さて、残り一枚だけになっちゃった私のカレンダーの大半に予定が書き込まれたわけで。ややこしいお仕事はさっさと終わらせてしまいましょうか。
「よし、じゃあ“いつも通り”に。」
今イヴは急いで自分だけの体、ちっこい奴ね? それを作っているところ。色々終わったら真っ先に体作ってあげるって約束したけど、前々から私の膝に乗って目いっぱい撫でて欲しかったらしく真っ先に自分の体を作りに行った。まぁ彼女の妹たちの体を作るラインから色々引っ張ってくるんだろうね。
イヴの妹たちは数が数だし、アップデートも順次やらないといけないからそういった製造の過程は結構簡略化している。その根幹を成す精神については履歴を見る限り一つずつ丁寧に作ったみたいだけど体の方はちょっと手抜き。色々パーツとかを用意してあげて洋服のようにその子の趣味で選べるようにしている。
「どんなの選ぶかちょっと楽しみかな?」
さて、話を戻そう。
私がやらないといけない仕事は一つ。サノスを地球にいる皆のいい感じな経験値にすること、正直ちょっと前の無気力な私だったらどうなったかわからないけど今のすっきり思考の私なら普通に完封できる相手。故にやろうと思えば今すぐあの紫イモの首をチョンパ、することは普通にできる。
けどそうなると前も考えたけど今後に対応できなくなってくるわけで。うまい感じにサノスとみんなを戦わせて経験をさせてあげたいっての本音。
「となると変に動くのは失敗だったかな……、あの船の細工とかする前に船丸ごと消し飛ばした方がよかったか?」
証拠隠滅のために全部消す、リアリティあたりで現実を虚構にすり替えればエネルギーの検知もされない。変に私が介入すると奴が原作通りの動きをしなくなって予想が付けづらくなる。そう考えると私の初手は失敗だったかもしれない。
「……や、そもこの世界に私がいる時点で原作通り進む可能性は低くなる、か。参考程度にしておかないと。」
うん、私の存在はもちろんツラヤバのこともあったし私の手にソウル・ストーンがある時点でこの世界は私がスクリーン越しでみた世界とは違う。知識に頼りすぎるのは失敗に繋がる、ちゃんと分けて考えないと。
そうなると……、決戦の場所から考えるか。私たち地球側は個々の力が比較的突出してるけど数はそこまでない、その上守るべき民も多く存在している。対して相手は数がたくさんいる上に個々の力も結構ある、あの四足歩行の雑兵だって一つ選択を間違えれば結構な痛手を負ってしまうだろう。
決戦の場所の条件としては3つ、私たちが戦い以外の要因を気にしなくていい場所、敵味方含めてかなりの物量を投入できる場所、そしてサノスがのこのこ殺されに来てくれる場所だ。
「と、なると……。」
原作を参考にして考えると場所として挙げられそうなのは……、ワカンダか大阪くらいか。ワカンダは地球上で一番強固な防壁があって、それでいて兵力もかなりある。輸送の問題をそこまで考えなくてもいいし、平原という場所もあるから戦うにはちょうどいい感じかな?
あとは私の元ホームである大阪。地球に残った子たちが何を考えてるのかわからないけどなぜか地下に無茶苦茶建造物を建て始めた都市。地上にはあんまり興味がないみたいで二年前に起きた例の事件のまま残っている。つまり廃墟ってこと。地球からは完全に手を引いてるし、イヴも私の存在や居場所を知られるのを嫌がった。正確には私が他者との交流で壊れるのを嫌ったせいで彼女から地球への指示はほぼない。
となると生き残ったハイツレギスタやファイアボールの子たちがあそこに集まってるわけなんだけど……、ほんと地下で何してるんだろ? まぁ場所が場所だし廃墟だから周りに人はいない。戦場として使うのはちょっと憚られるけど候補としては残しておこう。
「う~ん、となるとやっぱワカンダかなぁ?」
うん、大阪を使うのはワカンダ側から断られた時。もしくはサノスが私の知らない動きをしたときだけにしよう。もし大阪をちゃんとした戦場にするなら色々本格的な用意が必要になるし、正直私はそこに残る彼らを置いて行ってしまったようなものだ。残った時間のどこかで必ず顔は出さないといけないだろうけど、時間がかかりそうなのは確か。サノス君がどう動くかわからないし、時間のかかりそうな選択肢は排除しよう。
あと今いる月みたいな宇宙空間で戦うって方法もあるけど、それしちゃうと戦える人の数が制限されちゃうからなしで。それに私宇宙での艦隊戦の経験とかないからどうなるかわからん。戦力とかはあるにはあるけど、不安要素も多いからナシってことで。
「よし、じゃあ久しぶりに地球に……。」
私の独り言を遮るようにアラームが鳴り響く。外宇宙からのワープ検知、誰かがこの星の来ようとしていることを伝える音だ。私の子供たちはすでに全部この基地へ帰らせている。そしてこの辺境の惑星に来るような観光客などいない。
となると、考えられるのは一つ。
「おいでませQシップ、ブラック・オーダー団体様のお成りってか?」
◇◆◇◆◇
身の毛のよだつような、そんな嫌な感覚が全身を包み込む。何が起こったのか解らず思わず服をめくり、自身の肌を見てしまう。
常人ではありえないほどに逆立つ毛、明らかに何か大変なことが起こってる。
誰にもバレないようにあたりを確認すると、今自身の乗るバスの窓から船が見える。単なる船じゃない、空に浮かぶバカでかい船。小さいときに見たあのチタウリの軍勢の比じゃない。もっと大きくて、それでいてヤバい船だ。
「ネッド、ネッド! 騒いで気を引いて!」
課外学習に向かうバスの中で音楽を聴いていた親友の彼の名を呼び、外を確認させる。僕はアベンジャーズじゃない、だけどこのどうしようもないほどの恐怖を前にして何もしないのは絶対に違う。僕は、二年前ニンジャたちが攻めてきたとき守れなかった。力はあったけど使いこなせずに、目の前で人が死んだ。全く顔も知らない人だったけど、それでもあの、僕に助けを求めていたあの顔は絶対に忘れられない。
行かないと、絶対に後悔する。
僕の顔と、窓から見えるあの宇宙船を見てネッドは全部解ってくれた。僕の方を向いて頷いた後に、声を張り上げてくれる。
「見ろ! 宇宙船だ! ヤバいぞ! 死んじゃう!」
急に立ち上がり、バスの後ろに移動する彼。ネッドが騒いでくれたおかげでみんなの視線が後ろに移った。これならいける。
鞄の中からスタークさんにもらったウェブ・シューターだけど取り出して両手に嵌める。あとは顔を隠すマスク。
マスクを被りながら窓を開け、そのまま外へ。
「スイングをしながらあの宇宙船の付近まで移動して、ちゃんとスーツを着ないと。」
サンクタムの外、アベンジャーズの二人と魔術師のいる場所の外から人々の悲鳴が聞こえる。そして何かの大きなものの振動。明らかに、事件だ。ちょうど四人が話していた内容は宇宙からやってくる脅威、サノス。頭の中で『もしかするともう奴が着てしまったのではないか。』という不安が浮き上がる。
まだ、何も準備が出来ていない。だが、ここで動かないという選択肢はない。
「フライデー、何事だ。」
『わかりません、調査中です。』
警戒しながら外へと飛び出すと、何かから逃げ惑う市民たち。車は渋滞を引き起こし、このままでは逃げられぬと判断した運転手たちがクラクションを鳴らしたり、飛び降りてそのまま逃げだしている。トニーは目の前で躓いて倒れてしまった女性を抱き起しながら自身のサポートAIに対して問いを投げかけるが、情報はない。
AIである彼女が何もわからないということは、この人々が逃げる対象は発生からそこまで時間がかかっていない、そして町中にある監視カメラが発見できないということ。つまり、町という地面を監視するカメラに映らぬ場所から、急に現れる対象。
考えたくはないが“奴ら”の可能性が高い。
「おい、その石っころ後ろのポケットにちゃんとしまっとけよ!」
「使うかもしれん。」
トニーの忠告に彼なりの返答をしながら胸の前で手を組み、魔法陣を発生させるストレンジ。その返しに思うところがないといえば嘘になるが、今はそれどころではない。トニーは曲がり角の建物に身を隠し、人々が逃げ惑う原因を確認する。
風、様々なものが吹き飛ばされている。旗、店の装飾、そして車までも。
その風の発生源は、上。
そこに存在しているのは巨大な円形の宇宙船。
建物の何倍も大きい巨大な物体が、そこに。
「フライデー! 43丁目から南を避難させろ! 当局にも通報だ!」
『了解です。』
ストレンジが魔法で風を起こし、巻き上がる砂煙を吹き飛ばし視界を確保する。
その行動を待っていたかのように、空に浮かぶ巨大な船から青い光が地面に向かって降りてくる。見えるのは二つの、人型。そこから現れるのは白い肌を持つ細身の男と人間の数倍もの大きさを誇る大男。細身の方の男が前で手を組んでおり、ハルクほどの巨体をもつ大男は肩に鎌のような武器を担いでいる。
白い方のエイリアンが、彼らにとって覆らない決定事項を声高々に宣言する。
「聞け! そして喜べ! お前たちはサノスの子によって死を迎えるのだ、感謝するがいい。意味のないお前たちの命が……」
「悪いけど地球は今日店じまいなんだ、さっさと荷物をまとめて帰るんだな。」
エイリアンの言葉、ブラックオーダーのエボニー・マウの発する不愉快な演説を無視し、トニーがそう発言する。その態度に対して若干の負の感情を抱いた彼であったが、何もなかったようにもう一人の男に問いかける。
「……ストーンを持つ者よ、そのうるさい動物は貴様の代弁者か?」
「まさか、私は自分で語る。……お前はこの星に不法侵入している。」
ストレンジが明確な拒否をあらわにしながら両手に魔法陣を展開させる。彼と同時にウォンも戦闘準備を完了させており、二人の息はあっている様子。
「さっさと失せろイカ野郎。」
「……うんざりだな、ストーンを奪え。」
ストーンの所持者からの拒否、そしてなんの力も持たないように見える眼鏡の男からの暴言。彼の脳内に存在していた『ストーンを渡すのであれば未開人としてふさわしい死を』という選択肢が消え、単なる処理へとシフトする。
彼の言葉によって隣にいた大男がその武器を地面におろす、その瞬間地面が揺れアスファルトが砕け散る。それだけで彼の持つ武器の強さと、その身に宿る力が非常に強大であることを理解させられてしまう。
ここにいるメンバーは一人を除き技術で戦う面々だ、魔術師は様々な力を行使することができるが人間という枠を超えていないため、力押しやその知覚能力を超える速度で動かれた場合対応ができない。それは様々な武装と技術で戦うアイアンマンも同じ、魔術師よりは多少戦えるだろうが相性は悪い。
相手が宇宙からやって来たということは、その身に纏う装備や武器が地球の知らないテクノロジーで作成されている可能性が高い。つまりストレンジにウォン、そしてトニーでは有効な手が打てるか怪しいということだ。
だが、彼らには余裕があった。
なんてったって地球最強のパワーファイターがここにいるのだから。
「バナー、やるか?」
「いや、……だが嫌だといってもやらなきゃならないんだろ?」
「そうだ。」
「……よしッ。」
事実を確認するかのような彼の問いに、若干の諦めを滲ませながら返答し気合を入れ直すバナー。彼自身あの明らかにパワータイプの敵と真っ向から勝負できるのは“彼”、ハルクしかいないことを理解している。
そんなことを考えながら全身に力を籠め“彼”を呼び出そうとするが……。何も起きない。
ただバナーが力む音があたりに響き、首のあたりが少しだけ緑になるだけ。
「久々だ、君がいてよかった。」
「静かに、こっちに集中させてくれ。どうした、ほら!」
トニーからの催促を無視し、もう一人の自身に声をかけるが何故か音沙汰なし。全く持って変身できない。さらに悪いことに相手も待ってくれるほどやさしくはないらしく、地面に叩きつけた武器で障害物となっていた車を破壊しながらゆっくりとこちらに歩み始めている。
「……おい、どうした!」
「……最近彼と折り合いが悪くて。」
「ぐずってる場合か、ほら敵は目の前だ。ほら、いけ!」
もう一度唸りながら彼を呼び出そうとするが全く持って進展がない、やはり首のあたりまでは緑になるがあのニューヨークの決戦で彼が見せた『いつも怒っている』のようなカッコいい変身は期待できそうもない。非常にまずい。
「おい僕に恥かかせるなよ。」
「だけど僕のせいなのか彼のせいなのかわからな「もういい、落ち着け。……そこの君、面倒見てやって。」」
変身できない焦りからか口調が安定せず慌ててしまうバナー、そんな彼の肩に手を置きながら落ち着かせ、隣にいた石を持たない魔術師。ウォンに戦えない彼の面倒を頼む。
「任された、さぁ博士。後ろに。」
「あ、あぁ……。」
「よし、残念だったな木偶の棒君、君じゃ彼の相手は務まらないようだ。仕方ないから僕が代わりに相手してやろう。」
そんな挑発を挟みながら、彼は自身が着ていた上着のコードを引き、体へと密着させる。挑発に乗った相手が鎌のような武器を片手に突撃を開始。距離は十数m、すぐに接近されてしまう距離。だが、問題はない。胸にあるリアクターに二度触れ、起動。
その瞬間、リアクターから展開されていく銀の光。彼の体にを包み込むように展開されていくそれは瞬時に形を形成し、硬度を持った鎧へと変化していく。ナノマシンが胸から腕へ、足へと伸びていくそれはやがて全身を包み込む。
「……ッ!」
こちらに向かって武器を振り上げながらやってくる巨体。それを受け止めるために右手にさらなるナノマシンを展開、瞬時に大きな盾が形成される。
その盾が完全な硬度を保つ前に振り下ろされてしまう敵の刃、しかしながら鉄の男にとって盾はブラフ。破壊される直前に形成しかけていたものをナノマシンによって分解。余剰を左腕の肘に送りブースターを形成する。そして、振り下ろされたことによってフリーとなる敵の顎に向かって。
「ほら、お返しだ。」
「ガッ!」
強化された拳によって姿勢を崩される大男、その隙を逃さぬようにさらなる一手を選ぶトニー。両手を前に突き出しリパルサーの強化ユニットを生成。さらに攻撃力をより増加させるために背面から四つの照射装置を展開させる。
「ビームキャノンは好きかい?」
瞬間、吐き出される極光。その力によって瞬く間に包み込まれ、吹き飛ばされる敵。敵の得意なことを一切させずに勝負を決める。これが完璧な戦法ってやつだ。
「それどっから出てきた!?」
「ナノテクだ、いいだろ? ちょっとした僕の」
バナーの問いに解説をしようとした瞬間に空高く飛ばされるトニー、その先には指を上に向かって振り上げた敵の姿が。どうやらあの小さい方のエイリアンは魔術に近いものを使うらしい。その証拠を見せるように町中に植えられていた木をその力によって浮き上がらせ、投擲を開始。次弾としてがれきや車なども投げようとしているあたりこの場所で玉切れの期待は出来なさそうだ。
高速で射出された質量から身を守る為にウォンが一歩前に踏み出し両手を大きく回転させる、その瞬間目の前に形成されるのはオレンジ色の光を放つ巨大な魔法陣。衝撃を緩和し受け流すのに特化した守りの魔術だ。
彼が守りに付いたのを確認したストレンジは両手にオレンジの光を纏わせながらバナー博士の方へと向き直る。
「バナー博士、緑色の彼が参戦しないのならっ。」
博士の足元にゲートを生成し、そのまま数ブロック離れた公園まで移動させる。相手が魔術のような力を扱い、あの大男がすぐにやられたとは考えずらい。この場に戦えない人間がいるのは危険だと判断し、同意を求めずに移動させた形になる。
地面から地面に落ちていくバナー、そこまで高さはなかったが急な出来事のためそのまま地面に倒れてしまう。そしてその直後に彼の目の前に落ちる車の残骸。ゲートが生み出した穴によって一緒に落ちて来てしまったのだろう。
「も、もうちょっとやさしく送ってくれないかな……。」
そうつぶやく博士をよそに、敵に向かい直る魔術師二人。背中を合わせながら敵から目を離さないそれは歴戦の様相を感じさせる。それに向かって放たれるのは車。乗用車サイズとはいえかなりの速度、直撃すればただ事では済まない。
二人が選択する魔術は円鋸、魔術で円を形成し、そのまま車に向かって投げようとしたところ。二人の間を縫うように飛翔するアイアンマンによって中止され、リパルサーによって車が吹き飛ばされる。
「ストレンジ! そのストーンどっかやってくれ!」
「手放すつもりはない。」
「だよな、じゃあ!」
敵が狙うタイム・ストーンを移動させる要請はすぐに却下される。ならばさらなる議論を重ねるよりも敵を打倒した方が早い。そう判断したトニーは次弾としてさらにがれきなどを投擲しようとするエボニーに向かって突撃を開始する。
遠距離タイプと戦うには距離を詰めるのが得策、相手もそれはまずいと考えたのかこの付近の建物を魔術で壊し、縄のようにして再構成。赤い鉄の男が自身へと近づかないように捕まえようとする。
それをよけながら前へと進み敵魔術師の前にたどり着くトニーであったが、予期せぬ位置からの攻撃。
壁を突き破り自身を叩きつけるのは蛇のような見た目の武具、体をつかむ顎のような鉄の塊とそこから伸びる長いチェーンのような機構。そして貫かれた建物の奥から見えるのは先ほど自身が吹き飛ばした敵の大男。その顔は先ほど吹き飛ばされたお返しだ、とでもいうように笑っている。
吹き飛ばされ、たどり着く場所はバナーが避難した広場。
「トニー! 無事か!? どんな状況だ!?」
「楽勝さ、それよりそっちは?」
「彼が出て来てくれない!」
そこに飛んでくる先ほどと同じ攻撃、狙いは……、自身ではなく横にいるバナー。
「あぶない!」
彼を抱え横へと非難させる、少し荒く手放すことで彼の中に潜む怒りんぼにストレスをかけて呼び出してもらおうと思ったが上手くいかなかったようだ。それに敵もすでにこのブロックまで来てしまっている。これ以上彼と問答をしている時間はない。
リパルサーでこちらに気を向かせようと攻撃をするが、あの蛇のような武器を手元に戻し盾へ。角度をつけて完全に弾かれてしまう。
どうやらいくつかの形に変更できる多角的な武器のようだ。単純な力押しをする場合は鎌、遠距離として蛇、防御として盾。こうなるとこれ以外にも何か形状があってもおかしくはない。
あの敵のマジシャンみたいな奴がどれほど強いのか正確にわからない。もしこっちのマジシャンよりも強くてすぐに石が奪われてしまうとなれば色々面倒なことになる。それに早々に区切りをつけてこっちにやって来た場合二対一になってしまう、それを避けるためにも早期決戦だ。
そう判断したトニーによって放たれる様々な兵器たち、そのすべてを盾で弾き、受け止めながらその合間合間に攻撃を合わせてくる大男。
そして、運が悪いことに反射されたレーザーがバナーの近くの木を切り倒し、彼の元へ倒れてくる。何とか直撃を避けることはできたが姿勢を崩してしまいそのまま地面を転がる博士。本来の彼、博士の中に眠るハルクであればこのような博士の体に危機が訪れたとき、博士がどれだけ否定したとしても勝手に出てくる。
しかし、それがない。
「どうしたハルク、どうしたんだよぉ!」
いつもとは違う“彼”の態度に怒り、そしてサノスを知っているからこそ、部下である彼らの力も理解している。友が戦っているのに自身は何もできない状況も合わさり、博士は焦り、冷静さを投げ捨て、叫ぶ。
「出て来い! 出て来い! 出て来い!」
未だ反応を示さない彼をなんとしてでも呼び出すために、全力で頬を叩きながら“彼”を呼ぶ。
しかし……
「嫌だァ!」
帰ってきたのは、拒否のみ。
「嫌だってどういうことだよ!」
普段の彼とは違う恐怖に飲まれたその否定の声に、バナーは叫ぶことしかできなかった。
◇◆◇◆◇
(これも、通じないか。一体どんな材質してるのやら!)
巨大な宇宙船から降りてきた二人の宇宙人、その大男の方の相手をしているがどうにも決定打が打てない。ビームキャノンで吹き飛ばせた以上こちらの攻撃を直撃させることができれば何とかなりそうな雰囲気はある。だが一度脅威となる攻撃を当ててしまったせいで相手に防御という選択肢を与えてしまった。
今もこいつの周りをくるくると回りながら目でも回してくれないかと思っているところだが全部攻撃が弾かれる、それにあっちの攻撃は結構なダメージ。これであのエイリアンたちの親玉ってわけじゃないんだからサノスってやつはどれほど強いのだろうか。
そうやって思考にパフォーマンスを割り過ぎたのがダメだったのだろう。攻撃の合間を縫われ、盾を変形し蛇へ。相手の攻撃が自身の腹に直撃する。
何とか直前に腹部にナノマシンを送って装甲を増やすことができたが、それでも吹き飛ばされてしまう。
地面に手を付き、倒れてしまう。目の前のディスプレイには敵の攻撃予測、あの鎌のような形状に戻し確実にこちらを殺しに来るというものが表示される。
(まずい!)
どうにかして状況を打開しようとするが、間に合わない。せめてダメージを少なくするためにナノマシンの強度を引き上げるが……、衝撃は来ない。
「やぁスタークさん。君もこんにちは! すごい腕だね! もしかしてステロイド?」
自身を叩き潰さんとする大男の攻撃を受け止めていたのは、赤いスーツの少年。ピーター・パーカーことスパイダーマンだった。しかも陽気に敵に向かって挨拶している。
「おい、どこから来た!」
「課外授業で、ってうあぁ~!」
答えようとした彼をつかみ、そのまま投げ飛ばす敵。どうやら自身の攻撃を受け止めた乱入者よりも目の前にいるアイアンマンを殺すことを優先したようだ。しかしながらその選択は、間違い。
わざわざ胴体をつかんで投げ飛ばせるぐらいの余裕と判断力があるならピーターに向かって攻撃した方が絶対にいいんだけどねぇ? まぁ確かに自分を殺せる力を持つ鉄男と急に現れたよくわからない相手のどっちを狙うかというと前者になっちゃうのかなぁ? カル・オブシディアン君だっけ? 狩りと殺しの技術にはたけてるらしいけど“戦闘”は苦手なのかも。
イヴもそう思うでしょ?
「ねぇスタークさんこいつら一体なんなの!」
「さぁな! 宇宙から魔法使いのネックレスを盗みに来たんだ!」
スパイダーマンが稼いだ時間ですぐさま立て直したアイアンマンによって大男への攻撃が再開される。ピーターもただ吹き飛ばされただけじゃなんともない。すぐさま糸を出して敵の背後を取ろうとする。
が、さすがに相手がこちらに来ているのを見逃すほど敵は優しくないらしい。蛇の形状に戻された武器によって簡単に捕まってしまうピーター。
「うわちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
ぐるぐると回されそのまま空へ、クモに噛まれたことによって身体能力。特に三半規管などの感覚系が非常に強化されている彼であるが、さすがにあのパワーでメリーゴーランドからのポイ! は堪えたらしい。経験を積んだ他の彼なら復帰できそうなものをすぐに吹き飛ばされてしまう。
ま、ここがいい感じですかね?
吹き飛ばされた彼をゆっくりと抱きしめてあげて、そのままお姫様抱っこ。
「ハァイ、後輩のクモちゃん。大丈夫だったかな?」
私、参戦! ってね!