その後はまぁお察しだ。幼子がぬいぐるみを振り回すように何度も何度も床に叩きつけられ、その暴力の嵐はコンクリート製の床に埋め込まれるまで続いた。

 

 

『それでも神?』

 

 

驚きのせいか、痛みのせいか。ロキはその言葉をただ聞き流すことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキがハルクの私刑に処され、ナターシャがようやく正気に戻ったセルウィグ博士から『杖がキーになる、あれを装置に突き刺せば安全装置が起動する』という話を聞きだしているころ。

 

市外戦は混沌と化していた。遊撃手のハルクと地上戦のウィドウが抜けたため人手不足が否めない現状、州軍が到着し市民の誘導や反撃を開始してはくれたが如何せん武装が貧弱で決定打になっていない。足止めがせいぜいと言ったところ。

 

 

『うへぇ! そろそろエネルギー切れそうなんだけど! イヴ!』

 

『申し訳ありません、現在戦闘中で向かえそうにありません。』

 

『マジぃ? あ~もう、ごめんキャップ! リパルサー当分おあずけで!』

 

「そう、かい! ……そりゃ残念だ。」

 

 

分離し、収納される。その機構のせいでリパルサーを多用すると活動時間が著しく減ってしまう弱点が露見した“チャーミング”。これ終わったら改良しないといけないな、と思いながら格闘技で数を減らすドロッセル。キャップもそれに合わせて動きの鈍った相手に盾を投擲したり、自身の筋力で相手を殴り飛ばす。

 

 

 

地上では苦戦を強いられているが、空中も例外ではない。敵の増援が止まらない現状とりあえず数を減らさなければいけないのだが武装にもエネルギーにも限界がある。ソーの雷撃も最初に行ったゲートに対する攻撃ができるほどのエネルギーは残っていないし、イヴが操るMark2もほぼすべての弾薬を使い切ってしまった。

 

トニーもそろそろ品切れが近づいている。

 

 

『敵の装甲を破る前にこちらの装甲が切れそうです。』

 

 

ビル街を地中を進むモグラのように破壊していくリヴァイアサンを止めるためMark5から進化したレーザーカッターで三枚おろしにしてやろうとするがジャーヴィスに止められる。思考の隅でツグミのようにリアクターを増量すればよかったかもしれないと考えるトニー。

 

切断を諦めた彼は速度を上げリヴァイアサンの前へ。

 

 

「ジャーヴィス、聖書のヨナを知ってるか?」

 

『あ~、彼の真似はお勧めできません。』

 

 

Mark7スーツの大腿部が開かれる、そこには大量の小型ミサイル。

 

 

リヴァイアサンが咆哮、その口へに向かって速度を上げ、自分から飲み込まれる。それと同時にミサイルを起動。体内で爆発したそれは誘爆を引き起こし、さらに爆発。装甲を吹き飛ばしその体内をさらけ出した。ヨナのように三日三晩飲み込まれることにはならなかったがその爆発とともに吹き飛ばされてしまう。

 

 

建物にぶつかり、乗り捨てられた車を吹き飛ばし、何とか地面へ。着地というよりも墜落と言った方が正しいがお陀仏にならずに済んだ、スーツもダメージはあるが動かすことはできる。

 

 

「もう二度とやりたくなッ!」

 

 

 衝撃。

 

 

なんとか立ち上がろうとした矢先チタウリの狙撃を胸に受ける。しかし未だスーツのシステムが不安定、反撃が難しい。しかも相手はかなりの数、早く復帰させなければならない。

 

 

 

苦戦は、続く。

 

 

 

ホークアイはビルを這い上がり自身を倒そうとする敵を排除していくが残りの矢が最後の一本に。ハルクも集団に囲まれ攻撃を受け身動きが取れない状態に。そしてイヴも増えすぎたチタウリの数に対応できなくなり撃ち落とされる。

 

そして……

 

 

 

『フューリー長官の指揮権を剥奪、NYへの攻撃を命じます。』

 

『攻撃命令を確認、発進します。』

 

 

 

核が、来る。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『ツグミ! 聞こえるか! ミサイルを積んだ戦闘機がそっちへ向かった!』

 

 

キャプテンに手伝ってもらいながらイヴの墜落地点へ移動。手動で再度分離スーツと本体を結合させて落ちたシステムを再起動、何か問題がないかチェックを行っていた時その通信は届いた。同時にデータも送られてくる。核だ。

 

 

「……後どれくらい?」

 

『あと三分がいいところだ、爆発すればミッドタウンが丸ごと吹き飛ぶ。』

 

「トニー! 行ける!?」

 

『了解だ、ジャーヴィス。スラスターにエネルギーを回せ。』

 

 

その声を聴きながら私もスーツの破損状態をチェックする。……Tail3~6は完全にイカれてる。7と8は破壊されたときに放棄したみたい。まぁ誘爆しにくいし盾代わりにしたんだろうね。ビーコンが生きてるから回収は容易だけど今は放置。メイン動力のTail1と2は破損してるけど動くには動く。エネルギーもまだ宇宙から帰ってくる分もある。私がさっきまで使ってたTail9はすっからかん。

 

 

うん、ついていけるね。

 

 

『イヴ、私たちも行くよ! キャプテン後任せた!』

 

「……あぁ、頼む。」

 

 

飛翔し、空へ。

 

 

「今、通路を塞ぐ。……みんな聞こえてる! 通路を塞げそうよ!」

 

『ダメ! ナターシャちょっとまって!』

 

「塞がないとキリがないわよ!」

 

『ミサイルが来る、あと一分もない。』

 

 

途中でトニーと合流しミサイルを視界に収める。

 

 

『捨てるには』

 

『ちょうどいい穴だな。』

 

 

私が上部分を掴み、トニーが下を支える。原作ではギリギリまでこの角度を変えられなかったが、二人がかりでやれば問題はない。

 

 

「ふたりとも帰れるのか!」

 

 

スティーブからの声。通路の先に何があるのかは解らない、完全な賭けだ。

 

 

『パワー残しとけよジャーヴィス。』

 

『トニー様、ミスポッツにお繋ぎしますか?』

 

『…………そうだな。』

 

 

電話のコールが淡々と変わらぬ音を紡ぎ始める。私も、みんなも、最後かもしれないその時を邪魔するつもりはない。

 

 

『マスタ―。』

 

『イヴ、私はいいよ。遺書は一番初めに書いたから。』

 

 

電話はつながらず、そのままミサイルは進む。合図とともにその角度を上げ通路に収まるように。ここで離せればよかったのだがミサイル自体のスラスターの出力が低下し始めている。ここで手を離せば通路の奥へ行く前に止まるか、行ったとしても帰ってきてしまう可能性がある。

 

最後まで行かないと。

 

角度は直上へ、二人で出力を上げそのまま通路の中へ、入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『通信不能、圏外です。』

 

 

手を離し、核を乗せたミサイルはそのままチタウリたちの母艦へ向かって進む。

 

 

 

(……大きい。)

 

 

 

薄っすらと見えるX字の大きな母船。その船にミサイルが当たり、爆発。その全容が晒される。

 

数え切れないほどのリヴァイアサン。距離があるせいで判別は付かないがおそらくチタウリたちが操る戦闘機、それがまるで靄のように見えるほどたくさんいる。

 

 

 

(……これは、駄目だ。)

 

 

 

私のスーツのエネルギーは切れていない。だからこそ鮮明に、正確に見えてしまう。

 

数の暴力。いくら母船を破壊されれば停止する軍隊だとしてもアレはその一端。

 

ロキというサノスにとってアスガルドへの策略の一つ程度の価値しかないものに貸し出せる戦力があれだ。つまりもっといる。もっと、もっとたくさんあの母艦は存在する。

 

この世界が原作と同じように進むかは私のせいで完全に解らない。

 

もしかしたらエンドゲームにすら進めないかもしれない、インフィニティウォーで負けるかもしれない、その前にサノスが攻めてくる可能性だってある。

 

 

「……これは、トニーのこと馬鹿にできないね。」

 

 

私は、まるで何かの恐怖から逃げるように。エネルギー切れで動けなくなったトニーを抱えて地球へと戻っていった。   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってきた!」

 

「今だ! 塞げ!」

 

 

トニーを抱えて何とか戻ってきたんだけど……、あれイヴちゃん? もしかしてエネルギーヤバい?

 

 

『はい、やばぁぃ………』

 

 

あ、アハァ。私もエネルギー切れちゃった。

 

 

 

……たしゅけて!

 

 

「このままじゃ墜落する!」

 

 

ソーの幻聴が聞こえた気がするけど今はそんな場合じゃない。ど、どうにかして助かる方法は……、あ。ないですね。は、はるくさま~! たしゅけてください!

 

 

そんな私の思いが通じたのか、目の前に飛んできて私たち二人とも抱えて救出してくれるハルク。ビルに手を掛けて速度を落とし、地面へ彼の背を下に落下してくれる。

 

 

『ハルクありがとー!』

 

 

私のスーツは二層構造、なのでトニーみたいにエネルギーなしで動かそうとすると……、かなり重い。というか動かせない。分離スーツだけなら何とかなるんだけどね。おかげさまで寝たきりになっちゃった。

 

 

 

 

そこにキャプテンとソーが走り寄ってくる。あれ、トニーだったら落下した時にすぐになんか言いそうなんだけど……。え、嘘だよね。

 

 

「大丈夫か!」

 

『私は大丈夫! でもトニーが!』

 

「……息はあるか!」

 

 

私は寝ころんだまま動けない、ソーがスーツの顔部分を急いで外しその顔が見えるようにする。キャップがその胸に手を当て……、ゆっくりと離れる。

 

 

『う、嘘だよね! ねぇ嘘って言ってよ!』

 

 

生きてるよね! 死んでないよね! わ、私がいたことで何か変化が起きちゃったとかじゃないよね! ちゃんと息してるよね! 何か言ってよ! ねぇ! ねぇ!!!

 

 

 

『GaaaaaAAAAAAAAA!!!』

 

 

 

「うわぁ! え、なに!? どした!?」

 

 

ハルクの咆哮、そしてそれに驚いて飛び起きるトニー。は、はぁぁぁぁあああああ、よかった。よかったぁ……、いや本当に。いくら知識あるとは言えあんまり当てにできないしホント心臓に悪いよ……。よかった。

 

 

「な、何がどうなった? 誰もキスしてないよな?」

 

『あ! 私する! やらせて! ちゅーしたい! ハルクちょっと悪いけどスーツそっちまで運んで! いま自分で動けないから! お願い! 一生のお願いここで使うから!』

 

 

一瞬で空気がゆるむ。そのせいか今日の戦いの疲れがどっと出て来たようだ、みな疲れた雰囲気を出し始める。え、ちょっと! 私本気なんですけど! というか出来たら死んでもいいというかたぶん死ぬと思うけど頑張ったしご褒美くらいほしいんですけど! ねぇ! ちょっと~!

 

 

「はは、はははは! やったな! あぁ、やった。みんなご苦労さん、明日は休みにしよう。今日は働き過ぎだ。……あぁ、そうだ。シャワルマって知ってる? 近くにシャワルマがうまい店があるんだ、一度食べて見たくてね。」

 

 

「……まだ終わってないぞ。」

 

 

「じゃあ終わったらシャワルマで。」

 

 

 

あ、トニー! 謝るから、謝るからさ! ちょっとだけエネルギー分けて! それか車のバッテリーでもいいからさ! ちょっと一度起動し直さないと動けないから! ねぇ! ちょっと! おいてかないで! ねぇ~!

 

 

「……ハルク頼んでいいかい。」

 

『……………わかった。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あがいても無駄なら……、酒をもらおうか。」

 

 

アベンジャーズ全員に囲まれたロキ。彼は絞り出したような声でそう言ったのだった。

 

 

 

 

 










これにて『Marvel's The Avengers』編は以上となります。皆様お付き合いいただきありがとうございました。

次回からは今回もカメオ編とかなり大事なお話、タイムスリップとマルチバースのお話を軽くするお話や、アイアンマン3、キャプテンアメリカウィンターソルジャーのお話も数話挟みまして、ドロッセル2の話に移っていきます。

こうご期待、ってやつです!



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