前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

59 / 129
大きいのはロマン

 

 

アベンジャーズとウルトロン、それと船の持ち主による三つ巴の乱戦が起こるさなか。ヒーローチームの暴力装置ともいえるハルク。ブルース・バナーはジェットの中で待機していた。

 

変身して一飛びすればすぐに目的地まで向かえそうな距離、もし今日の戦場がソコヴィアのように開けた空間なら参加できたのだろうが……、今回の場所は廃棄された船の中。外装はボロボロで内部も簡単な補強程度しかしていないことがスキャンの結果、解っている。

 

そんなところで僕。いや彼が暴れてしまえばみんな生き埋めになってしまうのは解るのだが……。

 

 

「どうなってる、僕の出番か?」

 

『いや、大…夫だ。ジ…ットで待…し…ろ。』

 

『こな…ていい…らねッ! あぁ…う…ざっ…い!』

 

 

やはり、心配だ。武器商人であるクロウの部下たちであればすぐに無力化できるだろう。でも今回はウルトロンもいる、通信を聞く限り一体ではなく大量に。各地の研究所を襲撃していることから彼が複数の体を持っているのではないかと考えていたが、もしかしたらあの船全体が罠だった可能性もある。

 

みんなのことも、ナターシャのことも。とても心配だ。

 

掠れた声がスピーカーから聞こえた、内容も待機であることは把握している。

 

しかしどうしても気持ちを抑えられなかった僕はジェットの搬入口を開けた。

 

少しでも情報が手に入ればと思って。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あぁもうお前らニンジャかよ! 死に晒せぇ! ブラストォ!」

 

『起動します。』

 

 

使い捨てのリアクターを暴発、効果があるのか解らないが一時的な電磁パルスによる妨害を行う。最悪暴風で脚に絡みつこうとしてきたセントリーを吹き飛ばせれば良かったんだけど、運よく爆発範囲外の動きも止まる。でも上位個体であるプライムは元気に動いてるから雑兵にしか効かないってことね。

 

 

『完全にニンジャの戦い方を学んでいますね、まぁ確かに数で押しつぶす戦い方の実例としては一番良い例ですから理に適ってます。』

 

「いつもの奴だから対処はできるけど完全に足止めされてるのが面倒! ワンダ見失ったし!」

 

 

イヴは現在外部からの侵入を防ぐために大半の機能を電子防御に割り振ってる、まぁウルトロンに二度とやられないように対策してるってわけだ。まぁそのせいでイヴによる十全なサポートを受けることはできない。敵の行動予測とか戦術の提案とか私の代わりにスーツ動かすとかね?

 

でも相手がニンジャのやり方をするのならこっちはイヤになるほど身に染み付いてる。はいここで背後からのアンブッシュで上位個体からの一撃離脱攻撃。逃げ道なくしの一斉放射に死角外からの近接。

 

う~ん、手に取るようにわかる。たしかにウルトロン用に調整されて色々変えてあるけど根本は見知った戦術だ、イヴの限られた演算領域で私が予測しきれない穴埋めをしてもらえば対処だけは出来る。

 

 

『本来の私と十分な補給を受けた後であれば完封も可能なのですが……、マスターには不便をおかけし申し訳ありません。』

 

 

イヴの謝罪に答えようと口を開くがちょうど攻撃範囲内にプライム、ウルトロンの上位個体がまんまと誘き寄せられてきた。ふふ、そこが空いてて私の隙を突ける場所だとプログラムが吐き出したんでしょ? 残念罠です!

 

姿勢を下げ、地面を足で叩きつける。右の拳が狙うのは2mを優に超すウルトロンプライムの重心。ハメられたことに気が付きすぐさま離脱しようとするがもう遅い。拳を押し出すように叩きつけ重心を崩す、後は自然に体がくの字へ。すぐさま頭を下に足を上に。イヴとユキから『もう別物』認定されたカポエイラでその頭を刈り取る。

 

 

『残り2です。またフライデーからの報告によりあちらも同数の上位個体がいる様子。明らかに型落ちの彼女では十全なサポートは難しいかと、救援が必要です。』

 

「りょ! あとさっきの気にしないでいいからね!」

 

 

中国の方から南アフリカまで。武装の補充も十分じゃないしエネルギーも長距離高速移動のせいで不足気味。でもトニーが若干ピンチというならお助けしないとイカンでしょ!

 

 

「レーザー!」

 

 

エネルギー式のレーザーカッター、ニンジャを沢山切断した愛機で視界に入る奴らを一掃する。この前の攻城戦の時から色々改良してるんだけどやっぱ安定した威力出すには電力がいるよね……。エネルギー残量は……、残り三割か。重力関連の武装便利だから追加したけどこの浮遊Tailシステムのせいで電力的な余剰がないなったよね。……イヴ! 要改良ってメモしといて!

 

焼け焦げたウルトロンたちを見渡しその一体の頭に足を乗せる。う~ん、いつもの。でもまぁ血のニオイとか肉が焼け焦げるニオイがしないしまだマシかな?

 

 

「あと最後に、っと!」

 

 

肌が逆に錯覚じゃない? と訴えるほどの強い殺気。まぁこれぐらい察知しないと日本じゃ生き残れないよね。よく解らない赤いエネルギーがこちらに触れないように、反対方向から腕を振り回しその頭蓋を掴む。

 

あとはリパルサーを起動したらおしまい。なんかちょっと喰らった気もするけどスーツに損傷ないし大丈夫だろ。……ん? このニンジャ髪が長いな……!?

 

 

脳が疑問を吐き出した時にはもう遅い、リパルサーは起動されてるし彼女がどう動こうにも一度吐き出された命令は覆らない。あぁもう終わったな、と地球が滅びる瞬間を幻視した瞬間。

 

身体が吹き飛ばされる。

 

 

さっきまでいた高台から下の武器工場の方まで転がり落ちる、すぐさま視線を先ほどまでいた場所に戻す。

 

見えるのはおそらく私を高速移動で吹き飛ばしたであろうピエトロとその場に座り込むワンダ、あとは私の手のひらから発射されたであろうリパルサーの破壊跡が壁に。

 

そんな自身の家族を守り抜いた彼はこちらを一瞥した後、妹を連れてその場から消え去った。

 

 

「イヴ。」

 

『スピーカーoffです。』

 

 

 

 

 

 

 

「た、助かったぁ……。」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

『すべての星は、このように循環しているのです。それを受けれるのがこのユニバースに生きるあなたの使命ですよアリアドネ。』

 

『あ~、はいはい。そういう御託はいいからさ、さっさとこの金ぴかお手手破壊しちゃってもいい? セレスティアルズの誕生とか地球人からすれば迷惑極まりないわけ? というわけでさっさと殺し合おうぜエターナルズ?』

 

 

どんな山よりも高いその指先、黄金の手のひら。そのうえで神話に出てくるような人たちとアリアドネと呼ばれた彼女が戦う映像。

 

 

 

なんだ、これは。

 

 

 

『……あぁ、もう終わりですか。いやはや、他の世界よりもだいぶ弱く育ちましたねぇ? ドロッセル。』

 

『おま、え……!』

 

『まぁ残念ですがこれも良い結末なのでしょう、では来世で。』

 

 

崩壊した街の中で、ドロッセルと呼ばれた少女がスーツの男に首を刎ねられる映像。

 

 

『私は、私のやり方でこの世界を作り直します。ですのでこの石を使うのは……、私ですよ父上?』

 

『おい……、おい! 嘘だよなツグミ! 嘘だと言ってくれ!』

 

『あぁトニー、ごめんなさい。私は嘘つきなんです。……では、サノスの娘として。』

 

 

紫の大男の死体の上で、光る石の力を使い世界を滅ぼす映像。

 

 

『でさ~! ワンダ! 彼とは最近どうなのさ!』

 

『ふふ、そうねぇ……。ひみつ、かしら?』

 

『え~! なんだよも~う!』

 

 

彼女と私が、何故か楽しそうにお茶をしている映像。

 

 

何だこれは、何なんだ。ありえない、ありえない。

 

 

『うむむ……、私がこの石を守るのはそりゃあ誇らしいけどさ。魔術師として才能あったのもまぁ驚きなんだけどさ……。本来ストレンジの役割じゃないの?』

 

『世界というモノはすべての可能性を内包……、いや個別に独立させている。といった方がいいでしょうか? つまり私たちがいまこのように仲良くしている世界もあれば殺し合うような世界もあるのです。ですので気にしないでいいのですよ。』

 

 

黄色いローブの人が、ドロッセルに話しかけている映像。

 

 

『きしめん! きしめんよサクラダイコン!』

 

『ですからお嬢様、私の名前はゲデヒトニスです。』

 

『あなたは口を挟まないでチヨノフジ!』

 

 

スーツの彼女が、黄色い大きなロボットと会話している映像。

 

 

『んで俺ちゃんこう言ったわけよ。×××が○○○で……。』

 

『ちょ!ちょっとデッドプール! ほ、ほら彼女。女性なわけだからさ……。』

 

『大丈夫大丈夫心配しなくて大丈夫だぜピーター。俺ちゃん言ったこと全部あっちには伏字入るしドロッセルちゃんもさ。』

 

『あ~、うん。元男だし耐性あるよ? というわけで続きはよ。』

 

『えぇ……。』

 

 

赤いタイツのようなスーツを着た男二人と、彼女が話している映像。

 

 

他にも様々な映像が、いや世界が私の頭の中に流れ込んでくる。

 

 

私の力は人の頭の中を覗けて、それに方向性を付けて弄ることが出来るというもの。でも、でも……。私はこんな記憶知らない。こんな世界は知らない。何、さっきから私の頭の中に何が流れ込んでるの! あいつの頭の中はどうなってるの!

 

 

『……ん? あ~、A-1? これ精神体飛んできてね? これ私の技術力じゃ元戻せないからやってあげてよ。』

 

『え~なに~? 漂流者ぁ? 3ちゃんみせて~?』

 

『ちょ! 近づくな12!』

 

『あら、これは……。ワンダでしょうか? ちょっと確認しますね……、あぁなるほどD-1から飛んできた個体の様です。急に様々な世界を見せられて怖かったことでしょう。すぐに元の世界に戻してあげますからね……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

「大丈夫か!」

 

 

ここは……、戻ってきた……の?

 

 

「あいつら殺してやる、待ってろ。」

 

「ダメ! 大丈夫よ……。」

 

 

兄の声、外の空気。地面の匂い。……戻ってきた。たぶん最後に見たあの白い空間。同じ顔がいくつもあって、何人も私のことを覗き込んでいた。……全部ドロッセルのスーツの中、あの顔と一緒だった。

 

気分が、悪い。荒くなった息を落ち着かせるために大きく息を吸う。少しでも気分を良くするために顔を上げ……、アイツらが乗ってきたであろう飛行機が目に入った。

 

 

「まだ、……まだ一人残ってる。一番の大物が……。」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

『無事かツグミ。』

 

「あぁ、クリント……。いやうんこっちは大丈夫。でもあの二人逃がしちゃった。」

 

『それはいい、俺も逃がしたからな。あとマインドコントロールは受けてないよな? それとももう電気が流された後か?』

 

「あ~、いやされてないよ。というかあの電流さ、普通に致死量ギリギリまで耐性出来ちゃったみたいでイヴから禁止された。」

 

『……突っ込まないぞ?』

 

 

そうなんだよねぇ……、タイフォイド戦で最初に対洗脳から始まったイヴによる電流処置だけどそれから私のやらかしのたびに流されてたからねぇ……。常人の致死量流されても耐えられるようになっちゃって、さすがにイヴちから『さすがにこれ以上はやばいです、他の方法を探します。』って言われた。

 

 

『それよりツグミ、俺たち以外みんなやられたみたいだ。すぐさまジェットまで撤退するから手伝ってくれ。』

 

 

はいはい、私がウルトロン君たちの相手に手間取ってたうちにそこまでやられたのか……、ん? ということはこの次のイベント的にハルク暴走? ……マズいマズいマズい! ソコヴィア協定が!

 

 

「ごめん! そっち一人で頼んだ! 博士がヤバイかも!」

 

 

クリントが何か言ってたけどシャットダウンしてすぐさま空に飛び立つ。船の天井とかあるけどそう言うのも全部無視して屋根を突き破る。

 

 

「イヴ! 博士探して!」

 

「発見しました、ディスプレイに表示します。」

 

 

イヴが表示させた方向へ視線を移動させる。……うん、全身緑色。怒ってる。しかも最悪なことに町の方に向かって走って行っちゃった……。あ~、ソコヴィア協定対策に今後動くこと決定かぁ……、政治の話めんどいから首つっこみたくなかったんだけど……、しゃあない。

 

 

「うん、とりあえず先にトニー助けないとね。……ゲデヒトニス~? 聞こえてる~?」

 

『はい、お嬢様。感度良好です。』

 

「おけ、じゃあごめんだけどお仕事してもらうことになったから……、頼んだよ?」

 

『かしこまりました。試作対大型決戦兵器、ゲデヒトニスⅠ型。発進いたします。』

 

 





遅くなって申し訳ない。今週は多分ペースを維持できると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。