「乗る時にも思ったけどどうやってチヌーク手に入れたのつぐみ?」
現在大阪から東京への移動中。私とユキ、あと大阪にいた石井っちをはじめとする陸上部隊十数名と物資は日本の大空をゆっくりと進んでいる。乗っている機体はチヌークと呼ばれるヘリコプター、ほらあのエクレアみたいなボディで前と後ろにプロペラついてる奴、アレね。私とユキはスーツを着たまま、他の人たちは完全武装&パラシュートで搭乗中、一応光学迷彩でステルス中だけど落とされる可能性もあるからね?
「うん? まぁ一応私トニーとお友達だし? それ経由で購入して後は『自衛隊に納入する前に改造、その試験』っていう名目で現在保有中、買うのも飛ばすのも自由ってわけですねぇ。」
「あぁ、だから自衛隊からの依頼とかあったのね……。」
経営面をほぼ全部任せていたせいかすぐに納得してくれるユキ。日本じゃ『私個人』に収まる武装、ほらスーツとかね? それだけだったらまだギリギリ市民は許容してもらえるんだけど、『ファイアボール』は無理だからね。ヤクザの武装組織だし。
なので石井っちが持っていた自衛隊への伝手で、色々こういう隠し事も出来るようになってるわけです。基本は陸上用のものばっかりだけど、一部チヌークみたいな航空戦力も保有している。あとS.H.I.E.L.D.からもらったクインジェットもあるけどちょっと搭載量過多になっちゃってね、今日はこっち。
「こういう航空機は両手で数えるぐらいしかないけどね~。……あとユキなんでチヌークなんてしってんの?」
「アニメで見た!」
「……あぁ、なるほど。」
そういえばユキ、アイアンマンで目を輝かせるレベルの理解のあるオタクだったね……。前世があるにしても私は忘れてることの方が多いし、今世は研究に時間使ってるから今何が流行ってるのか全然解らない。……もしあの場所がホントにザ・ハンドの本拠地で罠もなかったら国内での問題はある程度片付く。暇もできるはずだからユキに布教でもしてもらいましょうかねぇ?
「よし、じゃあイヴがある程度パワポ作ってくれたしここにいる君ら相手に練習させてもらうよ? 全員インカムとフェイスディスプレイの電源入れて~。」
エンジン音が鳴り響く中、ヘルムの耳部分を叩くのを見せながら機内を見渡す。ユキと会話していたが、こういうのはさっさとやっておいた方がいい。全員がヘルメットをかぶりonlineになったのを確認した後話を始める。
「まず、今日なぜ急に行動を起こしたかというとザ・ハンド。ニンジャね? 彼らから情報のリークがあったのが理由。内容としては日本に遊びに来てくれたヒドラ君とザ・ハンド本拠地の正確な位置とその見取り図。ヒドラ君の方は全部マーキングして“然るべき対処”を指示しておいたから大丈夫だけど問題はこっちね?」
私の語りに合わせてイヴがスライドを進める。ヒドラ君の個人情報の上にバッテンを沢山乗せた後は、リークされた敵本拠地だ。
「ちょうど今ね? 東京にいる子達にちょっと確認してもらったんだけど、マジでこの建物というか山城? がありました。天守閣付きで内部で人が元気に行動してるレベルのね? リークされたデータとかも改竄された跡が見えないし本物って可能性が高い。……問題なのは『なんで隠密行動が出来るニンジャがわざわざ本拠地近くまで来たウチの子を見逃したのか』ってことね。」
ニンジャは、忍者だ。所謂アニメみたいな忍法を使うヤツもいるにはいるがその多くの構成員が闇に紛れてこちらを窺う者ばかり。山の中という遮蔽物が大量にある場所なんか奴らの独壇場、ちょっと鍛えたからと言ってあんな場所でヤクザなんかただのおやつ。だけど見逃された上に城内部で敵さんが活発に活動しているのを見せつけられた。
うん、正直部下たち動かしたの失敗だったかなって思ってる。……でもニンジャ放置するわけにはいかないんだよなぁ!
「ま、滅茶苦茶低い可能性としてたまたまニンジャが見落としていて、偵察してくれた子が類を見ないラッキーマンだった可能性もあるけどね?」
「ないだろうなぁ……。」
私の楽観視するようなおふざけの発言に否定を入れる石井っち。だよねぇ。もしこれが本当だったら偵察してくれた彼を『ラッキーマン』として表彰してやろうと考えながら話を進める。
「でも罠と解っていながら敵の本拠地、もしくは巨大拠点を放っておくわけにはいかない。それに罠だとすればちょっとつじつまが合わないような気もしててね? ヒドラとこの本拠地リークは同一のところから来たわけだから……、うん。まぁとりま罠前提で攻勢掛ける感じでよろしく。」
攻めるにしても若干及び腰での戦い、城ごと崩壊させて生き埋めとかありそうだしそういった爆発物の警戒とかしながらね? 進めていく感じで。
「あ、つぐみ。ちょっといい? これだけちゃんとした場所と見取り図があるんだったら空爆とかそういうのできないの?」
「それがね~。」
一応無理やり自衛隊引っ張ってきて空爆とか、スターク社製のジェリコ(ミニサイズ)とかぶっぱして全部平らにすることもまぁ可能ではあるのよ。でもね? 残念ながらこの敵本拠地がある山の周りは市街地。ちょっとした街になってる。『ここを破壊しないと世界が滅びる~!』とかだったら切り捨てる決心もついたかもしれないけどさすがに無理。おとなしく歩兵運用と遊撃の私&ユキで何とかするしかない。
「なるほど……。」
「ま、そういうわけで。やることとすればまぁ……、まず最初に私とユキとでたぶん対空とか意識したのかな? そういう砲台とか全部排除していけそうになったら侵攻開始って感じ?」
◇◆◇◆◇
さて、あれから東京につきまして。布陣やら周辺住民の避難やらをした後、逃げ出せないように山をぐるっと囲むとか。色々した後にユキと二人で元気よく突撃したわけなんですけどね?
「あぁ! もう! ニンジャが近未来兵器使うなワレェ!」
『ヒドラからのレンドリースでしょうか。キューブ経由の技術が見受けられますね。』
「冷静に解析してるばぁッ! っぶな!」
なんとニンジャくんとヒドラ君が手を取り合って防衛戦してるではありませんか! あと演技かもしれんが襲撃時の慌てっぷりがガチなやつだ。
んまぁ、にしてもさぁ! なんでヒドラ君ニンジャにレンドリースしちゃうんですか! ニンジャよニンジャ! 機械によわよわ過ぎるせいかネットなんか全く使ってない奴らですよ! イヴがどんなに探しても『ない』って結論を付けたニンジャですぞ! 実際小さい拠点潰した時パソコンすらおいてなかったし、遺品整理しても誰一人携帯持ってなかったニンジャですぞ!
そんな機械よわよわニンジャに四次元キューブかチタウリのどっちかを参考にした兵器。しかも小型の銃器のみならず、大型の対空砲台なんかプレゼントするんじゃねぇ! あとなんでウルトロンで出て来たエネルギーシールドまで貸し出してんの! おバカ! しかも君ら仲わるいんじゃなかったの!? なんで仲良く一緒にお城守ってんの!? 何? あのリークされたのは尻尾切りだったわけ? というかいつの間にこれだけのヒドラ運び込んだんだよ! こちとら国内の入国管理官に人送って逐一確認してるんやぞ! いつ来た!? 自衛隊とイヴの二重防空システム通り抜けたんか君ィ!
「ユミル~! まだ見つからないの~!」
『ちょ、ちょっとまって! え、えっとバルタザール君はこっちの排気口から……』
山城の設計としては本丸とそれに続く二本の道。この城を落すには本丸をぶち抜けばいい話なんだけど残念ながらシールドがそれを邪魔する。役割分担としては私、ドロッセルが本丸以外の二の丸三の丸っていうのかな? そういった拠点上部に設置された砲台の注意を引きながら雑兵(ヒドラ&ニンジャ)の数を減らす。ユキのお仕事はその間にドローンを使って本丸のシールド、それを維持するために必要な動力源を発見&破壊すること。
「威力がッ! 高いからッ! 避け中心なのがッ! めんどいッ!」
『ルート指定いたしましたマスター、実弾兵器や苦無、あと石も飛んできていますのでご注意を。』
「時代狂ってて頭おかしなる! 石投げんなッ!」
叫びながら光弾をよけ、攻撃してきた場所にリパルサーをプレゼントしてあげる。また銃弾はそのまま受け、投げて来た苦無はサポートに従い一度受け止めそのまま投げ返す。見事に眉間にヒットでストライク。石? そんな石器時代の奴なんかしらん。
あ~、それにしてもなんでヒドラ君お友だちに技術提供しちゃうかなぁ……。砲台のは喰らうとたぶん装甲が一部吹き飛ぶし、小銃タイプは凹むしねぇ? 熱反応と特徴的な音があるから避けること自体はできるんだけど数が多いから面倒極まりない。
「イヴ!」
『加重します。』
さっき示されたルートに沿って急降下、目指すはさっきからうるさいヒドラ製砲台。すでにエネルギーチャージが完了しており、私めがけて発射されようとしていたが……、そこで加重力。Mark3の真骨頂である反重力システムを反転させ更なるGを加える。それと同時に砲身を下に蹴りつけ、地面に着弾。
辺りが吹き飛ばされるが私には関係ない。砲台を壊せたことの方がプラスだ。
『残り5基、ユキ様の作業は未だ進展がないようです。』
「多いぃ……、石井っち! そっちはどう!」
この山城の城門前にてニンジャとヒドラの混成軍と戦ってくれている石井っちに通信を繋げる、さすが本拠地ということでかなり敵の数が多いが、彼らが頑張ってくれているおかげで『手が付けられないほど多い』から『ギリギリ対処はできるが多い』までマシになっている。
『こちら城門前、数の面ではこちらが上回っているが、装備の差がなくなったことや乱戦気味のため被害が出ている。……そろそろ力押しした方がいいか?』
「いや、まだ待って! 出来るだけ引き付けてくれると助かる! こっちは砲台をってじゃまぁ! ちねぇ!」
こっちに寄ってくるニンジャの攻撃をバク転で回避しそのままを肩の小型ミサイルで排除。お口が悪いのはご勘弁。周りには身内か敵のどちらかしかいないしゆるちて?
「砲台全部潰してシールド外れたら私たち二人で本丸に突撃する! 私たちが内部でかき回してるタイミングで指示出すから総攻撃はそん時!」
『了解した。』
あ~、数が多い! 全部バスター・ランチャーで吹き飛ばしたいけどそうなると後続の石井っちたちが来れないしなぁ……。地道に潰すしかないのがなぁ……。かなり立派な本丸でなんでこれまで発見できなかったのかってサイズ、さすがにアレを一人二人で攻略するのは無理。人手がいる。
シールドの方だけどユキの方もドローンという手の数はあるだけど如何せん範囲が大きい。最悪山の中全部(内部も)を探さないといけない。初めての戦闘だし色々緊張してるだろうし急かすのはあんまり止めとかないと。
一応ユキの方に敵がいかないようにすること、砲台を城門前で頑張ってる石井っちたちに向けさせないこと、石井っちたちが攻められるように場所を整えること。私がここで頑張ることで三つの利点があるわけだし頑張らねば。
『やはり長年戦ってきただけあって相手側も対処しているようですね。リークは見取り図のみで武装や兵器の場所は記載されていなかったのが残念です。』
「あったらラクチンだったのにね、っと! にしてもこの必死さ見てると罠じゃなかった感じですかね? それとも下の雑兵には何も知らされてないのか?」
たぶん後者だろうなぁと思いながら突撃を敢行してくるニンジャとアンブッシュ! してくるニンジャのおむねに奇麗な穴を開けてあげる。頭を吹き飛ばして上げてもいいんだけどそっちだと口径的に色々吹き飛んじゃうんだよね。見た目わるいし汚い。だから外側を丸っと焼いてくれるリパルサーでの胸貫が一番のお気に入りなんです。……これだと私が猟奇殺人者みたいだな。
「まぁ殺してるのは違いないか。さぁ~って次の砲台壊すかぁ……。」
狭間、あのお城にある三角とか四角の穴ね? そこに設置されてる機関銃とかも全部破壊しとかないと被害が大きくなるしやること多いですねぇ。あ、今度はヒドラ君が寄ってきたね。ご注文は何がいい? チーズ? ならちょうどそこにあった機関銃で用意してあげるからちゃんとお食べよ? ちょっと真っ赤だけどたぶんタンパク質だしだいじょうぶ、ヨシ!
『まだ本丸攻略もあります、エネルギー残量はまだ余裕がありますがマスターのスタミナ切れが考えられますので注意してください。』
「あいよ~!」
◇◆◇◆◇
「カスパール君! そっちはどんな感じかな!」
『現在障害となる敵を殲滅中、捜索作業の進行に遅れが出ております。大変申し訳ありません我が主。』
「解った、メルキオール君ドローンの護衛を割いてシールドのジェネレーター捜索に回して! 私は大丈夫だから!」
『かしこまりました。』
石井さんたちが戦っている城門前。つぐみ……、いやドロッセルが対処している城内とは違う場所。山城から少し離れたここから私はドローンたちを動かしていた。周りは木しかない森の中、本丸に掛かるリパルサーの攻撃を簡単に跳ね返してしまうシールドの動力源を破壊するために。
建物のスキャンだけなら簡単に終わったがそれらしいものは発見できなかった。となるとこの山のどこか。もしくは地中に高出力のエネルギーを生産する動力炉があると考えられるらしい。山全体のスキャンとなると時間がかかる上、キャパシティ的にスーツのサポートが切れてしまう。そして地中深くにあった場合発見できない可能性が高い。そしてこの付近は何故か人工衛星から発見できないようになっているらしく空から調べることもできない。
だからこそ地道にドローンとかで探さないといけない。
「ユミル~! まだ見つからないの~!」
『ちょ、ちょっとまって! え、えっとバルタザール君はこっちの排気口から……』
ちょうど地下へと続く排気口みたいなのを発見したところでドロッセルからの催促が入る。最初の突入は一緒にしたけど本丸に謎のシールドが張られていたのが発覚した後はすぐに別行動になった。一人で城内部の敵を倒しているわけだから早く終わらせて手伝いに来てほしいのは解るけどちょっと待って! まだ私ドローンの動かすの慣れてない! もちろんスーツも!
『我が主、このドローン8号機が侵入した排気口の先から高エネルギー反応があります。』
「……! わかった! カスパール君応援にあと2機回して上げて!」
『かしこまりました。』
つぐみが言うコンバット・ドローンの雛型。私のTailに内蔵されたその最後のナンバリングである8号機が何か見つけたみたい。まだ確証は持てないけど高エネルギー反応があるってことはシールドの動力源じゃなくても何かは存在してるはず。
「とりあえずそれを壊さな……。」
『我が主、敵に発見された模様、数20。』
「ッ!」
つぐみから『護衛に残しておいた方がいい。』と言われたドローン二機はすでにこの場から離れ救援に向かわせてしまった。地上を探索中が2機、地中を探索中が3機、敵と遭遇してしまったため戦闘中が3機。AIのサポートの内二人、飛行を担当するバルタザールと攻撃を担当するカスパールはドローンの操作中のため手が離せない。探索を中断して全体に迷惑を掛けることは避けたい。
(全部が全部AIの子達に頼れるわけじゃない、自分で何とかしないと……、いやできないと。)
『来ます。』
全てのドローンをこちらに戻す前に敵がやってきてしまう。そう判断し武装の起動を命令したのと、視界に敵が入り込み囲まれていることを把握したのがほぼ同時。
『小型制圧用ミサイルが使用できます。いかがいたしますか?』
「お、おねがい!」
よくドロッセルが使っているリパルサーで戦うのかと思ったが、スーツのメインサポートをしてくれるメルキオール君から提示されたのはミサイル。こんな大量の人に殺意を持って囲まれるのは初めてだった私は動揺したのかすぐに許可を出してしまった。
ディスプレイに表示されていく敵の忍者と兵士みたいな人たち。私がワッ!ってなるのと、正面の人達複数人がいつの間にか刀を抜いて突撃し始めたのが同時。ロックオンが完了し肩のミサイル発射口が展開されたのと、私に銃弾が当たるのが同時。
そして私の目の前で刀を振り上げる忍者さんと、発射されたミサイルがその人の頭に着弾し爆発するのも同時。文字通り、弾け飛んだ。他の人も全部弾け飛んだ。
「え……。」
目の前が真っ赤。ちょうどカメラのところに飛び散ってしまったのか元々何だったのか考えたくない肉片。足元には首から上がなく、一つ大きくはねた後は動かなくなった死体と使い手をなくした刀。少し目線を逸らせば同じような首なし死体と使い手のいない武器、そのすべてが赤い何かよく解らないもので装飾されている。
『状況終了です、我が主。』
「…………ごめんちょっと吐く。」
その後、胃の中のものを全部出し切ったけど、まだ何か出そうとする私の体がようやく落ち着いてきたころに、排気口の先でスタークインダストリー社製のアークリアクター複数を発見。AI君たちのおかげでS.H.I.E.L.D.名義で購入されていたはずのリアクターすべてを破壊し報告が来たのと、ドロッセルから城内の砲台の全占拠が伝えられたのが同時。
どうにかしてこの口に残る胃酸を濯ぎたい思いを抱きながら、私はドロッセルと合流するために。
ドロッセル
「……!(あ、そういえば三賢者ってイヴのこれまでの蓄積データとかを元に作ってるわけで。そのイヴは私の攻撃方法を元に考えたり私のちょっと過激なやり方を元に学習して成長してるわけだから……、ユキにはちょっと過激すぎたかも。)脳味噌パーン! とかおむねに奇麗な丸さんかけるかな? とか 達磨さんであ~そぼ、とか普通にやってたしなぁ……。」
ユミルテミル
「【規制音】。」