前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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合流、そして攻城戦へ

 

 

 

「あ、ユキ。ジェネレータの件ありがと。あとそれ返り血だよね?」

 

「……言わないで。」

 

「あ~、そういえば初めてだし耐性なかったか。ゴメンね?」

 

 

やっぱり急いで作ったせいか、三賢者の性能というか、“思いやり”に難があったみたいで。私だったら別に気にしないというか慣れてしまったグロテスクな風景もユキにとっては初めてで忌避するもの。ちょっと声に元気ないし戻しちゃったのかな? 今三賢者のプログラムを書き換えるのは無理だけど帰ったらすぐにやるから我慢してね、ユキ。

 

私も通った道だから、と励ましながらユミルテミルが保有するドローンが帰ってくるまでの時間をつぶす。全機格納してTail内での簡易メンテナンスと補給の後、本丸に突撃する予定。それと同時に城門前で戦ってる石井っちたちに侵攻を命じて本丸を完全包囲する。

 

 

「おっと、ある程度掃除したけど残ってたのね。ホイっと。」

 

 

熱源反応を検知しアンブッシュかまそうとしていたニンジャをリパルサーで排除。いつもならくり抜きするけど今はユキが目の前にいるので控えめに吹き飛ばすだけ。所謂“アベンジャーズとしてふさわしい威力調節”って奴だ。ニンジャ相手だと死にかけの状態で道連れ攻撃してくるから確殺が基本なんだけどね……、今はユキのメンタル回復の方が大事。

 

 

「……つぐみ。聞いてもいいかな?」

 

「ん~? 何? もしかして私のスリーサイズ? えっと上から……。」

 

「それは知ってるから言わなくていいよ。あなたの服大体私が買ってるし……、それよりもコレ。見てもらった方が早いと思うんだけど……、なんでS.H.I.E.L.D.名義で買われたはずのアークリアクター。ここにあるの?」

 

「……。」

 

 

仮面の裏の顔がキュッと歪む。どうしよう、額に手を当ててジーザス! とか叫んだほうがいい?

 

うん! やっちまいましたねぇ! そうだったMark2をそのまま改造したわけだから、ユミルテミルスーツってそのまま私のサーバーに入れるじゃん! ファイアボール全体に対しても隠してる情報筒抜けじゃんか! わざわざS.H.I.E.L.D.が購入したリアクターの製造番号記録してどこに流れたとか全部記録してるからシステム的にそれが視界に入ったら情報表示されるねぇ!

 

 

(まぁ前世の方のデータは私が死ぬまで誰も見れないようにしてるからよかったけど……。)

 

「あ~、まぁあれだね。結論から言うとS.H.I.E.L.D.は黒に近い灰色でスタークインダストリーはまぁ白? って感じかな。」

 

 

ユキのドローンも帰還し始めて来たのでゆっくりと本丸へ足を運びながら説明を続ける。ユキは何も言わずについてきてくれるし、視界に入った敵も排除しようとしてくれるから私は話すだけ。まぁたぶん攻撃してるの三賢者だろうけど。

 

 

「まぁ詳細省くけど実はS.H.I.E.L.D.ってさ、設立当初からヒドラの手が入っていてね? 一応世界の安全を守る組織ではあるんだけどその内実はヒドラそのもの。まともなやつもいるにはいるんだけど大体みんな『ヒドラじゃない?』って疑った方がいい感じだね。」

 

「それって……。」

 

「うん、ヤバいし内容も内容だったから教える気なかった。ウチはS.H.I.E.L.D.から色々援助とか技術支援してるからね、バレたらバレたらでヤバいから石井っちとかにも言ってない。なんでユキもお口チャックね?」

 

 

提供する技術を絞ったり、S.H.I.E.L.D.崩壊後に色々なものが紛失しないようにサルベージしたり、あとはヒドラメンバーへのハッキングによる嫌がらせとか色々してるのよ~、と軽い感じで話しながらさらに歩を進める。敵側は本丸で最後の防衛ラインを構築するみたいで撤退する奴らもちらほら。それを私たちはランドセル撃ちで追い立てる感じ。

 

 

「外に逃げられるよりも纏まってくれた方がありがたいからねぇ?」

 

 

ま、ハッキング関連は面白いぐらいにヒドラが人員送ってくれるもんだからついつい若干遊んでしまう。まともな人もいたけど……、ヒドラの比率の方が多いから『致し方のない犠牲』としてまとめて数十人病院送りにしちゃった。

 

反省も後悔もしていないのでS.H.I.E.L.D.崩壊まで続けるね♡ 関係ない人は退院後にちゃんと復職先用意してあげるからね♡ ヒドラ君は特別に堀の中っていうリゾートを用意してあげたから楽しんでね♡ 一生バカンスだよ♡

 

 

「情報はイヴのおかげで大体抜けててね~? ヒドラがS.H.I.E.L.D.という権力を笠に着て人工衛星などでこの星全てを監視することで成立するのを“安全”。これで世界を支配しようとしていたのは把握していた。たぶんそれでハッキングやらそのままお空に飛んで破壊できる私やトニーが邪魔だったんだろうね。んで敵はできるだけ早く排除しとけってことで、トニー邸襲撃にウチのニンジャと合同ジャンボジェットストリームアタック。」

 

 

ユキはニュースを見ていないかもしれないので今朝の報道を彼女のディスプレイに送る。私たちが襲撃を受けた同日にトニーのお家も爆破されている、時差のせいであっちが把握してるか解らないけどね?

 

そして、一応失敗した時のためにニンジャへの技術提供。でも本社ビルへの攻勢の時にこのハイテク歩兵兵装持ってこなかった当たりまだちょっと連携が取れてない部分もあるのかな? ニンジャだったら本気で攻める場合三重四重の人の壁を作って物量で押しつぶしてきそうだし。だからこその情報リークだったんだろうけど……、未だになんで自分の本拠地まで開示したのかわからん。

 

 

「とりあえず私が知らない方がいいって情報なのは解った、でも……。つぐみさ、他にも色々ため込んでない? あなたの事だから自分一人で何とかしようとしてない? 身を削って無理したら出来ることだから全部終わるまで隠して、何も問題がなくなった時に明かそうって……、そう考えてない?」

 

「あ~、うん。どうだろうねぇ?」

 

 

ユキの視線が、こちらに向く。スーツ越しでお互いその表情は解らないけど昔からの長い付き合いだ。彼女が何を思いどんな顔をしているのかぐらい想像できる。そしてそれは私だけじゃなくてユキも同じ。私が言葉を濁してしまった時点でこの勝負は私の負け。まったく頼りがいがあり過ぎて頼もしいパートナーだよ。全部話したくなっちゃう。

 

 

「私は、何があっても絶対につぐみの隣にいるからさ。ちゃんと吐き出してね?」

 

「……胃の中の朝ごはんみたいに?」

 

「…………もう口きいてあ~げないっ!」

 

「ご! ごめんて!」

 

 

気恥ずかしさからか、それとも私が彼女を巻き込んでしまうのを嫌ったせいか、ついふざけてしまう。ユキが乗ってくれたって言うことは譲歩してくれたということ。いつもこんな感じで頭が上がらない、……またこんど、ね。

 

 

「それで? もう立派なお城が目の前にあるけど、どうやって攻略するの?」

 

 

目の前には本丸、大きな鉄製の門に狭間から出てくるたくさんの銃器、その奥にはニンジャやヒドラがたくさん。攻め込み始めてから時間たってるしまぁ準備も整えてくるよね。というわけで石井っちに方に攻勢連絡。トニーみたいにスーツで数の暴力はできないが、こっちは人と武器弾薬を安定供給できる手段がある。というわけで! 三桁無反動砲特殊榴弾で後方の城門爆破! よろしくお願いしま~す!

 

 

「簡単、この手に限る。」

 

 

背後から耳を塞ぎたくなるほどの爆発音、過剰攻撃過ぎたかもしれないけどまぁ大は小を兼ねる。道が出来たのなら問題なし! あとは後続の増援が来るまで時間稼ぎなんだけど……、ちょっと入り口が狭いわね、ちょうど相手も怯んでいるし風通しをよくしてあげましょう。ユミル? いっくよ~!

 

 

『『バスター・ランチャー、起動します。』』

 

 

対人戦で使えない大型火器、出力を抑えたバスター・ランチャーを放射。本丸を守る扉と若干の壁が吹き飛ばされ内部が丸見えに。そして中にはうじゃうじゃと敵さんがたくさん。

 

室内みたいな閉所よりも開けた場所が得意な私たち、わざわざ中に入って戦う必要はない。城が崩れない程度に一階部分を開放的にして上げて後は楽しくまいりましょう。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ほいさァ!」

 

 

現在乱戦中、こうも大量にニンジャとかヒドラとかが大量に出てくるとユキに対する配慮とかはもうできなくて全力戦闘に移行している。本拠地だから人が多いしニンジャに比べれば少ないけどヒドラもいる、ここを私たちに突破されると終わりってことが解っているのか相手側も必死だからもう大変。

 

全方向からのアンブッシュとか謎の忍術使ってくる奴とかめったにお目に掛かれない戦術まで披露してくれる。ハラスメントとしてヒドラ製武器の光弾も飛んで来るから過労死しちゃいそう。ユキが吐きそうになってるのを我慢しながら戦ってくれなきゃどうなっていたことやら。

 

やっぱドローンっていう手数の多さやTailの多さは武装の攻撃の多様化につながるからいいよねぇ、と思いながら電気系の忍術を使ってくる相手さんをレーザーカッターで四等分。頭部から縦にとお腹から横に切断し、次の標的に移ろうとすると後ろから支援。

 

 

「相変わらずグロテスクな戦い方してるなお嬢……。」

 

 

振り返ると全身完全武装の石井っちがいた。指揮官先頭の癖は変わりませんねぇ? そんなことを言いながら足元に転がった余計なものを蹴り飛ばしスペースを開ける。あ~あ、出来るだけ汚れないように接近戦は焼き切る攻撃メインでやってたけどやっぱ足元は汚れちゃうなぁ。白に生々しい赤は似合わないって。

 

 

「まぁ殺し損ねると地べた這いながら足掴んで邪魔してきたりさ、どうせ死ぬなら諸共、っていうニンジャちゃん多いじゃん。なら確殺した方がいいし追加で恐怖も与えられればなおよしじゃない?」

 

「そりゃそうだがな……、お嬢の相棒には少々酷じゃねぇか?」

 

 

石井っちがここまで来ているということはファイアボールの攻勢部隊がここまで来ているということに他ならない。ちょっと目をやればさっきまでの戦場がニンジャ一色だったのに対して、今はウチと敵の二色に。ユキと私である程度数減らしたし、残ってる奴にもダメージ与えてる。人数が集まれば簡単に制圧出来る出来る、安心して任せられるね。

 

 

『E3区画担当します! 弾幕集中させろ!』

 

『敵特殊兵装に注意! 排除優先だ!』

 

『スリーマンセルを崩すな! 肉眼でも確認しろ!』

 

 

 

「大丈夫でしょ、ユキだしすぐ慣れるって。……にしても有能。ほれぼれしちゃう、これも石井っちの訓練のおかげカナ?」

 

「ま、昔に比べれば大分変ったのは確かだな。」

 

 

そんな会話をしながら後退、押し込み始め本丸に突入を開始し始めた前線から一時離れる。初めて共闘した時みたいな過剰武装したヤクザ、もしくはちょっと装備の悪い兵士ってイメージはすでに過去のもの。ちゃんと訓練されていて武装は私製の最先端、人数もいるし意欲も十分。

 

彼らがやるのは敵排除に安全の確認、建物自体の崩壊を防ぐために柱の補強や自爆用爆発物の調査、あとは上に続く階段や地下に部屋はないかとかそういうのね? とりあえずはリークされた地図と実際の内部が同一なのかを確認してもらって、その間に少し私たちは休憩させてもらうとしよう。

 

 

「お~い! ユキ~! ちょっとだけ下がるよ~!」

 

 

「う、うん。……うッ、おぷッ ~【自主規制】~。」

 

 

攻撃の手をいったん止め空中から地面に降り立った瞬間限界を迎えてしまったのか、それとも限界だったのを無理して我慢していたのかは解らないが口からキレイな虹が出てしまうユキ。着地した瞬間フェイスの部分外したあたり相当ガマンしてくれてたんだね……。

 

 

「あ~、ごめん誰かお水持って行ってあげて……。」

 

「胃の中に何もないのに戻しちまってるじゃねぇか……、ありゃあきついぞ……。お嬢、この機会に色々改めた方が良くないか? 若い奴らにも結構不評だしな……、そういう趣味なのかと噂されてたぞ?」

 

「……マ?」

 

 

マジか……、いや私も好きでやってるわけじゃないんだけど……。血とか臓物とかバラバラになった死体とかそういうの好きでも嫌いでもないんですけどねぇ? ネクロフィリアって思われてるんですかね? 達磨さんにしてあげるのも処理がラクチンだからだし、まぁ多少。いやかなりストレスの捌け口として使ってるのは確かだし……。

 

あ、イヴ。別になんて噂されてるのか知りたいわけじゃないからその音声データ再生しなくていいからね?

 

「ま、まぁ? その点は後で色々考えるとして……、ユキ~? 大丈夫? 人も来てくれたしもう下がって大丈夫だよ?」

 

あ、モブ君お水ありがと、はいユキちゃんまずはお背中さすりますね~? あとお水で口ゆすいで。出来るだけ心を落ち着かせて~。

 

「だ、大丈夫。頂いたお水で大分マシになったし……、このスーツ私しか動かせないんでしょ? だったら最後まで手伝う……、手伝わせて。」

 

 

ゆすいだ口を拭きながらそう答えるユキ、その顔は憔悴しているが目は本気。たぶんこれ止めたりおいてったりしたら飛び込んできちゃう奴だね。……しゃあなしかな?

 

 

「……OK、でも三賢者に止められたりとか。本気でマズくなった時はすぐに引くんだよ?」

 

「うん、解ってる……。」

 

 

 

 

『マスター、ご報告です。本丸内部のスキャン及び一階の目視確認が終了いたしました。リークされた情報と一致、また罠らしき存在は発見できませんでした。現在突入部隊を三分割し上階への攻勢、地下への攻勢、一階の保持を行っています。』

 

 

 

「……うん、ありがと。じゃあもうシールドもないことだし私たち二人で上から攻めて見ますかね? 大体こういうのって一番上か一番下にいるもんだし、最上階にいなかったとしても挟撃になるでしょ。……ユミルテミル、ドローンは全部自身の護衛に回しなさいよ?」

 

 

「バルタザール君、カスパール君、全機チェック……。完了済みだね。全ドローンを私への護衛にして……。お待たせドロッセル、もう大丈夫。」

 

 

 

「おし! じゃあ行こうか!」

 

 






次回、DROSSEL[]Purged FREESIA編最終話になります。

もうしばらくお待ちくださいませ。

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