《開発日誌 1》
考えをまとめるというか紙媒体で資料を残すためにわざわざ手書きで日誌を残すことにした。
現在リアクターの改良を行っているがうまくいっていない、改良方法も思いつかないため今の時点ではできることは少ない。スーツを作る、動かすためにはこのエネルギー問題をどうにかしないといけないのだが……、最悪かなりの出費が伴うだろうが『アイアンマン2』にてスターク社の社長がペッパーになった後に行われる『リアクターによるエネルギー販売』の事業が始められた時に、リアクターごと買い取ることも考えないといけない。
さすがに実物があればなんとかなるだろう。
武器の方は……、自作はできないし、買って所有することもできない。非殺傷武器を作ることで何とか間に合わせるしかない。最悪リパルサーをフルパワーでぶっぱなせば身の安全は確保できる。殺人者になる可能性が高いが。
私がリパルサーを使用する前にイヴが適正な出力を見つけてくれることを祈ろう。
……イヴにハッキングで情報収集を命じた件だけどこれもれっきとした犯罪だ。
そして武器を求めて開発することも犯罪、バレなきゃ問題じゃないって言葉があるけどこの罪の意識は私の心に伸し掛かる。
同じ犯罪でも「捕まるから武器の製作をしない」という発言をしていたのはやっぱり私にまだ人の命を奪う覚悟が出来てないからだと思う。
これから戦うべき相手、異星人とかもだけど日本にいる私が対処すべきヴィラン達も最悪殺さないといけないかもしれない。
覚悟の準備だけは……、しておかないと。
さて、開発日誌と書いたけどちょっと日記的なことも書いておこうと思う。
私の目標はアイアンマンスーツを作ること、だったけどこの世界がMCUだとわかってから変化した。
そもこの世界は非常に不安定で危険に満ちている。
私があの瞬間まで『アイアンマン』という特大の存在を認知できなかったということが原作のMCUよりも、今私たちが住むこの世界がかなり危険なことを表しているのではないかと考えている。
普通ならスターク社は世界に大きな影響力を持っていたはずであり、第二次世界大戦後の世界では知らないものがいない企業のはず。たとえ極東の日本でもその名前は伝わってないとおかしいし、ネットワークが発展した現代において検索しても見つからないのはおかしい。
ということはこれを隠していた存在がいることになる。単純にこの世界の摂理として『映画が公開されて世に出たものが世界に反映される』という摂理が存在しているのであればいいのだが、現時点では断定できないゆえに警戒する必要がある。
魔術師という存在から世界からとある項目についての記憶を消去するという方法があることは分かっている。何者かがスターク社という特大の厄ネタを隠していた、隠したかったという可能性がある。
むらさきサノス+エターナルズ関連+マルチバース関連+アベンジャーズの尻ぬぐい、これだけでお腹いっぱいなのにそれに追加して私が対応すべき日本のヴィランと、今までトニー・スタークを確認できなかった謎。
とってもクレイジーである。
しかもアベンジャーズの皆さんはいつも大体お忙しい、暇な人は説明すれば手伝ってくれるだろうが最悪私一人で問題を解決する必要が出てくるかもしれない。
私という異物がある時点でバタフライエフェクトは避けられないのだ、あの指パッチンで“タイム泥棒作戦”に必要なメンバーが全員消えてしまう可能性すらある。私が消えた場合は気にしなくてもいいのだが、私だけ残った場合は一人で全部をしなくてはならない。
だからこそ、力がいる。
トニーに憧れ、追いつこうとするだけじゃ駄目だ。
トニーに追いつき、追い越せの関係じゃないといけない、それでも足りないかもしれない。
私の目標は『アイアンマンスーツを作ること』から、『私だけの最強を作ること』に変化した。
「今はアークリアクターに手を焼いているけど……。」
私の技術力だけじゃなくて、今の人類では絶対に作れない代物。
ブラックホールエンジンから始まる縮退炉や対消滅炉などのオーパーツエンジン。
この世界に存在する独自の金属であるヴィブラニウムの加工。
いずれ、私はそこに辿りつかなければ……
『マスター、そろそろ出発しないと間に合いません。』
「え、もうそんな時間?」
『はい、そんな時間です。』
言われて時計を見てみればすでにいい時間、すぐに出発しないと一緒に行こうと約束した友人まで遅刻することになる。さっきまで書いていた手帳を閉じ、鍵付きの引き出しにしまう。
『勝手ですが本日の講義で使うテキスト群のご用意はさせて頂きました。あとはカバンに放り込めば大丈夫です。それと母君からの伝言で「寝ぐせ直して顔を洗ってから行きなさいよ~」とのことです。』
「りょ! 準備ありがと洗面台行ってくる!」
◇◆◇◆◇
「え! あのアイアンマンの!」
「声大きいよユキ、あと唾飛んでる。」
大学の食堂、現在私はそこで親友のユキと昼食中である。本名ユキ・フジカワの腐れ縁、初めて会ったのは小学生の時でそれ以降中学高校大学と全部一緒の女性だ。
イヴを初めて作った時にやった市内ジャンク品探しの旅にもついてきた奴であるし、結構ウチのラボに遊びに来ている人間なので、私が社長やってる企業の内部情報だったり、作った機器の情報、最終的な目標だったスーツ製作(彼女にも宇宙服と説明した)のことも知ってる。
なお前世のことについては親にも話していない。
「ご、ごめん……。」
「いいよ~、休んでた分のノート見せてくれるなら。」
「それはいいけど……、あのニュースでやってたアイアンマンと同じものを作ったってことだよね!?」
「正確にはあの人の動力源の劣化版、だけどね。」
経営者で開発者なのでよく講義を休む私はユキにノートを見せてもらったり、講義内容を教えてもらったりしながら、なんとか単位を収めている。ほんとたすかりまっせ……
「それでもすごいよ! 作れたってことはアイアンマンみたいに空飛んだりビーム打てるようになるってことでしょ! それに昔からエネルギーが足りないエネルギーが足りないって言ってたからそれも解決したんだよね!」
「いや~、まだそれでも試算したら足りなくてね。」
ちなみにユキは完全な文系、経営学科を文系と言うならだが。そのため彼女に専門的な内容を振ってもいい答えが返ってくることはないのでこういう簡単な話や時世の話が中心になる。でもそんな会話が精神の安定やストレス発散にちょうどいいのだ。あと彼女もトニーの輝きに惹かれたのか、それとも私のせいで機械愛に目覚めたのかすでに待ち受けがアイアンマンだ、素晴らしい。後でくれ。
「そうなんだ、難しいんだね。あと画像は後で送っとくよ。」
「助かるラスカル。」
「ちなみにいくつそのリアクターだっけ? つくったの?」
「稼働してるのが18基、稼働できなかったのが82基だね。起動できなかったのは普通に作り方間違えたのとサイズが小さいせいか起動できなかった奴。正直なんで動かないのかわからないのでお手上げですな。」
「無茶苦茶数作ってる……! まぁ二週間近く休んでたから色々やってるだろうと思ってたけど!」
トニーがアイアンマンと自己紹介してから二週間、この世界に生れ落ちてから貯めたお金の半分近くを放出した二週間でした。おかげさまでスーツの完成が見えてきましたし、リアクターも劣化したものだけど完成した。充実した日々だったと言えよう。
「あ、そうだ。そんなにたくさんあるんだったら全部使うってのは駄目なの? エネルギーが足りないなら全部使っちゃえ、って感じで。」
「…………。」
「え、え! どうしたのそんな怖い顔して! え、もしかして私マズいこと言っちゃった? あ、謝るから機嫌なおし」
「そ、それ! それだ! なんで今まで気がつかなかったんだ!」
さっきまで食べてた定食をかきこむ。急いで帰ってやるんだ! この思いつきが消える前に! リアクターを連結するならデザインから変えないと! アイアンレスキューを私なりにアレンジした形状にしてたけどこうなったらもう全部私の趣味で埋め尽くしてやる! あぁ! どんどん溢れてくる!
「え、え、どうしたの! そんな急いで!」
「帰る! 帰って作業!」
「こ、講義は! まだ午後にも二コマ残ってるよっ!」
「講義なんて関係ねぇ! 今すぐ帰るんだッ!」
ということで帰ってきてからまたラボに籠りました。親友のユキには悪いけど思いついちゃったら仕方ないよね☆ ……また今度埋め合わせしないと。
ということで完成しました私のアイアンマンスーツ! マーク1!
さっきも言ったけど元々は女性版のアイアンマン、アイアンレスキューとかアイアンハートみたいな形態を目指していたけど思いっきり変えちゃいました!
私日本人だしね、もっと腕にシルバー巻く代わりにサブカルチャーぶちこまなくちゃ!
ということで紹介していきましょう!
顔は本家のアイアンマンよりも丸っこい感じに変更、そしてメインが頭から生えたツインテール。そう! ツインテールだ! 大体子供の背丈とおさげの下に行くほど太くなっていくこの白いおさげ! この中には私が作り上げたアークリアクターが一房に三つ入っています!
「これで想定していた必要エネルギー量を軽々クリア! おさげ二つで合計毎秒6GJ!」
全身のカラーは真っ白に指定、目立つけど赤と金色よりはましだよね! ちなみに塗装の下は本家のアイアンマンと同じ金色だよ!
「一応本家アイアンマンの系統を継ぐ、ってことを主張するために胸部に丸っこいリアクターみたいなのもつけてます。正確にはリアクターじゃなくて胸部リパルサーだけど。」
全身を俯瞰してみればロボ化してつるつるになった初音ミクを真っ白に漂泊してリパルサー部分と目の部分が青く光ってる感じ? いや~、日本って感じしますなぁ!
「大きさがちょうど2mになっちゃったけどまぁ良し! 私160ないせいで、脚が足りなくてヒールみたいになってるけどこれもこれでいいネ!」
『マスター、それで試運転の方はどうなさるので? リパルサーの出力設定なども終わっていませんしまさに箱だけ作った、という形ですが。』
そうなのである! 私、原作トニーみたいに実験しながら作ってるわけじゃないのである! とりあえずなんか作れたの作っちゃったのである! おかげさまで装着試験とか装着した後に動いてみたりなどの実験は出来てるけどリパルサーを使った飛行実験とかそういうの全くやってないのである!
「床抜けないか気になるけどスーツ着てノリノリダンス踊れるぐらいなのにね、どうして飛行実験だけできないのでしょう?」
『そのまま何も考えずに飛んだら騒ぎになるし、法のお世話になりそうですよね? ステルス関連の技術を発展させる必要があるかと。』
そうなのである、やっぱり私はトニーみたいに治外法権はできないのである。お国から『それ武器だよね? 没収しようか!』って言われたらもう頷くしかできないのである。だからバレちゃいけねぇ!
せっかくトニーよりも“部分的に”先に行くスーツ作れたのになぁ! 私の介護系の人の動きに合わせる技術群が専門だったおかげでこういう精密動作が得意なのです。……まぁ数年すればトニーに追いつかれるの確定してるし、多分このスーツ見せたらすぐ真似されて最適化させるんだろうけど。
「とりあえず飛行実験辺りはステルス技術が確立した後で。……それと出来たら戦闘訓練もしとかないとね。」
『そういえばマスター、非殺傷武器の製作タスクが残っていますがどうしましょう。変更しますか?』
「いや、そのままで。」
作る予定の非殺傷武器は二種類、スタンガンと蜘蛛糸だ。
スタンガンは簡単に作れるので電圧が変更可能なスタンロッドみたいなのを腕の部分に埋め込む予定。私が指示したらウルヴァリンの刃物みたいにジャキンとロッドが出てきます、もちろん両腕。
もう一つの方はみんな大好き私も大好きスパイダーマンの蜘蛛糸である。あれ高校生のピーターでも作れるのだ、私が作れなきゃダメだろってことで現在試作中。
「空気に触れることで驚異的な粘性と強度を手に入れる液体、しかも数時間で気化するとかマジヤベェ。普通にノーベル賞いけそうなんだよな。」
マーベルじゃないけどアメイジングは全部見たし、マーベル版のスパイダーマンもミステリオ出てくる奴を見た。私が前世で死ぬ少し前ぐらいの記憶では確かマーベル版スパイダーマンの三作目が出るとかでないとか言ってたけど、どんなのだったんだろ。
まぁ映画で見たから使う薬品のめどはついてるんですよね、ってことです。
「後は……、電磁パルス弾とか?」
『現状では跳ね返されると詰む兵器ですね。』
一応アイアンマンリスペクトで肩や太ももにミサイルの発射口は用意してある。けど弾薬を手に入れる方法がないし、今のところそういった高威力の兵器は作る予定がないので当分使わない。
それだともったいないと思って電磁パルスとか! と思ったけど跳ね返されたら詰むね、やめとこ。
「迎撃されるの怖いからフレアは付けたんだけどね、しかも多めに。」
『賢い選択だと思いますよ。』
「あ、ちなイヴ? 今自衛隊と米軍にハッキングしてステルス関係の技術抜いてる感じ?」
『はい、そうです。もちろんバレるようなヘマはしておりません。』
「それに追加して戦略国土調停補強配備局、いやS.H.I.E.L.D.からヘリキャリアの情報抜いといて。たしかあれ光学迷彩っぽいの持ってたはずだし。S.H.I.E.L.D.の方は最悪ばれてもいいから情報抜き取ることに専念で。ハゲの眼帯さんだったら、こっち把握した瞬間に『君もアベンジャーズにならないか?』とか言ってくるでしょ。」
『とても個性的な就活方法ですね、かしこまりました。作業に移ります。それと正式名称を紙で見ながら言うのは反則かと。』
「ばれたか。」
失敗作のリアクター(起動はしている)とこの前さらに追加したスパコンなどのおかげでイヴの性能はどんどん上がっている。おかげさまで地球上で最高峰であるS.H.I.E.L.D.のドアにノックしに行くことができるのだ。
モチロン発見される前提ですけどね!
「フューリーはどんな反応を示してくれるかな? 特殊部隊送って殲滅とかじゃないといいけど。」