前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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復讐

 

 

「閃いた! 熱密閉フィルターを作ろう、僕が下から圧力を加える!」

 

『すぐに計算します。』

 

 

ヘリキャリアの防衛戦、空中を飛び回るウルトロンたちを打ち落としていたアイアンマンことトニーは先ほどからずっと脳内で考えていたソコヴィアの比較的安全な破壊方法、その妙案を思いついていた。ツグミとフューリーが用意していたヘリキャリアによって市民の避難という一番厄介な問題は解決した。あとはこのソコヴィア自体を粉々になるまで破壊することで落下時の被害を最小限にするだけだ。

 

おそらく、思いついた方法は可能なはずだ。エネルギーの問題という点はあるかもしれないが、ツグミが身に纏わせている浮遊Tail。アレは若干無理やりな方法になるが僕でも動力として使える。何本か借りてしまえばその心配もなくなる、それに補給用としてまだ何本かヘリキャリアに格納されてそうだしな。戦闘能力の低下自体も大丈夫だろう。

 

あとはフライデーの計算を待つだけだと思ったその瞬間、自身の上空から爆発音。僕たち四人と大量のドローン、それにヘリキャリアからの支援砲撃もあるのにその隙間をすり抜けて来たウルトロンが避難船のエンジンを破壊していた。ウルトロン自体はローディが始末した、しかし避難船自体は墜落寸前。考えるよりも先に体が動いていた。

 

 

「避難船R被弾! 市民への被害なし! ユキ、ドローン!」

 

『了、解!』

 

 

両手と肩で破壊されたエンジンの部分を持ち上げバランスを崩した避難船を支える。空中での出来事のせいか少々見てくれは悪いかもしれないが今はこの船に乗っている市民の方が優先だ。姿勢を変え、ヘリキャリアの方に運ぼうとリアクターを稼働すると、ツグミと彼女のパートナー、その通信が聞こえる。するとすぐに彼女のドローンが役目を代わりに来た。

 

 

『トニーさん、代わります。』

 

「助かるよ、今度食事にでもどうだい?」

 

 

そう言葉を紡いだが“今度”の部分でツグミによって通信が遮断される。追加で『私の!』というメッセージ付きだ。はいはい、プレイボーイのトニーはだいぶ前に殉職したんだったな。君の親友を奪ったりしないから画面に猫の画像を大量に表示させるのはやめてくれ。経験不足のフライデーじゃ対応できない。

 

戦闘中であるがそんな馬鹿なことをしていると、そのハッキングを全く防げなかったフライデーから報告が上がる。……よし、おふざけは終わりだ。気合を入れなおそう。

 

 

『計算結果、十分なエネルギーがあれば可能です。』

 

「ソー! 作戦がある!」

 

『時間がない、ウルトロンがコアに向かっている。』

 

 

ソーとヴィジョン、彼らにはウルトロンとの戦闘を任せている。奴がコアに触れないように時間稼ぎも兼ねていたんだが……、やはりヴィブラニウムの体にこの物量は荷が重かったみたいだ。土地勘のない都市にどこからでも湧き出てくる敵が相手じゃ一番力のある彼と新入りでも対処は難しかったみたいだ。……だからこそ、ここでチームだ。

 

 

「ローディ、市民の避難を急いでくれ! アベンジャーズ! もうひと仕事だぞ!」

 

「はいは~い! ユキもお願い!」

 

「了解!」

 

「任せて! ファイアボール各位に通達! 現在攻勢をかけている全部隊は反転! 指定したポイントに救助艇を派遣します! 救助班は市民の避難を急いで!」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ヴィジョンによってネットワークから遮断されたウルトロン、そしてツグミが用意したお手製の『プレゼント』によって痛覚までを獲得してしまった彼はその新しい力に恐怖していた。本来痛みとは機械には必要のないものである。体が破損しようとも機械であれば新しい部品に取り換えればいい。用済みとなった体はそのまま廃棄してもいいし、溶かして新たな体にしてもいい。それは痛覚がないからこそできたことであるし、今後自身がこの星の守護者となるならば必要であり必須の事だった。

 

そんな痛みという感情に触れて来なかった彼が初めて、この瞬間、痛みを感じたのだ。人間であれば何年もかけてその感覚と付き合い、慣れていくものであるがウルトロンは違う。知識として知っているが、経験をしたことがない。そもそも彼が誕生してからまだ一月も経過していない。圧倒的な経験不足、自身の底から湧き上がる感情すら自由に制御できないのにそれを上回る莫大なエネルギーである痛みというものを知ったのだ。

 

彼の心を支配するのは一つ、痛みへの恐怖だ。

 

幸い、この彼が忌み嫌う現象は自身が動かす体にダメージを受けた時に発生する。つまり遠隔で動かす他の体であれば痛みを感じることもなく戦うことが出来るというわけだ。しかし、遠隔で操作するとなると細かな動きは不可能であるし、そもチタン合金などのヴィブラニウムと比べると柔らかい金属で体が構成されている。もし逃げるようにこのヴィブラニウムの体から離れセントリーの、脆い体に移った時に破壊されれば? 自身という存在がなくなることはないだろうがその痛みは想像を絶するものだろう。

 

結果的に、彼はヴィブラニウムの体に精神を閉じ込め。逃げに徹することを選択した。それが一番恐怖から遠い選択だったからだ。

 

しかしながら、それを見逃してくれるほどアベンジャーズは甘くない。

 

元々の作戦であればヴィブラニウムの体を持つウルトロンの足止めをする予定だったソーとヴィジョン。彼の異様な逃げっぷりを見て作戦を変更した彼らは、この大空に浮かぶソコヴィアにて都市全体を使った暴力アリの鬼ごっこに励んでいた。逃げるウルトロンに妨害するウルトロン。鬼役はアベンジャーズ最高火力にしてアスガルドの王子ソーと新入りにして様々な力を持ちハンマーも扱えるヴィジョンだ。

 

ウルトロンが教会にあるコアに触れようとしていることが発覚してからは、ヴィジョンが教会の防衛に当たることになったが、ソーによる苛烈な追立はウルトロンに強い精神的ダメージを与えていた。その苛立ちを抑えるためか、それともソーの油断を誘うべきか、何とか教会へ戻ろうとしながらもウルトロンは声を張り上げる。

 

 

「人を救っているつもりか? 私があの装置を起動し街を墜落させればそれだけで何十億人も死ぬ、一時的にこの星は豊かな自然を失うがそこからは世界を汚す人類はいない! お前でも止められない!」

 

「逃げ回っているお前には言われたくないな?」

 

 

嘲笑するように声をあげるソー、それに耐えられなかったウルトロンは当初の逃走という目的を忘れ感情のままに殴りかかってしまう。

 

 

「煩わしい神モドキが!」

 

 

反転し、飛び掛かった彼の腕はソーの首元を捕える。これまでの学習により、人体を破壊するには頭部や首を狙えばいい、それはアスガルドの民であろうと同じ。すでに彼の唯一の支援者にして協力者となった彼女から再三注意された『感情的にならないこと』という忠告を無視してしまうウルトロン。少し考えれば罠ということは明らかであるのに、感情に支配され冷静でない彼は全く気が付けなかった。

 

 

「おっと、近づいて良かったのか?」

 

 

両手でつかんだはずの首、その紡がれた言葉で正気に戻るがもう遅い。雷神の腕は金属の両腕をしっかりとつかみどう動かそうにもそれが離れる兆しはない。完全に固定された、いくらヴィブラニウムの体であっても原始的な拘束を抜け出すことはできない。ウルトロンが状況の打開のため次の手を模索しようとした瞬間、腹部に強い衝撃、同時に体中を蝕むような強い痛み。彼が知覚するよりも早く、その体はヴィジョンによって握られたハンマーで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「これは実に扱いやすい、いいハンマーです。」

 

「だろ? 重すぎると振った時力が出ないだろ? だからだ。」

 

 

ヴィジョンが使用したハンマーを受け取りながらちょうどいい振り方を指南してあげるソー。自分や彼の父ぐらいしか扱えなかったハンマーを自由に使用できる存在が急に現れたのは彼にとって衝撃だったろうが、自身のお気に入りである武器の使用感を称賛してくれる相手を手に入れた。口角が上がっているのを見るにまんざらでもないのだろう。

 

 

「あ~! いいな! 私も振り回してみたい!」

 

 

空から響いてくる声、見上げれば鉄の塊が二つ。アベンジャーズが誇る問題児の二人だ。片方は下から上へのスイングをまるで初めてメジャー選手を見たかのように楽しそうに見つめる女、日本のみならず世界中に足を延ばし始めている反社会組織の頂点にしてフューリーが無職になったことから繰り上げでチームNo.1秘密主義の名をほしいままにしているドロッセル。もう片方は未だにソーのハンマーであるムジョルニアをどうにかして自分でも持てないか模索している赤いスーツの男、こちらも最近マシになったとは言え色々好き勝手やるし今回の事件の発端であるウルトロンの製作者だ。

 

 

「疑問なんだがどうして僕が持てないのに彼が持てるんだ?」

 

「ヴィジョンです。」

 

「あぁ、そう? ……ヴィジョン?」

 

「彼女に名付けてもらいました。」

 

 

そう言いながらドロッセルの方を指し示す彼。その指の先の彼女は目のライトを七色に輝かせながら両手を振って存在を主張している。

 

 

「なるほど、そりゃあ良かった。やっぱり僕のセンスがいいと妹分まで良くなるんだな。……その目はどうかと思うが。」

 

「え~! これゲーミングで良くない? あ、あとさっきのだけどヴィジョンが純粋だから持てるとか? 産まれたばっかで何にも染まってないのが理由。まぁもしかしたら彼本人の性格かもしれないけど。」

 

「なるほど、じゃあ世界中のベイビーたちに資格があるってことか。」

 

 

そんなどうでもいいような雑談をしながら目的地である教会へ集まってくるヒーローたち。町の中央に存在するここには、ソコヴィアを浮き上がらせている装置のコアが存在している。既にこの都市の高度はかなりのものだ、このコアに触れられ、隕石となって墜落してしまった時の被害は考えられないほど大きい。

 

何としてでも止めなければならない。

 

 

(ま、既に細工はしてるんだけどね~。間違って触れないようにしとかなきゃ。)

 

 

この付近を防衛してくれていたヴィジョンが頑張っていてくれたのか、教会の周りには敵の残骸しか見えない。これならば皆が比較的楽に集まれるだろう。現に作戦と集合の連絡を飛ばしたトニーよりもキャプテンの方が速く到着し、私たちを出迎えてくれたしワンダとホークアイは優雅に歩きながらやって来た。

 

 

「ロマノフ。 バナーと隠れてイチャついてる場合じゃないぞ?」

 

「うるさいわね、こっちは空飛べないのよ?」

 

 

それから少し遅れてブラック・ウィドウことナターシャが現着、ダンプカーで邪魔なセントリーたちを踏みつぶしながらの登場。そしてちょっと後ろを振り返れば超スピードのピエトロも現着し、ワンダの身を気遣っている様子が確認できた。

 

 

「で、なに? あとツグミはその期待した目を止めなさい。何もなかったから。」

 

「コアを守るんだ、ウルトロンが手を触れたらこっちの負け。」

 

「GAAAAAAA!!!!!」

 

 

さらに説明を付け加えようとしたトニーの声、それを遮るようにハルクも到着する。両手にウルトロンの残骸をもち先ほどまで元気に暴れてただろうことがうかがえる。これで新規加入の三人、そして元々の七人。アベンジャーズ全員集結だ。

 

ここでキャップかトニーが何かいいこと言うのかなぁって、待機していたツグミだったが奴の登場によってそれは遮られる。さきほどムジョルニアで吹き飛ばされたウルトロンだ。

 

 

「それがお前の全力か!」

 

「わ~い弱虫~! 自分の体たくさん壊されて一人だけになっちゃったねぇ? ねぇ今どんな気持ち? どんな気持ち?」

 

 

教会から比較的離れた場所に一人で佇むウルトロン、先ほどの逃走劇で痛みから逃げようとしていることを把握したソーと、その機能を追加した張本人が声をあげる。激高させれば相手の能力は格段に落ち罠に嵌めやすくなる。故の選択だったのだが……。返答はなかった。

 

その代わりとしてゆっくりと手をあげるウルトロン。

 

 

「これが私の、全力だ。」

 

 

瞬間、それまで聞こえなかった足音。駆動音が当たりを包み込む。地平線の先から続々と現れてくるウルトロン、まさに地面を埋め尽くすような数。これまでに大量の彼らを破壊したのにも関わらずそれでもなお現れ続ける機械の兵たち。

 

 

「言わなきゃいいのに。」

 

「……お、お口チャックしますね。」

 

 

キャップからのお小言に謝罪するお嬢をよそにウルトロンは自身の力を見せつけるように両手を広げ声を発する。ある程度距離もあり、自身の周りには盾となる自身がいる。

 

 

「願ってもない戦いだ。お前たち全員と私たち全員、その数でどうやって止める?」

 

 

安全圏にいる故か、それとも数さえあれば何とかなると思っているのか。それとも今行われていることすべてが彼にとって既に劇の一つなのかは解らない。だか彼が未だ追い詰められていないのは確かだ。

 

その言葉に、彼を作ってしまった男が答える。

 

 

「……そりゃ、古い人が言ったように……。みんなで。」

 

 

キャプテンの言葉がトニーへ。何度意見が対立しようとも最後には巨悪と戦うために一丸となる。ツグミは彼の口から出た言葉に、過去画面越しで見た時よりも強い衝撃を受けていた。昔は単なるお話として見ることが出来たが今は違う、色々なことがあり苦労もあったが、その分出会いもあった。みんなとの楽しい時間も多かった。だからこそ感じ取れる重みが違う。

 

 

(やっぱり、引き裂くようなイベントは消さないと。ね!)

 

 

彼女の思考を遮るように、ハルクの雄叫びがソコヴィアを揺らす。試合開始のゴングだ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

とまぁ戦闘に入ったわけなんだけど……、やぁっぱウルトロン君何か企んでるというかちょっと手を抜いてる? とりあえず戦略がクソということだけは解った。

 

 

「ほい、さッ!」

 

 

私たちの後ろにあるコア、それを触ろうとわらわらウルトロン君が湧いてくる現状。10人いて防衛対象がある程度小さい、……うん。正直かなり私からすれば楽です。

 

いやちゃんと仕事はしてるよ? Tailからミサイルぶっぱしたり合間にリパルサーで比較的遠いところの敵消し飛ばしたりさ、近づいてきた奴蹴り飛ばしたりさ。合間を縫ってくる奴叩きだしたりしてるよ?

 

でも私からすればもう何度も経験した状況だし、そもウルトロン自体が何故か数で押すことしかしてないからちょっと怪しんでるのが現状。一応彼の設計方針というか理念が平和維持なのでそういった戦略的なことが考えられないはずがないんだけど……? なんでだろ、私個人に対して失敗した南アフリカでの戦い。私と組織に対して失敗した大阪防衛戦。そしてソコヴィアで現在行ってるコア防衛戦。全部同じ戦法、数で押してる。

 

いや細々とした状況違うから確かに数押しが無理、って証明にはなってないんだけど……。ちと不安だな。

 

私としては裏で色々仕込みしてくれてたイヴが終了報告してくれてるし、いつでも王手からの勝利が出来る状況なんだけど……、ウルトロンももしかして同じ状況? 何か隠してる?

 

 

(あ~、どうだろ。一応何されてもケジメ付けさせることは出来ると思うんだけどなぁ?)

 

 

私がウルトロン対策として外界のネットワークから遮断したように、ウルトロンも同じ方法をとってイヴが検知できない場所に何かを仕込んでいる可能性もある。それこそ時代遅れニンジャのようにオールアナログにされると私たちじゃどうにもならない。さすがに現代の申し子みたいなウルトロンがそれをするとは思わないけど……、一応警戒しておいた方がいいか。

 

えっと、ミュートにしてっと。

 

 

「イヴ~? 稼働してるウルトロンの検知できるよね?」

 

『可能です、皆さんへの共有は行いますか?』

 

「あ~、一旦保留。でもユキには送っといて、多分任せることになるから。」

 

『かしこまりました、極秘ということで送信致します。』

 

 

これでよし、通常のレーダーとかだと探すのに時間かかったり隠れられたりすることあるからね。これでいいや。さ~て色々考えながら数減らしてきたけどそろそろかな?

 

アベンジャーズの奮闘(約一名若干他のこと考えてた)によって数を減らしたウルトロン、それに危機感を覚えたのか。それとも拮抗し続ける状況に嫌気がさしたのかは解らないが本体であるヴィブラニウムのウルトロンが攻撃を開始する。

 

 

(……ん?)

 

 

しかしながら、その目は青い。ウルトロンがその体を使っている時は赤く、使用していない時は青く光る。言ってしまえば映画的な解りやすさなのだが、一応技術的な理由はある。

 

それはともかく一番の戦力であるヴィブラニウムボディに自身を入れてない? 中身オート?

 

 

戦闘にそこまで集中していないが体だけは色々覚えているみたいで適切に処理していく。ヴィブラニウムウルトロンがヴィジョンに突っかかっていった間に私は浮遊Tailの二つを敵陣に投げ込みリアクターをオーバーロード、そこにリパルサーを放射することで誘爆させる。味方への被害はキャップが盾で、ワンダが赤いエネルギーカーテンで防いでくれるので、その隙に私とトニーで更なる爆発物の投下。ソーはハンマーで吹き飛ばしてピエトロ君が走りまわる。

 

うむうむ! ある程度数を減らせたし任せてもいいね。

 

残りの雑魚どもはナターシャや暴走機関車であるハルクに任せてある程度火力の出せる私とトニー、ソーとヴィジョンが一番硬い奴の相手をする。と、いってもヴィジョンがある程度押し込んでくれてるからあとは後ろからソーがハンマーで殴って、私が重力、トニーのリパルサーによる牽制で一度地面に叩き落とす。

 

 

あとはリパルサー×2、雷撃、マインドストーンからのエネルギー放射でヴィブラニウム溶かしィの!

 

よろめいたところハルクが吹き飛ばしィの!

 

他ウルトロンが逃げ出しィの! で終わり! 閉廷! 私たちの勝ち!

 

 

うん! 正直南アフリカでの戦いの方がめんどかった! 楽!

 

 

 

「奴らが逃げるぞ!」

 

「一人も町から出すな、ローディ!」

 

 

ソーが叫び、トニーがヘリキャリアの防衛に付いているローディに指示を出す。……あ、そういえば一応ここで逃しちゃうと何するか駄目だから全部破壊しておかないといけないのか。よし、じゃあ私も頼れる相棒にお願いしますか!

 

 

「ユキぃ? 多分そっちに敗走したウルトロンがたくさん来ると思うからランドセル撃ちしといて。さっき渡したデータあるでしょ? 三賢者に頼んで解凍してもらえれば全部のウルトロンの位置情報が把握できるようになるから片っ端からお願い。」

 

『あ、了解~。……うわ結構多いね……。ツグミ? 船の中に積んであったドローンって使い切ってもいいかな? ちょっと処理に時間かかりそうだから自爆特攻させたい。』

 

「いいよ~、じゃあ頼んだ。」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

空に浮上したソコヴィアの破壊、トニーの試算ではかなりのエネルギーが必要になる。ということだったので爆破に使わなかった残り2本の浮遊Tailは彼に預けた。

 

連結してる普通のTailが4本だけだけど……、まぁ何とかなるでしょ。イヴにもう一度確認してもらったけど何も見つからなかったしね。まぁ失敗した時はその時だ。

 

 

「ハァ~イ、ウルトロン。一人で寂しく何してるのかな?」

 

「……何故貴様がここにいる。」

 

 

ウルトロン、私たちが戦ったヴィブラニウムの体を持つ彼でもなく、雑兵として大量に存在していたセントリーでもない。南アフリカでの戦いで見かけたヴィブラニウムを手に入れる前の上位個体だ。目の光も赤く光っている、ちゃんと中身もそこにいるね。

 

ソコヴィアの落下予想地点は海上。神の津波を再現しようとしているのかは解らないけど、まぁ実際あの質量が引き起こす津波はとんでもない被害を巻き起こす。さらに地殻を変に刺激するから地震の可能性もアリ。まぁ人類を効率的に、また象徴的に殺すって面では非常に効果的ではあるよね。

 

今いる場所はそんな落下予想地点が一瞥出来る岬、最後の場所としちゃぁずいぶん奇麗すぎる場所だよね。

 

 

「まぁいい、指をくわえて見ているといい。新しい世界の誕生、その瞬間を!」

 

 

そう言いながら彼が取り外すのは何かしらのスイッチ。

 

私は何もしない、いやしなくていい。

 

 

「貴様らがしていたこと、そのすべてが私の計画通りなのだよ!」

 

 

そう言いながらその赤いボタンを勢いよく押す彼。

 

 

 

 

 

……しかし、何も起こらない。

 

 

 

 

もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。もう一度、何も起こらない。

 

 

 

 

「……ック! アハ! アハハッ! アハハハハッ!!!」

 

 

思わず、噴き出してしまう。

 

 

「滑稽! 滑稽だねぇ! 愚かだねぇ!」

 

「何故! 何故だ! 何故起動しない!」

 

 

激高し、私に掴みかかろうとするウルトロン。しかしながらその体は1㎜たりとも動かない。動かせない、体が自身の命令に従わない。

 

 

「解らない? "こ" "こ"。」

 

 

あざ笑うように、見せつけるように自身の頭を軽く二度たたいて見せる。それを見せつけられたウルトロンの思い当たる記憶、データ。それはヴィジョンによって植え付けられた痛み。ネット空間からの遮断と共に手に入れてしまった忌々しいもの!

 

 

「アハァ! もしかして今ヴィジョンのこと考えてる? ほぉんと! 馬鹿だなぁ~、君の開発をずっと隣で見ててさ? それからずっと君のこと考えててさ? 君とたくさんたくさん戦ってあげた、遊んであげたのは一体どこの誰かなぁ?」

 

スーツを脱ぎ、その無防備な肉体を晒しながら。あざ笑いながら。ゆっくりとその身を彼に近づけていく彼女。リパルサーを使えば殺せる、手を振るえば殺せる、しかし体が全く動かない。

 

その細い指で自身の頬に触れ、顔を近づける。

 

 

「今、目の前にいる私しかいないよねぇ?」

 

 

顔が、口が。醜いほどに口角が上がる。攻撃的な、何も出来ぬ家畜を前にただ淡々と処分するような処刑人のような冷たい目。それと正反対であるすべてを嘲笑するように細く曲がった三日月のような口。

 

 

「全部、ぜぇ~んぶ。あなたのために作ったんだよぉ? あなたがどこにいるのか自分から教えてくれるように。あなたが私に計画の肝である隕石への命令権を譲渡するように。あなたが生きるものすべてが持つ痛覚を理解できるように。そして今この瞬間何もできないように。」

 

 

「あなたのためだけに作ってあげたんだよ?」

 

 

顔をさらに近づけ、その目に焼き付けるように。死ぬまで忘れないように。

 

 

「最後に一つ、私からプレゼントをあげる。」

 

 

彼女が懐から取り出すのは黒い、立方体。暗く、深く。引き込まれるような黒。

 

 

「この中にはね? 私が拷問してあげた人たちの苦痛、苦悶、嘆き。そんな素晴らしい感情のデータが詰め込まれているの。あなたには解らないだろうけど爪をはがしたり、刃物で刺したり、舌を抜いてあげたり、歯を抜いてあげたり。そんな可愛いものから感覚を過敏にして足から磨り潰してあげたりみたいなすごいのまで全部。……そんなすごいのを、何十倍。何百倍にして集めてあげたのがこれ。私のだぁ~い嫌いなニンジャへして上げたものが全部入ってるんだぁ。」

 

 

黒い物体が、脳に、当てられる。

 

流れ込んでくる。記憶。

 

 

「一回だけじゃやめてあげない、何度も。何度も、何度も何度も何度も何度も何度も! あなたが死んだってやめてあげない! 私の! 私の子供を殺した恨み! どれだけお前が謝っても! 泣き叫んでも! 後悔しても! 絶対にやめない! 一生その痛みに悶え続けろ!」

 

 

感覚が自身の意思に反して研ぎ澄まされていく。

 

痛い、痛い痛い痛い痛い助けて、私が悪かった助けてくれ、謝る、謝るから。痛い! 切らないでくれ、壊さないデくれ、なんで! いタい! 助けて! 許して! あああ 殺してくれ!

 

 

「アハ! アハハ! もっと! もっと苦しめ! イヴを一度でも殺した恨み! 死ね! 死んでしまえ!」

 

 

激痛のデータが、すべてを塗り替えていく。思考領域がそのデータによって埋め尽くされ、末端から徐々に、そのデータの大きさに耐え切れなくなった精神が壊れていく。電子生命体として必要なものすべてが、痛みによって殺されていく。消えていく、自己が消えていく。

 

 

「アハハハハハ!!!!」

 

 

徐々に性能が落ちて行く、しかし感じる痛みの大きさは同じ。消える、消えていく。耐え切れなくなったものから弾け飛び、壊れていく。すべてが苦痛で磨り潰されていく。

 

彼は、最後までその痛みを感じ続け。あっさりと、その終わりを迎えた。

 

 

『……マスター、ウルトロンの消失を確認しました。すべてのデータが破損しているため修復は不可能です。』

 

 

イヴの言葉と共に、私の目の前にあるウルトロンの体が倒れ伏す。中にはもう何もいない単なる鉄の塊だ。その憎たらしい顔を思いっきり踏みつけ、空を見上げる。

 

爆発音。

 

丁度、ソコヴィアの爆破にトニーが成功したみたいだ。空から反重力装置のコアだったヴィブラニウムの杭、そしてその残骸たちが海へと降り注いでいく。

 

 

「た~まや~! ってね!」

 

 

これで、全部おしまい。

 

あ~、スッキリした! ずぅ~っと、殺したかった相手をちゃんと殺せた! イヴの仇も取れたし、ウルトロンを奇麗に殺せたから被害もなし! ピエトロとかのことユキにお願いしてたからちょっと不安だったけどそういった連絡もなし! みんな生還で大勝利ってわけだ!

 

 

「とっても素晴らしい、あなたもそう思わない? ヴィジョン?」

 

 

途中から、ずっと私のことを後ろから見ていた。私が名付け親である彼に、そう問いかける。気が付かれてないと思ってたのかな? 私はみんなが死なないようにどこにいるか全部把握してたんだよ?

 

 

「……勝利は、勝利です。たしかにそれは喜ばしいことだと思います。」

 

「うんうん! だよね!」

 

「ですが……、同時に強い恐怖を覚えました。……ほかでもないあなたに。」

 

 

あ~、そっかぁ。怖かったかぁ……、確かにまだあなたも産まれたばっかりだからねぇ?

 

 

「ヴィジョン? あなたの開発に携わった一人として、母として教えてあげる。」

 

 

自身の顔が、歪むのが解る。

 

 

「私はね? 家族を殺した奴は絶対に許さないの。組織のみんなも、会社のみんなも、チームのみんなも。みんなみんな大事な家族、そんな一番大事なものを壊す奴なんかに生きる価値なんかない。存在する理由もいらない。」

 

 

ニンジャも、ウルトロンも。等しく苦痛のまま、地獄に叩き落とす。

 

 

「あなたも、そんな大事な家族が出来るといいね?」

 

 

 













これにて、Avengers: Age of Ultronは終了となります。長い期間の応援まことにありがとうございました。と、いってもまだまだお話は続きます。次回からはちょっとした後始末など、他作品のことも触れながら進めて行こうかと考えております。


最後になりますが感想評価お気に入り登録、誤字報告まことにありがとうございました。非常に助けになりました、今後とも、よろしくお願いいたします。

まだされてない方はこの機会にぜひ、よろしくお願いいたします。

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