温かい目でご覧ください。
IS~箱の中の魔術師~、始まるよ!
イチカ達がタイニーオービットに向かった日から週も変わり平日。
今日は実技授業が存在する。
生徒全員がISスーツに着替えアリーナに整列をしていた。
「良し、全員揃っているな!これより実技授業を開始する!」
生徒達の列の前に立つジャージ姿の千冬がそう声を張り上げる。
(まんま軍隊の訓練指揮じゃねえか。ちゃんと教免持ってんのか?)
その千冬の態度に、イチカは心の中でそう悪態をつく。
「まず初めに、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。仙道、オルコット、前に出ろ」
「はい!」
「はい」
千冬の指示に従い、セシリアとイチカが列から前に出る。
イチカはもう既にその手に開いているCCMを握っている。
「ISを展開しろ」
ピ、ピ、ピ
千冬の指示と同時にCCMの操作音があたりに鳴り響く。
そしてその一瞬後にはイチカはジョーカーを、セシリアはブルー・ティアーズを身に纏っていた。
「ちっ…よろしい。このように、熟練したものならばすぐさまISを展開できる。諸君らもこのレベルを目指すように」
『はい!』
千冬は小さく舌打ちをするも、直ぐに切り替え一般生徒達にそういう。
(このレベルって…レックスに鍛えられた俺と、代表候補生と同じレベルってか?全員が全員なれるわきゃねぇだろ)
薄ら笑いを浮かべるジョーカーのマスクの下で、機嫌が悪そうな表情を浮かべながらイチカはそう考えていた。
「次だ。飛べ」
千冬のアバウトすぎる指示を受け、ジョーカーは空中を蹴るように、セシリアは滑空をしながら宙へと浮く。
そして、それから暫くの間ジョーカーとセシリアはアリーナの上空を飛行する。
「仙道さん、相変わらずお早いですわね」
「そうかい」
空中にて、イチカとセシリアはISの機能の1つ、プライベートチャネルで会話をしていた。
その名の通り他人に聞かれる事は無い通信機能である。
「それで仙道さん、その…1つお願いしたい事が…」
「なんだ?」
「その…苗字では無く、名前でお呼びしても…?」
「…好きにしろ」
イチカの声色はなんとなく面倒くさそうなものだったが、セシリアは特に気にした様子は無く
「はい、イチカさん!」
と嬉しそうにそう返事をした。
ここで、急にプライベートチャネルに他人に聞こえる通信機能、オープンチャネルで声が割り込んで来た。
『一夏!いつまでそこにいるんだ!とっとと降りてこい!』
ジョーカーとセシリアが同時に下を確認すると、真耶からインカムを強奪して叫んでいる箒がいた。
『篠ノ之!教師からものを奪うとはいい度胸だな!』
バァン!
それに気が付いた千冬が出席簿で箒の頭を殴る。
「なにをしているのでしょうか……?」
「馬鹿の考えている事なんか分からないねぇ」
その様子を上から見ていたセシリアとイチカがそう感想を漏らす。
『仙道、オルコット、急降下と完全停止を地表から5㎝でやれ』
「分かりました。イチカさん、お先に失礼します」
セシリアはイチカに向かってそう言うと、そのまま勢いをつけて降下しておく。
そうして丁度5㎝でピタリと停止する。
『フム、流石は代表候補生だな。完璧だ』
「ありがとうございます」
『では次、仙道だ。とっととしろ』
「はいはい」
千冬からの指示をイチカは面倒くさそうに返すと、ジョーカーは空中を蹴り
アリーナの高度限界ギリギリにまで上昇したジョーカーはくるりと身体を180度回転しまるで逆さ宙づりのような恰好になると空中を蹴り一気に降下していく。
そうして、ジョーカーもセシリアと同じく地表から5㎝の所で停止する。
ただし、セシリアは普通の体勢だったのに対し、ジョーカーは頭が下、足が上という体勢で、しかもフェイスパーツが薄ら笑いを浮かべているのでかなり不気味になっている。
それこそ狭く暗い室内で、ジョーカーや床に血痕がこびり付いていたらホラーゲームに使えるくらいに。
「ちっ……正確に5㎝だから何も言わないが、次からは普通にやれ」
「分かりました、と」
イチカは千冬の言葉にそう返事をし、ジョーカーはまたくるりと180度回転し足で地面に着地する。
千冬は面白くないといった表情を浮かべると咳ばらいをして次の指示を出す。
「では次に、武装の展開をしろ!」
千冬がそう言い終わるころには、もう既にジョーカーがジョーカーズソウルを肩に担いでいた。
それに1歩遅れる形でセシリアが腕を水平に開きその手にスターライトmkⅢを展開した。
「…仙道は文句無しだ。オルコットも代表候補生に相応しい速度だが、そのポーズは直せ。ライフルを横に展開してどうする」
「し、しかしこれは私のイメージを固めるために必要な…」
「な、お、せ」
「は、はい!」
(教師が生徒脅すんじゃねぇよ)
先程からの千冬の学生では無く軍人を相手にするかのような態度を見てイチカはだんだんイライラとしてきた。
別に他人が脅されている事に怒る聖人ではない。
ただ単純に、千冬の態度が気に入らないのである。
しかし相手の態度が悪いからと表情に出すほどイチカは幼稚ではない。
特に何も反応することなくそのまま授業をやり切った。
更衣室にて制服に着替え終えたイチカは教室に向かって歩いていた。
「一夏、待て!」
そんなイチカの背中に、そんな声が掛けられる。
「はぁ…」
ため息をつきながらイチカが振り返ると、そこには千冬がいた。
「何の用です織斑先生。早く教室に戻りたいんですけど?」
イチカは心底面倒くさそうな表情を浮かべながらそう千冬に言う。
「一夏、お前は何処であの操縦技術を手に入れた!!」
「タイニーオービットに決まってんだろ」
「そうじゃない!あの操縦技術は並みのIS操縦者では教えられるものではない!誰に教えてもらった!」
「…レックスだ」
イチカが呟いたその名前に、千冬は過敏に反応する。
それは当然だろう。
だってレックス...真実は、第二回モンドグロッソで千冬からブリュンヒルデの称号を奪ったのだから。
「何故だ!何故姉である私じゃなくてあんな野蛮な女なんだ!!」
「どっちが野蛮だよ……どうだっていいだろうが、アンタは俺の姉じゃねぇし」
「まだそんな事を言うか!一夏、お前は私の「いい加減うるさいんだよ!!」い、一夏?」
流石にイチカの堪忍袋の緒が切れた。
怒声を千冬にぶつける。
急なイチカの怒声を聞いた千冬は表情を驚愕のものにする。
「織斑一夏の事をなんも見てなかったアンタが!?織斑一夏の訴えをなにも聞かなかったアンタが!?俺の姉!?ふざけんな!俺は仙道イチカだ!織斑じゃねぇんだよ!!」
「い、一夏……」
「はぁ…もういい。俺は行く」
驚愕で固まった千冬は放って、イチカの教室に戻っていく。
「何故だ、一夏……私は、お前を…………」
この場に残った千冬はそんなイチカの背中を見つめて、呆然とそう呟く事しか出来なかった。
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その日の夜。
IS学園正面ゲート前。
そこには、ボストンバックを持ったツインテールの少女がいた。
「遂に来たわ…IS学園……」
その少女はそう呟くと、正面ゲートを潜る。
「えっと、確か総合受付に行けばいいのよね?その総合受付って何処よ?」
その言葉と共に、ポケットからくしゃくしゃになったIS学園のパンフレットを取り出す。
「本校舎1階…だから何処よ。まぁ良いか。歩けば着くでしょ」
その少女は乱雑にパンフレットを仕舞うと歩き出した。
良く言えば、行動的。
悪く言えば、適当。
パンフレットには簡易的なものではあるが敷地内案内MAPがあるので本校舎の場所くらいだったら分かるだろうし、なんなら近くにあった案内板を見落としている。
そうしてパンフレットか案内板、どちらかでも良いから見ていれば3分で着くところを20分以上かけ、少女は総合受付にたどり着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ…なによ、真っ直ぐくれば3分ぐらいのところじゃない...!!」
その少女はぶつくさ文句を言いながら受付にいた事務員に話し掛け手続きを進める。
「はい、以上で転校手続きは完了です。IS学園へようこそ、凰鈴音さん。これが寮等の施設利用のルールなので、目を通しておいて下さいね」
ドン!!
事務員は物理的にそんな音が鳴るルールブックを少女に手渡す。
「え、これを…ですか?」
「はい、目を通しておいて下さいね」
「……はい、分かりました」
事務員は特に表情を変えずに笑顔のまま言葉を発したのだが、その笑顔が逆に圧となり少女にのしかかった。
「あ、そうだ1つ聞きたい事があるんですけど、良いですか?」
「はい、私に答えることが出来る内容であれば」
「おりむ…じゃない。仙道イチカって何組ですか?」
「仙道君は1組ですね。凰さんは2組なので隣ですよ」
「なるほど、分かりました……わざわざありがとうございました」
「はい。それと、これが寮の鍵です。部屋番号はそこに書いてあるので」
「分かりました」
そうして、その少女は荷物を持ち総合受付から離れ校舎から出る。
「イチカ……今まで心配かけさせた分、ただじゃ置かないわよ」
そうしてその少女、凰鈴音はそう呟くのだった。
「あっ!寮の場所聞けばよかった!」
そこから、寮の自分の部屋に着くのに30分掛かったらしい。
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翌日、朝のSHR前の1年1組の教室。
今教室にいる殆どの生徒はある事に注目していた。
「それじゃ、占いたいのは自分の未来…特に、自分の状況で良いんだな?」
「う、うん」
イチカのタロット占いである。
事の始まりは約5分前。
1組生徒の1人である相川清香がイチカに占って欲しいと言ったのである。
イチカは前々からタロットカードを取り出していたので、注目されるのは当然である。
最初は面倒くさくて断ろうとしたイチカだが、なんだかんだ占って欲しいと言われ悪い気はしなかったので占う事にしたのだ。
カードを清香にシャッフルとカットをしてもらい、それを受け取ったイチカがスプレッドする(カードを特定の形に並べる)。
「それじゃあ、それぞれ右から近い未来、少し先の未来、それに伴う行動のアドバイスだ」
「分かった」
清香は若干緊張した面持ちでそう頷く。
それを確認したイチカは右側からカードを捲っていく。
「WANDS Ⅶ、逆位置。QUEEN of CUPS、正位置。KING of WANDS、逆位置」
「お、おおお……」
その言葉を聞いて、清香はそんな反応をする。
正直、タロットを知らない人からしたらこれだけ言われても分からないだろう。
まぁ逆に知ってる人は自分の事は自分で占えるので、わざわざ他人に占ってもらう必要が無いのだが。
「それじゃあ順番に。先ずWANDS Ⅶの逆位置。このカードは不利を感じ、戦意を喪失する事をさす。IS、勉学、部活…なにか1つかもしれないし、2つ以上かもしれない。まぁそんな感じの事で何か不利を感じやる気が削がれる可能性がある、と……」
「そ、そうなんだ…」
清香は若干不安そうな表情を浮かべてそう呟く。
右側、近い未来の結果でそう言われたら誰だってそんな反応をする。
それをイチカも理解しているが、イチカは笑みを浮かべると次の言葉を発する。
「次、QUEEN of CUPSの正位置。これはなかなか良いカードだ。自分の魅力が高まる。つまりは、不利を感じてもその先でなにか自分の魅力が高まる出来事がある。だから特に心配はいらん。辛くても耐えていけば大丈夫って事だ」
「そ、そうなんだ。良かったぁ……」
イチカの言葉を聞いた清香は今度は安心したような声を発した。
辛くなってもその先には魅力が高まる出来事があるというのなら安心が出来るだろう。
「最後に行動のアドバイスだ。KING of WANDSの逆位置。ワンマンな奴に振り回される、もしくは派手な行動が空回りする可能性がある。だから、なるべく変な奴とは関わらない事、そしてあまり奇抜な行動をしない事をおすすめするよ」
「わ、分かった」
「これで占いは終了。纏めると、この先不利な事でやる気を喪失するかもしれないが、その先には自分の魅力が高まる。そして変な奴と関わったり奇抜な行動をしない。以上。お疲れ様」
「うん!仙道君ありがとう!」
清香がイチカにお礼を言い、それと同時に周囲に集まっていた人がパチパチと拍手をする。
その拍手を聞きながらイチカはタロットカードを回収する。
「ねぇ、仙道君って何処でタロットカード習ったの?」
「…兄さんに教えてもらった」
「前々から気になってたけど、仙道君ってもしかしてあの世界的占い師の仙道ダイキさんの弟なの?」
「そうだが?」
イチカの言葉を聞いたクラスメイト達は一瞬で色めき立つ。
「へぇ!お兄さんが世界の占い師で弟が箱の中の魔術師だなんて凄い兄弟だね!!」
「……褒め言葉は素直に受け取っておこう」
イチカは興味なさげにそう呟いたが、なんだかんだ褒められて嬉しいんだろう。
若干にやけている。
「そうだ!仙道君聞いた?」
「何を?」
「隣のクラスに転校生が来たって事!!」
「ふ~ん……まぁ、どうでもい」
イチカのその言葉は途中で途切れた。
いや、途切れざるを得なかった。
「ねぇ!仙道イチカっている!?」
教室の外から、そんな声が聞こえて来たから。
そしてもっと言うのなら、イチカはその声に聞き覚えがあったから。
ガバッとイチカは視線を教室の扉の方に向ける。
それに1歩遅れる形でクラスメイト達もそっちに視線を向ける。
するとそこには、小柄でツインテールの少女がいた。
「お前は…!」
その少女の姿を見たイチカは表情を驚きのものに変える。
そんな反応のイチカに少女も気が付いた。
「アンタ、今まで何処ほっつき歩いてたのよ!」
イチカに向かって突っ込んでいきながらそう声を発する。
それをひらりと躱してからイチカは声を発する。
「…久しぶりだな。鈴」
「……ええ、久しぶりね、イチカ!」
イチカの言葉に、その少女…凰鈴音、愛称『鈴』がそう返事をする。
イチカと鈴の関係の始まりは、小学5年生の頃…イチカが名前を変える前に遡る。
当時暴力を振るっていた箒が転校しなんとか安全な生活を送っていた中に、中国から鈴が転校してきたのだ。
箒の暴力に巻き込まれたくなかった為イチカに友人はおらず、また中国から転校してきたばっかりで日本語も不自由だった鈴にも友人はいなかった。
そんな2人が友人になるのは早かった。
日本語に慣れた鈴はクラスや学校に友人を作って行っていたが、イチカにはできなかった。
そんなイチカの事が気がかりで、鈴はイチカと一緒に居る事が多かった。
中学校に上がった際には新たにできた友人、五反田弾と御手洗数馬と共に4人でいる事が多かった。
しかし、その途中でイチカが名前を変え、住む場所も変えた為中学校を転校する事になった。
そうして鈴はそのまま1回もイチカに会うことなく中国に戻り、その後中国代表候補生になるためにISの特訓をし代表候補生となりIS学園にやって来たのだ。
「アンタ、今まで何してたのよ!!」
「長くなるから後でだ。お前は中国に中2の頃に帰ったんだっけか?」
「なんでそれ知ってんのよ!?」
「お前が中国に帰った後に定食屋のへっぽこ跡取りとギャルゲマスターには会ってるんでね」
「そうなの!?知らないんだけど!?」
「あの馬鹿2人が教えてないだけだろ」
周囲のクラスメイトを放って会話する2人に、ポカンとした視線が向けられている。
「えっとぉ…イチカさん?その方はいったい……?」
「んぁ?ああ、そうか。自己紹介しろ」
「分かってるわよ!コホン…中国代表候補生、そしてイチカの幼馴染、凰鈴音よ!鈴って呼んで!よろしく!!」
イチカに急かされ鈴はそう自己紹介をする。
「初対面小5だぞ。幼馴染って感じじゃねぇだろうが」
「私が幼馴染って言ったら幼馴染なのよ!」
「へいへい」
鈴とイチカの会話はかなり仲のいい友人や、それこそ幼馴染感が出ているものである。
クラスではあまり自分から会話しないイチカにここまで仲のいい友人がいたことにクラスメイト達は少し驚く。
「それにしてもイチカ、あの箱の中の魔術師ってなによ」
「なんだ、知ってんのか?」
「あの試合は全世界に中継されてるのよ?見てない訳無いじゃない!それで、なんなの?」
「マジか、聞いてねえぞ…まぁ良いか。それで、箱の中の魔術師は兄さんの友人達に付けてもらったものだ」
「なるほど…その年で異名を持ってるだなんてやるじゃない」
「中国に帰る前から『地獄の破壊神』という異名を持っていたお前には言われたくないねぇ」
「その名で呼ぶなぁ!!」
鈴がイチカに殴り掛かり、イチカはニヤニヤしながらそれを避ける。
「そろそろSHRの時間だ。とっとと教室戻れ。さもないと……」
「さもないと?」
「世界最強が怒る」
イチカの言葉に、バっと鈴が振り返る。
そこには、出席簿を振り上げている千冬がいた。
「……凰、教室に戻れ」
「はいはい、分かりました。世界最強さん」
鈴は千冬に冷たい視線を向けながら、自分の教室に帰って行く。
「…お前たちもだ」
「分かってますよ」
イチカはニヤリと笑みを浮かべながら自分の席に座る。
(THE SUNの正位置、幸福…これからいろいろと楽しめそうだぁ)
そうして、そんな事を考えながらイチカはSHRに参加するのだった。
☆オタクロスの、オタ知識デヨ~~!!☆
CCM。
タイニーオービットやサイバーランス、神谷重工などの1部のISメーカーに共通している待機形態デヨ!
2つ折りの携帯電話の見た目をしており、その見た目は様々デヨ!
例えばイチカのモノは紫で上へのスライド式、アミたんのは丸いピンク型デヨ。
CCMは通話やメールの送受信に、写真、動画の撮影等々携帯電話とほぼ同じ事が出来るんデヨ!
各企業、今はCCMをスマートフォン状に出来ないか模索中デヨ!!
次回予告
久しぶりに再会した鈴と会話をするイチカ。
そんな時、箒が2人を襲撃する!
そして開催されるクラス対抗戦。
姿を見せる鈴の専用機!
「ははは!楽しめそうだぁ!!」
次回、IS~箱の中の魔術師~、『対決、地獄の破壊神!』見てね!