軍隊全員と一体となっている感覚があった
それによる全能感に酔いしれながらただただ敵に突き進む
「『首とるなかれ。唯一文字に進むべし!』」
「『触れたものは全て斬り捨てよ。唯一文字に進むべし!』」
目の前の敵部隊は戦場の急な変容に戸惑っているようで近づく俺たちに纏まった迎撃はできずにいた
(目路が、開ける)
目の前の敵だけではないまるで上から見渡すような形で敵軍の陣立て、敵将の様子、周囲の地形がわかった。
(右翼の敵将、疲労の色あり)
俺が右へ刀を向けると軍全体が一糸乱れず右に進路を変える
そのまま迎撃の準備が遅れる敵陣に突っ込んだ
それと同時に後方の弓兵が矢雨を降らし味方諸共に敵陣を壊滅させる。敵の将は録に指示を出す暇すらなかった
「若様、敵将の首に」
「『首求むるなかれ。 斬っては次に進むべし』」
「は」
再び次の標的を見定める
このころになると敵も状況を把握し備えを済ませていた
中には自分から返り討ちせんと攻め寄せる部隊もある
「『はは』」
「『はははははははははは!!!!はっはーーー!!!!』」
気分が高揚が抑えきれない!この全能感とヒリつき!!最高だ!これが
「『これこそが戦場だ!!』」
「お前様!止まれ!!なんのつもりだ!!」
聞き覚えのある声の出元に注視すると見覚えのある女侍がこちらに駆け出してきていた
「『アカフユの姐さん!久しぶりだなぁ!元気してたか?嬉しいぜ!戦場でお前と殺し合えるなんてなぁ!!』」
「『戦場の空気に呑まれたか!シュテン!!』」
うるせえなあ、今気持ちよくなってるんだからガミガミ言うのは後にしてくれよ、姐さん?
「『邪魔だなぁ!アカフユの姐さん!!!』」
姐さんの部隊の方向に軍を向けそのまま全速力で突っ込む
そして激突の刹那手にした槍を全力で振り回し吹き飛ばす
「ぐあっ!!」
「『また会おうぜ、姐さん?』」
さて他のめぼしい部隊は…
「『あ?』」
開戦から30分もたたないうちに敵軍は退却を始めていた
どうやら姐さんの軍は退却の時間を稼ぐ為にあえて踏みとどまっていただけだったようだ
「『逃がすかよ!者共!!全速前進だ!』」
「…皆?」
閧の声が聞こえず静寂がこだまする
不審に思った俺が振り返るとそこには皆が見えていた
しかし彼ら30分前とは打って変わって地に伏し狂乱の様相で息絶えていた。彼らの表情からは恐怖どころか理性すらなかったように感じられた
「何が、起きて。いや…」
俺の頭から戦の狂熱が去り嫌な汗が浮かぶ
戦の前まで彼らはまだ見ぬ戦への期待と不安を隠せない理性ある人間だった。それが戦の最中にここまで変化した理由はなんだ?
俺はただ戦の始まりに胸を高鳴らせて、号令をかけて、そのまま前に…
「俺の、せいか」