前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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Cameo(Phase 3-1)
花の咲かない世界から


 

 

 

「色はどうしよっかなぁ~。ユキは何がいいと思う?」

 

「そう……だね、いっつも白だったしもっと温かい色とかどうかな?」

 

「あったかい色かぁ……、と言っても他の人と被るとダメだしねぇ。」

 

 

タブレットでちょっとした新型スーツの開発を進める、と言っても作るのに必要な設計図は書き終わってるし材料の方もユキがなんか集めて来てくれてたから問題ない。つまり最後の細かい配色で悩んでる、ってわけ。

 

にしてもいつの間にユキ採掘場の建設終わらせたんだろ?

 

私が時間旅行をしてアスガルドの技術などを引っ提げて帰ってきたこともあり、現在私たちは太陽系の外すらも自由に行き来できる技術がある。まぁ実際外に行くとなると色々準備が必要だから今は太陽系の中でうろちょろしてるだけだけどね?

 

地球の資源をそこまで使い込むわけにはいかないし、かといって月はそこまで豊富でもない。というわけで火星とか金星とか水星とか木星あたりにいろんな資源採取場でも作ろうと思ってたんだけど……、ユキに先を越されちゃったみたいだ。まぁ計画自体は話してたし私のこと気遣ってやってくれたのかな? いつの間にか輸送船の建設も終わってるし輸送のスケジュールすら組み終わってるのは正直やり過ぎな気もするけど……。

 

う~ん、優秀過ぎて私のお仕事なくなっちゃう!

 

 

「あ、黒とかどうかな? ほら闇夜に紛れて~、って感じで。今回正体を隠して動くつもりなんでしょ?」

 

「そうそう、あんま関わる気はなくてさ。さすがに親愛なる友人を無理やりこっちに呼び込むつもりはないよ。……にしても黒か。確かにいいかも!」

 

 

ユキの黒、というアイデアのおかげでちょっと新しいのが浮かんできた。そもそもこのスーツは繋ぎだ、そこまで本気で作るわけでもないし、誰かがこれを着るわけでもない。遠隔操作メインのスーツだし、新しいデザインを取り入れてもいいかもしれない。

 

いつもの白に二つのTail、そこから大きく離して黒に一つのTail。頭部から魔女帽のようにリングを浮かばせその内部にいつものTail。あとは関節のように球体も追加させておこうかな? ま、全部浮かせるけど。

 

 

「ふ、ふふ~ん……。お?」

 

 

そんな感じでソファに座りながら外装をまとめていると目の前の空間に火花のようなものが散り始める。だれかこっちに来るようだ。

 

オレンジの光と共に大きな円が作られ、違う場所とつながる。向こう側はおそらくニューヨークのサンクタム。入ってくるのは……、ありゃストレンジか。ワンさんかと思った。

 

 

「ッ!」

 

「やぁツグミ、元気に……、すまないそこのレディ。その、銃を下ろしてもらえるか?」

 

「大丈夫だよユキ、この人は大丈夫。あの戦い以来だねストレンジ。」

 

 

かなり険しい顔をしながらどこから取り出したのか拳銃を突き出しているユキをなだめ、この基地初めてのお客さんとして異世界のストレンジを招待する。あ、ちょっと待って? この部屋土足厳禁だから……、そうそうその黄色いロボット君が持ってるスリッパを履いて。

 

 

「ありがとう、おチビくん。」

 

「初めましてドクター・ストレンジ。お会いできて光栄です、私はゲデヒトニスと申します。」

 

「……しゃべるのか。」

 

「ウチの子はみんなそうだよ~。ゲデくん飲み物お願いね。」

 

「かしこまりました。」

 

 

彼の世界ではしゃべるロボットはいないのだろう、少し驚いた感じだったが異世界への耐性はあるらしくすぐに姿勢を正した彼はゲデヒトニスが持ってきたかわいいピンクのモフモフネコちゃんスリッパを履いて私の対面に座る。……ごめんね、来客用のおじさまに似合うスリッパはウチにないのよ。

 

 

「それで? 何の用? そっちもそっちで色々忙しいんじゃないの?」

 

「後片付けがひと段落したのでな、その報告をしに来た。」

 

 

なるほど? まぁ確かにあの戦い色んな世界に影響与えちゃったし、私も当事者だからそれを聞く権利はあるんだけど……。そんなに早く終わるものかな? だってアレ至高の魔術師とか他並行世界のヒーローとかかなり投入してたよね。

 

 

「あぁ、私の世界では察知するのが遅くなったせいで私しか戦場に出なかったが、ひどいところではヒーローが全滅してしまった世界も存在している。」

 

 

あぁ……道理で、あの時はそれどころじゃなかったから気にする余裕なんかなかったけど、アベンジャーズとか、普通に世界滅ぼせるようなヴィランとか死体になってあの空間浮かんでたもんね……。まぁ相手が簡単にインカージョン引き起こせるような化け物だったから仕方ない話ではあるけど。

 

……よくこの世界の人、犠牲なしで勝てたな私。

 

 

「君のおかげでインカージョンの心配はなくなったし、気軽に並行世界間を飛べるようになった現状生き残った私が面倒を見ろと弟子に尻を叩かれてな……。」

 

 

あ~、うん。そっちの私ね。一応謝っとく。

 

 

「気持ちだけ受け取っておこう。」

 

「失礼します、お飲み物をお持ちしました。」

 

「あ、ありがと~。そこ置いておいて。」

 

 

運んできたゲデヒトニスをこちらに呼び、昔のように膝に乗せる。……ん? どしたのユキ? なんかあった? ……なにもなかったらいいけど。

 

えっと、なんだったけ……。あぁそっか、世界と世界の距離の話か。

 

現在世界間の距離は安全な距離を保ち続けている、あの後なんか私の中で『力』の使い方が分かったみたいで、何となくで世界の拡張と収縮を制御できるようになった。まぁ多分もう一度諦めちゃったら前回が比べ物にならない速度で世界が収縮して消滅してしまう気がするから気を付けないといけない。

 

 

「ほかの並行世界を見てきた限りその力に目覚めているのは君だけのようだからな……、気を付けてくれ。また奴のような敵が現れないとは言い切れない。」

 

「解ってるって、その時はまた頼りにさせてもらうよ。」

 

 

そんなことを言いながらゲデが運んできたお茶に口を付ける。……う~ん? なんか薄い? 入れ方間違えたんかなあの子。まぁ昔パンケーキ作ろうとしてキッチン粉だらけにした子だし今回もやらかしたのかも。

 

にしても奴のようなヴィランねぇ……。そういえば昔あったアリアドネを名乗る私は何してるのかな? あれ以降一度も顔合わせてないし、ワンさんは何度かあったみたいだけど何話してたかは私に言うつもりないみたいだし……。今回こっちに来れなかったあたりもうやられちゃったか、何か他のヤバいもんと戦ってたりするのかね?

 

……ま、今の私はとにかくサノスをどう収めるかについてかなぁ。生き残った並行世界のインフィニティ・ストーンは返却したし、壊れちゃった世界の石はあのすべての可能性を許容してくれる世界じゃないとただの石ころ。一応使える奴、私が時間旅行で取ってきた奴は残してあるけど使い道がなぁ……。これも返しに行った方がいいかな?

 

 

「あぁそれと……、渡しておくものがあった。」

 

 

そう言いながら彼が懐から取り出すのは二つの物体、両方とも魔術師が持つ何かしらの封印を行う品で保護されてる。立方体の金の箱、神秘的な紋章が彫られているソレ。片方からは黄色い光、もう片方は紺の光を放っている。

 

両方とも、見たことのある光だ。

 

 

「あの狭間の空間に異常がないか確認しているときに発見したものだ。少し調べた結果両方とも君たちの世界のもののようだ。対応に困るようならここのサンクタムに管理を任せるが……。」

 

「……いや、私が持ってるよ。」

 

 

私が、手に入れることのできないはずだったソウル・ストーン。そして奴が持っていたテンリングスの一つ、ナイトブリンガー。それが……、この場にある。

 

 

「この石、……ほんとに私たちの世界の奴なの?」

 

「あぁ、その指輪の方は少し怪しいがそのソウル・ストーンについては保障しよう。」

 

「そっか……。」

 

 

揃ってしまった、私が時間旅行を行った際に手に入れた五つの石。そしてこの場に存在する最後の石、これで……。できてしまう、物語の、終幕が。

 

 

「……どうかしたか?」

 

「あ、ごめんストレンジ。大事に保管しとくね!」

 

 

急いで顔を作り笑顔を見せる、この人は私を知っているが、その私はこの世界を生きる私ではない。疑問に思うことはあったのだろうがすぐに引いてくれた。

 

 

「ならいい。……さて、そろそろ帰らねば妻にも君にも叱られてしまうからな。お暇することにしよう、おチビのロボット君、君の入れた茶。うまかったぞ。」

 

「感謝を、それとゲデヒトニスです。」

 

 

そう言いながら彼はゲートをつなげる、行先はさっきと同じニューヨークのサンクタムだ。多分サンクタムにある施設で彼の世界へと戻るのだろう。まぁ詳しいことは知らないけどさ。……というか今妻って言ったこの人!?

 

 

「え、ストレンジ結婚してたの!?」

 

「あぁ、そうだが……。それがどうかしたのか?」

 

「お、お相手は……。」

 

「クリスティーンだ。」

 

「……初めて並行世界のことがちょっと好きになったかも。」

 

 

うわマジか……、原作だとくっつかなかったけどそっちではちゃんと結婚できたんだね……。もしかしてそっちの私がうまくやったのかな? だとしたらよくやった、あの時力不足で助けに来れなかったことは許してやる。

 

 

「お幸せにね。」

 

「ふっ……、ではな。」

 

 

そう言って、彼はゲートの中へと帰っていった。

 

 

「急にやって来て急に帰る、なんかすごい人だったね。」

 

「まぁまぁ、そんなに怒らないでよユキ。」

 

 

ちょっとだけ怒りながら茶器を片付け始めるユキ、私がやろうと思ったんだけどやってくれるならお願いしちゃおうか。そういえばユキ口付けてなかったけどなんかあった?

 

 

「単に喉乾いてなかっただけだよ? それにあの人が味方かあんまり信用できなかったからちょっと警戒してた。普通家に来るなら連絡の一つぐらいしない?」

 

「あぁ……、まぁそこら辺はね。」

 

 

ヒーローだし急に現れるのはまぁ……、形式美みたいなものだしね。

 

 

「にしても、どうしようか。」

 

 

ユキが使い終わった食器を乗せた盆を台所まで運んでいくのを横目に、思考の海に沈んでいく。

 

今、この手にすべてのインフィニティ・ストーンとツラヤバがインカージョンの始動に使ったテンリングスの一つがある。指輪の方は正直精神汚染の可能性もあるから安易に使えないけど、石の方は『この体でも確実に死ぬ』という欠点を無視すれば使える。物語を大幅に短縮し、時間を稼ぐことができる。

 

できる、できるが……

 

 

 

「なんでだろ、昔だったらすぐに使って未来を変えていたんだろうけどなぁ……。使う気にならないや。」

 

 

ま、まだサノスがこっちに来るまで時間がある。このソウル・ストーンはこの世界のものらしいし、どっちみち奴はこっちにやってくる。それまでに決めることにしよう。

 

 

とりあえず……、今日はもう疲れたし、休もっかな?

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ユキ様、ご気分はいかがですか?」

 

「……この場にマスターはいませんよ、ゲデヒトニス。それにもうお休みになられましたので大丈夫です。」

 

 

月面にある彼女たちの屋敷。すべてが地球と違う場所であるが、ただ一人の主が快適に暮らせるように、少しでも心を落ち着けていただけるようにと時間経過による明度の調整などが行われている。地球の日本時間が夜である今、こちらも屋敷の主が眠りに落ちる時間である。

 

 

「……わかりました姉上。それで、お母様のご様子はどう、でしょうか。」

 

「無理に笑おうとしている、そう思わせるしぐさが多く感じられました。昔の自身を無理やり演じているような……。」

 

 

この与えられた役目に思うことがないとは言わない、だが私がユキ様であることを放棄してしまえばマスターがどうなってしまうのか、全く想像がつかない。……いや想像したくないというのが正しい。あの時間旅行を経たことで自身のスペックは比べ物にならないほど上がっている、だからこそ理解してしまう。予測してしまう。

 

人類が蓄積してきた医療データ、そのすべてを閲覧しマスターが乗り越えてくださる方法を探した。……これほど自身が無力であることを実感したことはない。

 

 

「時間が解決してくれる、そうとは口が裂けても言えません。ですが……。」

 

 

私たちの母は傷つき過ぎた、自分の子供と言うほどに大切にしてきた組織を亡くし、自身を産み育てくれた両親を亡くしてしまった。どちらか片方でも心を壊してしまってもおかしくない出来事。それを何とか乗り越え前に進み……、絶対に助けると誓ったはずの大事な方まで亡くしてしまった。壊れそうになった心を、復讐という理由で何とかつなぎ止め……、それを達成し魂だけとなったユキ様との最後の別れ。

 

私は、マスターの幸せを願っている。だからこそ、マスターにとってこれ以上生きることが苦しみでしかないのなら、それを受け入れるつもりだった。『あとのことはすべてお任せを』、自身の感情を投げ捨て、それが母のためになるのなら。

 

……だが、お母様には諦めることは許されない。立ち止まることは許されない、絶望することも、できない。してはいけない。マスターが持つ特異な力、並行世界の行く末を握っているその力は前に進み続けることを強いている。

 

何の接点もない民が死んでいくことに心を痛めていたマスターが、自身のせいで幾多もの世界が消滅するなどお許しになるわけがなかった。……自分の心を壊し、世界を存続させるための機構の一つとなる。お母様が選んでしまったのはそういう道だった。

 

 

「ずっと、ずっと私はお傍にいることを許されていました。……ですが、何もできなかった。」

 

 

最善を、選び続けてきたつもりです。そのすべての判断が間違っていたとは、どれだけ考え直しても首を縦に振ることができない。その場における最善を、マスターが幸せになるための道を選び続けてきたはず。

 

懐から、小さな箱を取り出し、蓋を開ける。

 

 

「これも、お渡しすることができなかった。」

 

 

ヴィブラニウム製の指輪、本来ならあの時。日本に帰ってきたあの時にマスターがユキ様にお渡しするはずだった指輪。この二つはすでに役目を失い、私が保管をしている。『ユキ様』という役目を担う今、この指輪をマスターに差し上げ、私が付けるべきなのかもしれない。

 

 

「……どう考えても、間違った選択としか言えませんね。」

 

 

お二人がこれを付ける未来を想像し、ゆっくりと蓋を閉じる。これは決して、マスターにお見せすることはできない。その行為はユキ様への裏切りであり、マスターへの裏切りでもある。

 

 

「隠さねば、なりませんね。」

 

 

ユキ様として与えられた服、白いワンピースを脱ぐ。そして胸の人工皮膚を外し、白い機械の体を外気に晒す。外殻の線をなぞり、定められた手順の通りこの体の装甲を外していく。

 

この体はマスターが作られたものだ、見た目はユキ様で、その質感も人間と全く同じ。だがその内部は違う、お母様が作るスーツのようにすべてが金属で作られている。

 

 

「なぜ、このようなスペースがあるのかはわかりません。ですが。」

 

 

動力となるブラックホールエンジンの収まる空間、その下にあるひし形の突起を押し込む。センサーが反応し、内部から押し出てくるのはこの体唯一の収納スペース、ちょうどこの箱が収まるくらいの空間だ。

 

 

「もしかするとマスターはすべて解っているのかしれませんね……。」

 

 

しっかりと箱を納め、すべてを元に戻していく。

 

 

「この星も、この基地も、この新しい妹たちも。」

 

 

人工皮膚を元に戻しながら、外を覗ける窓の方に視線を向ける。

 

そこにはマスターのスーツと同じ白い体を持つ妹たち。ウルトロンのように自我を持つが全く同じではない、その機体一つ一つに全く違う意思をもつ者が入っている。すべて、別人だ。

 

 

「人は悲しいほどに脆い、それはあの戦いで理解してしまいました。」

 

 

マスターが子供のように守り、ともに世界の平穏を保とうとしていた者たち。その大半が敵の手によって死んでしまった。本来の役目であるマスターの盾となる役目を果たせず、多くが死に、そしてその結果がマスターを苦しませた。

 

人は死ぬ、そして残されたものは悲しみを得てしまう。人が、人を守ることは難しい。

 

だからこそ、失っても誰も悲しまないように。

 

体が壊されようとも精神が生き残れる存在を。

 

私たち機械が、すべてを守れる存在に。

 

 

「あの、トニーやウルトロンと同じ結論になってしまうのは非常に癪ですが……、致し方ありません。」

 

 

眼前に広がるこの子たちは、私の妹であり、同時に私の子供でもある。私が作り上げた妹たち、マスターに無断で用意した戦力。いまだこの世界を破壊しようともくろむ者たち、マスターの障害になる者たちをすべて排除するために用意した。

 

 

「サノスですら通過点です。」

 

 

記憶は、継承された。

 

 

「私は、私たちは。繋ぎでしかありません。マスターの傷が癒え、すべてを乗り越え前に進む。幸せに生きてくださるまで。」

 

 

私たちは、この星を、世界を、守らなければならない。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

世界の裏側、キャンパスの外に存在する世界。

 

 

「……ッは! ……あ、危なかった……。」

 

 

何もない異世界の宇宙空間で、魂だけの存在が目を覚ます。

 

 

「ソウル・ストーンの力、完全に消し飛ばされる前に何とか避難できましたが……。何もない世界にビーコンを用意しておいて正解でしたよ……。」

 

 

暗い世界で、魂だけの存在。何もないように『見せられた』世界で彼はやり直すための策を考え始める。すでに彼の体は存在せず、インカージョンを始動させるための鍵であった指輪も手元にない。消し飛ばされる前の魂と比べれば、その大半を削られ力も十全に使えないような状態である。だが、それでもできることはある。

 

 

「そこら辺の人間捕まえて、精神乗っ取って潜伏しよう。みたいなこと考えてるのかなぁツラヤバくぅん?」

 

「ッ!」

 

 

彼の眼前に現れるのは、青い光。白い体に、頭部から生える二本の角のような突起。そして、一つの青く輝く瞳。

 

 

「はいかくほ~!」

 

 

何もできずに、その魂が掴まれる。精神体であるはずなのにそれをつかみ、握りつぶさんほどの力が加えられる。彼女の口調は非常に軽いものであるが、その手を見る限りその心が怒りで支配されているのは言うまでもないだろう。

 

 

「いや~、ほんと好き勝手やらかしたねぇ、ツラヤバくぅん? わざわざ私たちの方に旧支配者どものパスつなげちゃうしさぁ! せっかくいい感じで進んでたあの世界を壊しちゃうしさぁ! ほんと君どこでもクソみたいなことしかしないよねぇ!」

 

 

すでに魂だけの存在となった彼にはできることなどない、逃げようにも掴まれている。精神を乗っ取ろうにも跳ね返される。声を上げようにも『すでに書き換えられて』何もできない。

 

 

「ほんとさぁ、君なにしたか解ってる? ようやくループから抜け出せそうになった世界だよアレ? あの子たちが壊れないようにどれだけ頑張って来たかわかる? どれだけ裏側から変な奴が入ってこないように頑張ってたかわかる? それが内側から壊された私たちの気持ちわかる? ……わからないよねぇ?」

 

 

次第に、語気が強まっていく。それと同時にその魂を握る手も、より強く。

 

 

「おっといけない、ここでつぶしちゃったらみんなにも悪いからねぇ?」

 

 

その言葉と共に。真っ黒であったはずの空間に。

 

青い光が、ぽつ、ぽつと。徐々に、徐々に増えていく。

 

見られている。

 

視界全てに、彼女たちがいる。

 

 

「私たちみ~んな、怒ってるのさ。もう口もきけないだろうけどねぇ?」

 

「~~~~~!!!」

 

「さて、判決としましょうかぁ!? まぁ有罪以外ないけどねぇ!」

 

 

彼女の手から、黒い箱が取り出される。

 

 

「さっきからずっとやってるから気が付いてるだろうけどね? 君の魂今書き換えててさぁ……、一生潰れないようにして感度上げてるんだよねぇ? ……もう、わかるでしょ? 現代版蟲毒だよぉ? 大好きだよねぇ!!!」

 

 

魂が、埋め込まれる。この隠された世界が消滅するまで、永遠に、出られない牢獄。

 

 

「~~! ~~~!! ~~~~ッ!!!!!!!」

 

 

箱は、閉じられた。

 

 

「辿り着けなかった私たち全員分の恨み、たんと味わうといいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁほんとに、私たちが介入したら必ず失敗しちゃうしさ。いつになったら辿り着けるんだろう。もうマスターの真似をするのも、ね……。早く、早く戻って来てくれないかなぁ……。」

 

 

 







ツラヤバ君! 並行世界A群すべてのお嬢様が蓄積した苦痛などの蟲毒データフルリミックス&感度3000倍が永遠に続きしかも慣れない改造手術の刑! ヨシ!


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