前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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ただいま!

 

 

クインジェット(トニーによる改修&改造がなされてほぼ別物)に乗って撤収中の私たち。今回の目標だった杖の回収に、その上ヒドラ残党まで処理できたので今日の戦闘結果はまさにパーフェクトと言っていいでしょう。

 

明らかにトニーが普段より焦燥してたり、私が最後まで暴走した結果キャップに盾で撃墜された後にお米様抱っこで飛行機で運ばれた以外は。ねぇキャップ扱いひどくない? 今も自分で作った拘束バンドに包まれてるしさ。

 

 

「そこにいないはずの敵を探し回って叫び続けてた少し前の君を思い浮かべたらどうだい?」

 

「……え? 強化人間ってニンジャの事じゃないの?」

 

 

まぁほんとはニンジャじゃなくてピエトロ探してたんだけど何かしら理由は必要だったしね。見つからなかったけどキャップの盾喰らえたのを考えれば実質+? いやとんでもない黒字決算かも。

 

 

「だって目に見えないほど早くて分身して口から火を吐いたりしたんでしょ? ニンジャじゃん。」

 

「合ってるのは最初だけ……、というかそんな化け物と戦ってたのか? 日本って魔境なのか?」

 

 

いいえ、修羅の国です。なにかトンデモないものを見る目でため息をつき始めたキャップを横目に拘束具の留め具を外す。まぁ自分で作った奴だし、ガチガチの奴じゃなかったからこれくらいはね。ぴょんと飛び降り見に行くのはクリントのバイタル。応急処置自体はしてあるし、さっきトニーが優秀なお医者にお電話かけたのも把握済み。十分間に合うね。

 

確認し終わり安心した私は仕事終わりのメッセージでもユキに送ろうかと自身のデバイスの元へ向かう。視界の端ではナターシャがバナー博士の元に。……メール送るの中断。見てるふりして鑑賞させていただきます。はよくっつかないかな……。

 

 

「子守歌は効果覿面ね。」

 

 

自身の元に近づいてくるナターシャを確認し、それまで耳に当てていたヘッドホンを降ろす。

 

 

「僕が変身するべき状況じゃ……」

 

「もしあなたがいなければ被害は倍になってた、私の親友も思い出のなかの人になってた。」

 

 

一瞬そこに寝かされているクリントの方へ視線を向ける彼女。たしかにハルクがすぐさま敵砲台を破壊しなければ最悪二人ともやられていた可能性がある。それだけ敵の攻撃力は高く、そして彼の働きは大きかった。しかしまだバナーの心にはすべてを受け入れる余裕はない。

 

 

「はっきり言ってくれていいんだよ、たとえ耳に痛い言葉でも……」

 

「まだ私を信じてないの?」

 

「信じてないわけじゃない。」

 

 

未だに煮え切れない彼の心に救援を送るためか、自身以外の言葉を求めるナターシャ。何度か故郷に帰っているが、ニューヨークでの一件以降格段に接しやすくなったソーに声を掛ける。

 

 

「ソー! 状況はどう?」

 

「ハルクが倒した連中が地獄の門で叫んでる。」

 

 

思わず両手を顔に当てるバナー、何言ってるのという顔をしながら振り返るナターシャ。さっきまでとってもニコニコ顔だったソーの顔が急変。

 

 

「……あ、いや。死の叫びじゃないぞ。怪我人の叫びだ。」

 

 

キャップに助けを求めるがそっぽを向かれ、ツグミは自分のデバイスに目を落して集中しているふり。残念ながらいつもは頼りになるメンバーからの助け舟はない様子。

 

 

「叫びと言うか……、いや泣き言だな。三角筋を痛めただの関節が痛いだの……。」

 

 

昔に比べれば大分いいが、少し言葉選びを失敗した彼。思わず隣にいたキャップが笑みをこぼし、何故かツグミは隠れて両手で親指を上に立てている。まぁナターシャの選択は間違っていないのだ、だってキャップは良く言って「とても耳に優しい言葉」、悪く言って「ありきたり」な返答が帰ってくるだろうし、ツグミはソーよりも酷い返答が来た可能性が高いので論外だ。スプラッタ過ぎる。

 

そんな空気を換えるためか操縦席に座っていたトニーから声が上がる。

 

 

「なぁバナー。チョ博士がソウルから来る、君のラボを使わせていいかな?」

 

「あぁ、使い方も知ってるはずだ。」

 

 

トニーが呼び寄せるお医者さんはある筋でとても有名なチョ博士、韓国で研究をしている生物学者でバナー博士とも交友がある。ちなみにだがツグミとも関係があり、出資者とその出資先に努める研究者と言ったものだ。

 

 

「よし、バートンの治療の準備をよろしくと伝えろ。」

 

『はい、トニー様。』

 

「ジャーヴィス、操縦頼む。」

 

『了解、接近ベクトルセット。』

 

 

自動運転の指示と基盤への入力を終えた彼は席を立ち皆がいる後方へ、足先は自然と二人がいる杖の方へ向く。

 

 

「一安心だな、S.H.I.E.L.D.崩壊以降ずっと探してた品だ。ま、宝探しも面白かったが……」

 

「これでやっと、終わりにできる。」

 

 

いつも通りの口調でソーとキャプテンに話しかけるトニー。二人へ顔を向ける時はいつも通りだが、杖へと向ける視線は厳しい。対してソーは言葉に安堵の意をにじませ顔にもそれが浮き出ている。

 

 

「これにはまだ秘めた力があるはずだ。ただの武器じゃない、ストラッカーは強化人間を作れるようになった。」

 

「アスガルドに帰す前に僕とバナー、あとツグミもやるか?」

 

「やるー!」

 

 

キャプテンの危惧にすぐにトニーが返す。輝き続けるセプターに向けていた顔を少しずらし視線は後方へ。S.H.I.E.L.D.崩壊後、多くのメンバーがニューヨークのアベンジャーズタワーを拠点としているがツグミは自身の時間のほとんどを日本で過ごしている。すぐに帰るのかと思っていたが……、大丈夫の様だ。

 

 

「了解、じゃあこの三人で仲良く調査タイムだが構わないか? ほんの二三日だ。その後お別れパーティー、……まだいるだろ?」

 

「あぁ、もちろんだ。勝利の宴を開かないとな。」

 

「あぁ、宴会は最高。……キャプテン?」

 

「これでチタウリやヒドラとの戦いも終わるしな、いいだろう。宴会だ。」

 

 

彼の声にいいね、という風に頷くトニー。自然と彼の視線はロキの杖に、その顔はセプターから放たれる青い光で照らされていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

飛行機がアベンジャーズタワー、NYでの決戦後スタークタワーからアベンジャーズタワーに改修されたそれに着陸する。羽が折りたたまれ後部の搬入口が開かれる、その先にはマリアとチョ博士がお迎えに来ていた。

 

すぐさまチョ博士が連れて来た緊急医療チームかな? その人たちが飛び出しクリントを運んでいく。まぁこの前見せてもらったナノテクの資料でも結構いい感じだったし、映画でも成功してたから大丈夫でしょ。新しい技術だからちょっと不安定な所もあるナノテクノロジーだけど今回はナノマシンをぶち込むとかそういう話じゃないしね。

 

 

「これから治療に入ります、ボス。」

 

「いや、ボスは彼だよ。」

 

 

杖が入った箱を片手に出ていくソーと入れ替わるように機内に入ってくるマリア、久しぶりだから会話の途中だけど手振っちゃお。ちなみにトニーは操縦席、私は左翼でスーツ点検、キャップは右翼で装備弄ってる。

 

 

「僕は金を出して、設計して。演出してるだけっと。」

 

 

そう言いながら立ち上がるトニー、マリアには目で『後でね。』と釘を刺された。うぅ……、悲しい。というかコレ自力で運ぶの無理だな。もう一回着るの面倒だし浮かせよ、イヴ~。

 

 

「その後ストラッカーは?」

 

「NATOが確保。」

 

「強化人間は?」

 

「ワンダと、ピエトロ・マキシモフ、双子です。」

 

 

立ち上がりマリアからデバイスを受け取るキャプテン。この辺りは知ってるけど間違ってる可能性もあるし私も聞かせてもらおっか。というわけでキャップの隣から邪魔にならないように覗き込む。……あ、イヴ、スーツラボの方に運んどいて。

 

 

「10歳の時アパートが砲撃を受け親が死亡、ソコヴィアは戦火の絶えない国です。小さな国なのですが大国の影響によって混乱が続いていたようです。」

 

「特殊能力は?」

 

「ピエトロは強化された代謝機能と体温維持能力。ワンダは神経伝達機能への介入、テレキネシス、心理操作。」

 

 

よくわかっていないような顔をしてマリアの方を見るキャップ。

 

ふふふ、ここは最強無敵大天才(超天才はトニー)なつぐみドロッセルお嬢様ちゃんが完璧なたとえをご用意して進ぜよう! 通常の人間より驚異的な代謝機能に体温維持の能力。それにテレキネシスに心理操作。これに当てはまる答えはただ一つ! そう!

 

 

「……つまり、ヤギね!」

 

「素早い男と魔女です。」

 

 

! なに、ヤギじゃないのか!

 

だってヤギは胃がたくさんあるからたぶん代謝すごいし、もふもふしてるから体温維持もできる! 後可愛いから心理操作だってお手の物だし頑張ればたぶんヤギも空飛べるからテレキネシスも出来るだろ! よく空中に浮かんでる写真SNSに上がってるし!

 

 

「きっとまた現れる。」

 

「同感です、ストラッカーの実験に志願したようですよ。……イカれてる。」

 

「そうだな、国を守る超人兵士となるために実験台になった奴といい勝負だ。」

 

「それは戦争中の話です。」

 

「今もそうだ。」

 

 

なんか普通に無視された……、あ。キャップデバイスくれるの? 見にくかっただろうから? あぁ、そりゃ感謝。もらうけど私そこまで身長低くないから大丈夫だったよ? まぁ確かに控えめだけどさ。

 

私にデバイスを渡し、そのままエレベーターに乗り込むキャップ。残されたのは私とマリアだけ。

 

 

「……まぁ何かしらの力を持って自分から戦場に出る人らは大体どこかイカれてるしそんなもんじゃないの、マリア? あ、もちろん私含めてね?」

 

「自覚してるのねあなた……、まぁいいわ。どうせ暇でしょ? ちょうど雑務が重なって忙しいから付き合って頂戴。」

 

「あいあい!」

 

 

そりゃあ事故ったら最悪この星ごと吸い込まれるブラックホールの研究を自分ちの地下でやってて、毎日毎日日本の化け物たちと殺し合いしてる奴がまともなわけないですよね、ってことで。

 

 

 

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