前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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指輪、そして襲撃

 

 

『やぁ、アレクサンダー。まずはご注文いただいたことを感謝するよ?』

 

「いやいや、こちらこそだツラヤバ。君と話が出来て光栄だとも。」

 

 

S.H.I.E.L.D.の理事を務める高官にして世界安全保障委員会とのパイプ役のアレクサンダー・ピアース。そのもとに通信が入る。厳重に守られた秘匿の回線、そしてもしバレたとしても相手側はただのピザ屋だ。サービスが少々“過激”だがな?

 

 

『君が目指している作戦を教えてくれないのは非常に残念だが……、まぁ私も色々企んでいるからね。今回はビジネスの話だけにする。そういうことでいいのかい?』

 

「あぁ、もちろんだ。我々としても君たちの領地に手を出すつもりはないからな。金というわかりやすいもので契約が出来ればと考えている。」

 

 

ザ・ハンドという組織。彼らは自身の国を離れ『ヤミノテ』という名でビジネスを始めた、暗殺に間者、もちろんデリバリーもしてくれる何でも屋だ。彼らが何を目的に動いているのかはその特異性から解らないが“単に依頼するだけ”ならこれほど使いやすい駒はない。

 

我々はインサイト計画を進めるために動いている。だが、奴のハッキング能力を鑑みた場合、根底から覆される可能性がどうしても避けられない。なんとしてでも排除しておきたかった。

 

そこで、一計を案じる。同じくシステムが乗っ取られる可能性があるトニー・スターク。奴と仲が良く、また業務提携を行ったことで結びつきが強くなったため警戒度がさらに上がった彼だ。これに対してA.I.Mが襲撃とエクストリミスの研究発表を行い、同時期に我々とヤミノテ合同で奴を排除する。まさに各個撃破ということだ。

 

我々の情報は奴に筒抜けである可能性を考えた上での合同作戦。日本でことを起こす場合何が彼らの気を悪くするか解らない。世界各地に潜み、訓練された兵士よりも脅威な上数がいるニンジャと敵対するのは避けたい、そして我々も奴の監視下にあるため多くの構成員を動かすことは難しい。数と質、そして今後の関係。これを金だけで使えると考えれば安いものだ。

 

 

ここで両者ともに屠れれば今後の計画が非常に楽に進む。そして計画が完遂した瞬間に奴らもろとも薙ぎ払えば問題はない。なぁにDNAの採取が出来なくとも怪しい所があればそれごと薙ぎ払えばよいだけのこと。

 

その他の組織も、国家も、すべてがひれ伏す。ヒドラによる星の支配がこの計画で完了するのだ。

 

 

『素晴らしい、私も彼女を排除するのには賛成だ。その依頼喜んで受けさせてもらおう。』

 

「感謝する。」

 

 

もちろん、失敗した場合の策も考えているとも。我々は『一つ首を刎ねられてもそこから二つ生えてくる』、これは計略を練る時にも当てはまるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまぁそんなことを考えているのだろうね。君にはもう一度感謝しようアレクサンダー、素晴らしき舞台装置だ。成功は成長を促し、自信を付けさせる。そして一度固まった自信は砕かれると簡単には戻せない。」

 

 

東京の隠された一画、そこに建てられた時代錯誤の城の天守閣にてザ・ハンドの頭領であるマツオ・ツラヤバは一人夜空の下にいた。

 

 

「ふむ、よい月だな。風流を感じさせる。」

 

 

宙を見上げればまん丸と肥え太った満月がそこに浮かぶ、だがまだ収穫には早い。熟成も必要だ。この国には“大は小を兼ねる”という諺がある。大きければ大きいほど良い、それは呪術の世においても当てはまること。

 

大きければ大きいほど影響は大きく、その破片はすべてを傷つける。

 

 

 

「人は、IFを望む。その者にとって受け入れがたいことがある時。強く、望む。本来ではただそれだけで世界に何か影響があるわけではない、だが君だけは違う。」

 

 

「ドロッセル、マルチバースの申し子よ。もし、君が望むならこの命すら惜しくない。」

 

 

 

右手を宙へ掲げ、手を開く。視界から満月が消え、影を作りだす。

 

 

 

「だが、代わりに利用させてもらうよ。たくさんね?」

 

 

 

小指に嵌る紺色の指輪、それが怪しげな暗い光を灯す。

 

 

 

「さぁ、舞台の始まりだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………そこまでやるぅ?)

 

 

一瞬現実逃避しそうになった美少女天才科学者にして億万長者予備軍ナルシスト……、ではないかな? ドロッセルお嬢様とは私のことだ!

 

はい、ふざけるのやめにして早く行動に移しましょうねぇ?

 

 

「イヴ! 地下避難道はどう? 生きてる!?」

 

 

大阪のオフィス街は緑の少ないコンクリートジャングルだ、そして地面の下には地下鉄沢山。それを利用して本社ビルには正面玄関以外にも外部に出る方法、地下道の建設を行政機関の許可を取らずに(普通に申請したらバレるからね?)勝手にやってたんだけど……。

 

 

『地下道の監視カメラに異常あり! おそらくすでに侵入済みです!』

 

 

だめか。となると籠城戦だね、外部への救援を求めてもいいけど時間がかかり過ぎる、近場の拠点も襲撃されてるかもわからんし期待しない方がいい。となると私のワンオペで何とかするしかないわけだ。

 

 

「地下道は閉鎖! 防御壁全部降ろしちゃって! あと一般職員には近場の部屋に入ること、その後は避難指示が来るまで動かないように通達! 警備部門は早急に装備整えて遅延戦闘と一般職員の避難誘導を始めて! あと戦闘する奴は私が来るまで勝手に死ぬの禁止!」

 

『通達します! それとマスター! ラボへのMark3搬入完了!』

 

 

その瞬間ラボ内の物品搬入用エレベーターの扉が開き、スーツが到着する。もし何かが起きた時にすぐに対応可能にしておくため、充電と弾薬補給は帰ってきた後すぐにやるようにイヴに言っていた。おかげさまで出来立ての顔がいつでも届くってわけ。全自動新しい顔射出機だ。

 

 

腕にはめている腕時計を操作しスーツに信号を送る。

 

 

腕部、脚部、腹部、背部、頭部。それぞれに分割されていた鎧たちが一斉に起動し私の体に纏わりついていく。手のひらに装着され腕まで展開され、指を覆っていく。脚部は膝に、そして足裏まで展開するように片足を上げてく。装着完了時に入れ替えだ。

 

腹部、背部も順に装着されて行き、元が分割されていたことなど解らないように流線的なフォルムへ。首裏から頭頂へ、そしてマスクが降ろされる。

 

 

「Tail、Come on!」

 

 

声と共に指を鳴らす。すると四本のTailが飛来し、頭部へと装着されていく。これまでの円錐状のものから幾分かスリムなものへ。より原作へ近づいているのが理解できるだろう。

 

 

そして、最後に。右足の太腿に金のリングが展開し、嵌められる。Mark3装着完了ッ、てね!

 

 

『システムオールグリーン、いつでも行けます。』

 

「OK! まず旅客機をどうにかしよう! その後ビル内の敵さん掃討! 一応大阪内の各基地に救援要請だけ要請しといて!」

 

 

イヴが連絡を飛ばし、私はラボに備え付けられたパネルを操作する。

 

するとそれまで窓一つなかった壁が横へと開きだし、外へと続く道が現れる。つまりボタン一つで壁が開閉して、お外へ直接飛び立てる設計ってわけ! 高さ的にここからラボに直接攻撃するには戦闘ヘリとかの飛行ビークルが必要だけど今日は見当たらないしね! 使っちゃいますよ~!

 

 

『お嬢様。』

 

 

横から声、顔を向けるとオレンジのボディを持つ小さな彼がこちらを見つめている。

 

 

「どうしたの、ゲデヒトニス?」

 

『御武運を。』

 

「ふふ、ありがと。……あ、ユキの護衛を任せてもいい?」

 

 

しっかりとした頷きを返され、少し頬が緩む。彼もイヴみたいないい子に育ってるようで何より。お母ちゃん嬉しいよぉ! ……あ、これさっき忘却の彼方に放り投げた奴じゃん、さっさと帰れ?

 

 

 

 

ではでは! お仕事の時間と参りましょうか!

 

脚部ブースターと背部ブースターを全力起動、私はこちらに向かって進んでくるジャンボジェットに向かって突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、イヴちゃん! 何が起きてるの!」

 

 

昼食後、つぐみと別れたのち社長室へ移る。ホントはつぐみの部屋なんだけど彼女はほとんどラボに籠りっぱなし。なのでほとんど私の仕事部屋みたいになっている。昼食の間に運ばれたであろう決済書類と大量のメールを見てげんなりしたが気合を入れなおして作業をしていた。

 

そんな時、急にビル自体が揺れ警報が鳴り響く。

 

 

『どうやら敵勢力が襲撃を仕掛けて来たようです。現在対応の方とマスターへの連絡を行っております。ユキ様は指示があるまで待機のほどを。』

 

「しゅ、襲撃ぃ!?」

 

 

た、たしかつぐみと戦ってる敵のニンジャ集団がザ・ハンドって人たちで。味方の人が入院している病院に爆破テロ起こすぐらい(実際起こしたらしい)手段を選ばないって言ってたけど! ここ無関係な人たくさんいるんだよ!

 

 

『それと、パニックを避けるため他職員には伏せていますが旅客機がこのビルめがけて直進しております。』

 

「ふぇ!」

 

 

脳裏に浮かぶのは例の事故。まだ私たちが小学生ぐらいだったころに起きたテロだ。このビルにはアメリカから出向している人もいる、パニックになって二次被害を起こさないようにするその判断は正しい。でも、だったらより早くここからみんなを逃がさないといけない!

 

 

「イヴちゃん! 出入口はどうなってるの!」

 

 

靴をオフィス用のヒールから通勤に使うスニーカーへ変える、多分つぐみは被害が大きくなる旅客機の方へ向かうはず。そして警備の人たちは襲撃者の対処、ならこの会社を任されてる私がするべきなのは避難誘導だ。早く向かわないと。

 

 

『正面玄関、資材搬入口、緊急避難地下道すべて使用不可です。』

 

 

エレベーターは一階にも続いてる、となるとすでに封鎖されたはずだ。階段の方に走りながら携帯端末からホログラムを投影する、イヴちゃんの説明にホログラムの絵による説明。玄関はちょうど攻撃を受けてるし、資材搬入口は襲撃者を発見したため封鎖、地下道の方も同様。……となるとどうすれば?

 

このビルは頑丈らしいけど旅客機がぶつかってきて無傷になるとは思えない。となるとイブちゃんが予測している範囲とその上の階に避難するのは駄目。かといって下の階に避難すると襲撃者たちに狙われてしまう可能性が出てくる。どうやら結構押されているみたいで下の階に避難すると狙われてしまう。

 

 

「避難ができる場所のリストアップと避難状況、出して!」

 

『かしこまりました。』

 

 

避難場所はこういった時を考えてつぐみが作っていたらしい部屋。何でも通常時は普通の部屋何だけど、緊急時には部屋と部屋を仕切る壁が収納されて大人数が避難できるように、なおかつその部屋の周りを特殊な合金で保護するみたい。

 

階を一つ一つ下りながら、声を上げて避難を誘導する。出来るだけ不安を煽らないように言葉を選んで。イヴも館内スピーカーで呼びかけているけどこういったものは人の声の方がいい時もある。階を降り、逃げ遅れた人がいないか部屋を一つ一つ確認しながら降りていく。

 

 

「……よし、誰もいないね。」

 

 

つぐみがスーツを着て旅客機の対処に向かってからはイヴちゃんの労力をあんまり割いちゃいけないと思い生体反応が解るアプリだけ起動してもらってそれ以外はオフにした。避難誘導や未だ爆発による振動が度々聞こえる階下の戦闘もイヴちゃんが指揮している。彼女が万全だったら彼女自身で探してスピーカーとかを使って避難誘導とかもできただろうけど今は緊急時。私ができることは私でやらなきゃ。

 

 

「あれ、生体反応……。」

 

 

この階最後の部屋をアプリで確認した後、廊下に出るとさっきまでなかったはずの反応が検知される。そこまで広範囲を調べられないものだけど精度はつぐみが作ったからいいはず。上の階はさっきまで全部見たはずだし……。

 

そう、思考を回そうとした瞬間、何かを無理やり開くような音。目線は廊下の先にあるエレベーター。……もしかしてッ!

 

 

私が行動を起こすよりも早く、その扉は開け放たれる。真っ黒な特殊部隊のような武装をした人たち。ここから見える限りで6人。そして私がその姿を見れるということは相手も私を見ているということ。

 

 

銃が、向けられる。

 

 

 

 

 

 発砲音。

 

 

 

 

 

思考が加速する。

 

訓練なんか受けていない私がすぐに動くことはできない、そして相手は6人。その内三人がこちらに銃を向けて同時に発砲した。音は複数聞こえたからたぶんマシンガンみたいなたくさん打つ銃。なおさら逃げられない。

 

どうしても生き残れない、そう判断してしまった私はこれから来る痛みに耐えるため目を閉じようとした瞬間。

 

 

視界の端に黄色い影。

 

 

 激しい金属音、弾が弾かれる音。

 

 

 

『襲撃者を多数発見、これより排除します。』

 

 

 

 

小さな、勇者がそこにいた。

 

 

 

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