え~と、あれから後の説明っているかな?
まぁ簡単に言ってしまえばヴィジョン、ヨシ! です。
場外にポイされた私をよそに原作通り小規模な仲間割れをしていたアベンジャーズはソーの乱入によって一時休戦となる。んでソーがクレイドルに雷撃をぶち込んでヴィジョン完成。その後は色々お話してソーのハンマーを持てたことから彼が邪悪な存在でないことを証明。三分で用意してソコヴィアに今から出撃しようぜ、って感じです。
まぁ実際準備、移動手段の用意や装備の点検と補充、トニーのサポートAIのアップデートにマキシモフ兄妹のために装備を見繕ってあげたりと、そんな用意が三分で終わるわけない。なのでもうちょっと時間かかるわけです。……キャップが普通に時間超過してそっぽを向いてたのはみんな知ってるからね? ほらほら、三分じゃ準備できなかったけどどうするのかな? 延長? 延長しちゃう?
さっき全くダメージを与えられなかった腹いせに、というか単に構ってちゃんだったので精神的ダメージを与えに掛かる私、流石に思うところがあったのかトニーによってキャプテンの足元で煽っていた私は引き剥がされクインジェットに叩き込まれた。「こっちの用意しておいてくれ」だそうです。くそ、もう少しでノックアウト取れそうだったのに……。
まぁそんなわけで、クインジェット自体の調整もユキがやってくれたからいつでも出発可能。暇な私はみんながやってくるのをヴィジョンと駄弁りながら待ってる感じなわけ。
「暇だね~ヴィジョン、しりとりでもする?」
「……そのヴィジョンというのは私の事でしょうか?」
おっと、そういえばまだ彼の名前決まってなかったじゃん……。う~ん最近やらかし多いな。ちょっと気が緩みすぎかな? まぁどっちみちそれが君の名前だしいいでしょ。
「名前がないって案外不便でしょ? ジャーヴィスでもウルトロンでもないし怪物くんって呼ぶもの良くないでしょ? 私ら一般人から見ればみんな怪物だし。だからヴィジョン。」
「答えになってない気がするのですが……。」
「嫌い? いやなら自分で考えて教えて。ちょうどここに名付け辞典があるし参考にする?」
そう言いながら今座ってる椅子の下にある収納スペースから辞書を取り出す。正直なんでこんなもの置いたのか過去の私の考えが良く解らないがとりあえず役に立ったので気にしないことにする。
「いえ、結構です。ヴィジョン……、なぜかこの名を聞くと足りなかったピースが埋まったような感覚になります。」
「うん? じゃあ気に入ったの? ならよかった。ソーが言ってた未来のヴィジョン、誰もが幸せを享受できる素晴らしき未来。この世に生きる者を守りたいならその名にふさわしいことを、ね?」
ま、こんな感じかな? 急にでっち上げた理由だけど結構いい感じじゃない? 彼も見た感じ原作通りの力を持ってるみたいだし、製作過程においておかしなところもなかった。ハンマーもちゃんと持ててたし、いくらストーンの力を持っているとしても彼自身の精神に対して判別を掛けるオーディンの呪いが弾かれるとは思わない。その場合ムジョルニア君も反発するだろうしね?
ストーンと彼のマトリクスの結合に関しても、まぁある程度構造は解ったし時間は掛かるだろうけどサノス襲来までには何とかなると思う。間に合わなかったらワカンダ緊急病院への早めの搬送をすれば大丈夫、シビルウォーは私が引っ掻き回す予定だからどうなるか分かんないけどキルモンガー、この世界で一番発展している国家ワカンダの王位継承を発端とする内戦には口出しする予定。シビルウォーが起きなくてワカンダとの接点を作れそうになかったらそっちをうまく使うことにしましょう。
そんな感じで思考を回していると、急にヴィジョンから声を掛けられる。
「ツグミ、貴方に聞きたいことがあるのです。」
「うん? どうしたそんなに改まって。」
「これはジャーヴィスの記憶も合わさっての疑問なのですが……、貴方の目的を私は知りたい。」
へぇ……、目的ねぇ。自分で言うのもアレだけど私の口はそんなに信用できないよ? それこそツラヤバみたいな陥れるようなことは言わないけど、私にとってみんなに知ってほしくない事項については嘘しか言わない。出来るだけ整合性の付くようにしてごまかす。
今私の目の前にいる彼以外はこれまでそれで何とかして来た、見逃してもらってた。アベンジャーズの中で一番信用できないのは私だよ?
「ヴィジョンも解ってると思うけどさ……、私の口は信じられないよ? あなたにとって害のない情報だけど得にもならない。嘘の割合が多くて、もしかしたら全部嘘かもしれない。それでも聞きたいの?」
「理解しています。あなたと共闘するためには信頼関係の構築が必要です、しかしながらあなたには秘密が多く解らないことも多い。力を求めながらも、その力自体を恐怖しているように思える。これまでの行動、ニューヨークでの一件からこれまでを鑑みるとあなただけが何か違う目的で動いているような、そんな感覚を私は感じてきました。この体に、いえヴィジョンとなった今。その感覚は非常に強くなっています。ウルトロンはそれを人間故の愚かさだと決めつけた。……しかし私は違います。」
「私は、理解したいのだと思います。」
◇◆◇◆◇
あれから数時間後、ソコヴィアに到着した私たちは割り振られた各自の行動をこなしている。まぁ私は始まるまで一番楽な役回りだ。始まったら地獄のように忙しいけど、そもそもこの戦いが終わった後の方が忙しいことが確定しているので相対的に見れば全部らくちんなお仕事。ヨシ!(よくない)
バナー博士が捕まっているナターシャの救出。
マキシモフ兄妹が速度とマインドコントロールを使い住民の避難。
ホークアイがその付き添いと高所からの索敵。
ソーがヒドラが使っていた基地の地下に広がる謎の空間、おそらくウルトロンの生産工場の破壊。
全体の指揮を取りながら市民たちの誘導を行うのがキャプテン。
んでウルトロンからのヘイトが高い私とトニーが囮ってわけ。あ、ヴィジョンは奇襲要員だから隠れてるよ。
「そう言えば二人で並んで戦うって初めてだな、最初に会った時に比べれば大分成長した。膝から崩れ落ちてないしな。」
「……今でもやろうと思えばできるよ、耐えれるようになっただけ。しようか?」
「それはご勘弁。」
昔も今もトニーは、アベンジャーズのみんなは私の憧れでヒーロー。今は自分もそうならないといけないし、単純に過ごす時間が増えたから慣れたって言うのもある。大学生のあの時からもう7年、時間が経つのも早いよね。いつの間にかおばさんが手前になってくるとか正直信じられない。わかる? 次の世代から私おばさん扱いされるんだぜ? もしピーターとかから『ツグミおばさん』とか言われたらどうしようもない感情に呑まれて爆発する自身がある。……たぶんこの世界の彼もすでに蜘蛛の力を得ているだろうしトニーよりも先に接触するのもアリかもしれないね。あ、アリと言えばアントマンの方が先に会っておいた方がいいか。
「ま、あの屑鉄くんをさっさと終了させてシャワルマでも食べに行こうよ!」
「……ツグミ、もしかしなくてもシャワルマ好きだろ。」
そんな雑談をしながらこのソコヴィアの中心、教会の前に到着する。イブと新入りのフライデーちゃんがここにウルトロンがいるって教えてくれたからね。ヴィジョンで使ったヴィブラニウム量はそこまで多くないし替えのボディを作ってないとは限らないってことで二人配置だったけど……。
まぁ映画通りヴィブラニウムボディになってるよね。
「罪を懺悔しに来たのか。」
「どうかな、時間ある?」
「お前たちよりはある。」
目の前に現れるのはヴィブラニウム特有の光沢をもつ体、後にアルティメットの名を与えられるウルトロンの新しい身体だ。私たちにみたいに中に肉体を収める必要がないから中まで鉄たっぷり。うへぇ、自分で言っといて嫌になる響きじゃん。
「あ~、ヴィブラニウム入りのカクテルでも飲んだ? 前よりなんか……、ムキムキになってる。」
「ボディビルの大会にでも出るつもり? あ、でもヴィブラニウムって禁止薬物じゃない? そも人間じゃないから出られないじゃん! アハハ! ウケる!」
そんな私たちのおふざけを遮るように彼は声をあげる、何というか目を合わせた瞬間に攻撃してくるぐらいの煽りは前の市街防衛戦からしてたはずなんだけど大人しいよね。トニーに生み出してもらったはずなのに頭ヨワヨワ、ツルピカはげ、誰一人殺せないなんて今どんな気持ち? どんな気持ち? とか言ってたんだけどなぁ? 耐性ついちゃった?
「時間稼ぎか、皆を守るための。」
「まぁそれが任務……」
「え、そうだったっけ? ウルトロンを怒らせて憤死させるんじゃなかった? わ~い、よわむし~!」
トニーが『え、何言ってるのこの子』って顔でこっちを窺うけど知らない知らない。ほらウルトロン君の動きがちょっと鈍った、わ~い、よわむし! よわむしけむし! ヤードポンド法と一緒に滅びちゃえ!
「私は私の考えで、自由に動く。」
怒りを、癇癪を耐え忍んでいるせいか少々声が震える彼、しかしながら声だけでなく地面も震える。今いる教会の中央の床がせり上がり、その元凶が顔を出す。気分を切り替えたのか、それとも現れた装置の出来が良かったのかは解らないがウルトロンが微笑みを零す、その肌と同じ光沢をもつその装置は花が開くように杭を地面に打ち付け固定された。
「なんだ? 自分たちだけが時間稼ぎしてたと?」
『マスター、このヴィブラニウム製の装置ですが起動スイッチが二種あるようです、舞台装置かと思われます。』
イヴから提示されるのは今目の前にある機器についての情報、今パッと見ただけで解るのはこれがヴィブラニウム製であること。そしてウルトロンがこれに触ること、もしくは遠隔で指示を出すことで起動されるということ。
なるほど、映画通りだとこれは所謂人間を恐竜のように絶滅させる隕石の役割をしていた。その起動には彼がこの装置に触ることがキーだったんだけど……、まぁあからさまな弱点は修復してくるか。イヴ、可能ならこの装置の稼働を阻止、不可能なら遠隔起動のプログラム破壊を。タスク状況は表示し続けて。
「人類は私によって浄化される、そしてこの星の平和は私によって齎されるのだ。」
『ソコヴィア市内全域から高エネルギー反応多数確認!』
彼の言葉と共に、マップが赤で埋め尽くされる。あはは……、南アフリカでも日本でもたらふく壊してあげたのにまだ残ってるの? アレだけ殺したんだから『ウルトロン、総勢一名!』みたいな感じになってると期待してたんだけどなぁ……。まぁないよね。
「ツグミ! 市民の避難を優先するぞ!」
「りょ!」
トニーに返答を返し私も市街地に現れたセントリーたちを相手するため空へ飛ぶ。布石の方はもう少し時間かかりそうだし今はこれでいい。どっちみちここで被害が大きくなればなるほど今後の対ソコヴィア協定で動きにくくなる、やることは同じだ。
おっと、忘れずに確認しとかなきゃ。
「ヴィジョン? あとはお願いね~。」
◇◆◇◆◇
「ウルトロン。」
教会の破壊された天井、吹き抜けから降りてくるのはヴィジョンと名付けられた彼。生み出したケープが風に揺られ神秘的な光景を生み出している。それを迎え撃つつもりか、それとも単にその顔を眺めたかったのかは解らないが、ウルトロンも脚部の機構によって空に浮かび上がる。
空中で対峙する二人。
「我がヴィジョン、奴らにお前まで奪われた。」
「貴方が始めた物語だ、貴方が終わりへと導く。」
そちらがこちらに協力する意思がないのであれば話は早い、元はその体も自身となる予定だったが今はもう必要ない。テクノロジー自体の解読に少々時間が掛かり過ぎてしまったため完成にはまだしばらく時間がかかるが、それもそれで趣、というものがあるのだろう。すべて終えた後に新たな体に収まるのだ。
「いいだろう。」
ウルトロンの両腕がヴィジョンの首を掴む、いくらヴィブラニウムによって作られた体であろうとその体は人間を元にして作られている。痛覚も同じ、そこを破壊してしまえば処理が非常に楽になる。
しかしながらそれがヴィジョンの狙いであった。両者の腕が共に頭部に届く距離、そして自分から離れるという選択肢を放棄したウルトロン。彼の頭部に指をめり込ませそのプログラム自体を書き換えることは容易。
当初の作戦であったネットワークからヴィジョンの隔離。これにより彼はその電子生命体の利点をつぶされ、世界各地に広がっていた逃走経路がすべて破壊された。残るのは自身の体のみ、そして……。
『あぁ、そう言えばさヴィジョン。これあげるよ。』
『……これは?』
『対ウルトロン用のプログラムの一種、まぁタイミングがあれば使ってよ。』
(こちらも……。)
さらに深く指を食い込ませるヴィジョン、一度開封すればすぐさま実行に移され、その後すべて消去されるデータだったため詳しく中身を確認することはできなかった。しかしそれが信用しない理由にはならない、彼女の目的と、我々の目的は合致している。そして……、平和を願うあの言葉。それが仮初であるとはとても思えない。
ウルトロンの体が、そのすべてが急激に書き換えられていく。自身の核となる物までは破壊されることはない、しかしながら手足が切り取られていくような激痛が彼の脳内を支配していく。
「GURYeeeeeEEEEE!!!」
声にならない声、機械の悲鳴。痛みに耐えきれずそれまで掴んでいたヴィジョンの首を手放し、そのまま地面に墜落してしまう彼。それまで何も知らなかった赤子が、初めて痛みというものを理解したかのような動きだ。
そしてその叫びは、空中に浮かぶセントリーたちを排除するツグミにも伝わる。
「おぉ、ここまで聞こえる。やっぱ痛覚って再現できるんだねぇ……。どうイヴ、行けてる?」
『成功を確認しました、ウルトロンがネットワークから遮断されたことを確認。また仕込みの方も成功した模様です。すべてのウルトロンの連結が強化されました、これにより分離は不可能です。』
「なるなる~、これで一つピースが埋まったね!」
いやはや、まぁ感情のデータぶち込んだ奴だけど十分痛がってくれたようで何より。作戦もうまくいってるみたいで何とかなりそうな感じですねぇ……。おっと危ない。
「よっと! はいは~い! 死にたくなかったら死ぬ気で走るんだよ~! 時間は稼いであげるからね~!」
逃げ遅れた市民を狙うウルトロンの雑兵を打ち抜き、市民たちを急かす。映画じゃもうそろそろこの都市丸ごと浮き上がる感じなんだから少しでも逃がしてあげなきゃね。まぁ浮かび上がった後でも助けてあげるけどさ。
「マ、マスター!」
そんなことを考えているとイヴからの悲鳴。普段は隠している感情を表に出し、その驚きと焦り、たくさんの不安を私に伝えてくる。地面を見れば少しだけ、地面がさっきより近い。
(動き始めた、ね。)
少し場所を変え、この都市全体が見える位置まで。事態を把握したらしいトニーも都市の反対側でこの情景を見ている様子。徐々に浮かび、上へ上へと昇り始めるソコヴィア。その進みは一見、非常に遅いように見えるがそれは対象物が大きすぎるゆえ。共に戦うチームのみんなからの通信はない、人は巨大でどうしようもない存在を見た時あっけにとられるしかないのだ。
そしてそれが、ウルトロンの狙いでもある。
「マ、マスター……。」
「イヴ~? これぐらいで動揺したら駄目だよ?」
「も、申し訳ありません。」
「『やってみる価値はありますぜ!』だっけ? まぁ楽しく気楽に全部解決しちゃいましょうか。」
異様に吊り上がる口角を意志の力で押さえつけながらイヴにそう伝える。
知っている、ということは前もって対処できるってこと。
こんな大きなイベント何も準備せずに待ってたわけないよねぇ?