前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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せめて彼の影だけでも

 

 

 

「FooooOOOOOO~~~~~~!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、イヴ君?」

 

『はい、どうかされましたか父君。』

 

 

朝の7時、暖かい日ざしが一日の始まりを教えてくれる。食卓に並ぶのは湯気がゆっくりと上がり香りが鼻孔をくすぐるコーヒーに黄色い焦げ目がつくほどに焼かれたトースト。目玉焼きにハムとサラダというご機嫌な朝食。

 

向かいには妻がいてまさに幸せな一家の朝だと言える。

 

大事な一人娘が朝から奇声を上げていなければだが。

 

 

『なんでも推しと同じ大地に生れ落ちたことが恐れ多いのと、これからやってくる物事の情報量の多さ。それとこれまで調べてたのに発見できなかった項目が急に出て来たことに脳が破壊されたとおっしゃってました。』

 

「???」

 

「まぁいいじゃない、たまに叫びたくなることもあるわ。」

 

「そういうものなのか母さん? 女の子わからん???」

 

『それと母君、マスターからは色々落ち着いた後に朝食を頂くと承っておりますのでどうぞ先にお食事の方始めて頂きたく。』

 

「わかったわイヴちゃん、いただきまぁ~す。」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『で、落ち着きましたか?』

 

 

「無理!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

昨日からずっとこんな感じですよ! はい! こんな精神状態で眠れるわけありませんね! 生中継! 生中継であのシーン見れたんですよ! というかこの世界がマーベルだったの知ってたらもう現地入り、いや聖地入りしてましたよ勝手に! 勝手にあの記者会見の場所入ってましたよ! こちとら前世からのファンだぞ! デトロ、開けロイト市警だ!

 

 

『そろそろ落ち着いていただかないと今日の業務に悪影響を及ぼすのですが。それ以上に本日は登校日では? 一限から講義だと記憶しているのですが。』

 

「んなもん休むに決まってるでしょ! 真面目に授業受けれる精神状態じゃないわ!」

 

『……はぁ、ではどうでしょう。今マスターの頭の中に浮かんでいる事項を一つずつ上げてみては? それで少しは落ち着くでしょう。それとご友人に「今日は体調不良で休むので出席票だけヨロ!」と送らせていただきますがよろしいでしょうか?』

 

「頼んだ!」

 

 

 

まず一つ目! なんで私がスターク社を発見できなかったか!

 

こっちの世界に来てから私は前世の記憶にある単語を片っ端から検索したり色々調べた、というかイヴが出来てからは関連ワードのファイル用意して毎日日本時間の12時に検索してもらってる! だから普通推しの会社である“スターク社”なんてワード見逃すはずがない!

 

だけど昨日のニュースではそれがあった! トニーが画面の向こうで喋ってた! そしてネットつなげて検索したら普通に出てくるスターク社の情報! 何故!

 

 

『一応確認いたしましたが、昨日の定時検索までは一度も“スターク社”や“トニー・スターク”に連なる情報はヒット出来ていませんでした。履歴には空白があるのですが、あのニュースの後に検索してみれば溢れんばかりのヒット数です。』

 

「マジで意味わからん! でも推しといっしょの大地踏めるとかやばい!」

 

『太平洋で途切れてませんか? その大地。』

 

 

まぁでもここがMCUの世界と確定した時点でこの疑問なんか考えても仕方ないレベルになるんだけどね。だって指パッチンで生き物半減させるむらさきイモのおじさんとか平行世界を好き勝手移動できるおじさんとかいるんだもん。タイムマシンすらある。

 

それに原作のマーベルコミックスとかもっとヤバいのいるし……。

 

 

「とりあえず今は『“アイアンマン”がこの世界に登場したことで世界自体がMCUに変化した』ということにしよう。そもこの検索履歴も作り替えようと思ったらできるわけだし、タマゴと鶏の問題だからね。」

 

 

私も科学の徒だからいつかは自分でこの現象を解き明かしたいけどいまするべきことはそれじゃない。

 

 

「イヴ。怪獣タイマーならぬ決戦タイマーを作ろう。Xデーは2012年5月1日でちょうどそのタイミングでタイマーが0になるように設定しといて。あと買い物リストにサノス用のグリーンピースを追加しといて! 食べさせるよ!」

 

『かしこまりました、デスクのPCに常に表示させていただきます。買い物リストの件も了解いたしました。』

 

「よし、第一目標はあのチタウリの侵攻に私も混ぜてもらうこと、もちろんアヴェンジャーズの一人として!」

 

 

 

「せっかく推しといっしょの世界に産まれたんだ、トニーに追いつけ追い越せ、だ!」

 

 

そして、私の手にはさっきコピーした紙束一つ。

 

私のスーツ開発のネックだった動力、エネルギー問題。

 

それを解決するのに一番いい方法がここに書かれてある。

 

 

「アークリアクター。昨日まで見つけることができなかったその基礎研究についての論文、トニーのお父ちゃんの論文パワーさえあればできるはず! というか試作品程度作れなきゃ女が廃る!」

 

 

トニーは何の設備もない洞窟の中でインセン博士の手助けがあったとしてもこれを小型化して完成させたんだ。それに比べて私は自分の作業場、いやラボに優秀な助手であるイヴ。トニーのジャーヴィスがいる。

 

 

「トニーは言ってたよね、『大学生でも作れる。』って。私がその言葉を証明して見せるからね! 一緒にニューヨークの空を飛んでやるんだ!」

 

 

「イヴ! 急いでパラジウム用意して! 早く!」

 

 

『了解いたしました。それと今回は長くなりそうですので母君に連絡を入れておきますね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、頑張って色々してみたのですが……

 

 

「小型化できましぇん!!!」

 

 

『あぁ、可哀そうなマスター。幼児化してしまわれて……。』

 

 

ラボの中には少量の青白く光るリアクターと大量の何も言わぬリアクターでまみれていた。共通点と言えば光るリアクターほど大きく、光らぬ方はサイズが小さいようだ。

 

 

「どんなに頑張っても直径15㎝オーバー! しかも発電能力が大幅ダウンの毎秒1GJ!全然足りない! こんなもんじゃ動かせないし、アーマーにはまらないよぉ!」

 

 

『正直に言いますと完成するとは思っていなかったのですが、本当に作り上げてしまうとは……。しかしながら1GJ/sでも足りないのですか? これ一つでエネルギー革命が起きそうなものですが。』

 

 

「リパルサーの事とか考えると全然足りないのぉ……、トニーとの才能の差ぁ! やっぱ推しってスゲェという感情と自分の能力の限界が見えてしまってやむ。」

 

 

社屋のロビーを丸々一つ埋めるリアクターが大型とすればトニー・スタークが作り上げた片手で軽々と運べるリアクターは小型。彼女が開発できたものは片手では無理だが両手で持てるサイズなので中型だろうか。

 

開発に行き詰まり少々幼児化してしまった彼女は、作り上げたリアクターを胸に抱き、床に寝転んでしまう。数週間に渡る長期の開発のせいで目に隈が出来ているし髪はぼさぼさ、でも眼だけは気色が悪いほどに爛々と輝いている。

 

 

「どうやったら出力上げられるんだぁ? 制御用AIが悪いのか? それとも熱電変換材料の配合ミスってるのか? そもパラジウムの加工でミスってる? マジでわからぬ! もう直接アメリカ行って聞きに行こうか? いやでも推しに会うのに二年は心の準備させてほしいし……。」

 

 

『はぁ、このままでは少々いけませんね。……で、マスター! リアクター以外の開発はどうなのですか? こちらでも確認はしていますが、一度整理のために口に出してはどうかと!』

 

 

「うん? うん……。じゃあ説明するね。」

 

 

「まずヘルメットに装着する予定のサイバネティックインタフェースなんだけど……」

 

 

サイバネティックインタフェース、これは簡単に言うと装着者の脳波パターンを識別してアーマー側が行動を起こすシステム群のこと。一応終着点はアイアンマンアーマーだったんだけど、お仕事として介護用のスーツみたいなのは色々作ってた。

 

それの試作品として作ってたシステムをそのままぶち込む形で何とか見れるものにはなったと思う。まだ私自身の脳波パターンの蓄積とかそれに合わせた行動選択とかの発展の余地はあるけど、基本的にイヴが何とかしてくれるから大丈夫。……ジャーヴィスみたいに真っ赤なおじさんにならない限りだけど。

 

あと内側に表示するディスプレイね、これもちゃんとヘルメットに搭載してます。

 

アイアンマンの映画で出てきたようなハイテクと同じ奴です、これはそんなに経験のない技術群だったので一から頑張りました。

 

 

「にしてもこれ目が悪くなりそう、前世メガネだったし。……あ、でも今は別に目悪くないか。」

 

 

『気にするところがそれなのですね……。』

 

 

お次はアーマー本体、と言ってもチタニウムと金の合金を分子配列マトリクスをいじることで強化して、とりあえず十層の構造にしたものを用意した感じですな。手や人間の可動部分に関してはそれまで作ってたマニピュレーターをそのまま置き換えた感じ。

 

思ったより大きくなったけど……、まぁ2m行ってないし大丈夫だろ。ちなみにこのマニピュレーターだけど現時点のトニーよりは進んでまっせ! だって遠隔操作できるし、動きもとってもなめらか! こういった人間の動きに合わせる技術はお仕事のおかげで経験積めましたからね!

 

……まぁ数年で追いつかれて追い越されるんですけど。というか今これをトニーに見せたらすぐに同じレベルの作って改良点を投げつけた後にさらに凄いの作られそう。やっぱすげぇや!

 

 

「ここまでは順調、ここからが難航エリア。」

 

 

一番困ってるのはさっき私がわーきゃー言ってたリアクターなんだけど、もう何個か問題があるわけです。それはずばり武器関係。リパルサーじゃなくてミサイルとかフレアとかそういうのね。作中のトニーが肩とか腕から出してたやつ。

 

トニーがいるのはアメリカだし、それ以前に彼は武器を製作して売る大企業のトップ。作中では後々問題になってたけど今の段階ではお国もそこまで口出しできてない訳です。

 

でも私は社長と言っても介護系のスーツだったり、補助系のスーツを作って売る会社の社長だし、規模もそんなに大きくない。私も首つっこませてもらってる人工衛星の開発は親のお仕事でとっても重要でいい仕事ではあるんですけどね……。

 

 

「町工場の一人娘と兵器製造の社長。しかも大企業を比べちゃうと、ね。」

 

 

武器っぽいの作ってるのが見つかったら最悪というか、絶対にお縄である。まぁスターク社製のクラスターミサイル“ジェリコ”にも使用されたエネルギーを空中に発射する機器であるリパルサーはほぼ兵器なのでもう見つかったら捕まりそうだが。なおリパルサーは特許申請と基礎部分の設計が普通に出てたので再現は簡単でした、まる。

 

そんなわけで今までというか、今現在も手が出しにくい兵器開発。そも私にそのノウハウが全くない。

 

 

「一応飛行用としてリパルサーの製作は出来たんだけど、これを人に向かって打った場合どれぐらいの出力にしたらいいのかわからぬ、と言っても実験するわけにもいかんし……。」

 

 

チタウリとかが相手の場合出力最大でぶっぱなせばいいので考える必要もないけど、今後絶対人に向けて撃つ機会はやってくると思う。それまでに非殺傷の武器が必要かもしれない。

 

 

「……とりあえずイヴ。リパルサー関連の計算お願い。対象は人体で相手の意識を刈り取る場合どの出力がいいのかで。あ、安全重視ね。」

 

 

『かしこまりました、関連するデータを所有していないのであるところから持って来る形になりますがよろしいですか?』

 

 

「足はつかないようにね?」

 

 

『心得ております。』

 

 

「ん~、正直リアクターは推し様が何かしらの論文を発表してくれるまで待つことにしますか。……いや普通発表しないか? まぁ何かしら思いつくまで未定で。私はその間に情報収集のために準備しましょうか!」

 

 

ということで用意しますはこちらのスパコンとそのほかもろもろ、ちょっと今後のことを考えるとイヴちゃんの性能をアップしとかないとマズそうなのでね。

 

 

『私の性能をですか?』

 

 

「そうだよ~。」

 

 

やるのがちょっと遅いかもしれないけど、目的としては私が持っている技術を守ること。普通にリアクターとかアーマーとかの情報が盛りだくさんなのでこれがヒドラとかのヤバいところにすっぱ抜かれたら私のせいで地球がオワオワリしてしまう。

 

ので防御を固めるためにウチのジャーヴィスことイヴに頑張ってもらうわけです。一応今のスペックで国が用意した壁くらいなら割れるんだけどね。他にもしてほしいことがあるから強化するわけです。

 

 

『他にもしてほしいこと、とは?』

 

 

「日本全国の監視+アーマーの制御、かな?」

 

 

MCUという世界の法則、というか映画の法則だけどヒーロー側が何かの力を持った時はそれと同じかそれ以上の力をもつヴィランが現れる。それがお約束。いまニュースで話題になってる紛争地域でリパルサーぶっぱして戦争を解決しているアイアンマンにもアイアン・モンガーという敵がいた。

 

そして今私が力を持とうとしている、この世界における私の立ち位置がどうなのか全くわからないけど、『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(まぁ最後はキャップが冷凍睡眠からおはようするだけだけど)この5つ分の映画の中に新しく6つ目の私を主軸とした映画が追加されていて、私が何かと戦うストーリーが出てくるかもしれない。

 

 

「どっかでカメオ出演とかしてアベンジャーズで参上、その後のフェーズで出番があるのかもしれんけど。」

 

 

なので基本的にこの日本から出る気がない(実家暮らしですし大学生ですから、お仕事もあるしね)私の戦場になりそうなのが日本。なので日本全国に目を光らせる必要があったんですねぇ。

 

 

「ま、そんな感じで色々やっていくことにしますかね。失敗したり間違った時はその時で。ガバはオリチャー発動して何とかするのが走者ですしお寿司。とにかく今は動力源の問題をどうにかしませんと……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも私がメインの映画が出るとすると相手は誰になるんだ?」

 

 

マーベルの日本ヴィランキャラって言ったら、悪名高い『ザ・ハンド』なんだけどアイツら相手にするならかなり準備進めないとまずい。

 

 

「あとはなんだ? ビッグ・ヒーロー6か? でも前世の映画じゃ出てこなかったし望み薄か。日本を一人で守らないといけないとかちにそ。」

 

 

 

 

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