前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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もう決めた、あとは進むだけ

 

 

『……とまぁこっちはそんな感じかな。出来るだけのことはやってるけどやっぱりみんなの意識は変わってないみたい。まだ怖がられてるんだと思う。』

 

「う~ん、そっか……。どっかのタイミングで一回帰るからその時に私の口から説明できるようにしておいてくれる?」

 

『了解、じゃあ気を付けて。』

 

「うん、ありがと。切るね。」

 

 

そっか……、日本を中心としたアジア圏や私たちの影響力が及んでいる地域においてハルクのイメージダウンは最低限で済んだ。でも肝心の南アフリカでの世論は最悪。欧米もかなりヤバくてニューヨークのアベンジャーズ・タワーにはデモ隊が押し寄せてる。ってわけですか……。ここは変わらないのかぁ。

 

 

『あなたたちニュースで大人気よ。』

 

 

非常に暗い雰囲気が立ち込める船内にマリアの声が響く、誰も声を出さず静かにしてるから余計うるさく聞こえちゃうね。

 

 

『市民には人気ないけど。まだバナーを逮捕するって話は出てないけど……、そういう風潮にはなってる。』

 

「なんとかできそうか?」

 

『ツグミが色々動いてくれたみたいだけどね……、みんなの様子は?』

 

 

トニーと会話するマリア、私のことが視界に入ったのかちょっとだけ話題に上げてくれる。でもお手上げのジャスチャーしている辺り彼女でも無理みたいだね。……もしかしたら彼を暴走させたとしても全部封じ込める方法があったのかもしれないし、やっぱり力不足を実感する。

 

私が今後の方針について決心が付けれた後。すぐさまトニーの元へ飛んだ私は彼と二人で共闘を開始、ウルトロンを原作の筋書き通り破壊することが出来た。ヴィブラニウムがウルトロンの手によって私たちの手の届かない場所へ、そして『バナーを追わなくてよいのか?』という嘲笑とともにウルトロン・プライムは爆散。

 

うん、ゲデヒトニスも頑張ってくれたみたいなんだけどね。本来計画していたⅠ型からⅢ型の投入が輸送機の撃墜によってⅠ型残してすべて大破しちゃってるし……、まぁほんの少しの足止めにしかならなかった。ゲデには止め切れなかったことについて、あと検証が不十分に終わってしまったことについてガチで謝られたけどそれは別にいい。そもゲデ自身の経験値と私の技術でどこまで出来るかの確認みたいなものだったからね。

 

その後は誰かに持っていかれたら面倒なブラックボックスの回収、そしてトニーのハルクバスターと共に博士を眠らせる作業に移った。まぁ私はエネルギー残量と武器弾薬がヤバかったので基本避難誘導がメインだったけどね? まぁここはほぼ映画と同じようになってしまった。

 

死者は運よく出なかったけど……、結構大けが負ってしまった人もいる。後で私名義で医療費の負担とその後の補助もしとかないと。……あぁ、そうだ。現地に駐屯していて避難誘導頑張ってくれたウチのメンバーにもお給金追加で出しておかないと。ついでに休暇も、見た感じニンジャそこまでいなさそうだったし。

 

 

『チームの様子は?』

 

「みんな、ダメージはあるが……、乗り越えるさ。」

 

 

乗り越える、うん。みんな乗り越えてくれるんだろうけどね……。実際にこの場に立ってこの現状を見せられるとかなり不安になってしまう。博士は放っておいたらどこかに消えそうな感じだしナターシャはずっと一点を見つめたまま動かない。いつも自信たっぷりに見えるソーも落ち着きがないし、キャプテンも心ここにあらずって感じだ。

 

……立ち直って、くれるよね?

 

 

『今はステルスモードにしてそこから離れた方がいいわ。』

 

「で? 隠れてろって?」

 

『ウルトロンを見つけるまでは、他にいい方法が思いつかない。』

 

「……そうだな。」

 

 

そう言いながら通信を切るトニー。まぁ確かに例えば軍とかに見つかったら戦闘機派遣されるだろうし、そっから先はどっかの空港に降ろされて留置所行きとかそんなの? 逃げたら逃げたで印象悪くなるし……、雲隠れするのが一番いいかな?

 

 

「操縦変わろうか?」

 

「大丈夫だ、今のうちに寝ておけ。着くまであと数時間ってとこだ。」

 

「どこにだ?」

 

「安全な場所、だな。」

 

 

さっきからずっとこの機体の運転をしてくれてるバートン、戦闘もあったし疲れてるだろうに……。そこら辺体張ってくれるのが彼のいいところなのかな? まぁ私も徹夜とか慣れてるし、どこに辿り着くかも知ってるから起きておくけど。……というかハイツレギスタの仕事がまだ残ってるので眠゛れ゛ま゛せ゛ん゛! ひぃ~、社長業にアベンジャーズにニンジャにヤクザ総長はきついんじゃ。

 

 

「お前は寝ないのか?」

 

「私はコ、レ。お仕事まだあるから起きてるよ。寝ないのには慣れてるし今日は機長である、キャプテンホークアイの助手です!」

 

「……ふ、そうか。」

 

 

う~ん! やっぱクリントそういうの似合うわぁ! ちょっと軽そうなイメージ持たれる彼だけど芯があるし、守るべき家族もいる。いやはやいいですなぁ……。私も大事なもの、守れるようにしなくちゃね。

 

 

 

「……ツグミ。」

 

「うん? どうしたんトニー?」

 

「…………いや、なんでもない。じゃあ僕もひと眠りしてくることにするよ、寝不足はお肌の天敵だからな。」

 

「? うん、おやすみ~。」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

さぁて着きました。住所不明でどこのデータベースにも残ってない不思議なお家。まぁこの場所が特殊とかお家自体が特殊とかそういう意味じゃないけどね? ニックがクリントの家族のために用意した特別なお家なわけです。ちょっと郊外にあるから買い物とかちょっと面倒だけどいいとこだよ? 敷地広いし外からここにたどり着くには色々手順踏まないといけないけど。

 

……え? なんで知ってるかって? そりゃもちろん前世の記憶とかもございますけど普通に招待されたことがあるからですよ? 一度だけだけどね? 年が近い(15くらい違う)ってことで大分前に連れて来てもらったんです。ナターシャと一緒にね?

 

というわけでここがどこか知ってるんだけど……、家主のホークアイ様がサプライズをご所望のようなので私もだんまりです。

 

 

「ここはどこだ?」

 

「安全な場所らしいぞ。」

 

 

なのでソーやトニーが要領を得ない感じでも私はだんまりするしかないのです。あと単純にちょっと眠い、あのままずっとお仕事してたしそのまま研究の方へ移行しちゃったから……、脳を働かせすぎたみたいで休息を欲してやがる。このポンコツめ! もっと働け!

 

 

「だといいがな、さぁ入ってくれ。」

 

 

そんな軽口をたたく彼に連れられ家の中に入っていく私たち。というか結構な大人数で急な来客って大丈夫やろか? スーツの方の充電もリアクターとジェット機のエンジンからの充電で満タンだし迷惑になるなら私だけでも帰った方がいいかもしれない。移動中寝れるし。

 

 

「ただいまー、帰ったぞ。」

 

 

そんなことを考えているとクリントが家の中に声を掛ける、出てくるのは……。お腹を大きくした彼の奥さん。たしかお名前はローラさんだっけ? んでお腹にいるのが三人目のお子さん。

 

 

「やぁ、お客さんだ。……ごめんな、急に帰ってきて。」

 

「彼女もエージェントだろう。」

 

 

キスして抱き合って夫婦の再開を祝う二人、あとトニー。彼女普通の一般人だからあんまり変なこと言わない方がいいよ、止めないけどさ。あとソーも一瞬そうかも? みたいな顔しないで。

 

 

「紹介するよ、ローラだ。」

 

「あ~、みんなの名前は知ってる。」

 

 

そう言いながら次の言葉を探す彼女、まぁ急に来たわけだしガチムチマッチョマンのスーパーパワー持ちチームが来たら仕方ないよね。とりあえずトニーと一緒に手を振っておく。久しぶり~! と、そんな雰囲気を壊してくれる存在、小さな足音がこちらに近づいてくる。

 

 

「おぉ! 来たな!」

 

「パパ―!」

 

「よ~しよしいいこだ! ほら、元気にしてたか!?」

 

 

パパに飛びつく長女と長男、これでホークアイファミリー全員集合ってわけですね。

 

 

「あれは……、小さいエージェントだ。」

 

 

……うん、だからトニーごまかさなくていいからね? キャプテンもソーもそんな非難するような目で見ないで挙げて、ね? ほらポケットの中に入ってたアメちゃんあげるから……、いらない? そう……。

 

 

「ナターシャおばさんとツグミおばさんもいっしょ~?」

 

「いっしょよ? ハグして頂戴。」

 

「おばっ! んぐッ……、ツグミおばさんも来てますよ~?」

 

 

そうだよね、小さい子からすればおばさんだよね。というか基本お姉さんって言い方あんまりしないよね。うんうんわかるよライラちゃん。でもおばさんちょっと心に刺さる物があるから出来たらお姉さんかお姉ちゃん呼びしてくれるとありがたいかなぁ? クーパー君もできたら頼む。

 

いやさ、確かにもう20代後半なわけで30が見えてきてるし、いつまでも同じ年齢じゃないのは解るんですよ。時の流れは均一ってことも解るんですよ。でもまだ若さにかまけた無茶出来るし、意識的にはまだ若いというかそういう気持ちなのでそこら辺配慮してくれると……。

 

 

「え~? なんで~?」

 

 

だ、駄目かぁ……。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「で、ソーは行先も伝えずに?」

 

「秘密主義のチームメイトもいるが……、ソーは違うと思っていたんだがな。」

 

「う~ん、耳が痛い。」

 

 

トニーとスティーブ。二人の薪割りの作業中、まぁ何も話さずに黙々と作業するってのもいいけどこんな自然豊かな場所で体動かしてたら話したくもなるよね。内容は若干私にとって触れてほしくない話題だけど。

 

 

「じゃあ全部話したらどうだ? そしたらすこしはっ、と。楽になるんじゃないか?」

 

「え、いいの? 最悪ずぶずぶのどぶどぶ。深淵まで一緒に来てもらうことになるけど。戻れないよ?」

 

「おっと、藪蛇だったか。」

 

 

チョットだけふざけた声色を混ぜながらそう返す。まぁ実際喋っちゃったら一緒に行くところまで行ってもらうことになるからね。だからこそ絶対言えないんだけど。そんなことを考えながら二人によって割られた薪をワイヤーで纏めていく。一応女性ってことで力仕事ではなくこっちを任された、まぁ簡単だし楽だからいいよね。……あ、実はトニーより筋力上なのは秘密だよ? 

 

 

「ま、時間をやれよ。どんな悪夢を見せられたやら。」

 

「最強のヒーローたちが……、これほど簡単にダメージを……。」

 

「君らは平気だったみたいだな。」

 

「……悪いか?」

 

 

……あ、もしかしてワンダの攻撃喰らったと思われてる? 私喰らって……、いやそういえば掠ったよなあの赤いの。どうなんやろ気が付かないうちに何か弄られた? それとも記憶見られたとか? でもイヴがバイタル正常って言ってるし大丈夫かな? まぁ最悪彼女がチーム入りした時に聞けばいっか。記憶見られちゃってたら口封じってことで。……消さないからね? お願いするだけよ?

 

 

「暗い面を持たない人間は……、信用できない。」

 

「持ってても見せていないだけかもしれないぞ、そこに最たる例がいる。」

 

「フフフ、落ちろぉ~、落ちろぉ~、深淵の闇に呑まれてしまえぇ~。」

 

「おっと、こりゃ失礼。」

 

 

ヤミノマ! ヤミノマ! 少しばかり雰囲気の悪化が見られたため全力でふざける。ほら私掌が疼いてますよ! なんか黒い波動みたいなの出してるよ! ……あれコレニンジャじゃね? ハァア? ニンジャコロス! コロスゥ! 

 

 

「奴は僕たちをバラバラにしようとしている。物理的にじゃないぞ? いやそうかもしれないが。」

 

「……君が作ったんだよな、我々には何も言わずに。」

 

「研究をしていただけだ」

 

「チームが壊れ」

 

「チームをなくせる、それが目標だろう? 戦いを終わらせて家に帰れるようにするために戦っているんじゃないのか?」

 

「戦争が始まる前に誰かが先走れば罪なき者が死ぬ、いつもそうだ。」

 

 

……まぁ、さ。二人とも言いたいこと、意見とかさ。間違ってないんだけどね? トニーとしては確かに恐怖心から色々しちゃったけど、それはみんなを守るための暴走だしね。スティーブからしたらなんで相談してくれなかったの? って感じなのも解るしそりゃ筋通すのは必要なんだけどねぇ……。

 

キャプテンの言葉によって言葉に詰まってしまうトニー、彼が何を思い浮かべているのは解らないけどあんまりよくない雰囲気なのは確か。……そこにローラ、クリントの奥さんが声を掛けてくる。ちょっとおずおず、って感じだけど。

 

 

「ごめんなさい……。スタークさん、クリントがあなたに頼んでみろって言うの、トラクターが故障してもしよかったら……。」

 

「お安い御用だ……、僕の薪ちゃんと数えとけよツグミ。」

 

 

自分の薪の方を指さしながら倉庫の方へ足を進める彼。まぁ本数数えるんじゃなくて薪の束で数えるってことでいいよね? ……もしかして本数!? そうなると面倒なんだけど……。まぁキャップが盗らないようにちゃんと見張っとけ。ということだよね。

 

 

「というかこのワイヤー巻くの結構大変かも。機械化したい。」

 

「……ツグミ、君は」

 

「さっきの話でしょキャプテン、言わなくても解る。言うとすればそうだなぁ……、戦争はまだ終わっていない、ってとこかな? ずっと、まだず~っと続いてる。ホント、いつ終わらせてくれるんだろうね……。」

 

 

ほ~んとさ。出来るならずっとゆっくりしていたいよ、私だって人間だしさ。でもこの世界に生れ落ちて力を持ってしまった私がさ、戦わずに逃げるのはさ。なんか違うじゃん? それに、この世界が進む時間についてたぶん一番詳しい私がさ、何もせずただすべてを他人のように眺めるってことはさ。絶対耐えられないだろうし……。

 

 

「あ、あはは! ダメだなぁ私、やっぱ睡眠不足だと脳が鈍るね! 寝なきゃ! それに長時間お家開けてるととっても不安だからそろそろ帰るよ! ちゃんとステルスして帰るからそこは安心してね!」

 

 

キャプテンに何か言われた気がするけどもう聞こえない、自分のスーツが置いてある場所へと全力で、逃げるように走る。だめだ、喋り過ぎた。絶対変なこと言った、喋らなくて良かった。

 

迷わない。迷えない。もう決めた。

 

あとは進むだけ。

 

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