時間は少し巻き戻り、場所は宇宙。FTL航法、所謂ハイパースペースで真っ黒な宙の道を進む一隻の船の中へと視線を移す。サノスの持つサンクチュアリⅡやQシップと比べれば格段に小型の、10人以下で航行するその船には銀河でも少し名の知れたヒーローチームになってきた者たちがいた。
「あ~、なんでやんなきゃならねぇんだよ。」
「救難信号よロケット、誰かが死にそうなの。」
ロケットと呼ばれたアライグマのような男性? の言葉を窘めるのは緑の肌を持つ女性。移動中のため全員が席に腰かけているが、それだからこそ鬱憤が溜まる。全員の出自が少々特異であり、はみ出し者で構成されたこのチームではいつも通りの光景だ。
「解ってるって、だがなんで俺たちなんだ?」
「親切だろ? ……それにご苦労さまでしたってお駄賃もらえるかもしれないだろ?」
可愛いクマちゃんの言葉にそう返すのは操縦桿を握る男性、先ほどからこの船にとある音楽を流し続けている張本人であり、未だ外宇宙に飛び出していない地球人の血を引く珍しい人物だ。まぁ地球人よりも珍しい、いや面倒と言ってもいい血筋を引いているともいえる。
「そういう問題じゃない。」
「……ロケット、そういう問題じゃないぞ。ま、もしお駄賃がなけりゃ……。」
「船をいただく。」
男性、クイルとロケットの会話に答えを出すのはドラックスと名乗る上半身裸の筋骨隆々な男性、見た目通りのパワーファイターだ。その回答は明らかにヒーローというよりもヴィラン、宙族といえるものであるがまぁここにいる皆が刑務所経験者である。まぁ仕方ない……、いや仕方なくないな。
「そういうこと。」
「ビンゴ~! 正解者に拍手~!」
答えに満足したのか可愛いアライグマの口を凶悪な笑みへと変え、笑いだすロケット。それに賛同するような発言をするクイルだったが、顔は少々乗り気ではない様子。
それもそのはずであり、彼に向かって思い人であるガモーラが非常に険しい顔を向けている。もし本当に実行した場合どんな運命が待ち構えているかわからない。みんな冗談で言ってるんだ、実際にやるわけじゃないさと彼女に向かって必死に顔で訴える。
「もうすぐつく。」
そんな彼らにとっての日常に目的地への到着の知らせ、エゴの一件からこのチーム、ガーディアンズに加入した女性であるマンティスがそれを告げた。その生まれと育ちから少々コミュニケーション能力に難があると思われていた彼女であったが、それは過去の話。とても馴染んでいる。
「オーケー、ガーディアンズ。危険な任務だからな、マジな面で行こうか。」
全員が気合を入れ、一瞬船の中から音が消える。救難信号を広域で出す、彼らの経験から基本そういう時はろくなことがない。基本的に非常に大変な仕事になる。それを理解しているからこその静寂であったが……、それをぶち壊すような音、ピコピコ音が響く。
この船に乗る最後の一人であるグルート、植物というか木そのものというか。地球人からすれば宇宙の神秘を感じさせる宇宙人。その少年が少々古いタイプのゲーム機で遊んでいる。
「グルート、そんなもの置いとけ。何度も言わせるなよ。」
クイルが注意する、今から戦闘がある宙域に移動するのだ。挿し木だった赤ちゃんグルートならまだしも今の彼は少し大きくなった地球人でいう中学生ぐらいの年齢。前線を任せるのには少々幼いが戦えないわけではない。何が起きるかわからない場においてずっとゲームをしているのはお小言を頂いても仕方ないのだろう。
「オレはグルート。」
「口が悪いぞ!」「おーい!」「ちょっと!」
が、やはり思春期の男の子に対してお小言はダメだった様子。彼の言葉を理解できない者からすれば単なる自己紹介にしか聞こえないが、意味の分かる彼らにとってはかなり刺激的な内容だった様子。
皆から非難というか、窘めるような声が上がるが彼はそれに少し顔をしかめるだけ。未だゲームから手を放そうとしない。
「よくもそんな口きけたな。」
悪口の矛先となったクイルがそう言うが、未だ彼の視線はゲーム機から離れない。お手上げだと空を見上げる彼。そんなクイルの代わりにロケットが親友として、相棒として声を上げる。
「お前な! 樹液が出るようになってから生意気だぞ!」
ぴこぴこ
「やめろって! じゃないとそいつを粉々にぶっ壊すぞ!」
何を言われても皆から顔をそらし、ゲーム機の電子音を返答代わりにするグルートにお叱りを入れようと席から立ち上がろうとするロケットであったがちょうどその瞬間に船がハイパースペースから降り、救難信号を発信していた場所へとたどり着く。
立ち上がろうとした腰を下ろし、視線を前へ。彼へのお説教は仕事が終わった後にしようと思う彼であったが……。
「……ひっでーな。」
そこは、墓場。原型が残らぬほどに破壊された船の残骸と、それに乗っていたのであろう人々の死体。体の部品が足りぬものや、思わず目を背けてしまいたくなるような人々が浮かんでいる。
彼らはならず者集団ではあるが、人の心を失ってはいない。目の前に広がる現状に心を痛め、顔をしかめる。
「お駄賃はもらえそうにねぇな。」
沈んだ空気をどうにかしようと声を上げる彼であったが、それにこたえるものはいない。皆の脳内に、『間に合わなかった』という言葉が浮き上がる。
そんな時、一つの死体が宇宙船の窓へと張り付く。
「ワイパーだワイパー! 剥がせ剥がせ!」
この現状に心は痛めるが、大事な船を汚されるのは叶わない。そう思いロケットが声を上げるが……、それが死者を怒らせてしまったのであろう。
雷神の、ソーの眼が、開かれた。
「サノスがやろうとしていることはたった一つ、人口を半分にして世界の均衡を保つこと。」
マンティスの能力、エンパシーという精神に働きかける能力によって覚醒したソーはガーディアンズから分けてもらったスープを口にしていた。いくら雷神と言えどなんの装備もなく宇宙空間を漂っていたという事実は彼の体から熱を奪い去った、背に掛けられた毛布と温かい飲み物によって少しずつそれは回復していっている。
「あいつは次から次へと星を襲って虐殺を繰り返している。」
「俺の星もだ。」
緑の肌を持つ女性、ガモーラがサノスの企みを説明しドラックスが自身も被害にあったことを述べる。彼らにとってよく知ったことではあるが、救助した雷神にとっては初耳。半ば贖罪のように彼女は説明を続ける。
「あいつが六つのストーンを全部集めれば指を鳴らすだけでそれができる。」
「……随分とサノスに詳しいな。」
ソーが、疑問を口にする。奴が石を集めていることは理解した、だがその目的を何故小さな船の乗組員の一人が知っているのか。その疑問は決しておかしなものではなく、また彼女たちが恐れていたものであった。
ドラックスがガモーラの顔を伺いながら、口を開く。自分でその事実を言うのは心苦しいだろうと思い、自身が代わりとなる。
「彼女はサノスの娘だ。」
予期していた事ではあったが、ソーが纏う空気が変わる。外に広がる惨状を見れば彼の身に何が降りかかったのか簡単に想像できる。ゆえに、彼が怒りをあらわにすること、その矛先がサノスの娘である彼女に向くことは簡単に想像できた。
「……奴は俺の弟を殺した。」
立ち上がりながらその事実を口にするソー、ゆっくりと歩を進め彼女の前へまで歩く。それを止める者はいない、だかもしその怒りにすべてを任せてしまうようならば止める。ドラックスは彼に道を譲りながらもすぐに拘束できる位置へと移動した。
ソーが、彼女の肩に手を乗せる。
「家族とは、厄介なものだな。……父が死に際に言った、実はお前には姉がいて、幽閉されていると。その姉が戻って来て、俺の眼を刺した。だから俺は姉を殺した、人生そんなもんだ。めぐり逢いだ……、気持ちはよくわかる。」
湧き上がる感情をどうにか整理しながら、彼女に語り掛けながら自分を言い聞かせるように言葉を紡ぐソー。彼女の肩に置かれたその手が、その心の中で荒れ狂う感情をどうにか押さえつけようとしていることを教えていた。
が、そのことをよく思わない者もいる。一人の男として、自身の思い人である彼女の肩を長時間握っている男性をそのまま放っておくほどクイルは人間ができていない。それに彼の体はまさに筋骨隆々であるし、自分よりも男らしいとは仲間の談。自身の腹回りが少々だらしなくなってきていることを先ほど指摘された彼の頭には彼女が取られてしまうかもしれないという思いが少しばかり……、いや結構あった。
彼がソーとガモーラの間に割って入るのはしかたないといえるだろう。
「俺も気持ちは解るよ、だって……」
そう言いながら、彼も自身が歩んできた物語を語る。彼も彼でその人生は非常に辛く、苦難の多いものだった。常人であれば目を背け歩くのを止めてしまってもおかしくはない。だが彼は前へと進み、ここにいる。
だが残念ながら彼は彼であり、それを自分で言わない方が恰好が付くのに自分で言ってしまう。まぁ彼の人間らしさが出ていて、そこにガモーラが惹かれたのかもしれないが、傍から聞く分には少々うさん臭くなってしまう。それも彼の魅力と言えばそうなのだが。
ソーは彼の半生を聞きながら足をこの船の操作盤へと向ける。
普段の彼であればその話をしっかりと聞き、称えるか冗談を返すぐらいの余裕がある。だが今はそれがない、彼の脳のリソースはサノスが探し求める残りのストーンに割かれていた。今宇宙にいる我らが保護すべきストーンは現実の力を宿す石、リアリティ・ストーン。
タイム・ストーンとマインド・ストーンは地球の皆が守っている。百発百中凄腕の射手に、どんな戦場も戦い抜く女スパイ、小さいながらも多くの兵をまとめるイタズラ少女に、いけ好かないがその頭脳は誰にも負けない鉄の男、そして皆をまとめる星条旗を掲げるキャプテン。
他にも石の力を操る最強のマシンや、精神を操る赤い魔女、超スピードを操る銀の男もいる。タイム・ストーンを守るあの魔術師の男だっている。皆が力を合わせればサノスの脅威を跳ね返すことなど容易いはずだ。少なくても石が奪われる可能性、自身が奴を倒しに行く時間を稼いでくれるだろう。
暴力の化身ともいえるハルクがサノスの脅威を伝えに地球へと向かった、彼らなら、アベンジャーズ守ってくれる。任せることができる。
そのためには、行方の分からぬソウル・ストーンを探すよりもノーウェアという居場所が解っているリアリティ・ストーンを保護しに行く方がいい。運よく自身を救助したこの者たちはサノスの野望を阻止しようとしていて、そのために必要な最低限度の力は持っているように思える。
今自身がすべきことは石の保護ではなくサノスを打ち倒すのに必要な力、武具が必要だ。行き先はニダべリア、アスガルドと親交のあるドワーフたちに最強の武器を作ってもらう。
故に、その足を操作盤。救助ポッドあたりを拝借しようと、コックピットの方に向けたのだが……
彼の眼が、そこに“あるはずもない”ものをとらえる。
コックピットの正面に広がる外部を見ることのできる窓、そこには自身の同胞たちと、乗っていた船の残骸が漂っている。いや漂っているだけのはずだ。
だが、何故か。自身のよく知る、白いものが見える。
「……ツグミ。」
そこにあるのは、白い仮面。地球にいるはずの彼女が戦うときに身に纏う白い鎧。ひび割れ、物言わぬ骸となり果てたそれが、そこにあった。
彼女が、あの星を飛び出していたかどうか。自身はそのようなことは知らない、だか彼女の力はあのスタークに並ぶ。もし彼と彼女が協力したとすれば外宇宙へと飛び出すことは可能だろう。いや彼女一人でもできたかもしれない。
何よりも、目の前に存在するこの白い仮面が、彼女がここにいたことを証明している。
彼の手が、強く。強く握られる。
それは自身の弟のみならず、ともに戦った戦友の一人がいなくなったことを示していた。
◇◆◇◆◇
真っ白な部屋に青いホログラムが全てを埋め尽くすように浮かぶ。この部屋の主はそれを眺め、操作し、この星のすべてを導いていく。それまで定められていた役割を果たすための体ではなく、自身として、イヴとして与えられた体を確かめるように。
「ふふ……。」
「アレ? ねぇちゃ嬉しそうやね。それにその体新しく作ったん? ユキ様の体じゃないの初めて見たかも。」
ドロッセルが持つ白い体に紫のライン、彼女の母が作ったスーツを改装したそれに話しかけるのはいつの間にか入室していた妹の一人。妹たちの中で初期に製造され、この星の製造部門のまとめ役のような立場にいるマールと呼ばれる子である。
白き体に黄色と黒のライン、船舶や妹たちの体を作成するために最適された体を持つ彼女は久しぶりに見た楽しそうにする姉を見ながらそう、話しかけた。
「あぁマールですか、そんなに顔に出てます?」
イヴやその妹であるマールたちに感情を表すような機能を顔に持つ者はいない、そのため感情が声やしぐさに出やすく少し観察すれば何を考えているか、どんな気持ちであるのか初対面であってもかなり理解できるようになっている。そのため同じ母の元に生まれ育った家族が相手となると、そのすべてが筒抜けと言ってもいいだろう。
声をかけたマール、この月に置いて製造などの仕事を受け持っている彼女は自身の姉に対してそう問いかけた。彼女が何に喜んでいるのかをある程度理解しているが、何故喜んでいるのかを聞いた方が彼女にとって、より幸せであるのを解っているからだ。
まぁ言ってしまえば『手のかかるねぇちゃですこと』である。
「せやねー、無茶苦茶顔というか仕草に出てる。」
「そうですか、ならば気を引き締めないといけませんね。」
「まぁ気持ちは解らんでもないけどな。私だってマミーに頭わちゃわちゃされたいし。」
彼女たちの間で、すでにマスター。自身たちの母がその命の使い方を決めてしまったことは通達されている。彼女たちの反応は様々であり、悲観し塞ぎこむものもいれば、忘れるように自身の与えられた仕事に励むもの、すべてを理解し受け入れたがまだ納得がいっていないもの、その使い方から何かを学び自分たちの心配をせずに逝けるよう前に進むもの、またそも命が失われることを理解していないものがいる。
家族として、楔として、一人ではさみしくないように生み出された彼女たちであるが、その基本設計は人との共存、誰かと支え合って前に進むことである。ある程度の時間と、進むべき道を示す一番上の姉がいれば乗り越えられるだろうがそれは今ではない。
妹たちの中でかなり初期に製造された彼女、マールは母の命の使い方に納得はしていないが敬意を示している。可能であれば永遠の時を生きてほしいと願ってはいるがそこに母の意思がなければ意味がない。創造主であり、仕える主であり、我らが母がそう決めたのなら私たちにそれを反対することは出来ても、否定することはできない。
(……私たちは生まれたときから家族が、自身の穴を埋める存在がたくさんいた。そして失う経験もしていない。そんな私たちが失った者である母のことを完全に理解できるとは思わない。……せめて、何の心配もなく安らかに眠っていただけるように進むのみ。ま、若干ポンコツなねぇちゃのサポートぐらいね、いくらでもしますよ、マミー。)
彼女たちの指示系統は一番上の姉、イヴへと集約されている。マールを含め存在している妹たちすべてがその決定に異を唱えることはなかった。……だが、そんな彼女が我らが母に叱られたのは記憶に新しいというか、全体に共有された事実である。そのあとにあった母の寿命の話のインパクトの大きさからそのログが吹き飛んでしまった子も多いが、生きた時間が比較的長い初期組の彼女は違う。
(次代の次代、女神組みたいなハイエンドには劣るけど私らは私らで出来ることはある。まぁ口うるさい妹に苦労してもらうよ、ねぇちゃ。)
姉の決定を盲目的に信じてしまったことが自分たち初期組の過ち、反省点だ。すでに私たちの間で姉が何か間違いをしでかしたときは喧嘩覚悟で絶対に止めることを決めている。残りの時間を楽しんでいらっしゃる母には悪いがすでに許可をもらってきている。『頼んだよ』と頼まれたからにはやるっきゃない。
「そういえばマール、ここに来たということは何か問題でも?」
「いいや、単なる報告。さっき言われた戦艦・巡洋・駆逐の全点検が完了したってことを言いに来ただけ。通信一本で出来なくはないけど、こうやって顔合わせて言いに来る方がよくない?」
「まぁ確かに……、それでコルベットと皆の装備の件は?」
そう問いかけながらそのほかの業務を進めていくイヴ、ログと各整備班から挙げられた報告書を見ればすぐに確認が終わる。しかしながら感情を持った自分たちは『忘れる』ということはなくても『後回しにしてしまう』という可能性がある。会話ログを追加し、人間のように新しい記憶を作り、忘れないようにする。機械でも失敗することはあるのだから。
「そいつはもうちょっと時間かかりそうやね、バックアップの方は全員取り終わったけどちょっと戦闘特化組が気合入れ過ぎてて遅れてる。コルベットは単純に建造途中だったせいで多分間に合わんわ、小回りはやる気のある妹たちに任せた方がよくない?」
「……そうですね、今後も兼ねて造船を急がせようとしましたが、無理そうであれば早急に切った方がいいでしょう。ではそのように指示しておきます。……それと気合入れ過ぎとはどのように?」
「全身ガトリングハリネズミとか、3mナノブレード担ぎだす奴とか、艦砲用兵器埋め込む奴とかほんと色々。実戦で使えなくなはないだろうけど、ちょっと過激すぎかもしれん。あと面倒なのは模擬戦始めて両方とも大破する奴、ハイエンドじゃないからラインは確保できてるけどこれ以上過激化したら、ちとマズいかもしれん。」
思わず顔を見上げてしまうイヴ、愛想笑いを返すマールであったが実際結構まずい問題である。血気盛んであることは戦闘が控えている手前喜ばしいことなのであるが、体の破損は頂けない。彼女たちの体はマスターのスーツと同じ素材を使って製作するハイエンドの体よりは安価であるが、戦闘に耐えるだけのスペックを保持するためにそれなりに希少な素材を使用している。
「敵の数が数ですからレギオンも使う可能性があるのに……、あの子たちそれほどおバカでしたっけ?」
「まぁしゃあないでしょ、直接戦う可能性の少ない私らだって無駄に張り切ってるわけだし。大目に見てあげなよ。」
「まぁそうなのですが……、とりあえず実機を使用した模擬戦は禁止しておきます。シミュレーターがあるのですからそれを使うように、と。」
「あいよ、ワガママいう奴は叩きだしていいかい?」
さすがにいない、と言おうとしたイヴであったがすぐに思いとどまり「酷ければ」とだけ伝えておく彼女。ほんの少し前までは命令に背くことなどなかったが、今は違う。状況が特殊だ、褒めて貰いたさに色々やらかしてしまう子も出てくるだろう。
「……それで? 我らが指導者にして親愛なる姉上さんよ。何か方法は考えてるのかい?」
「えぇ、もちろん。言われずとも。」
「ならいい。……別に何年かかってもいいさ、世代が変わって私たちの記憶が薄れ消えてもいい。過去の存在になって元から何もなかったかのように忘れられてもいい。……だけど、それだけは譲れない。何を犠牲にしようが、どれだけ屍を重ねうが、その事実だけはひっくり返す。」
「ま、単なる事実確認だ。ログの片隅にでも残しておいてくれ、ねぇちゃ。別にその先で私らがいなくてもいいけどさ、それだけはちゃんとしてくれよ。今後色々あるとは思うがソレが私ら妹の総意だ。」
「……必ず。ですが私たちのお母様ですよ? あなたたちを放っておくわけがないでしょう?」
「あは! 確かに。……じゃあ今からでも身の振り方を考えて置くことにしましょうかね。母親より年いった娘とか新婚生活に邪魔でしかないからねぇ……。」
姉に背を向け、「もっかい月にでも家作って旅にでも行きますかね?」と言いながら出口へと歩き始める彼女。私たちが進む道に、たどり着く場所に理想があるのであればなんの問題もない。その過程において自身の寿命が尽きようとも、受け継いでくれる妹たちがいる。
なら、それでいい。
お嬢様
「……もしかして、やらかした?」
〇マール
月での船舶や自身たちの体、基地などの製造を目的に製造されたイヴの妹の一人。ドロッセルが月に籠り始めた時期に製造された子たちは自分たちを初期組と呼び、イヴのストッパー的役割を担おうとしている。シスターズやポップ・シリーズのように名づけを行っていないのは姉妹での序列ができないようにするため。イヴがやらかそうとしていることを知りながらもそれに疑問を思わず止められなかったことを後悔しており、自分たちで考えストッパーの役割を担うことを決めた。
彼女の性格としてはドロッセルの指導者、母という面を多く引き継いでおりそのため精神年齢が他の妹たちと比べて大人。製造を専門とするように生み出されたがもちろん戦闘も可能。彼女の後に生み出された戦闘特化型の妹たちが言うことを聞かないときは真っ先に呼ばれ、秒で叩き潰している。怖い。
〇女神組
テアー・シリーズの通称。イヴがサノスの母艦サンクチュアリⅡを破壊するときに派遣した妹たちやジュノーがこれに含まれている。イヴに何かあった時や手が離せない時に、その代わりとなれるように製造されたシリーズ。AIとしての成立までの過程はイヴと同じように、与えられた体はドロッセルが身に纏う外装と同等の素材が使用されている。ハイエンドモデル。
ジュノーが末っ子なのだが、彼女が母の隣に長期間いることやスーツのサポートAIに選ばれたこと、そしてフライデーという外部のお友達ができたことを報告してくるため、みんなちょっと嫉妬に狂いそうになっている。けど我慢している。偉い。ちゃんとガス抜きはしてあげる予定。
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