「はい、現在被害状況は各種機関や警察の皆様と確認中ですが、我が社のビル内では幸い死者の方は出なかったと報告を受けています。しかしながらハイジャックされた旅客機の方では被害が出てしまいました。詳しくは府警の方からご説明があると思います。」
「何か謝罪の言葉はないのですか!」
「ではすでにさせていただきましたがもう一度お悔やみ申し上げます、そして謝罪の言葉になりますがあなたのようなルールすら守れない方をこの場に呼んでしまったことを謝罪させていただきます。さきほど説明させていただきましたが質問などは後ほどお時間を取らせていただいていますので皆様もご協力の方よろしくお願い致します。」
あ! は~い! みんなお茶の間で見てる~??? 日本の警察がよわよわなせいで私が表立ってご報告しなきゃいけないドロッセルお嬢様だお☆ なんで私が記者会見開かないといけないんですかね……、私被害者だぞ? 事件の被害できるだけ抑えた功労者だぞ? 休ませろ?
あと壇上でこっそりスマホ弄ってるんだけど、ついでにさっき意味わからん発言した記者。ただのアホかヒドラか解らんからイヴに背後調べさせないとね?
旅客機のエンジンを吹き飛ばした後、二人で全力で速度を落としなんとか河川敷に不時着できた。が、その代償として二人とも完全にエネルギー切れ、さすがにジャンボジェットを二人で運ぶのは無理があったみたいで空中でブースターが切れそのまま地面へ。
速度を落とすために地面を転がり、場所が場所だったため泥だらけ。まぁ体は痛かったけど二人ともごろごろ転がってどろんこまみれ、何もおかしくないのに旅客機を何とか出来た喜びから大声で笑い合った。
まぁその後裏で色々戦闘関連のことを任せてる石井っち、彼が本社ビルに救援として駆けつけてくれたみたいでそっちも状況終了。『動けないね~?』みたいな雑談をしながら旅客機から避難していく乗客さんを眺めてたら彼が迎えに来てくれたので、スーツ脱いでトラックに無理やり乗せて帰っていったわけ。……ユキに絶対『遺書』のこと聞かれると思ってたんだけど見てないのかな? それとも気を遣ってくれてるか。今は被害の出てない本社ビルのフロアで休ませてるけど帰ったら説明しよっと。
そんな感じで撤収したら想像以上にヒドイ状態、まぁビルのダメージとかそういうのは時間とお金があれば直せるしそれはそれでよかったんだけど人が酷い。救急車が片手で数え切れないほど来てるし、使い物にならないお飾りパトカーは3ダース。最後に何を考えているのか解らない野次馬に記者どもが大量にやってきている。そんな感じだから仕方なく急いで記者会見開いたわけですよ。変な噂やデマが広がるとヤバいですし、株価の暴落はいいとしてもすぐにリカバリーしないといけない訳ですから。
まぁだ全然後始末終わってないのにねぇ?
「あ~、くっそ疲れた。」
「お疲れさん、お嬢。」
「お、石井っち。ユーもお疲れ~、あと今日は無理してきてくれてありがとうね? 両方何とかなったの石井っちのおかげだわ。」
会見後、本社ビルから離れた場所で会見を開いたため車を回してくれた石井っち。いつもならスーツ着て飛んで帰るんだけどMark3もMark2もメンテ直行。だから普通にありがたい。気が利くねぇ石井っち、救援信号見てすぐ来てくれたしホント頼りになるわぁ~。
「まぁ襲撃はいつものことだから別にそれはいいんだが……、実際に目にしたら本当にアレは驚いたぞ。いつものニンジャ相手が可愛く見えてしまうとは感覚がおかしくなってきたな。ははは!」
「あ~、多分今日の敵さんアベンジャーズ案件だから感覚直しておいてね? 今後あんまり組の方には迷惑かけないようにするために色々やってみるから。さすがに組全体巻き込むわけにもいかんからねぇ……。」
これまで何度かそっち案件のために連れて行ったヤクザ君や作戦に参加してくれた子たちは全員事前に内容を説明して許可を貰ってから派遣している。今アメリカでトニーを裏から警護してくれてる子達とかもね? もちろん明かせないこともあるから部分的にしか言えないこともあったけど。
ヤクザは対ニンジャ組織、私がトップに収まってるけど最初の目的を間違えちゃだめだからね。
「そうか? 俺としちゃぁどんどん巻き込んでくれって感じだけどな。お嬢が色々手を回してくれたおかげで裏の住民である俺たちが表で飯食ってても変な目で見られることもなくなってきたし、戦闘での被害も格段に減った。武装が充実してるし、病院と契約を結んでもらったおかげで怪我人が手当できずに死ぬこともなくなった。いいことだらけだぜ?」
「そうかなぁ?」
「そうともさ、……一人で何抱え込んでるか知らんが頼っていいんだぞ?」
……ありがたいねぇ。どっかウチの子達の事守る対象として見過ぎてたってことかな? それとも単に心配されてるか。まぁいいや、じゃあ早速頼み事しよ。
「んじゃ早速、知ってると思うけどユキが今日からヒーローデビューいたしました。」
「うん? ……あぁ、そうだな。」
ヤクザの親分が乗りそうな黒い車、防弾ガラスなどで完全に固められた車内で私たちは会話を続ける。傍から見たらどんな感じなのか結構気になるがあまりよい絵図ではないだろう。この世界において控えめな身長の私と老いは見えるもののまだまだ現役で前線に立つ戦うオヤジのツーショットだ。……事案かな?
「つきましては石井っちの口からこれまでユキに伏せてたニンジャ関係とか裏の事情も色々全部話しちゃってもらっていい? 私これからMark2を完全にユキ専用機としてチューニングするから。」
「……それだけでいいのか?」
「戦闘訓練とかしてもいいけどちょっとね?」
今回のヒドラ&ザ・ハンド襲撃、今回の襲撃の規模はジャンボジェットアタックの陰に隠れがちだけど控えめ、アイツらが本気で攻めてきたら戦闘ヘリ部隊を大量に持ってきてビルごと破壊するとかしてもおかしくはない。
と、なると今後敵の策が用意されているか、本気になれない理由が存在するとか。例えば関係性が良好じゃないけど私がうざかったから一時的に手を組んだとかね?
「もう一度攻め込まれたときに私と同等の遊撃戦力になれるユキがダウンしてるのはダメかなって。ほら石井っちの訓練厳しいじゃん。」
「そうかぁ?」
「そうそう、鬼教官って裏で言われてまっせ?」
納得がいかないらしく首を傾げまくってる石井っち。新兵というか新入り向けに課される訓練があるんだけどアレヤバかったからなぁ……、一応上に立つ人間だし生身での戦闘能力欲しかったから他の新入りのみんなと一緒に期間限定で参加したけどマジで死にかけたもん。自衛隊退役して何故かウチに入ってきた子とか『前の職場の3倍ぐらいキツイ』って言ってたからねぇ?
「あ、そうだ。今回の襲撃……、あ。ビルの方ね? 規模の割には被害が思ったより少なかったんだけど何かあったのかな? 石井っちから見てなんか変なことあった?」
「そうだな……、今回は防衛ということもあって取り逃がした奴が結構いたんだが……、逃げだした奴はニンジャが多かったと思う。それにヒドラだったか? 奴らの攻撃は何か憎しみのような感情を感じられたがニンジャどもはあまりいつものような気迫を感じなかった。」
「なるほどねぇ?」
「まぁ俺の感覚の話だから間違ってる前提で頼む、頭の片隅にでも置いといてくれ。」
「おっけ~。」
となると、私はヒドラからもザ・ハンドからも恨み買ってるだろうけど今回の襲撃の主導はヒドラ、ニンジャは付き添いって感じか? それともビル内に何か仕込んでたか。
こりゃぁMark2の調整だけじゃなくビル全体の確認もした方が良さそうか。
う~ん、お仕事沢山だぁなぁ……。
◇◆◇◆◇
「ただいまぁ、っと! イヴ、仕事してる?」
『はい、もちろん。マスターよりはしてますよ?』
「おっとミスコミュニケーション……。さて、ビルの復旧状態はどうかな?」
自分のお家兼仕事場である本社ビルラボに帰ってきた。まぁさっさと仕事終わらせて体休めたいし、帰ってきた後分かれてユキに色々教えに行った石井っちのところにも顔を出したい。そのためにはまずやることやらないといけないんですけど……。
『現在3%まで調査完了、ビル内の異常を確認しながらの復旧作業なため作業は依然として進んでおりません。』
「まぁそうだよね。あ~、いったいどこの誰がこんなにややこしい設計にしたんだか? ……まぁ私なんだけど。」
ハイツレギスタの本社ビルの役割、それとファイアボールという組織の防衛及び生産拠点としての役割、あと私の趣味とかそういうの+アベンジャーズ専用の中継拠点としての役割といった出来そうな目的をこれでもかとぶち込んだのがこのビルだ。
そのため内部の防衛や外部に対する攻撃に対応できるようにしているし、不定期にビル内のフロアをランダムで入れ変える機構も作った。イヴによって管理されたこのビルは地上50階・地下25階、地上はハイツレギスタとしての機能や私の自室やラボ、あとアベンジャーズメンバーに貸し出せる部屋とかを用意している。対して地下はファイアボール用の施設、表には出せない武器とか組織員の訓練場や宿泊施設。装備生産工場にあと私のガレージとかがある。
「おかげさまで設計した本人が迷うし点検とかめっちゃ時間喰うし……、はぁ。イヴがいなかったら何徹必要なんだか。」
『マスター、愚痴はいくらでも聞きますから早く手を動かしたらいかがでしょうか? Mark2を早くユキ様用にチューニングしないと、と言ったのはマスターですよ?』
「はぁ~い。」
さて、イヴにも怒られちゃったからさっさと作業しますか。
いま私がやってるのはMark2、その調整。さっきまでユキが着ていたMark2、その改良型は所謂共用タイプ。私が現在常用しているMark3が何らかの理由で使えなくなった時分離スーツ『チャーミング』と併用することで着用できるMark2は分離スーツを用いないことでユキがそのまま着用できるように調整していた。
でもそうなると余計な機構が付いているためMark3とかと比べると性能は落ちる。今からやるのはその余計な機構を排除してユキ用にさらに使いやすくする作業。ゲデ……、ササダンゴ君にさっき聞いたんだけど『緊急時にスーツのサポートをするのはいいけど自身の意思としてはこの体だけでいい』ということだったので新しいAIも作ろうと思っている。
「まず操作性をよくして感覚で動かせるようにマニピュレーターの変更と脳波パターンの察知からの解析及び学習プロトコル用意して、武装もガトリングを排除して……、ドローンにしてしまうか。私はトリガーハッピーの気があるけどユキは違うだろうしそっち方面の技術も試したいことがあったからちょうどいいや。」
ホログラムを操作して一度すべてのパーツを分解する、内部にある分離スーツ関連のものを外してMark3でも使った機構をそのままぶち込む。あとはユキ用にサイズを調整して関節部の稼働をチェックする。うん、よし。あとTailの調整だけどバスター・ランチャーをⅡからⅢへ変更してリアクターも損耗が見えるから変えとこう。AIは……、新しく作るんじゃなくてイヴから派生させるか。そうした方が楽だしデータのインプットにも時間がかからない。やったねイヴ、新しい妹ができるよ?
「あとはカラーだけど……、さすがに白は駄目だよね?」
ある程度形も決まってきたので外装とカラーを決める、ユキの名前から決めると青系統の色になるけど彼女の性格からすると暖色系が好ましい気もする。ユキがいるおかげで助かってることも多いし、支えてもらっている。だから太陽みたいにオレンジとかそういうの?
「ユキが武闘派だったら問答無用で黒にしたんだけどねぇ? どっちかというと彼女がホワイトだしダメか。……本人に聞くべ。」
さっきまで開いていたホログラムを一度どかし通話アプリを立ち上げる。ラボにこれがあるおかげでスマホいらず、手ぶらフォンだ。
「あ~、ユキ~? いま電話大丈夫?」
『あ、うん! 今石井さんから授業……、あ、大丈夫ですか? はい、大丈夫みたい。それでどうしたの?』
「ユキ専用のMark2、それのカラーどうしよっかな、って。白以外なら何でもいいけど何がいい?」
『え、じゃあ…………。青で。』
「あ? そう? ならそうするね。お勉強頑張って~!」
ユキの返答を聴きながら通話を切る。……そっか、普通に名前つながりで青色でいいのね。それかユキって青好きだっけ? 何か好きになる理由があったのかもしれんけど、私は覚えてないしミーがかかわりのないとこでなんかあったのかもね。
よし、じゃあメインカラーも決まったしそれで行こう!
今後ペッパーが着る予定の『アイアンレスキュー』は濃い青と金の配色をしている。そこからちょっともらって濃い青と……、水色にしようか。この2カラーで色塗りしていきましょう。
「コードネームは……、ユミルテミルで。」
ま、私の名前元である『ファイアボール』に出てくるドロッセルお嬢様の親友。その名前を頂くとしましょう、『ファイアボール』のIFを描いた『ゲボイデ=ボイデ』では茶色な巨大メカだったけど……。まぁ青でもいいよね?
私より大きいからユミルでイヴと同じ始まりの意味も追加。あとテミルはミーミルをもじった奴で北欧神話に出てくるオーディンの相談役にして賢者の神。賢さでは負けないけど親友としてその意味を追加したってことで。……この世界にミーミルいないよな? 大丈夫だよな? テミルだし違う名前ってことになりますよね?
「おk、じゃあイヴ。製作お願い!」
『かしこまりました、明日の朝には完成予定です。』
「あいあい、じゃあユキのお勉強の様子でも見に行こっと。」