「お嬢!」
「またソレ? ちゃんと資金も人も挙げてるんだからさっさと成功させな?」
「お嬢様!」
「危機管理0かお前、介護用にこんな出力いらんやろ。やり直し。」
「社長!」
「だからそれはユキの範囲だって何度も言ってるでしょ! ユキの許可もらったら判子押してあげるから私に話しかけてくんな! 正規の手段使え?」
あ~、もう忙し。裏のお仕事が極端に減ったのはありがたいけどその分表のお仕事ががが。ほんと誰がこんなにたくさんお仕事持ってきたんですか? 事務に営業、開発。上から下まで毎日大慌てとか企業としてどうなんですかホントに、残業申請増えて来たし……、かといって安易に人増やすとニンジャやらヒドラやら入り込むから早々できないし……。あ? 何イヴ、『マスターがスーツ開発費上限を上げるために始めた』だって? まぁそうなんだけどこうも忙しいと愚痴ぐらい吐きたくなるよ。
「はいはい! 注目! 今日は私もうラボ入るからおしまい! 終了! 許可印必要なやつは私のデスクに送る、緊急性が高いのはイヴに回す、開発系は自分のラボでやれ、全部終わったらお家帰れ! ほら散った散った! 解散解散!」
移動してるのにわざわざついてきてエレベーターまで乗ってきた社員たちを無理やり返す、研究&開発で雇ったやつらが半分くらいいるけどウチのサーバーにある程度使えそうなもんあるはずだから自分で探してクレメンス。……まぁ最悪見つけるのに年単位かかるけど。それ以外? ユキ頼んだ。
は~い、この階は社長が許可した人以外降りちゃダメですからねぇ~? 君たち降りたら解雇するからねぇ? ばいばい~! ……ぁあもう変に熱意あるんだから。
「それに今日は変なやつ来てるしさぁ!」
「久しぶりだな、イタズラガール。ようやく年相応になってきたか?」
「おかげさまでね! 無職のおじさん!」
社員たちをエレベーターに閉じ込めて帰らせたので一息、そう思ってラボに入ればなんかいますよ眼帯有能おひげおじさんがさぁ! 私あなたに対して入室どころか本社ビルに入る権限すら与えてないんだけど! どこから入ってきた?
「ふふ、昔取った杵柄という奴さ。それに君に比べて友人はたくさんいるのでね?」
「その大半が消えて職も失ったのに?」
「それでも君よりは多いぞ?」
笑いながら最近給仕が板についてきたゲデヒトニスから無銭飲食を決めるニック。というかそれ冷蔵庫に保管してた期間限定の夏のトロピカルマンゴー味じゃんか! わざわざスーツ着て飛んで東京まで買いに行った奴! 私とユキの分しかない奴! ユキにはもう渡しちゃったから実質それ一つしかない奴!
「うまいな。」
「……でしょうねぇ!」
あ~、もう。やる気失せた、今日のお仕事終わり! もう私寝る! ゲデ! 歩くのめんどいからここまで椅子! あとスタバで期間限定のフラペチーノ買ってきて! なる早!
『かしこまりました。』
彼が新しいボディで運んできてくれた椅子に座り、そのままニックの目の前へ。彼もソファに腰かけお話の準備は整った。……その前に一応セキュリティ強化のタスクを一番上にぶち込んでおく。
「んで? 今日は何の用?」
「まぁ言ってしまえば礼を言いに来た、それだけだ。」
「あ~、インサイト計画ね?」
インサイト計画、何度か話した気がするがもう一度だけ。
S.H.I.E.L.D.が世界中に広がり始めた混乱や悪意を食い止めるために考案された計画で人工衛星で全世界を監視し、テロリストなどの危険人物を新型ヘリキャリアにて排除するという計画。まぁ超監視社会を作ろうとして、最初にまずアメリカから安全にしてしまうというモノだった、表向きはね?
正確にはS.H.I.E.L.D.に大量に潜伏してたヒドラが世界を仮初の安全で支配しようとする世界征服シナリオの第一歩だったわけ。私やトニー、いや私が最優先排除対象に選ばれた素晴らしい計画だったわけですね。なんでもファイアボールの存在を悪の大組織として大々的に広めて至急速やかに排除する予定だったみたい。
表ではキャプテンアメリカを派遣して裏ではウィンターソルジャーを派遣する。そして空からは新型ヘリキャリア全部持ってきて物量で押しつぶす、社会的に殺してから私の得意部門である技術と最大動員数をさらに上回るものでつぶそうとしていたみたい。
ま、ぜんぶ私が先につぶしたんですけどw
情報全部筒抜けだし、やろうと思えば指揮系統大半奪えたヒドラ君が私に勝てるわけないんですよねぇ! だって君たちがせっせと作ってくれたバックドアの陰で全部筒抜けだもんねぇ! 最近私が“あえて”セキュリティ君たちと接戦を演じてたおかげで油断しちゃったのかなぁ? すでに全部私の手のひらだったのにねぇ? ニンジャと手を組んでから本腰入れて丸裸にしちゃったもんねぇ?
というわけでキャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー編! 完!
……としても良かったんだけど、そうなると今後がね。どうなるか解らないので出来るだけ原作に沿うように弄ってみたんですよ。もちろんニックには渡せる情報全部渡してね? 結果としてはある程度原作通りに進んでお約束のようにS.H.I.E.L.D.が崩壊してヒドラ君たちは堀の中へバカンス。まともな人たちの再就職活動が始まったわけだ。
「んで? どうするの、ウチに来たい奴は全部引き取ってもいいけど……、大体トニーのとこでしょ? それともニックがウチに来る?」
「それもいいが、まだ休暇中でね。旅行でも楽しむ予定だ。……おかわりはあるかい?」
「残念それが最後。」
ほんと、お仕事大好き人間なんだからコイツは……、職失ってもお仕事するしワーカーホリックか? そりゃ世界守るの大事だけどもう年だし休めよおじいちゃん。うん? 履歴書? あぁ、ウチに来てくれる子ねってこの子達ハッキング対策部でまともだった子達じゃん。最後まで残ってたし……、あぁマゾね。了解。あとは……
「領収書? ……いつから私はニックの財布持ちになったの?」
「君と私の仲だろ?」
「いや別にいいけどさ……。」
ゲデヒトニスも遅いし喉も乾いてきたので紙ペラ片手に立ち上がり水を取りに行く、ついでに何か摘まめるものが冷蔵庫にないか探しに行こうかと思った瞬間。背後に感覚、後頭部に硬いものが押し付けられた。
「あ~、私そういう冗談は嫌いだよ?」
「ひとつ、聞きたい。」
うにゅにゅ、いつかこんな時がくるかと思ってたけどちょっとやらかし過ぎたか……? まぁ確かに私狙ってたのがそっち行ったり、そもそもこれまで色々怪しいことしてましたからねぇ。この人の事だからすぐ引き金引くとかないだろうけど……。
「君は、どっちだ?」
どっち、ね。
「私はこれまでも、これからも。アベンジャーズだよ。……みんなが許してくれるならね?」
「……わかった、今回の事には目を瞑ることにしよう。」
「あ、ほんと? よかった二人分の処理は大変だから助かるよ。かき消すのも大変だろうし。」
「ふ、そうだな。」
彼が銃を降ろし懐に収めるとともに天井から降りて来た武器たちも格納されていく、まぁニックの事だからイヴが攻撃する前に引き金を引くのは簡単、でもどっちみち二人ともここで死んでただろうしね? そうなるとまぁ色々大変だったからえがったえがった。
「あ、そうだ! 今日この後暇? 晩飯の予約ないよね!? 飯いこうよ飯! もちろん私の奢り!」
「ならお言葉に甘えようか。」
◇◆◇◆◇
「って、ことがあったんですよね。」
「…………あのさ、つぐみ。」
「ん~? どしたん?」
「色々とおかしくない?」
その翌日、地下にあるラボの方で私は作業中。ユキは見学中、二人同じ部屋にいるのにずっと黙ったままはなんか味気ないので昨日の出来事を教えてあげてたんだけど……、なんかとんでもないような目で見られてるんですけど。……あ、あれか? ここから8階ぐらい下に死にかけで虫の息な幹部ニンジャ捕まえてるのバレた? まぁ確かに生きたままだと危ないよね。もうちょっと謎エネルギーのサンプル取ったらちゃんとバイバイするから許して。
「いや、あの。あのさぁ! それ初耳だし、もうちょっとなんかこう、ないの!」
「え? 駄目? じゃあいい子になることを期待して全身に爆弾埋め込んでお外に放り出す?」
「なんかそっちの方が酷くない!?」
駄目かぁ……。あの子も数十人単位で殺してるし、DCではスーサイドスクワッドっていう由緒あるチームのしきたり通りお仕事してもらおうかと思ったけど……、やっぱここマーベルだしダメか。しかたない、ユキぴにこれ以上怒られるのヤダし優しくして上げよ。
「いやそうじゃなくて! なんで! 殺されそうになった相手と! 仲良く焼肉食べて! 私もついでに誘ってるわけ! というかあの気のよさそうなおじさん元S.H.I.E.L.D.長官とか聞いてないし、そも殺されそうになったって何!」
「いやまぁニックだし……。」
「何故そこで不思議そうな顔ッ!」
だってねぇ? ニックだしそうするかなぁ……、って。私もなんか怪しそうな奴いたらまずリパルサーぶっぱするし仕方なくない? それにあのおじさん色々あれだけどちゃんと正義の人だしお仕事以外だったら楽しいおじさんだったでしょ? 楽しそうにご飯食べてたのユキも見たじゃん、ユキも楽しそうにしてたし。
「そりゃつぐみに呼ばれて一緒にいた人ならアレ関係の人だと思うじゃん普通! 海外の人だし絶対アベンジャーズ関係だと思ってそりゃ失礼にならないようにニコニコぐらいするよ普通! たしかに普通にいい人だったから楽しかったけど! そんなことあったとか知らないし! ほんともう……。」
目を手で覆いながら備え付けのソファに崩れて起きるユキぴ。まぁまぁそうカッカなさらずに、ほれコレチョコだぞ? お口に入れて進ぜよう……、ゲデヒトニスが。
「ありがとうゲデヒトニス君……、というか君いつの間にか新しいボディに変わってるね?」
『はい、先日アップデートしていただきました。何でも“チャーミング”だそうです。』
「? まぁ確かに前より丸っこくなって可愛くなった?」
うんうん、かわいいでしょソレ。二期の姿ね? イヴに見せたらオーバーヒートして30分サーバーダウンしたぐらいだもん。ほんとイヴ大丈夫か? まぁこの前新しいボディ作ってあげるって言ってたしね? 最近忙しかったから忘れてたけどようやく完成したから移し替えてあげました。
「よし! 完成かな?」
「……さっきからずっとそれいじってたけど、ガラスケースの箱?」
こちらを見つめるユキの元へこのキューブを片手に歩を進める。もちろん四次元キューブじゃなくて私が作った無色で内部が見えるキューブ。四隅にちょっとした装置がついてあるね?
「じゃ、世紀の大発明のお披露目タ~イム!」
すこし小さめなリアクターをキューブにつなぎエネルギーを回す、このサイズでリアクターもそこまで高出力じゃないから持って十数秒だろうけどまぁ最初だしね?
「じゃ、ユキスイッチ押して? その赤いの。」
「あ、うん……。」
まるで自爆スイッチのようにわざとらしい赤のスイッチを押すユキ、リアクターが回りエネルギーがキューブへ。そして……、立方体の内部、その中心に目で見えるか見えないかギリギリの黒い点。
「イヴ!」
『数値安定想定通りです、おめでとうございますマスター。公表すればノーベル賞のみならず全世界の教科書にマスターの顔と名前が文明が続く限り載せられることでしょう。その分厄介ごとも増えるでしょうが。』
「するわけないでしょ? トニーがリアクター出したし人類はそれで十分以上だよ。」
「え、なにこれ、点? ……あ、消えた。」
あ~、消えちゃったか。まぁこのサイズじゃそうなるか。いやでも想定以内だし重力子によるフィールド生成と一点への全方向加重がガチで成功した、これによって宇宙がより近くなったのは間違いじゃない。実用化は当分無理そうだけど基礎研究はこれで終わりって言ってもいいのかな? あはは! やっとピースが揃いそう!
「つぐみ、さっきの何だったの?」
「ブラックホール、超小型のだけどね?」
さ、リアクターを超えるファンタジーで世界を殴りに行きましょう!
つぐみ
「ちなみに暴走したらこの一帯が更地になりました。でも成功したからヨシ!」
ゆき
「えぇ……(引き)」