前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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お仕置きは持ち越しです

 

 

さて、んじゃまお仕置きの前にちょっとだけ例の双子について情報を整理するとしますか。ちな二人については現在の私たちでは知りようのない情報なので、当分お口チャック。まぁいつもの事なので慣れたもんです。

 

お仕置き対象はクイックシルバーことピエトロ・マキシモフで妹はスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフ。お兄ちゃんの方は脚がとっても速くてワンダの方は魔女、危険度で言えば妹の方がヤバいんだけどまだ成長途中なので両者ともにやり方さえ知っていれば今の私で完封できる相手。

 

二人ともトニーに対して激重感情持ってて彼のことが大嫌い、ソコヴィア出身で在住だったのをいいことに自分たちからストラッカーの実験に志願して強化人間になっちゃうちょっとヤバい兄妹でもある。

 

今回の話、というかウルトロン関連のイベントが進む中で。まぁ映画通りに進めばだけどピエトロはウルトロンに攻撃されたクリントを庇って死亡する。それによってワンダが怒りで強化されウルトロンくんバイバイって感じ。まぁヒドイ言い方になるが“消えてもいい人間”でもある彼。

 

でもウルトロンじゃなくて私がそれをやっちゃうとまぁ駄目なわけで、ワンダが私に激重感情を持つようになり最悪ユニバースが崩壊する可能性があるのよね。アメコミの方でもアベンジャーズ皆殺しにしてたし。

 

トニーたちと協力したり不意打ち狙えば完全体のスカーレット・ウィッチに対してギリギリ相打ち狙えるだろうけど……、まぁ絶対に敵対したくない相手だよね。一対一で戦う場合初手で私切り札切らないといけなくなるしさ。

 

 

というわけでかる~い、感じのお仕置きにしときましょうね? 反省しなよピエトロ。

 

 

「クリント!」

 

 

通信でナターシャの声が聞こえる。現在私は敵本拠地の方へトニーの手助けに向かっていたんだけど急遽中止。

 

 

「ッ! ……強化人間がいる。」

 

「クリント被弾!」

 

 

キャップとナターシャからの報告、イヴがマップを表示し負傷者の位置をディスプレイに。今日は、というかアベンジャーズとして戦う時はTailの中身も刷新していて人用の救急箱やクリントやナターシャ用の武器弾薬も少量であるが入れてある。日本で求められる役割は火力と速度だけど、アベンジャーズには両方ともそろってるからね。私はサポート兼遊撃なんです。

 

 

「トニー救援中止でクリントの方へ行くね! あと頑張って!」

 

「了解した、まぁ僕一人で十分だ。ゆっくりしてきたまえ。」

 

 

トニーに通信を送りクリントの方へ急行する、簡単な応急処置は二人の装備でもできるけど限界があるからね。どんなケガでも科学力で殴り飛ばしてあげるからご安心を、ついでにお仕置きもする。

 

 

「誰かあっち片づけて!」

 

 

ナターシャの声に反応してか緑色のおっきなおじさんが敵トーチカを軽々しく破壊、ちょうど私が視認できる範囲で土煙が上がる。さっすがハルク、仕事が速い。

 

 

「ナイスハルク! あとヤブ医者現着しました、ってうわ抉れてる。今すぐ応急処置するからナターシャちょっとどいて!」

 

 

二人の少し離れたところに着陸し、スーツを脱ぐ。浮遊Tailの一つをそのまま私に追従させるように指示しすぐさま彼の元へ。見た感じギリギリ内臓に損傷はないけど筋肉やら骨やらが奇麗に抉れてる感じか、銃弾じゃなくて光弾だったおかげで焼き切れているから出血は少ないけど早く処置しなきゃ。

 

 

「とりあえず傷を塞いでこれ以上悪化しないように止血も、痛み止め撃つよ。」

 

 

Tailから固定シールと医療用凝固液、あと痛み止めを取り出す。弱いのだけどまず痛み止めを彼のプロテクターの上から差し込み注入、クリントが声を上げるが無視して痛み止めの赤いシールを癖で胸に張る。次に患部を覆うように固定シールを張り付け注入口から凝固液を流し込む。あとは蓋を閉めれば応急処置の完了。傷口の悪化防止と止血+外部から雑菌が入らないようにした、あとはちゃんとした医者に任せる。

 

 

「……固まったね。OK、処置終了。ナターシャ護衛サンクス! でも重症だから早く後退させた方がいいかも!」

 

「俺がハンマーで運ぶ、任せろ。」

 

 

着地音と共に横からソーが出現、雷神様のエントリーですね、って!

 

ハッとして敵の城の方を見るとすでにシールドがはがされている。え! もしかして私色々見逃した! トニーがシールド剥がすとことかシールドとハンマーで戦車破壊するとことかキャプテンが汚い言葉使ってトニーにいじられるシーンとか聞き逃した!? 処置で集中してたせいで? うぅ……、こうなったのも全部ピエトロのせいだ! 絶対ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!

 

 

「キャプテン! 強化人間ってどんな奴!」

 

「速い奴だ。」

 

「ニンジャじゃん! こんなところもまで来やがって……、ブッコロシテヤル!!!」

 

 

そう叫びながらもう一度スーツを装着し、この付近のスキャン。見つけられるのはヒドラ残党のみ、けど彼ぐらいに速いとセンサーで探知できないかもしれない。こうなったら敵っぽい痕跡見つけたら全部破壊してやる!!! 一回殴らせろピエトロ!

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

窓ガラスを突き破り、城の中へ。

 

出迎えてくれるのは……、ボーイじゃなくて銃弾か。まぁいい。

 

 

「諸君、よせ。話せばわかる。」

 

 

ディスプレイに熱烈な歓迎をしてくれる彼らの顔が映し出されていく、ロックオン完了。不本意だがたくさん貰ってしまったんだ、お返しはきっちりしないとな。

 

肩の誘導弾が発射され制圧完了、キレイキレイだ。

 

 

「話せてよかった。……さて、杖はどこにあるかな?」

 

 

床に降り立ちそのまま奥へ進む、熱源が多くイブが用意した館内マップにもここが指令室か研究室だと当りを付けて飛び込んだが大当たり。奥に急いでキーボードと遊んでる奴がいるな、ようやく気が付いて銃を構えようとするが僕の方が速い。

 

リパルサーを彼と機器の間に打ち込み終了。

 

 

「見張ってろ。」

 

 

スーツを脱ぎ彼が操作していたパソコンたちの前に。ポケットにUSBを入れておいて正解だったな。

 

 

「よぉしジャーヴィス、これ全部。いただくぞ、コピーしてヒルに送れ。」

 

 

 

『敵は制圧した。』

 

『ニンジャ! 出てこいニンジャ! 私に殺されろニンジャ!』

 

『よし、バナーに子守歌だ。それとツグミにも頼む。』

 

『……勘弁してくれるかしら。』

 

『ウガァァァアアア!!!』

 

 

 

通信が届き、外が制圧されたことを知る。それとツグミがまたおかしなことをしているようだが……、いつものことだ。それにニンジャに大分苦しまされたみたいだし、仕方ないのかも。まぁある程度暴れたら静かになるだろ。さて、コピーは順調だが……

 

 

「他にも何か隠してるはずだ。ジャーヴィス、部屋を赤外線スキャン。急げよ。」

 

『左手の壁、スチールで補強されており空気の流れがあります。』

 

 

表示されているのはキャプテンの言う強化人間のデータ、わざわざこのデータだけをこの拠点で守るはずはないと思ったが……、ビンゴ。

 

壁を強く押し込むと隠し扉が作動し奥へ続く道が現れる、本当に宝探しみたいになってきたな。

 

少し進むと地下に続く階段、それと長い廊下。まさに何か隠してますって感じ。

 

奥に進み……、見えたのはニューヨークで戦ったあの巨大な魚。チタウリの兵器だ。

 

 

『ストラッカーを捕えた。』

 

「こっちも、収穫ありだ。……もっとデカい奴。」

 

 

少し見渡せば視界に入るのは作成中のロボットたち、手術台に無理やり乗せられたような奴がたくさんだ。しかもコイツはチタウリの技術で作ったせいか……、あの時のハマードローンよりも高性能だな。この数が完成していればちょっと厄介なことになっていたかもしれない。

 

他にも何かあるだろうかと思い、見渡すと……青い光。僕たちと因縁があるロキの杖が作業台の上に。

 

 

「ソー、杖を発見した。」

 

 

それを回収しようと前に踏み出そうとした時、視界が一瞬赤い光に染まる。そして少しだけ見えた誰かの指の先。急いで振り返ろうとすると……

 

 

 

 GYOOOOOOOOOOOOO!!!!!

 

 

 

轟音、振り返ればすでに行動を停止し死んでいたはずのチタウリの巨大な兵器が唸り声を上げ、施設を破壊しながら動き出す。

 

 

すぐさまスーツを呼べば戦えるのに声は出ない。何故か飛び去ろうとするソレを目で追ってしまい、視線は元の向きに。さっきまで作業台があったそこには何故かみんなの死体が。ボロボロになるまで戦い、敗北し、血だらけで倒れている姿が。

 

背中にチタウリの武器を何本も付き刺されたハルクは弱弱しい声を上げながら痙攣している、もう長くない。目から光を失ったロマノフは倒れ、地面に投げ出された指は力なく曲がっている。バートンは弓を持ったままその場に座るように倒れ、胸には彼の矢が刺さっている。ソーは彼の自慢だったはずのハンマーが手から零れ落ち、顔は血だらけ。もうその目を開けることはない。そしてその指の先には、割れた盾、キャプテンのヴィブラニウム製の盾が真っ二つに割れて、彼も倒れている。

 

思わず彼の元に近づき、その首を触り鼓動を確かめようとする。彼なら、彼ならまだ生きているかもしれない。

 

首元に手を当てるが……、感じない。心の奥底から感情が湧き出そうになったその瞬間、手が。掴まれる。強く、手首が握りつぶされそうなほど強く。

 

 

「お前、なら、救えた、の、に……。」

 

 

信じられないほど早くその手から力が失われていく、指先が腕に掛かる感触を残しながらキャップの腕は地面に落ちて行く。

 

 

「……ツグミ、ツグミは!」

 

 

彼女、彼女ならまだ。

 

急いで立ち上がり周囲を見渡す、白い破片。墓標のように突き刺さる白い柱。いた。

 

何かに縋るように駆け寄り、より近づく。

 

でも解ってしまう、見えてしまう。あるべきはずのものがない。

 

両腕がもがれ、転がっている。

 

片方の脚はすでに足ではない、曲がらぬはずの方向に曲がっている。

 

装甲もほとんど剥がれて肉が見えている。

 

 

 

だが、だがまだ息があれば助けられるかもしれない。せめて、せめて……

 

 

駆け寄り、首元へ手を当てようと

 

 

「こないで」

 

 

手が、払い除けられた。同時にその顔も見えてしまう。

 

 

「たすけて、ころさないで、たすけて、たすけて」

 

「僕だ! 僕だツグミ、今すぐ助けてやるからな!」

 

 

目が、潰されている。

 

 

「トニー、たすけて」

 

 

どうにかして止血だけでも、なんとか彼女だけでも助けようと近づくが……、怯えるように、逃げるように。残った脚を無理やり使って逃げようとする。

 

 

「僕だ! トニーだ! ツグミ!」

 

「しにたくない、しにたく……」

 

 

何とか、その背に腕を回し何かから逃げようとする彼女を抱きかかえる。まだ、まだ間に合う。間に合わせる。何としてでも、せめて彼女だけでも。

 

 

「……ツグミ?」

 

 

急に、重くなる。

 

 

動かない。

 

 

 

 

 何故、手を尽くさなかった。

 

 

 

 

音。

 

ただ、上を見上げればチタウリたちの軍が地球を目指していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

 

 

意識が現実に戻る。

 

 

彼の手には杖が、握られていた。

 

 

 

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