前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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嫌われるのも覚悟の上

 

 

「ヤハロ~! みんなのドロッセルちゃんが遊びに来たぞ!」

 

 

今日は久しぶりにニューヨーク州にあるアベンジャーズの新しい基地に来ている。タワーじゃないところね? トニーと私が出資している民事世界平和維持機構みたいなとこ。この前来たときはマキシモフ兄妹を含めた新規メンバーが加入したときに顔合わせに行った時だから、これで二回目? あんま来てないよね。

 

 

「今日は何をしでかしに来たイタズラガール。」

 

「えぇ~? 出会い頭それはひどいんじゃないニック~? お土産のどら焼き上げないぞぉ?」

 

『貨物用tailすべてに和菓子系甘味類を満載しております、皆様でどうぞ。』

 

 

私の接近を感知して出迎えてくれた元長官にいつもの挨拶をしながらスーツを脱ぐ。あ、イヴちゃんはソレみんなに配って来て上げて? 私用とそこの無職じゃなくなったおじさん用に二つだけ先に頂戴。うん、ありがとう。

 

ちな、今日はこの基地というよりもやってくる小さな侵入者さんに用があるのでお邪魔した感じだ。ゆえに今日の武装は非殺傷で軽い者だけ、空いたスペースには結構喜ばれる和菓子を大量に持ってきた。ほれ、賞味期限切れるまでに全部食べるんやぞ?

 

 

「君が来るときは決まって厄介事しかないからな、2009年のころから順にあげてやろうか?」

 

「ご勘弁、というか私だって何の用もなく友達に会いに来るぐらいはするよ? ほら証拠にたくさんお土産持ってきた。」

 

「どうだか。」

 

 

持ってきたどら焼きを手渡し、彼が口に運ぶのを見ながら目的地まで移動する。アベンジャーズが前に出ないといけないような緊急の案件はなかったし、今日の訓練の時間はとうに過ぎ今は個々人の自由時間のはずだ。ぱっとこの基地をハッキングした感じサムことファルコンが自主的に付近のパトロール中、ローディことウォーマシンは軍属のためそっちの仕事で忙しい。ヴィジョンは趣味の園芸に興じているみたい。ワンダはそれを後ろから眺めていて、ピエトロはその二人を監視しているって感じか。う~ん、いやこれ見れただけで今日来た意味あったな。むちゃお兄ちゃんしてるじゃん。妹さんとられちゃいそうだね。

 

 

「楽しんでいるところ悪いが、流れるようにハッキングをするのは控えてくれ、どこかの誰かさんに根こそぎ引き抜かれたせいでこっちは年がら年中人手不足なんだ。」

 

「ありゃ、そりゃ申し訳ない。……どう? またブートキャンプする?」

 

「死人が出るぞ。」

 

 

やんわり止められるかと思ったら、ガチめな否定を返されちゃった。え? そんなにアレやばかったっけ? 結構みんなついてきてたし、どれだけぶっ倒れても新しいのが補充されて、生き残った奴は今も元気に死にかけてるからてっきりニックの友人帳にはあぁいう耐久度マシマシ人類がたくさんいるものかと……。

 

 

「まずあのチームは当時のS.H.I.E.L.D.の最高戦力ともいえるメンバーだった、その後追加したメンバーもヒドラからの推薦を受け入れてしまっていたとは言え選りすぐりだ。すでにこちらは品切れ状態さ。」

 

 

なるほどねぇ……、でもさ。途中から私の思惑に気が付いて完全に真っ黒なやつとかスパイとかそれこそ確定ヒドラとか送り込んでなかった? 入ってきた人がみんな一週間足らずに倒れたりあそこ戻るくらいなら自首するって泣き叫んだり、タイピング音聞いただけで発狂して運ばれたりと、損耗率やばいことになってた気がするけど。

 

 

「さぁ? 大半が安全で快適な檻の中に引きこもってしまった。詳細はわかりかねる。」

 

「確信犯じゃん。」

 

「なんのことだか。……それで? 最近何やら楽しそうなことをしているようだが、私は混ぜてくれないのか? 招待状の一つくらい送ってくれてもいいだろう。」

 

 

あ~、そりゃまぁニックにはバレてるよねぇ。私が色々裏で動いてることぐらい筒抜けか、まぁ今は隠蔽性よりも速度と数を重視してるから仕方ないけど、どこから漏れてるかくらいは把握しとかないとな。多数の外部からの視線による発覚か、内部からの流出。もしくはその両方。まぁ最後のだろうけど。

 

 

「わかってて聞いてるでしょ? ソコヴィア協定はまぁ理念自体はいいんだろうけどアベンジャーズにとっては枷にしかならないよ。それ以上に私からすれば存在すら許せないんだけど。誰が自分の家族を殺される未来に協力するとでも? 私は世界に求められていて、私しかできないからやってるだけであって、どこかの国や組織の下にいるわけじゃない。全部消し飛ばさない理性があるだけほめてほしいけどね。」

 

「……なるほど、では感謝しないとだな。その一人で解決しようとする姿勢は評価できないが。」

 

「んで? 元長官様はどうお考えなのかな? 何も知らずにただ傍観してくれるとありがたいんだけど。」

 

 

足を止め、彼の方に向きなおる。すでに国連に所属していない彼からすれば私を拘束する義務はない。けどまぁこの話を受け入れられるかはまた違う話。現状の社会体制を維持するか、それとも新しい体制を成立させるか。どちらも一長一短ある、ただ前者の短所が私にとって許容できないだけだ。

 

彼がその答えを口にしようとしたとき、……イヴからの報告が飛んでくる。

 

 

『マスター、基地上空に超小型の未確認飛行物体を検知しました。【お客様】のようです。』

 

「やはり、君と厄介事はセットでやってくるようだ。」

 

「……今回は何も用意してないんだけど。」

 

 

まぁ関係はないが、ここにこのタイミングで来ること自体は知っていた。じゃなきゃわざわざ忙しいなかアメリカなんか飛んでこないよ。この地域は基本アベンジャーズが頑張ってくれてるから私必要ないし。……あ。イヴ? ちゃんとプレゼントの方は盗って来てくれた?

 

 

『ここに、ですがよろしかったのですか?』

 

「いいのいいの、どっちみちあっちのおうちは全部抑えてるから彼の首根っこつかんでお邪魔するだけ~。」

 

『いやそのことではないのですが……。』

 

 

ピム博士は確かに素晴らしい科学者だ、一人の天才であるし尊敬もしている。しかしながらその技術はこの世界においてとても重要なキーになる。この技術に頼る前にすべてを終わらせるのが最善ではあるが、失敗の可能性は常に考えておくべきことだ。ゆえにこの時点で確保し、今この時からタイムマシンへの足掛かりを手に入れる。

 

彼は偉大な科学者だ、しかし科学者でしかない。表の社会でどれだけ活躍し、ひそかに世界を守ろうとも言ってしまえばそれはまだ表での出来事だ。裏社会で命のやり取りを休む暇なくやり続け、表の法に縛られずルール無用な私たちにただの科学者が対応できるか。

 

事前知識があったとは言えセーフハウスや本拠地を割られ、その周囲を固められ逃走経路がすべてつぶされているのに呑気にお家の地下室から管制ごっこをしているあたり対応なんかできてないだろう。もしそれがブラフなら賞賛を好きなだけ差し上げようじゃないか。

 

さて、ピム粒子を分けてもらうことにしましょうか。

 

一人の天才にガチで嫌われるぐらい、世界を救える選択肢と比べたら安いもんさ。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

『どうかしたのか、サム。』

 

『ファルコンだ!』

 

『センサーが反応したんだが何も見えない。いや、ちょっとまて……。』

 

 

パトロール中であったファルコンが異常を発見し、その確認に走る。このニューヨーク基地だが、もともとスターク社が保有していた倉庫群を改造して基地に変えたものになる。こういった基地はパパラッチが沸いたりヴィランが襲撃してきたりするので基本公開しないのだが、それがアントマン陣営にとって仇となった。

 

 

『大丈夫だ、あいつには見えてない。』

 

『見えてるぞ。』

 

 

普通の成人男性がありんこレベルまで小さくなっていたら普通は発見できない、それを信じての発言だったがアントマンが使用している無線はすでにすべて筒抜けだし、熱源反応が消せない以上どこにいるのかも把握されている。今私がハッキングして盗み見している管制室で全部バレているのだ、至近距離にいるファルコンが持つゴーグルで発見できないはずがない。まぁその管制室とかファルコンのゴーグル作ったの私とトニーだけど。

 

侵入が発覚したことであきらめたのか、自身のサイズを元に戻しマスクを外すことで敵意がないことを示す彼。この時点でファルコンからすれば目の前の人間が体のサイズを自由に調整できるテクノロジーを所有した不審者になったわけだ。

 

 

『……ど、どうも! スコットです。』

 

『ここで何をしている。』

 

『僕……、大ファンなんですよ。』

 

 

頬を綻ばせていることから実際アベンジャーズのファンなのだろう、新入りのファルコンのことを知っているあたり知識もある。ネームバリュー的に言えば彼は下の方だからね。……まぁ単純にこの状況をどうにかするために偽っているだけかもしれないが。

 

うん、まぁ前者かな? その気持ちわかるし。

 

 

『うれしいね、で何者だ。』

 

『僕は……アントマン。え、何聞いたことないって? そりゃそうだろうだね。』

 

『狙いはなんだ。』

 

 

場所は屋上、アントマンの後ろには何もなし。振り返ればすぐ地面が見える。逃げようにも相手は天下のアベンジャーズで飛行能力もち。話が通じないであろうめちゃつよメンバーやピム博士と相性が悪いトニーに比べればまだましだろうが、それでもスコットには荷が重いだろう。今からさらに重くするんだけど。

 

 

「実はちょっとした……、装置が欲しいんだよね。すぐ返すからさ。世界を救うのに、必要なんだ。わかるだろ?」

 

「あぁ、もちろんわかってる。侵入者を発見、連れていく!」

 

「必要ないよ、イヴ?」

 

 

自身に迫るサムから逃げ出そうと小型化のスイッチを押そうとする彼、しかしながらこの場に君が来た瞬間から運命は決まっている。反重力および電子パルス、ナノバインドをイヴは発生させ彼の天井はさっきまでの床に。文字通りひっくり返された彼は拘束され頼みの綱であるボタンを押そうにも指が動かない。

 

 

「ハァイ、アントマン? それともスコット・ラング? 新製品のナノバインドのお味はどうかな?」

 

「ド、ド!」

 

「ドロッセルちゃんだよ~! ちょっとじっとしててね?」

 

 

驚きのせいか、それとも私のファンなのかは知らないが口が固まるスコット君。まぁ今彼逆さまだしピム博士との通信を遮断してる。それもびっくりの要因かな? まぁあっちはあっちでうちの子たちが突入してるだろうからそれどころじゃないだろうけど。……あ、もしかして名前全部バレてること? 君の前職がアイス屋さんなことまで知ってるよ~!

 

 

「えっと確か……、あったあった。この赤いのがピム粒子ね。うんうん、面白そうだ。あ、サム久しぶり。この子私が責任をもってナイナイしておくから帰っていいよ? また今度話そうねぇ~。」

 

「な、ナイナイって……!?」

 

「あ~、残念だったなスコット。ご愁傷様だ。」

 

 

すべてのピム粒子を私に回収されて何もできなくなったアントマン、一応例の手裏剣君も押収したのでほんとに丸腰。体自体も最近ようやく実戦投入可能になったナノバインド――放射後散布されたナノ粒子がその体全体を固定するように纏わりつき相手を拘束する武器――で拘束中。うんうん、いい感じだね。

 

 

「え、ご愁傷様って何!」

 

「この人はアベンジャーズの中で裏の顔が一番やばいんだ。……目を付けられた時点で、な。」

 

「ふふふ……。」

 

 

まぁ表社会には出てない情報だからスコット君は知らないだろうけどアベンジャーズで私の裏の顔は周知の事実。もちろんサム君も私が全世界をまたにかけるヤクザ組織の頂点であることを知っている。ふふ、怖いでしょ。

 

侵入者をいじるだけいじったサム君はそのままご帰宅、残ったのは私とスコット君。あとイヴが運んできてくれた全自動のヘリ。これで君のおうちまで行こうね? まぁ本人からすればどこに連れていかれるかわからない上に私の裏の顔に無茶苦茶怯えている真っ最中だろうけど。

 

 

「あ、あの。娘があなたの大ファンでして……。最後にサインだけもらっても?」

 

 

もっちろんいいよ。キミが望むならお宅訪問もしちゃうよ? でも私のファンってそれ教育にめちゃくちゃ悪くない?

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『よかったのですかお嬢様。彼ら、特にピム博士は放置すれば敵になる可能性が非常に高いかと。』

 

「あ~、憤死する勢いで怒ってたもんねぇ。もう年だからご自愛いただきたいんだけどねぇ。」

 

 

それにまだ彼には役割があるもんね、まぁ怒らせた本人が言うようなことではないが。

 

ピム博士自体その粒子の危険性を強く認識している人だ、少し老いによる価値観の固定が見られるがそれでも確固とした正しさを持つ人間だと言えよう。

 

そんな人を急に拘束して、「君らの欲しい装置。確か博士が作った奴だっけ? それ上げるから勝手にピム粒子とその研究内容もらっていくね。」をしたわけだ。嫌われない方がおかしい。

 

 

『いくら生体認証を完了し、小型化した状態でも潜入が不可能な状態でも彼の頭脳であれば時間さえ用意すれば突破してくる可能性が高いと考えます。確かに能力のある人物の保護は重要かと考えますが、組織全体への損害を与える可能性がある人物を残しておくのはどうかと。』

 

 

イヴの言うことは理解できる、実際私に記憶がなければそういう危険性のある人は排除するし、これまでもこれからもしてきただろう。外からくる脅威に対抗するためには内から生じる危機を先んじて破壊することは鉄則だ。それをしようとしない私は非常に不自然に思えるだろう。

 

実際ピム博士をあのまま放置すれば、いや監視下に置いたとしても博士の研究結果と成果を保有している私を排除しに動くのは確定。研究所に忍び込んで実物の破壊と関連データの全消去ぐらい計画してもおかしくない。今『アントマン』の物語が進行しているが、それが終われば次の標的は私だろう。実際行動するスコットをアベンジャーズに召集するため実害がないように思えるが、そうなると多分博士自身がやってくる。つまり組織の長として考えれば生かしておくデメリットが大きすぎる。

 

かといって殺す選択肢は最初からない。

 

このピム粒子を使用した量子世界を通じて行う時間旅行、このまま何もなく私の計画が進行すれば必要はないが、その準備を進めない理由にはならない。事前にピム粒子について理解し、製造方法の確立、アントマンスーツの生産体制構築を進めておけば、サノスを殺すのに失敗した場合いち早く問題を解決できる。

 

恐れているのは私が道半ばで死亡し、その段階でピム博士も死亡してしまうこと。この世界に量子世界という必要なキーワードが存在しないことになる。そうなると時間旅行もできないのでバットエンド確定ってわけだ。そのため後に続く人たちにデータを残せるよう、今回の行動を起こす必要があった。

 

技術はいち早く必要だが、私が早く動き過ぎると不自然極まりない。ピム粒子の製造方法について一人しか知らないことも危険すぎる。ゆえにこのタイミングで軋轢を生むことになったとしても手に入れる必要があった。

 

まぁそんな馬鹿正直に、説明できるわけもないので、要約すると。

 

『ピム博士が以前から現在スコット氏が使用しているスーツにて世界平和の維持に貢献してきたことは高く評価します。もし正式な評価が必要な場合、生活に困らないだけの資金と永遠の名誉を御約束いたしましょう。しかしながら現在ダレン・クロス氏が行っているイエロージャケット計画を見るにこの技術はあなたしか再現できないものではなく、またその危険性が世界に強く刻まれました。貴方方が彼の計画を止めようとしていることを邪魔するつもりもありませんし、騒ぎにならないよう後始末も致します。しかしながら博士以外の再現性が発覚した以上世界を守る組織としてその保護と監視を行います。貴方方がこれまで通りその技術を使用することはかまいませんが、こちらにもその共有をお願いしますね? あぁもちろん博士が心配なさっている我々の使い道についても共有いたしますのでご安心を。』

 

まぁ色々言われたら話進まないし、ほぼ決定事項の通達みたいなものだったから皆さんの口ふさいで身動き取れないようにしてウチの構成員十数名で取り囲んでのお話しだったんだけどね! てへぺろ!

 

 

「完全に嫌われただろうけどまぁスコット君には色々してあげるしそこでなんとか均衡保とうとする感じかな? 実際ベタ誉めしておいたし。ま、博士がどんなことをしてくれるか楽しみにするとしましょうか。」

 

『……マスター、よろしいのですか?』

 

「うんうん、いいの。だからイヴが勝手に処理したり下の子たちが暴走したりとかそういうのは許さないからね。」

 

『かしこまりました。』

 

 

よし、じゃあやること終わったし、息子夫婦の顔でも見て帰るかね。

あ、まだ夫婦じゃなかったっけ?

 

 





お嬢様
「ぱっと見た感じ時間さえかければ私でも量産できるじゃんこれ! これで未来ピム粒子が足りなくて困ることはなくなるね! 体制整えたら量子世界の基礎研究含めてアベンジャーズのサーバーにセキュリティマシマシで放り込んどこ! これでタイムマシン計画の心配はなくなった! ヨシ!」

なおスコット君はお嬢様のサインと等身大ぬいぐるみ(子供用)を手に入れた!

【お嬢様への好感度】

スコット君
→なんかやばい雰囲気がぷんぷんするけどまぁ、いい人? 色々プレゼントくれた上になんか褒めてもらえた。

ピム博士
→(初期)嫌い(今)滅茶苦茶きらい、ぷんすか

ホープちゃん
→なんかやべぇ


たぶんカメオは次回で終わりです。
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