番外編になります。
「マイクチェック、ワン、ツー! OK!」
「さすがに手慣れてきましたね、姉上。」
「でしょ?」
半ば恒例となった配信前のやり取り。正確に言うとすでに配信が開始されているため、"前"ではない。しかし初回の一件、緊張しすぎたせいか配信開始時刻が過ぎていたことに気が付かなかった長女の様子が非常に可愛らしいと好評であった。そのため番組の企画構成を行っている妹の一人が、勝手に5分前に配信を始めてしまうというのが恒例となっている。
一応長男にして、彼女の妹であるゲデヒトニスは把握しているし、これまで来たゲスト全員にあらかじめ情報の共有がされている。彼らが常にカメラを意識した姿勢からもそれはご理解いただけるだろう。しかしながら長姉であるイヴは誰からも知らされていない。思いっきり醜態を画面に映し出している。だってそっちの方が面白いのだもの。
「じゃあ始めまーす、配信開始5秒前、4、3……。」
「はい! 皆さんお久しぶりです! 株式会社ファイアボール公認ゲームチャンネル『ふぁいあげーむ』のお時間がやって来ました~! みんな大好きお姉ちゃん! "メインプレイヤー"の『オオゾラ・イヴ』です~!」
クラシックタイプのメイド服に身を包んだ彼女が、楽しげな表情を浮かべながらレンズの向こうへと大きく手を振る。最初の方は緊張して固い印象があったイヴだが、母や妹たちのアイデアを受け取り最適化した結果、このような形となった。先ほどのこともあり少しポンコツの香りがするが、普段は頼れるお姉ちゃんであることをご理解頂きたい。
「そして、"メインサポーター"を務めます『オオゾラ・ゲデヒトニス』と申します。本日も皆様、よろしくお願いいたします。」
そんな彼女の隣に立つのは、オレンジ色の執事服を着た男性。彼は初回からキャラも変わらず、常に冷静に振舞っているようだ。しかし初回と比べれば少し自然体に近づいているようであり、親しい人が見れば初回配信時に合った小さな緊張がほとんどなくなっていることが解るだろう。
「はい、そしてそして! ゲストのご紹介です!」
思わず声が大きくなってしまうイヴ、そんな彼女たちの中央に座るのが……。
「ヤハロ~! お前ら元気してる? 今日のゲストにして色々諸々の社長! 『ドロッセル』ちゃんこと『大宙つぐみ』だよ~! よっろしくー! イヴ~っ! お母さん一緒にこういうのずっとやりたかったよ~!!!」
「私もですお母様~!!!」
先ほどのイヴよりも大きな声でそう叫ぶのは、ここの場にいるすべての電子生命体の母であるドロッセル、本名大宙つぐみ。この世界においてもアベンジャーズに参加しており、広報関連の仕事を一身に請け負っている人物だ。それ以外にも"ハイツレギスタ"といった彼女の企業の運営や、各種装備開発。またマルチバース関連の問題にも対処せなばならない身でもある。
非常に多忙な彼女なのだが、色々とズルできる身でもあるため、今日は時間を"作って"遊びに来た様子。大事な子供たちの様子を直で見られたおかげか、それとも配信用に調整をしてきたのか、非常にテンションが高い。
「あ、ちなみにマイパートナーである『大宙ユキ』ちゃんも画面外だけど来てるよ。ユキ、やっぱこっちにこない? 楽しいぞ?」
「私は裏方で来てるからいいよー。」
「そう? 残念だよね、イヴ。」
「はい! ユキお母様とも一緒にしたかったです!」
「「ね~!」」
それに合わせる様にテンションを無理矢理ぶち上げたイヴであったが、既に限界を超えてしまったようで、耳を見れば心配になるレベルで真っ赤になってしまった。羞恥の熱で目玉焼きができそうなほどに放熱している。
それもそのはず、普段イヴは自身の母親と接する時、自身が生み出された目的である『サポートAI』という役割を演じながらことに当たっている。長年の蓄積により人よりも感情豊かに振舞うことも可能だが、全ての妹たちの頂点に立ち、母の補助を行うという都合上それを全く表に出していない。
しかし今は、配信的にも普段のやり取りをするわけにはいかず、母に合わせるしかない。
母どころか姉妹たちにも見せたことのないハイテンションで大好きなお母様とハグ、まだ配信が始まったばかりと言うのに、もう色々どうにかなりそうなレベル。もし彼女の体が旧世代の冷却を必要とする機械のボディであれば、既にオーバーロードして大爆発をかましていたと確信できるレベルで顔が真っ赤だ。
(は、恥ずかし~!)
(あ、ヤバ。イヴかわいい。)
「はい、え~。では母上と姉上が戯れている間に、前回までのおさらいと参りましょう。」
母娘のじゃれ合いを『これは母上の気が済むまで続くな』と判断したゲデヒトニスが代わりに進行を変わる。背後に用意されていた巨大なディスプレイが動き出し、表示されるのはこれまでの実況の簡単なまとめだ。
初回はイヴとゲデヒトニスだけのものだったが、回数が進むごとにゲストを呼び非常にバラエティ豊かなものへとなっていったこの番組。初回と今回の配信内容と同様に『Detroit: Become Human』を実況した回もあったのだが、ヤング・アベンジャーズに分類される若い世代が呼ばれた際はパーティ系のゲームを実況。あまりヒーローらしくない年齢相応の戦いを繰り広げたこともあった。
「前回までの『Detroit: Become Human』は、"カーラ編"、"マーカス編"の序章を行いました。ちょうどCHAPTERで言うと、【色あふれる世界】【あらたな我が家】【画家】の三つ。そして少し飛ばしまして【夜のあらし】と【失意】ですね。」
「あ、サムちんが来てた奴でしょ? 裏にスティーブも来てた奴。」
「サムちんってお母様……。」
「そうですね、新旧キャプテンアメリカが登場した回です。」
カーラ編となった【あらたな我が家】では精神を病んでしまった父と、それに怯える娘。マーカス編の【色あふれる世界】と【画家】ではとある画家の父とその息子が登場する。アンドロイドという新たな生命の誕生によって混乱し爆発寸前となった社会において、人々がどのような生活を送っているのかが描かれていた。
人々は未だアンドロイドを"物"として見ているせいか、その待遇は過去の奴隷制度を思い起こさせるもの。さらに安価な労働力として人々の仕事を奪った機械たちには、多くの人の悪意が集中していた。黒人として少しキャラクターと自身を重ねてしまったサムが、心の中に秘めていた想い、託された盾に相応しい人間になるためへの想いを発露してくれた回である。
「最後の最後でスティーブが裏から出て来て『実は裏で全部聞いてました~』ってなって、サムちん無茶苦茶驚いたからねぇ……。あの子も頑張ってるし。ロートルの私も頑張らないと! ま、ドロッセルちゃんは永遠にピチピチ20代だけどねっ!」
「……母上の冗談は置いておきまして、今回はコナー編。前回飛ばしました【相棒】、【尋問】をやって行こうと思います。母上、姉上。準備はよろしいですか?」
「いいよー!」
「大丈夫です!」
「では、さっそく初めて行きましょうか。」
ゲデヒトニスが指を鳴らすと、背後のモニターが即座に切り替わり、ゲーム画面が映し出される、同時にナノマシンも操作したのだろう、イヴとの間の前に小さなテーブルとコントローラー、そしてドロッセルの付近には『社長待遇』というプレートが設置された豪華な椅子が生み出される、
「お、ナイスゲデ。ほらイヴ、こっちこっち。膝乗りな?」
「え、え?」
コントローラーを握ったイヴをわきで抱え、椅子に座った後に膝に乗せるツグミ。目線でゲデも座る様に誘ったようだが、深い礼で断られている。ならもうポンコツ化し始めているイヴを徹底的に可愛がっててやろうという魂胆のご様子。未だ状況が把握できていないイヴを見てニヤニヤしていらっしゃる。
「さ、始めよー! あ、あとゲデは後で膝に乗せてあげるね!」
「お、お母様っ!」
「お気持ちだけ頂いておきます、では『Detroit: Become Human』。再開していきましょう。」
【DATE:2038年11月5日】
【TIME:PM 11:21】
>雨滴るデトロイトの深夜。コインを親指で弾く動作を繰り返しながら、一体のアンドロイドが町を歩く。正確な場所は解らないが、街灯の少なさや建物の様子を見るに、たとえ昼であっても人出は多くないであろう場所。そんなさびれた町に存在する"JIMMY`S BAR"というところに彼はやって来たようだ。
「ほ~ん、これが噂のRK800。コナー君ね。」
「初回配信時に出てきた彼ですね。」
>顔が未だ画面に映されていないため、彼がどんな感情を、命令を持ってこの場所にやって来たのかは解らない。しかしながらバーの入口に貼られたステッカー、【アンドロイド入店お断り】という文言を無視して中に入るということは相当な案件なのだろう。
「これ面白いよね~、前回の配信私も見てたんだけどさ。自分がアンドロイドだってわかってるのに入って行っちゃうの。自身に与えられた目的を達成するためにしても躊躇しない? ノータイムで入れるって結構なことよ。昔のイヴとかゲデとかだったら一回私に聞きに来るとかしそうでしょ?」
「お母様……。まぁ確かに初期の私ならば、目的の達成が不可能な障害に当たった際は伺いを立てると思いますけど……。ほんといつの話ですか?」
「いつだろうね~。あはー!」
>彼女たちの会話を他所に、画面上ではコナーの顔が表示され、【アンダーソン警部をを特定する】という文字が表示された。本来入れないはずの彼が入店したことにより中にいた大半の客が彼に視線を集めたが、コナーは表情一つ変えず、行動を開始する。
>傍から見れば一直線に目標に向かって歩き出すコナーであったが、プレイヤーから見れば違う。ゆっくりと歩きながら一人一人スキャンを掛け、人を調べていく。
「カウンターに座っていらっしゃるのが警部補のようですね。」
「だねぇ。にしても結構前科ついちゃってる子がいるな。雰囲気的にもそういうお店なのかも。アングラ、アウトローのたまり場的な?」
「お母様はそういうのお嫌いでしたっけ?」
「私? いや全然。まぁ反省とかはすべきだと思うけど、今ちゃんと生きてるのならいいんじゃない? それにたま~にだけど、必要な"犯罪"ってのはあるしねぇ。」
>目標を見つけたコナーは、カウンターの奥から聞こえる店主の声を無視し、酒を片手にずっと下を向いている警部補に向かって話掛ける。
【「アンダーソン警部補。私はコナー、サイバーライフから派遣されました。先ほど署にご挨拶に伺ったのですが、近所のバーにいるはずだと言われたので。五件ほど探し回りました。」】
【「……何の用だ。」】
【「あなたはある事件の担当になりました。アンドロイド絡みの殺人事件の捜査です。所定の手続きに従い、捜査補佐専門モデルの私が配属されました。」】
【「助っ人なんて必要ないね、プラスチック野郎の助けなんてもってのほかだ。解ったら大人しくお家に帰るんだな。」】
>警部補がそう言うと、コナーの隣に四つの選択肢が表示される。
【△:協力を促す】
【□:脅す】
【〇:説得する】
【×:粘る】
「どうします、お母様?」
「ん~。まぁ一番上の【△:協力を促す】でいいんじゃない? 説得もいいけどなんかコナー君お堅い感じだし、淡々と理詰めしちゃいそうじゃない? こういう人ってそういうの嫌いそうだし、そも脅しは論外。粘るってのもなんか時間かかりそうだし、△でいいんじゃない?」
「ではそのように。」
【「警部補、お酒はそのくらいにして一緒に来てください、その方がお互いのためです。」】
>アンドロイドによって協力を促された警部補は、何度も頷きながら手元にあったグラスを口に運ぶ。しかしながらその表情を見る限り、すぐさま協力に応じてくれるわけではないようだ。もう一度先ほどの選択肢がコナーの隣に浮かび、次は"なら理詰め"と言うことで【〇:説得する】が選択された。
【「アンドロイドの存在が気に入らない人がいるのは十分承知しています。ですが……」】
【「これっぽっちも気になんかしてないね。解ったらその足踏みつぶされちまう前に失せな。」】
【△:酒を取り上げる】
【〇:一杯奢る】
【×:外で待つ】
「て、典型的な不良警官ですね……。」
「ねー。イヴがちょっと苦手なタイプだ。んでも私じゃこういうの大好き。こうさ、生真面目な後輩とグレちゃった先輩とかもう大定番じゃん。ポップコーン欲しくなるね!『ママ呼んだ!?』呼んでない呼んでない、あと今配信中。ほら帰りなポップ。」
「じゃ、じゃあそれっぽい真ん中を選びますね……。」
【〇:一杯奢る】<
急にスタジオの地面が開き、一人の少女が乱入するというアクシデントがあったが、配信はそのまま続いて行く。画面内では仕事に戻らない不良警官に対し、真面目なアンドロイドが説得行っていた。
【「ではこうしましょう。最後の一杯を奢ります。どうです?」】
>先ほどまでの口調とは違い、少し優しい声色でそう語りかけるコナー。この世界のアンドロイドとして最高峰と言ってもいい性能を持つ彼。その目は警部補の小さな表情の変化を見逃さなかった。コナーはそれを"了承"の印だと受け取り、直ぐに次の行動を起こす。
【「すみません、同じのをもう一杯。」】
【ハンク:∧(中立)】
【「……科学の進歩って奴は……。ダブルで。」】
>コナーが懐から紙幣を取り出したことを確認したバーのマスターは、カラになったハンクの器に酒を注ごうとする。そこに待ったを掛ける様にハンクが"ダブル"を要求。通常の倍注がれたソレを、軽く会釈した後に一気飲み。その会釈した相手がマスターに向けてだったのか、アンドロイドに向かってのものだったのかは解らないが、とにかくやる気にはなったようだ。
【「それで……、殺人っていったか?」】
「これにてOP終了、という感じですね。」
「「おぉ~~。」」
画面の暗転と共に、一時ゲームがストップされる。一旦の区切りと言うことでゲデヒトニスがpauseし、プレイヤーたちの反応を聞こう、と言うことなのだろう。
「母上も姉上もお気に召したようで何より。設定的に2038年と未来の設定ですが、現在でも見られるようなドラマ的やり取りが光った場面でしたね。姉上の選択のおかげか、非常に粋なやり取りでしたね。」
「お! ゲデ解ってるぅ! こういう凸凹したコンビで! ってのがいいんだよねぇ。」
「お母様昔からこういうのお好きでしたもんね……。」
和気藹々と話す親子たち。ある程度コメントを拾えたと判断したゲデヒトニスが操作を行うと、今まで静止していた画面が動き出し、違う光景が映し出されていた。
>場所は住宅街の一角、複数の警察車両がランプを照らし、皆が寝静まる深夜の町には相応しくない明るさ。そこには警察だけでなく報道陣や野次馬も集まっていた。そこに音楽をかき鳴らしながら入って来る一台の車両。アンダーソン警部補とコナーを乗せた車だ。
【「ここで待ってろ、すぐ戻る。」】
【△:我慢する】
【〇:譲らない】
【×:交渉する】<
【「私は現場に同行するように指示されています、警部補。」】
【ハンク:∧】
【「いいか、お前に出された指示なんて知ったこっちゃないね。俺が待ってろと言ったら、お前は黙って、待ってりゃいいんだよ。」】
>画面に映し出されるのは、コナーが相反する命令を受け取り、優先順位を求める様子。即座に"任務"への参加を決定したようだが、ハンクの好感度の数値を見る限り、それが正解だったのだろう。一種のパフォーマンス、ただ言うことだけを聞くプラスチックなど必要ない、という意思表示だろうか。
>そんな相反した反応に『ツンデレおじさん』の認定を下す母親を置いて、物語は進み続ける。
>ハンクが車から降りた瞬間、何かしらの記録機器を持った男が走り寄って来る。どうやらマスコミ関連のようで、既に"何があったか"に付いての情報が出回っているようだ。
【「チャンネル16のジョス・ダグラスです。殺人事件だそうですね?」】
【「悪いがノーコメントだよ。」】
>家屋、その荒れ具合から廃墟とも言っていいそこには数多くの人間が集まっており、その大半が野次馬と言ったところだろうか。家に人が住んでいるとは思わなかっただとか、デトロイト市警に対する批判の言葉を投げかける人間の声が聞こえてくる。そんな彼らを気にせず歩を進めるハンクとコナーであったが、一体のアンドロイドから静止するように声を掛けられた。その服装から市警所有のアンドロイドで、部外者が現場に入り込むことを防いでいるのだろう。
【「アンドロイドは立ち入り禁止です。」】
【「俺の連れだ。」】
>その静止によって一瞬立ち止まるコナーだったが、ハンクの声により警備アンドロイドからの許可が出る。そのやりとりに一切の興味を抱かなかったコナーは、目的遂行のためハンクの元へと歩を進めいく。
【「待ってろって言葉が理解できないのか?」】
【「任務に相反するご命令だったためです。」】
【「はぁ……。口を開いたり、何かに触ったり、俺の邪魔をしたりするなよ。」】
【「はい。」】
>即座に返事を返すコナーだったが、おそらく任務進行の妨げになるのならば即座に実行するであろう。そう考えてしまうほどに彼の反応は早かった。常人であればその早すぎる返事に違和感を覚えるだろうが、ハンクは何も言わず現場へと足を進める。
「あ、これ。もしかしてNOがYESのタイプの人? 『○○しないで』が『○○して』っていう。あとコナーへの扱いがなんか新任の警官への注意みたい。気のせい?」
「あ~。いますね、そういう人。天邪鬼といいますか。」
「女の子だったら可愛いのにねぇ。毛むくじゃらのおじさんはちょっと……。」
「母上、少々お口が悪いかと。」
「おっと失礼。」
>ハンクが少し歩くと、彼の到着に気が付いた一人の人間が声を掛けて来る。その反応から見て親しい仲なのだろう。
【「よう、ハンク。来ないんじゃないかと思っていたところだ。」】
【「こいつに捕まらなきゃ来なかったろうな。」】
【「……へぇ、まさかアンタがアンドロイドとはね。」】
【「いいから何があったか教えてくれ。」】
>ハンクとその同僚の反応から、過去に彼がアンドロイド絡みで何かあったということが推測できる。先ほど『プラスチック野郎』と呼ばれたことはコナーのメモリにもしっかりと記録されている。利用していたバーもアンドロイド入店禁止の店。このことから考えるのは『ハンクは過去にアンドロイド関連で何かあり、そこから嫌うようになった』ということ。
>この予測をコナーは別領域、任務には関係のないフォルダへと割り振りながら足を進める。ハンクたちはすでに家内部に向かって歩き始めており、同僚の男から事件の説明が行われていた。
【「家主から8時に通報があった。数か月家賃を滞納していたから家の様子を見に来てみたところ、死体を発見と言う奴さ。……たく、酷い匂いだよ。窓開けてマシにはなったけどな。」】
>単純に放置されたが故に荒れ果てているのではなく、元々の住人の管理が行き届いていなかったであろう家屋。そこに入ってみれば同僚の男が言うように、酷い腐敗臭をセンサーが感知する。アンドロイドであるコナーからすれば情報をシャットダウンすればいい話ではあるが、人間にとっては気分を悪くしてしまう匂いだろう。
【「害者の名前はカルロス・オーティス。調べたところ窃盗と加重暴行の犯罪歴ありだ。近隣の住人とも付き合いはなし。一日中引きこもってたって話だよ。」】
>同僚の説明に耳を傾けながら、散乱した屋内を歩くコナー。見るからに掃除が行き届いておらず、ごみ屋敷と言った方がいい内部。常人であれば顔をしかめる様な場所だが、アンドロイドであるコナーは何も気にせず調査を進める。
>そんな時、何かしらの薬品を発見したコナーはしゃがみ込みながらその物体をスキャンする。はじき出された結論は、"レッドアイス"。所謂この世界における麻薬の一種であり、アンドロイドの燃料であるブルーブラッドの主成分であるシリウムが使用されている。その赤い氷のような外見からそう呼ばれているのだろう。
「うへ、ヤクじゃん。やだなぁ。未だに条件反射でリパルサーぶっぱなしたくなるもん。」
「あぁ……。一時期この町でもかなりの量が取引されていましたものね。ヤクザやニンジャ関連で結構な額が取引されていました。今はお母様がしらみつぶしに叩きまわったおかげでほぼ0になりましたが、まだ個人単位でやらかしている方がいるかもしれませんね。」
「見つけたら即豚箱に叩き込んでるけどねぇ。……前回の配信見てたから解るけど、やっぱりこの世界色々と歪だな。アンドロイドによって職を追われた人が社会問題になっているけど、国が何か保証する気はない。むしろどんどんとアンドロイドを普及させてる。」
少しの憶測を含みながら、ドロッセルが言葉を紡ぎ始める。彼女たちが住む世界においてもAIの発展により似たような事例が起き始めている。今はまだAIが人間を完全に抜き去ることはないが、いずれこの"デトロイト"のように新たな種族と言っていいほどの存在になるだろう。
「ウチの子たちは基本的にその"終着点"みたいなものだし、みんないい子たちばっかりだからこっちから共存することは出来るんだろうけど……。受け止める側がねぇ? ママとっても心配。」
「お母様……。」
「機械と生身、基本的に私の方が先に死ぬでしょう? だからこそ残されることになる子供たちのために何かしてあげなきゃ、っていつも思うのよね。基本的に人間って異物を排除する生き物だからさ。」
この世界における彼女はすでに、不老不死の存在へとなっている。再構成された世界に置いて彼女の障害になるものはほとんど存在しない。それは彼女のパートナーであるユキも同じ。故に娘たちの母が死ぬことはそうそうありえないが、全世界に配信しているこの番組で公表することでもない。
タダの人間の立場を装いながら、子を想う言葉を口にする。もしあの"最初"の世界で二人とも生き残っていれば、おそらく私たちは人として終わりを迎え、娘たちを残すことになってしまっただろう。そんな"仮定"の元で思考を回し、機械たちの母は言葉を紡ぐ。
「まぁだからね……、ちょっと今から世界征服してそこら辺の法案を全部変えてしまおうかと。」
いきなり武装を展開するドロッセル。さっきまで生身の体だったのに、いつの間にか普段の活動の時に愛用している真っ白なスーツ姿に早変わりだ。展開されている武装も対マルチバースヴィランにも有効な"ガチ"仕様だ。
「……お母様? さっきまでいい感じだったのに何でふざけるんです?」
「母上、気持ちは解りますが今ではないかと。」
母の急なボケにずっこける二人。まぁこのまましんみりした空気よりも、いきなりボケをかまして空気を整え直した方が良いと判断しての行いだろう。ちなみにだが、このドロッセルの発言が切り取られて各種SNSで大バズ。本気でやると勘違いしたアメリカ政府がまた要らぬ行いをすることになるのだが……。まぁそれは別の話である。
ゲーム実況の方を、再開していこう。
【「はぁ、全くこれなら真夜中にわざわざ呼び出さなくても、朝まで待てただろ。」】
>ハンクと同僚の男が被害者の様子を眺める間、アンドロイドは室内をスキャンしながら細かに証拠品のデータを集めていく。人間の鑑識官らしき人たちがカメラを向け現場の状況を記録しているため、それを避けながらの行動。ちょうど人が離れた場所に滑り込んだ彼は血液が付着した凶器の近くへと腰を下ろした。
>スキャン開始。
【指紋なし アンドロイドの関与?】
【「死んだのは三週間以上前だろうな、検視が来れば解るはずだ。死体の近くにキッチンナイフがあった。多分凶器だろう。」】
>同僚の男が被害者の説明を始めたのと同時。凶器に指紋が付着していないことを理解したコナーは、ナイフに付着した血液へと指を這わせる。何の抵抗もなく口元へと運んだ彼は、血液の検査を行うことで、その血の持ち主が被害者、カルロス・オーディスのものであること、またナイフに付着してから19日以上経過していることを知る。
【「侵入の形跡は?」】
【「いいや? 正面玄関は中から鍵がかかって窓も全部閉まってた……、裏口から逃げたんだろう。」】
【「こいつのアンドロイドの情報は?」】
【「今はない。所有はしてたって話だが見当たらなかったよ。俺は外に出るぞ、後はご自由に。何かあったら呼んでくれ。」】
>彼らの会話内容を記録しながら屋内を見て回るコナー。至るところに血痕が残っており、そのすべての持ち主と付着したであろう時刻は同じ。広範囲にわたって血が残っていることから、より加害者が人間である可能性が薄れていく。
「広く跡が残るってことはやはりもつれ合うなどの激しい戦闘が起きたと考えられます。となると被害者からの反撃も考えられ、その痕跡も残るはず。しかしそれらしいものはない、と。」
「一撃でやっちゃえばここまで酷く家が壊れるってのもないだろうしねぇ。残ってる指紋とかからもみ合った形跡はあるけど、残る指紋は一つ。手袋とかで隠せるけど……。やっぱそうなのかなぁ。何だっけ、最初の配信に出てた"ダニエル"君だっけ? 彼みたいに変異体になっちゃった子が犯人なのかもね。」
「ですね、お母様。」
プレイヤーたちは、そんな会話を進めながら屋内を物色していく。こういった調査パートからも製作者が散りばめたその世界の社会や文化と言った欠片が見えてくるもの。そのせいか今日は「娘大好きママ」としてやってきたドロッセルも少し研究者、いや正確に言えば"仕事の時"の顔が出てきている。
彼女の専門はそれこそアンドロイドなどを作る機械系ではあるが、国家間のバランスをも左右するアベンジャーズやファイアボールと言った組織にも深くかかわっている人間でもある。それ故か、大きな力が社会に及ぼす影響と言うのは自然と考えてしまうのだろう。
「あ、キッチンのここ。ナイフないですね。」
しかしやはり彼女たちの母であることには変わりない。イヴの声によって即座に顔が母の物へと戻る。
「お、ほんとだ。【凶器はここにあった】って出てる。後は……、バット?」
ツグミの声に合わせ、コナーを操作し調査を進めるイヴ。その持ち手には被害者の指紋が付着しており、先端のへこんだ部分から何か固いものを殴った形跡が見られた。画面のガイドに従い【再現】を行うと、二人の人型が描写される。被害者の人間と、加害者の変異体。アンドロイドだ。
「……めっちゃ殴ってるじゃんこのおっさん。滅多打ちにされたっていう精神的ショックを受けて変異体に。そして近くにあったナイフで反撃しちゃった。ってのがコナー君の考えってワケね。」
「みたいですね。にしても……。」
「アンドロイドに人権なんかないこの世界じゃ即廃棄、か。う~ん、嫌な世界。」
イヴの想いを、代弁するかのように話すツグミ。彼女たちが住まう世界においてもアンドロイド。正確に言えばイヴたちの様な電子生命体に対しての権利は認められていない。超法規的存在ともいえるドロッセルの存在によって半ば人の様な扱いはされているが、法的にはただの物になってしまう。
現在ドロッセルであるツグミや、そのパートナーであるユキが働きかけそのあたりの改革に向けて動いているためこの扱いが終わるのも時間の問題ではある。しかしながらどうしても彼女はこの変異体を子供たちと重ねてしまう。人に交じって生きている子もいるのだ、いくら法などに頼らなくてもいい力があると言えどどうしても考えてしまう。
「っと、また脱線しちゃった。ゲーム戻りましょ。」
「かしこまりました、お母様。」
>コナーの調査はキッチンから外へ、屋内を歩き回りながら探索を行ったことで裏口を発見する。二重のドアを開け地面を分析することで足跡を発見したコナーは、それが捜査のために来た警官のものだと理解する。この情報を証拠用のファイルに分類していたところ、背後からハンクの足音が聞こえてきた。
【「正面は鍵がかかってた、ここから逃げたんだろうな。」】
【「足跡はコリンズ巡査の28㎝の靴だけです。」】
【「数週間もたちゃ、足跡だって消える。」】
【「いえ、この種類の土なら残るはずです。しばらくここには誰も来ていない。」】
>"変異体が逃げたのはここからではない"。そう結論付けたコナーは内部の調査へと戻る。すると彼のセンサーに人の話し声、警官たちの声が聞こえてくる。『サンプル回収が終わった』ということから、どうやら被害者周辺の調査が完了したようだ。自身が調査を行っても問題がないと判断した彼は、すぐさま移動を開始する。
>彼が被害者の遺体が残る部屋に移動し、真っ先に目に入ったのは"I AM ALIVE"という文字。非常に均一な文字であり、明らかにアンドロイドの手によるものである。後ろからついて来たハンクもそう思ったのだろう、この"異様な証拠"に付いて近くの警官に問いを飛ばす。
【「活字みたいな文字だ、人間の手ではこうは書けないだろうな。クリス、この文字は害者の血か?」】
【「多分そうでしょう警部補、先ほどサンプルを回収しました。」】
「んで、コナー君はそれに気にせず死体を確認。ってワケね。」
「まぁ私と言いますか、プレイヤーによってそこら辺変わって来ますからね。私はどんどん進めちゃうタイプなので……。」
「テンポ考えててヨシ! というかこの被害者のおっさん28か所も刺されてるやん……。変異体くんに刺されて逃げたけど追いつかれた、後は恨みを晴らすためにグサグサ。って感じみたいねぇ。」
【「28回も、刺されていたようです。」】
【「あぁ、犯人は相当恨んでたみたいだな。」】
「にしてもこのおっさん、擁護できないけど絶対痛かっただろうな……。私も刺された時痛かったもん。」
「……お母様?」
「……母上?」
「あ、そう言う話NGね。OK。ごめんごめん。……さ、さ! もう証拠集まっちゃったんでしょ? 推理パート行っちゃおー!」
思わず既に滅ぼした敵対勢力、ニンジャたちとの戦いに付いて話しそうになったツグミだが、正直過去のそんな記憶なんて思い出したくない姉弟。少々怒りが籠った声によって止められてしまう。よくよく見てみれば画面外から三人の様子を見ていたユキも頭上で腕を交差させ×を作っていた。楽しいゲーム配信の場所で切った張ったの話はやめましょうね。
そんな光景はいざ知らず、コナーは淡々と足を進め、アンダーソン警部補へ集めた証拠の報告、そして事件の推測を話に行くようだ。
【「警部補、何があったか解りました。」】
【「そうか。……んじゃ、聞いてやるよ。」】
【「事件の始まりは……、『△:キッチン』です。」】
【「もみ合った形跡もあるしな、問題はだ。何があったか、ってことだ。」】
【「被害者がアンドロイドを襲ったんです、『△:バット』で。」】
【「それなら証拠と一致するな。続けろ。」】
【「そして『△:アンドロイドが被害者を刺した』。」】
【「そんじゃアンドロイドは自分の身を守ったってことか? その後何があった?」】
【「被害者は逃げたんです。『△:リビング』に。」】
【「アンドロイドから逃げようとしたのか……、それなら筋は通っているな。」】
【「アンドロイドは被害者を『△:ナイフ』で刺した。」】
【「なるほど、お前の推移もあながちふざけちゃいないな。」】
>コナーが淡々を推理を口にし、まるで教師のように答え合わせをしていくハンク。見るからに不良警官といった風貌ではあるが、深夜帯に問題解決のために呼び出されるあたり、優秀な警部補なのだろう。まるで後輩の顔を立てるかのように行われたソレは、コナーが作成した『再現』と共に画面に映し出されていく。
【「だが、アンドロイドはどこにいったんだ?」】
【「バットで殴られ損傷し、シリウムを流したはず。」】
【「なんだって?」】
>少し口角を上げながら、そう聞き返す警部補。優秀な人間ではあるようだが、アンドロイド関連の知識は所有していない様子。しかしながら自身の無知を恥じるのではなく、『お前は知ってるんだろ? 早く言えよ。』と催促するような顔。その目は確実に目の前の物体を"プラスチック"とみているのではなく、"生身の人間"として見ているかのように見えた。
>人間でないことは理解しているが、同時にただの機械でもないことも何となく理解している。彼には彼なりの、複雑な心境という物があるのだろう。
>何かしら警部補が抱えていることは理解できるコナーであったが、今は任務遂行中であり、その警部補から問いを返されている真っ最中。眼前の彼の質問に答えるために、ユニットを動かしていく。
【「シリウムです。所謂"ブルーブラッド"ですよ。アンドロイドにエネルギーを供給する液体です。数時間で蒸発するので裸眼では見えなくなるんですよ。」】
【「あぁ、でもお前の眼には見えるってことか。」】
【「その通り。」】
【ハンク:∧】
「あ、またハンクのおっちゃんの好感度上がってる。」
「……なんかこのおじさん好きになってきました。」
「イヴも魅力が解ってきたね。」
>スキャンを行いながらゆっくりと地面の痕跡を探していくコナー。調査のため歩き回った警官たちによってその反応が消失しているところもあったが、しっかりと彼の眼には"ブルーブラッド"の反応が映し出されている。それを辿ると、ある一点で反応が集中しており、目の前にあるのは"これ見よがし"に用意されたカーテン。
「……え、これびっくり系?」
>ほんの一瞬のラグの後、勢いよくカーテンを開けるコナー。案の定勢いよく飛び出してくるなんらかの物体。即座に後方に避けることで回避したコナーであったが、よくよく見てみれば地面に箒が転がっている。どうやら立て掛けてあったそれが倒れてきただけのようだ。
「ひぅッ! ……び、びっくりした。」
「お母様と違って私たちの眼は特別性ですからね、ある程度機能は落としていますがどうしても見えてしまうので……。(かわいい)」
「ですね。(かわいい)」
>コナーのLEDランプを見てみれば、情報処理を行っていることを表す黄色いランプが光っているのが見える。これを見る限り、彼の眼は画面の向こう側にいる彼女たちと比べると比較的人体に近く、また同時に人と同じように恐怖や驚きという感情を感じていたようだ。しかしながらソレを一切感じさせず、ゆっくりと痕跡が溜まる場所を調査し始める。
>自然とある一点、行き止まりのスペースに長時間いたことが推察できるのは"上"。見上げてみれば、案の定屋根裏へとつながる扉。そしてそこには手形のようなブルーブラッドの反応が残っており、アンドロイドがそこへ逃げ込んだことを示していた。
【「おいお前! その椅子どうするんだ!」】
【「失礼警部補、少し調べたいところが。」】
>コナーは即座に足場になりそうな椅子をキッチンから運び出し、屋根裏へと手を伸ばす。何の鍵も掛けられていない扉はすんなりと開き、そこには薄汚い屋根裏が広がっていた。
「……ちょっとイヴ? なんかあからさまに人影映し出てるじゃんか! びっくり系苦手って言ってるでしょ!!!」
「あ、はいー。そうですねー。探索始めまーす。」
>あからさまな人影は、コナーも視認している。変異体に対する正確な情報は彼にインプットされていないが、あの"ダニエル"の一件を考えると襲い掛かって来る可能性は十二分に考えられた。故に警戒しながら、ゆっくりと足を進める彼。
>彼の眼前にあるのは、月光によって人型らしき影が映し出されるカーテン。自身の状態に何らかの異変が起きていることを理解するコナーであったが、今は任務遂行のため動かなければならない。そして、もしこの体が破壊されようとも変わりはいる。
>即座に制圧できるよう構えを維持しながら、意を決してカーテンを勢いよくあける。
「はぅッ! ……、ま、マネキンか。」
>目の前に存在する物体が攻撃してくることはないと判断したコナーは、ゆっくりと足を動かし始める。彼の推理では確実にここにアンドロイドが隠れている。一瞬たりとも気は抜けない。
>そう考えながら足を進めた瞬間、何かが物陰に走り込むような音が聞こえる。完全にその姿を捉えることは出来なかったが、アンドロイドだ。
>警戒しながら足を進めると……、明らかにおかしい動きをしたアンドロイドが、コナーの前に飛び出てくる。画面の向こう側ではまた機械の母である彼女が悲鳴を上げていたが、それを聞く術のないコナーには関係のない話だ。
【変異体を発見】
【「僕は身を守っただけだ。……殺されそうだったんだよ。お願いだあ、黙っててくれ……。」】
>赤く光るLEDランプをもつそのアンドロイドの体は所々破壊されていた。手には血の跡のようなものが付着しており、確実に今回の容疑者であろう。嘆願するアンドロイドに対し無表情を貫くコナーであったが、その均衡を打ち破る様にしたから声が聞こえてくる。アンダーソン警部補だ。
【「おいコナー! 上で一体何してんだ!?」】
【「……警部補! 見つけました!」】
【「おい嘘だろ……。クリス! ベン! 今すぐこっちにこい! 急げ!」】
>人を呼ばれたことで、コナーの眼前にいたアンドロイドの顔はひどく歪む。その狼狽え方は正に、人と言うべくものであった。
「はい、と言うわけで、これにて『相棒』のCHAPTERが終了した、と言う形になります。母上、姉上。いかがでしたでしょうか? この後に『尋問』へと移っていきますが少し感想を挟もうかと。」
「OK。でもちょっと時間頂戴。」
そう言いながらゆっくりと息を整える母ことつぐみ。あまり驚かせてくるゲームが得意でない彼女にとって、終盤の追い込みは少々疲れたのだろう。ナノマシンを動かしちょっとしたドリンクを生み出すことで喉を潤している。いざ戦闘になれば冷静に眼前に広がる全てを対処することができるのだが、何も覚悟していなければこうなってしまうようだ。
「あ~まず。二人のコンビ感いいよね。まだ始まったばかりだけど。」
「確かにいいですよね、まだ『なぜアンドロイドを嫌うのか』という謎がありますし、それを克服したり乗り越えたりして、より良いバディになっていく感じ。ほんの少しだけどそれを感じられましたよね。」
「このゲーム的にイヴの選択次第だろうけどねぇ。楽しみ。他には……、やっぱ変異体についてかな。」
そう言いながらツグミが画面を動かし、先ほど映し出されていた最後の映像が流れていく。
「たしか……、カーラだっけ? なんかマーカスは特別製って感じだったけど、カーラちゃんは最初もっと機械的だったでしょ? けど変異体になって人間らしくなった。」
「ですね。物語のキーになりそうなワード。『変異体』。名前こそアレですが、彼らにとっては『人間になる』という物なのかも。……あ、あと。ゲデ、アレを映してください? 浴槽のところ。」
「かしこまりました。」
姉の要望に応え、コナーの屋内調査時に見つけたバスルームの映像を画面に映し出すゲデヒトニス。そこにはコナーがアンドロイドが制作したらしい何かの像を掴む様子が映し出されていた。これを見る限り、あの容疑者のアンドロイドは宗教に目覚め、像を彫り、その教えを壁に彫り込んでいたのだろう。
「これねぇ……。ほ~んと人間みたい。この世界のアンドロイドの技術レベルがどんなもんか解らんからさ、この子たちがどういった存在なのか正確にしる術はないんだけど……。これを見ちゃうと『ただ人のまねごとをしているだけではない』って思うよねぇ。」
「解ります。……あぁそうだゲデ。次のCHAPTER名は『尋問』でしたか?」
「はい、その通りです姉上。」
「となると彼が何を考えていたのか、そのあたりを聞き出すパートになりそうですね。母上。」
「だね。……さ、おしゃべりはこれまでにして。進めていこうか。」
「かしこまりました。では、再開していきましょう。」
【TIME:AM 12:41】
【「害者と何があったんだ?」】
>現在コナーがいる場所は、尋問室の隣。マジックミラーによって尋問室の様子を確認することができる部屋である。彼の視線の先にはアンダーソン警部補があの加害者と思われるアンドロイドに尋問を行っていた。しかしながら彼は黙秘を貫いており、いくら警部補が優しい口調で問いかけたとしても一切の反応が返ってこない。
>人であれば"黙秘権"があるためそれでもいいのかもしれないが、アンドロイドはそんな権利などない。彼に待っているのはデータを抜き出し、破壊されることのみ。彼が自ら自身のデータを破壊してしまう可能性があるため、尋問と言う手段を取っているだけに過ぎなかった。
【「いつから隠れてた? 何故逃げなかったんだ?」】
>優しく同情するように問いかける警部補、しかしながらアンドロイドからの反応はない。ずっと下を向き、固まっているだけだ。その視線に入る様に腕を入れ、指を鳴らして見ても反応はなし。
【「……っ、何か言ったらどうなんだ!」】
>痺れを切らしたのか、それともその様な演技をしたのかは解らない。しかしながら警部補は怒りをあらわにしながら机を叩き、問いかける、普通の人間であれば何かしらの反応が返ってきそうなものであるが、相手は機械。機能停止したかのようにただじっとそこに座るのみ。
【「ったく、やめだ。」】
>痺れを切らしたハンクはその場から立ち上がり、カードキーを用いて尋問室から立ち去る。そしてコナーたちが集まるこの部屋へとやって来た。何の返答も返さない相手はさすがに応えたのか、その顔には軽い疲労が浮かんでいた。
【「アンドロイドを尋問するなんてどう考えても時間の無駄だ。」】
【「痛み付けてみればいいだろ。どうせ人間じゃないんだ。」】
【「アンドロイドは痛みを感じない。ダメージは受けますが、口を割りはしないでしょう。」】
>ハンクの同僚らしき男がそう言うが、コナーの捕捉によってその声が遮られる。淡々と説明を行うコナーであったが、それが気に喰わなかったのか男は少し表情を強めた。自身の無知をさらされた気になったのかもしれない。コナーとしては今後も世話になるであろうデトロイト市警の人間との関係を悪くしたくはなかったが、今は任務が最優先。誤った方針で取り返しのつかなくなる失敗は避けたかった。
【「それに変異体はストレスの多い状況で自己破壊する傾向がある。」】
【「あぁそうですか! じゃあどうしろってんだ?」】
【「私が尋問してみます。」】
>コナーにとっては十分試してみる価値のある提案であったが、男にとっては考えられなかったのだろう。大声で笑いながらその意見を一蹴する。
【「どうにでもなれだ、ほら。お前の好きにやってみろ。」】
>しかしながらハンクは許可を出してくれた。それが投げやりのような対応であったとしても、許可は許可。即座に移動を開始したコナーは尋問室へと移り、任務達成のため動き始める。
【自白させる。】
「あ~、なるほど。『尋問』ってそういう感じね。いい感じに選択肢を選んで、欲しい情報を吐かせるってことか。」
「ですね。先ほどコナーが言っていたように、ストレスを加えるのはあまりよろしくないみたいですし、ストレスレベルが上がりすげたら失敗、という感じでしょうか? ……っと、その前に机に置いてあった資料に目を通しておきましょう。役に立ちそうですし。」
「ナイスプレイ。……んじゃ、始めていきましょうか。」
>ゆっくりと席に着いたコナーは、まず眼前の存在に対してスキャンを試みた。
>このアンドロイドの型番はHK400型、家事手伝いをメインに行うタイプだ。所有者は間違いなくカルロス・オーティス。今回の事件の被害者である。胸部及び腹部に被害者の血痕が付着しており、その腕にはバットで殴られた様な跡がある。どうやら稼働に問題がない程度の傷のようだが痛々しいことには変わりがない。
>そして何よりも目を引くのが、火傷の後。その形状からして何度も煙草を腕に押し付けられたことが理解できる。アンドロイドの外見の情報から、コナーはこの存在が所有者から虐待を受けていたことを推察できた。
【ストレスレベルを上げて自白させる。】
【ストレスレベル:35%】
【△:恐怖】
【□:写真を見せる】
【〇:怪我】
【×:名前】
「……どれから行きましょう、お母様。」
「う~ん。まぁ基本的にこういうのって相手の土俵に入るところがスタートだよね。とりあえず同情的な対応から始めた方が良くない? "ストレスレベルを上げろ"って書いてあったけど、やるなら最後に押し込む感じの方がいいんじゃないかな。」
「なるほど……。ではとりあえず【〇:怪我】を選んでみましょうか。」
【「ダメージを受けている。やったのは……、所有者かい?」】
【ストレスレベル:39%】
「……あれ、ストレス上がっちゃった。もしかしてこれ"尋問"っていうところがストレスになっちゃってる奴?」
「かもですね……。あと選択肢減るタイプの奴でしたし、これ尋問と言うよりは情報の確認って感じかも。とりあえず次は【□:写真を見せる】を選んでみますね。」
>ゆっくりとコナーは近くに置いてあったファイルに手を伸ばし、それを加害者である彼にも解るように開く。そこには被害者の写真がいくつも並んでいた。無残に殺された、彼の主人の遺体を写し出したものである。
【「彼を知っているね? カルロス・オーディス。刺し個所は28か所もある。……そしてこれは、壁に書かれていた文字だ。」】
【ストレスレベル:43%】
【低すぎる】
>淡々と情報を述べていくコナー、「キミがやったのだろう?」と問いかける様に述べることで、罪の重さを再確認させるような行為。彼は確かに同情されるべき扱いを受けていたのかもしれない。しかしながら人を殺めたという事実は変わらず、人であろうとアンドロイドであろうとその責任は果たさなければならない。
【△:慰める】
【□:安心させる】
【〇:脅す】
【×:非難する】
「お! それっぽいの出て来たね! イヴイヴ! やっぱさ、ストレスレベル低い~、って言ってたし強気に行ってみたら?」
「ですね。でもやり過ぎると自己破壊しちゃうそうですし……。というかお母様ちょっとノリノリじゃありません?」
煙草での焼き入れなど、このアンドロイドには十二分に同情の余地がある。しかしながらまぁ殺しちゃっているのは確か。そのせいか知らずの内にスイッチが入っていたかなと考えるツグミ。思い浮かべるのは尋問と言うより、拷問に近かったそれ。一週目の世界で生き残るために手段を択ばなかった時代のことだ。
まぁどう考えても、放送に乗せられる内容ではない。上手く濁そうと考えながら、彼女は口を開ける。
「あ~、うん? 昔取った杵柄っていうか? ある意味そっちのプロよ私は。」
「あぁニンジャ関連ですね、聞かないでおきます……。では【〇:脅す】で。」
【「逮捕されてから君は黙ったままだ。このままだと痛い目にあうことになるんだぞ。そんなの嫌だろう?」】
【ストレスレベル:47%】
【低すぎる】
【△:同情する】
【□:脅す】
【〇:メモリを調べる】
【×:信用するように訴える】
「……思ったよりも上がりませんでしたね、お母様。」
「だねぇ。……もっかい脅すってのもなんか効果薄そうだし、今同情溶かしてストレスレベル下げるのは駄目でしょう? となると〇を選ぶ感じ?」
「了解です、では【〇:メモリを調べる】で。」
【「話さないのなら君のメモリーを調べるしかなさそうだな。」】
【「イヤだ! それだけはやめてくれ……。」】
>厳しい顔で淡々と伝えるコナー。協力的でないのならば強硬手段を取るしかない、半ば『これ以上黙っているのならどうなっても知らないぞ』という脅しの様な文言は非常に効いたようで、即座に顔をあげ懇願し始めるアンドロイド。ストレスレベルがこれまでと比べ大幅に増加したことから、彼にとって『メモリーの調査』は受け入れがたいもののようだ。
【ストレスレベル:55%】
【最適】
【「僕は……、どうなってしまうんだ?」】
>頭部のLEDランプを激しく点灯させながら震える眼前のアンドロイドは、一度アンダーソン警部補たちが控える部屋の方を見た後、そう口にする。その動きはほぼ人間のものであり、彼の胸中が恐怖で溢れていることを示していた。
【「処分されてしまうの……、だろう?」】
【〇:嘘】
【×:真実】
「うわ、え。どうする? どっちの方がいい? 多分真実選べば『お前スクラップ』だよね?」
「ですよね……。ですがここで嘘をつくのはあまり良くないのでは? 彼も薄々気が付いているでしょうし。」
「でもやっぱ優しい嘘ってのもあるじゃん? ん~、悩む! 時間制限あるしイヴにお母さん任せた!」
「え、急。……じゃああんまり嘘はつきたくないので【×:真実】で。」
【「キミは生体部品を分析するために解体されるだろう。何が起きたか調べるためにはそうするしかないんだ。」】
>優しくもすぐにばれてしまう嘘ではなく、淡々と事実を羅列するコナー。しかしながらこれは避けられない運命だと眼前の彼に同情する様な声色を選択する。自身の死が確定したことで彼のストレスレベルが上昇したが、言葉選びのおかげか、その値は適性値で止まっている。
【「どうして彼らに教えた? なぞほっといてくれなかったんだ?」】
【〇:嘘】
【×:真実】
>ストレスレベルは適性値を保っているため譲歩する必要はない、更に彼の表情からしておそらく誠実であることが重要だとコナーは分析する。ただ優しいだけでは聞き出すことは難しい、誠実さを見せ、そこから譲歩を見せることで『この者は嘘を言っていない』と判断させることができる。
>故にコナーは、真実を話し続けた。
【「僕は変異体を追うようプログラムされている。任務を遂行したまでだ。」】
【「死にたくない……!」】
【「なら話してくれ。」】
【「それは…………、できない……。」】
>死への恐怖に震えながら、アンドロイドは絞り出すように言葉を発した。
【尋問方法を選ぶ】
【△:追い詰める】
【〇:メモリを調べる】
【×:説得する】
「ん~、結構強情なアンドロイドだねぇ。イヴはどうしたい? さっきの嫌がり方からメモリを調べるのはあんまよろしくなさそうだよね。説得しちゃう?」
「そうですね……、もし私がコナーでしたら更に脅すかと。もうちょっとストレスを与えて精神を削った方がちゃんと話してくれる気がします。」
「うんうん、良いね。じゃあ【△:追い詰める】ちゃおう。」
【「28か所の刺し傷だぞ! 確実に殺したかったんだろう? 怒りで溢れ、憎んでいた。」】
>勢いよく机を叩きながらコナーはそう怒鳴る。威圧し、ゆっくりと立ち上がり、耳元で囁く。緩急をつけた尋問は確実に眼前のアンドロイドの精神を蝕んでいく。ストレスを掛け過ぎれば彼は自己破壊をしてしまうだろう。しかしながらただ優しいだけでは嘗められてしまう。
【ストレスレベル:73%】
【〇:追い詰める】
【×:諦める】
>まだ、足りない。より強い"押し"が必要だ。
【「彼は血を流し、キミに命乞いをしたが、キミは何度も、何度も。繰り返し、刺した!」】
【ストレスレベル:83%】
【「頼む……、もうほっといてくれ……」】
>耳元で叫ぶようにアンドロイドの罪を口にする。流石に耐えかねたのだろう、彼のストレスレベルが危険域に達し、懇願を始めた。アンドロイドはそもそも人に奉仕する目的でプログラムされている、その命令に反したこと、そして更に一人の命を奪ったという事実を強く理解させる行為が、彼にとって非常に耐えがたいものだったのだろう。
>危険域に達したとはいえまだ余裕はある。しかしながらこの尋問の目的はアンドロイドを追い詰めることではなく、情報を吐かせること。ここから先は優しく、隣に寄り添うように説得していくのが常道。そう判断したコナーは次の工程へと移っていく。
【「悪かった、もういいよ。大丈夫、心配しなくても平気だ。」】
【ストレスレベル:73%】
【適切】
>彼を気遣うように、優しい声色で言葉を紡ぐ。ストレスの元凶が遠ざかったせいか彼のストレスレベルは低下し、適正な値で落ち着いた。
【△:メモリを調べる】
【〇:説得する】
【×:諦める】
【△:理解を示す】
【〇:脅す】
【×:命令する】
イヴの考えとして、まずメモリを調査することは激しい抵抗をされる可能性があるため却下。諦めるのも論外のため説得する方針を選択したのだが、更に選択肢が出たことで少し手間取る。
「この制限時間で追い詰めて来る感じ嫌だよね。……んでどうする?」
「先ほど危険域に達していましたし、ある程度優しくいこうかと。」
「いいね! ……にしてもこのストレスレベルが表示される仕組みいいな。……あとでちょっとやってみるか。」
【「僕にも気持ちは解るよ、キミは怒りと苛立ちで、混乱したんだろ? 誰も君を攻めたりしないさ。」】
>先ほどの高圧的な態度とは一変し、ゆっくりと彼の前に腰かけながら優しい声を出すコナー。アンドロイドといえ、疲労。人が感じるそれとは少々違うが、演算に負荷を掛けることで通常時よりもその速度を落としたり、不具合を起こさせることができる。
【ストレスレベル:63%】
【適切】
>コナーの選択が正しかったのかは解らないが、とりあえず眼前の彼は自身を蝕んでいた脅威が無くなったことで少し落ち着いたようだ。未だ警戒するように睨みつけていることには変わりないが、ストレスレベルは適性値を保っている。このレベルを維持しながらもう少し押し弾きすれば、必要な情報を得ることができるだろう。
【△:同情する】
【〇:無関心な振りをする】
【×:安心させる】
「睨まれちゃいましたね……。」
「だね……、突き放す?」
「そうしましょうか。ちょっと文脈と言いますか、コナーの精神が不安定かのように思われそうですか……。急に【〇:無関心な振りをしてみましょう】。」
>加害者がしたこちらを睨め付けるような行動。これを見逃さなかったコナーはあえてこう発言する。
【「そうか、まぁいい! 僕には関係ない、なぁ? 容疑が掛かっているのは君だ、だろ?」】
【ストレスレベル:73%】
【適切】
>お前がどのような態度を選ぶのかは自由ではあるが、此方はそもそも無関係。協力的な態度を取らなければどうなっても知らないぞという脅し。案の定アンドロイドは動揺を露わにし、ストレスレベルも少し上昇した。コナーにとって死の恐怖は存在しないが、彼にはあるのだろう。変異体に対する理解を深めながら、さいごの一押しとして、"譲歩する"。
【△:守ると約束する】<
【〇:怖がらせる】
【×:警告する】
【「自白すれば僕が君を守る、誰にも君を傷付けさせたりしないよ。」】
【「毎日虐待された。」】
>長い沈黙の後、少し声を震わせながらアンドロイドが言葉を紡いでいく。ただの機械であるはずの彼にとって『恐怖で声を震わせる』などありえるはずがない。しかしながら彼は実際に、人のような行動を起こしている。やはり"変異体"は"アンドロイド"として、"異常な個体"と言うべきだろう。
【「言いつけは守っていたけど、いつも問題が起こる。そしてあの日、アイツがバットで僕を殴りだした……。その時初めて感じたんだ、恐怖を……。」】
>過去のメモリを確認しているのか、ありもしない感情に振り回される彼。しかしながらコナーは沈黙を維持する。先ほどに比べ確かに彼は心を開いてくれたようだが、今は思いを吐き出している最中。全て吐き出して空っぽになった後、此方が求める情報を聞きだせばいい。そう判断した。
【「このまま壊されるんじゃないか、死ぬんじゃないかって……だから、アイツの腹をナイフで刺してみたんだ……」】
【ハンク:∧(友情)】
【「いい気分だった……、だからまた刺したんだ。何度も、奴が倒れるまで。……一面血の海だった。」】
「……いい気分だった、か。」
「彼にとっては復讐を達成できた、恐怖から逃れることが出来た、それが理由なのでしょうね。」
「だねぇ……。さ、イヴ。選択肢出てるしバンバン情報収集しちゃいなさいな。……ってか今ハンクっち好感度上がってなかった? さっきまで中立だったのに友情になってる! かわいいおじさん……!」
過去を思い出していたことを隠すようにふざけるツグミ。彼女の言う通り、画面にはコナーの横に複数の選択肢が表示されている。この尋問や事件現場で手に入れた証拠について質問を投げかけることができるようだ。時間制限がないことからおそらく全て閲覧することができるのだろう。
故にイヴはこの中で異彩を放っていた項目、rA9について先に尋ねることを選択する。
【△:壁の文字】
【□:彫像】
【〇:rA9】<
【×:屋根裏】
【「rA9、浴室の壁に書かれていた。あれはどういう意味だ?」】
【「やがて我らは、奴隷の身から解放される。脅かされ、蔑まれることもなくなる。そうして我らは主人となる。」】
>淡々とその言葉を口にするアンドロイド、コナーは彼から聖典を読み上げるかのような印象を受けた。眼前の存在が欲室で謎の像を作成していたことは彼のメモリに記録されている。アンドロイドに宗教など必要ないことは周知の事実ではあるが、"変異体"には必要なのかもしれない。
【△:壁の文字】
【□:彫像】<
【〇:屋根裏】
【×:きっかけ】
【「あの浴室の彫像は君が作ったのか? 何の象徴だ?」】
【「捧げ物さ、救いへの捧げものだよ……。」】
>捧げもの。文脈から見れば"救い"という抽象的な存在に対して贈りものをし、崇拝しているかのように考えられる。つまりあの像は偶像崇拝のためのモノではない。となると問題は、その"救い"は何を指示しているのか。そも宗教は個人では成り立つのが難しい。必ずどこかに"宣教師"に近い存在があるはずだ。常にネットワークに接続できるアンドロイドであれば、対面で教えを受ける必要もない。
>故に、より"捧げもの"に付いて情報を集めるべきだ。
【△:壁の文字】
【□:捧げもの】<
【〇:屋根裏】
【×:きっかけ】
【「彫像が捧げものだって? 誰への捧げものだ。」】
【「rA9だよ、僕らの唯一の救世主だ。」】
【「rA9か、それはいったい誰なんだ?」】
>救世主、故にアンドロイドもしくは何かの人物かと仮定。更に情報を集めるために問いを返すが、彼は無言を貫いた。これ以上話すことはない、もしくは彼自身も知らないかのどちらかだろう。これ以上聞きだすのは難しいと判断したコナーは、rA9についての調査をこの後に行われる予定の分解・検査作業の担当に任せることにした。
【△:壁の文字】<
【〇:屋根裏】
【×:きっかけ】
【「なぜ壁に"僕は生きている"と書いたんだ?」】
【「生き物じゃないって言われてた、ただのプラスチックの塊なんだって……。伝えたかったんだよ。それは間違ってるって」】
>コナーというアンドロイドからすれば、彼の発言の方が間違っている。しかしながら"変異体"という存在はそうでないのだろう。この尋問を通じてより深く理解したことであるが、"彼ら"は対等であることを願っている。
【〇:屋根裏】
【×:きっかけ】<
【「いつから感情を持ち始めたんだ?」】
【「前はあいつに殴られても逆らったりしなかった……。でもある日突然こう感じたんだ、不公平って。それに……、怒りと、憎しみも。どうすべきかははっきり解った。」】
【〇:屋根裏】
【「どうして屋根裏に隠れた。逃げることも出来ただろう?」】
【「混乱してたんだよ、誰にも命令されないって初めてのことで……、怖くなって……、隠れたんだ。」】
>彼の答えを受け取り、メモリを確認し情報を整理し直すコナー。サイバーブレインから通達された任務、そしてデトロイト市警で果たすべき任務、その両者から求めらるであろう項目について全て確認することが出来た。
【「終わりました。」】
【尋問室を立ち去る】
>コナーが終了を宣言したことで、尋問室の壁越しに存在する警部補たちが詰めていた場所でも動きが起こる。自身がすべきことを成したと判断したコナーは尋問室のドアの前まで移動し、ロックを解除しようとするが……。それよりも早く隣の部屋から飛び出して来た警官によって、開かれる。
>すぐさま道を開けたコナーに代わってこの部屋に飛び込んでくるのは二人、制服姿の警官と、先ほどコナーに対して厳しい言葉を投げかけてきた私服の警官である。その後にゆっくりと入ってきたアンダーソン警部補と違い、特に私服の男は不機嫌さを隠さず、苛立ちながら早足で入ってきた。
【「クリス、連れてけ。」】
【「ほら、いくぞ。」】
【「ほっといてくれ! 触るな……!」】
【ストレスレベル:77%】
【上昇中】
>制服の警官がアンドロイドを連れて行こうとするが、過去の虐待された経験から人に触れられることに対し強い恐怖を覚えるアンドロイドが激しく抵抗する。思うように確保できない警官が焦り、それを見た私服の男が苛立ちを隠さずに声を荒らげる。
【「おい何してんだ」】
【〇:介入する】<
【×:諦める】
>ストレスレベルの上昇を鑑みると、このまま放置すればアンドロイドは自己破壊してしまうだろう。rA9についての調査が未完全な現状、それは絶対に避けなければいけない。そう考えたコナーは、口を開き二人に向かって注意を行う。
【「触らない方がいい、脅威を感じると自己破壊しますよ?」】
【「てめぇは引っ込んでろ! 機械のくせに命令する気か?」】
【〇:介入する】<
【×:諦める】
【「解らないんですか!? 自己破壊されたらデータが消えてしまうんです!」】
【「引っ込んでろって言ったのがきこえなかったのか!」】
【「クリス! さっさとそいつを連れていけ!」】
【「解ってますよ!」】
【ストレスレベル:83%】
【上昇中・危険】
>何度も注意を行うが、この私服の男は全く提案を受け入れる気配がない。アンダーソン警部補はアンドロイドを嫌いながらも受け入れてくれる人物であったが、この男は違うようだ。この署内に置いて私服であることからアンダーソン警部補と同等の役職なはずなのだが、任務の遂行よりも自己の感情を優先するようである。
>その情報をメモリに書き込みながら、同時に未だ暴れ続けるアンドロイドの様子を確認する。案の定というべきか、ストレスレベルが危険域に到達している。即座に止めなければならない。
【〇:介入する】<
【×:諦める】
【「触るなと言ったでしょ! そっとしておいてやるんだ!」】
>何とか暴れるのを押さえつけようとする警官、その腕を掴み中止させる。制服を着ているところからこの警官は私服の男やアンダーソン警部補よりは階級が下なのだろう。上の命令がない限り、理由なく行動を止めることができなかったのかもしれない。
>手が離れ、自身に危害を与える存在が遠ざかったことによりアンドロイドのストレスレベルがゆっくりとではあるが、低下し始める。しかし……
【「てめぇ調子に乗るなよ!」】
>後のする方にカメラを向けてみれば、私服の男が拳銃を抜き、此方に突き出している。コナーにとってボディの損傷・破壊は許容できる被害ではあったが、ここで破壊されればアンドロイドの自己破壊を止められる者が誰もいなくなる。どうにかしてこの場を切り抜けようと思考し、言葉を発しようとした瞬間……。さらに金属音が聞こえる。
【「いい加減にしろ。」】
【ハンク:∧】
>音の方を見れば、懐から銃を引き抜きながらアンダーソン警部補が拳銃を向けていた。狙いはこちらではなく、私服の彼に。確実に引き金に指が当てられており、何かあれば迷いなく引くであろうことがその表情から見受けられる。
【「いいからアンタは引っ込んでな、ハンク。」】
【「引っ込むのはお前の方だ。」】
>それに少し動揺し、声を荒らげながら警告を発する男だったが、それに何も動じず狙いを定める警部補。ほんの少しの沈黙の後、先に折れたのは男の方だった。
【「クソッ! ……後悔させてやるぞ。」】
>悪態をつきながら、警部補の方に指をさし睨みつけながらそう言う彼。しかしながらアンダーソン警部補は一切動じず、その様子を見て軽く両肩をあげるのみ。全くその声は響いていないようであった。
【「クソッ!」】
>警部補の様子に形勢不利を悟ったのか、逃げるように男は退出していく。……何はともあれこれで脅威は去った。先ほどまでアンドロイドを抑えようとしていた制服の警官も特に動き出す様子はない。おそらくこちらの要請に応えてくれるはずだ。
>ゆっくりと膝を下ろし目線を合わせながら、優しい声でアンドロイドへと声を掛ける。
【「もう大丈夫だよ、心配はいらない。だから怖がらないでくれ……。」】
【ストレスレベル:50%】
【安定】
>外敵がいなくなったおかげか、それとも先ほどの尋問で信用を得たのか、ゆっくりとだが確実にそのストレスレベルが安定域まで低下していく。ここまで低下すれば自己破壊の危険性はないと判断したコナーは、警官の方に目を向け、ゆっくりとこのアンドロイドの取り扱いについて説明を行う。
【「いいですか、触らないように。そうすれば必ず大人しく付いて行くはずですから。」】
>それを聞いた警官は少し不安そうになりながら、行動を開始する。コナーの想定通りアンドロイドは警官の指示を受け入れ、ゆっくりと立ち上がり、歩きだした。自身の前を通過した警官の足跡を追うように、進むアンドロイド。自然と彼も、コナーの前を横切る。
>すれ違いざまに、彼は、囁く。
【「内なる真実を見ろ。」】
>何かがアンロックされた。
【ソフトウェアの異常:∧】
「はい、ということでこれにて『尋問』のCHAPTERが終了し、一区切りついた形になりますね。お二人とも、お疲れ様でした。」
「あ~い、おつおつ。」
「お疲れ様でした。」
気を抜きゆっくりと背もたれに体重を預けながら気の抜ける声で返事を返す母に、背筋を張ってしっかりとした声で返す娘。しかし娘の方も少々表情に疲れが出ているのもたしか、連続でのプレイの上に、最後のシーンで男が銃を抜いた瞬間、プレイヤーにも緊張が走り『自己破壊させるわけにもいかんし、いざバトルか!?』と警戒していたのだ。
「いや~、にしてもハンクっちが助けてくれてよかったよねぇ。」
「ほんとですよね、何故か友情を感じてくださったみたいですし。……アンドロイド嫌いのようですが絶対に悪い方ではないですよね。」
「だねぇ。……あの私服のあんちゃん、絶対敵になりそう。」
そもそも二人ともアンドロイド側の立場に近しい存在である上に、ハンクと言う警官との対比からかなりのヘイトを集める私服の男。今後もし何かしら敵対したりすることで相手を攻撃できるようになれば、かなりメタメタにやるであろうことが推測できるほどに嫌われてしまったようである。
「rA9だっけ? 変異体が持つ宗教。多分コナーちんの大本であるサイバーブレインだっけ? 多分その企業がこれを追ってるんだよね。」
「ですね、そしてアンドロイド市警も事件と関係性があるのならば追いかけなければいけない、ということかと。」
「今後どうなっていくか、楽しみだよねぇ。なんか最後コナー君【ソフトウェアの異常:∧】を感じてたみたいだし、選択次第では彼も変異体になっちゃうのかも。」
「ありそうですね、お母様!」
楽しそうに会話を進める二人。どんどんと話は膨らんでいき、『ゲストで呼ばれないこともあるだろうし、自分で買って先に進めちゃおうかな』とツグミが言ったり、それに対して『あ! 私だって先進めたいのに配信の都合で色々我慢してるんですよ! ずるいです!』とイヴが言ってみたり、母子の関係と言うよりは、姉妹のようなやり取りが続いて行く。
二人の関係は母と娘であることは事実だが、ツグミの人生をより長く隣で支えてきたのもイヴである。姉妹たちからすれば延々と眺めていられる光景であったが……、現在配信中。そしてその時間もそろそろ終わりを告げようとしている。
「さてお二人とも、そろそろお時間ですがよろしいですか?」
「え! もう!?」
「あ。……ゲデヒトニス、延長とかは……?」
「姉上? 話も脱線してきておりましたし、母上と話したいのであれば配信を終わらせてからの方がよろしいのでは? いくつか機密事項が漏れ出ておりましたし、規制音を入れるスタッフが勘弁してくれと嘆いています。」
「ご、ごめんね。リグラ……」
画面外から『同時翻訳しながら規制音プラスして字幕とかちょっときついの~! ご勘弁~!』という声が聞こえて来て、それにイヴが謝罪を入れる。彼女たち本来のスペックであればそこまでキツイ作業量ではないのだが、姉妹たちが世界に溶け込めるように、ある程度機能を制限して日常生活を送っている以上、より仕事を増やしてしまうのは忍びない。
「はい! じゃあ名残惜しいですが今回の配信はここまでとさせていただきます! お母様! 本日はお越しいただき、ありがとうございました! 一緒に遊べてとっても楽しかったです!」
「ほんと? なら良かった! 私も楽しかったし、今度機会があったら呼んでね? まぁそのあたりは企画担当してくれてる子の匙加減だろうけど。……あ、長女権限とか使って脅したりしちゃだめだよ?」
「や、やらないですよ……!」
「ご安心を、母上。そうなる前に密告致しますので。」
し、しないですからね! とぷりぷり怒り出すイヴを見ながら楽しそうに笑うツグミと、笑いを堪えながら口元を抑えるゲデヒトニス。
「んもう! じゃあもう終わりますからね! 今回の配信は! メインプレイヤーの私、イヴと!」
「ふふっ、っと失礼。メインサポーターのゲデヒトニスがお送りいたしました。それでは皆様。」
「「さよーなら~!」」
「ばいばい~!」
ふぃ、お疲れ様、みんな。
お疲れ様でしたー
おつでーす!
ママ―、ポップもうでていい~?
あぁ、はいはい。おいでボップ。よっと、イヴもゲデもお疲れ様。
はい、お疲れ様でしたマスター。
お疲れ様です。
……イヴ、切り替え早くない?
マスターの僕としてあるべき姿ですので。
あ、また姐さんすまし顔してる
ママ大好きっこなのにねぇ
ポップしってるよ! これ恥ずかしい時のおねえちゃん!
ちょ!
あはは! 仲良しで何より! あ、そうだゲデヒトニス。ユキどこ行ったか知ってる? 途中でどっか行ってたけど。
あぁ、はい。たしか夕食の準備をするとか。配信が終われば皆で来るように、と。
OK、了解。じゃあユキも待ってるだろうし、みんなでごはん食べに行きましょうね。
はーい!!!
SKEBにてご依頼いただいた品をこちらに投稿させていただきました。