インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜   作:地雷上等兵

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やっと、オリ機体の登場です。


第31話

1回戦、開始直前。

用務員寮、更衣室。細長い部屋の中、ロッカーが両壁に隙間なく並べ連なり。奥には何の変哲も無いホワイトボードがポツリと置いてあった。幾人かの用務員が長椅子に腰掛け、ホワイトボードの前で仁王立ちする轡木を戸惑いの視線を送っていた。

「皆の気持ちは分かる。複雑だろう。1度ばかりか2度も狼藉を働いた者に手を貸すなどと。しかしながら考え方を変えてくれ。今、1人の少女が約束を信じて彼を待っている。きっと最後の一刻まで来ると信じ続けるだろう。もしそれで、その信頼を裏切ればどうなる?彼は…まあどうでもいいが。少女は、きっと人を信じるのを辞めるかもしれない。だが、その悲劇を回避する方法がある。我々だ。彼の為ではない。少女の為に、どうか力を貸してくれ」

轡木の隣の男が前に踏み出した。男は厚い作業着の上からでもわかるくらいに筋肉が隆起している。

「まぁそうゆうわけよ。大したことをやるんじゃないし、問題ないでしょ。ね?ね?ねぇよな」

「「「はい、ありません」」」

用務員は口を揃えた。

「良い子たちね」

男はマジックペンのキャップを外し、デフォルメされた今回の作戦の略図を書き出した。

「もう既に何人かには動いていもらってるけど、今回の作戦は単純」

ホワイトボードに、学園とヘリと飛鯨の簡略図が書かれている。

「本土側に今、丹陽と例の人物がファミレスにいる。もう既にヘリで回収に向かってるわ。重量増加しての巡航速度低下を考えて、例の人物は用務員とIS持ちの戦闘教員の護衛の元に陸路でここに来てもらって。丹陽だけをヘリで上空まで輸送」

「上空?スカイダイビングでアリーナに入場する気ですか?」

「ええ、その通りよ。時間を逆算してみると、どうしても丹陽が到着するのが試合途中になるからね。幸い丹陽はエカーボン時代に落下傘の訓練を受けてるし、本人もやる気満々」

「じゃあ、ドイツ娘と篠ノ之ちゃんは黒騎士を相手にするのか。可哀想に。トラウマにならなきゃ良いけど」

楯無会長が水平線の彼方に投げ飛ばし、IS4機を惨殺、あまつさえ地図させ書き換えた化け物を相手にするのは、用務員には気の毒に思えた。

「いや、黒騎士は本人の意向で今回は使用しないそうよ。それと黒騎士じゃなくてアポテムノと呼ぶそうよ。今は関係無いけど」

「じゃあどうするんですか」

男はホワイトボードに、円錐を書き始めた。

「モンテビアンコを使うのよ」

「でもビアンコはここに…」

丹陽の専用機である、モンテビアンコは諸事情によりIS学園にある。本土から空輸してそのまま投身する丹陽は装着出来ないはずだ。

「そうよ。そこで私たちの出番。日本政府から、宇宙降下作戦で使用するポットが性能評価用に納品されてるわ。それにビアンコを搭載。上空で投下する」

「まさか丹陽、空中でISを装着してそのままアリーナに」

「幸い、ポットにはジャイロ姿勢制御装着と動翼、パラシュートがついてるわ。ポットはパラシュートで海に、ビアンコはIS。本人もやる気満々。なんとかなる。なんとかしてもらう」

ヘリと飛鯨のデフォルメ絵から線を引いて結んだ。

「ええ……でも勝手に空からダイブしていいんですか?」

轡木が前に出た。

「国土交通省には既に根回しをしている。心配するな」

「ええ……」

傍若無人な振る舞いの丹陽に腹を立てていたが。ここまでくると同情してしまう用務員であった。

「それじゃあ、状況開始。今すぐに飛鯨に燃料を補充。ポットを搭載して、完了次第離水」

「「了解」」

それぞれ思うところがありながらも、用務員達ははっきりと承認した。

用務員達はやや駆け足で次々と部屋から出て行く。最後の1人となったところで、呼び止められた。

「ちょっと頼みがあるんだけど」

「頼み?」

「そうよ。女性でも装着出来るハーネスとベルトを大量に集めてきて。ね」

 

 

用務員達は飛鯨の離水準備を終え、後部ハッチからビアンコを搭載したポットを積み、ポット側のタイダウンフックと飛鯨の骨材をベルトで繋ぐ。それと一緒に整備班が最終調整の為に搭乗。各々に端末を開き、作業に入った。

「最終調整ってなんですか?昨日サボった超跳躍補助装置の制御プログラムですか?」

「サボったんじゃない!超跳躍補助装置を使用すると脚部が耐えきれないから、省略したのよ。それと最終調整はそうじゃなくて、どうやら追加パーツがあるらしいから。OSをアップデートするの。ソースは来てるから」

後部ハッチが閉じ、機長がそれを肉眼で確認すると、エンジンをスタートさせた。エンジンは唸りを上げて、排気を開始。機体はエンジンに押され水面を流れるように進む。速度が上がり、胴体が立てた波が側面の窓覆う。機体がぐらりと揺れた。搭乗者達は何とか踏ん張り倒れなかった。

「あっ飛んだ」

波が無くなり、窓から外界が覗いていた。

見慣れた光景が別角度から望め、徐々に仰角になり違う表情を浮かべていた。飛鯨が飛んだのだ。

「手を止めない。時間ないから」

「「はい」」

エンジンの爆音を響く中、整備班は作業に没頭。その甲斐あってか、予定よりも早く終了した。

「ダウンロード終わり」

「インストールもオッケーです」

「バグも無さそうですね」

整備班の終了の報告を聞くと、用務員達が動いた。

「予定よりも早い。流石。それじゃあこれ着て。それと手荷物は全て預けて」

用務員がハーネスを差し出した。

「え。どうしてですか?」

そう言いつつ、整備班はハーネスを着用。用務員は緩んでないかを確認。その後ハーネスと飛鯨の骨材をベルトで結んだ。

「ところでみんな。体重は?」

何気ない用務員の一言だったが、整備班は例外なくそっぽを向く。

「あっ…ごめん。3桁はないよね?」

睨まれる。この時期に体重の話題は避けなければならなかったと後悔。

「なんでもない、なんでもないよ」

用務員がすぐさま話を戻した。

「ハーネスを使う理由があるは、このままポットを投下すると、ポットは慣性で水平速度が数百キロで落下するでしょ。そうすると、丹陽もその速度を出さなきゃならない。理由は省略するけど難しい。だから、丹陽もポットも垂直落下させるのさ」

手荷物を用務員は集め始めたが、1人、本音が携帯端末を渋った。

「あの、携帯は」

本音は携帯端末を握りしめ、スクリーンをじっと見つめていた。スクリーンにはアリーナの映像が投影されている。アリーナでは、簪がワイヤーブレードに拘束され地面に叩きつけられていた。

「あっあぁぁぁ!はいはい」

何かを察した用務員がコックピットに入っていた。そして、本音のもとに帰ってきた。手にはインカムを。

「これで彼女と連絡取れるよ」

インカムを本音に取り付けた。

「ありがとうございます」

本音は端末を用務員に渡した。

「泉君はヘリだからホバリングで楽ですけど。ポットは私たちは一体どうやって?」

その時、機長が大声を張った。エンジン音の響くキャビンに、はっきりと聞こえる。

「そろそろ時間だ。最終チェックだ」

用務員が整備班のハーネスがしっかりと着用されベルトの強度が充分かを確認する。

「チェックオッケー。やってください」

本音は簪と回線が繋がったのを感じ、声援を送ろうとした。しかし、違和感を覚え口を止めてしまった。班長も気がついたのか、顔を蒼白にした。

「もう一度聴きますが、どうやってポットを垂直落下させるんですか……」

間違いなく床が傾いていっている。

「簡単さ」

等々、傾斜は直立を許さずにキャビン内の人はベルトにしがみつく形になる。

「垂直上昇する。そしてハッチを開いてポットを落とす」

「イヤァァァァァァ‼︎」

班長がヒステリックな悲鳴を上げた。

「大丈夫、飛鯨が再燃装置を使えば推力比は1を超えるから」

そこじゃない。

「下ろして! 誰か下ろして!」

完全に宙吊りになった。

班長以外の整備班は腹を括り何かしらにしがみついていた。どこぞの馬鹿はスカイダイビングしていると考えれば耐えられた。だが班長は違った。

班長は手足をジタバタと暴れさせていた。

「ちょっと、暴れないで」

用務員の1人も宙ぶらりんのまま、片腕で抱きしめるように班長を抑えた。

「悪いが時間がないので我慢して」

「時間だ。後部ハッチ解放するぞ」

機長がそう宣言すると、後部ハッチが開く。気圧差から中から外に風が吹き、一気に機内の温度が下がる。

眼前に広がる雲海と下がる気温が、高度1万フィートを体感させる。よって班長がさらに暴れる。

「痛っ、痛い。暴れんないでっ痛い!」

片腕で捕まり片腕で班長を抱きしめる用務員に、班長のけたぐりから守る術はなく一方的に叩きのめされる。

「聞いてない! 私聞いてない! こんなことするなんて!」

「っぐふ。だっ誰か助けてくれ」

「悪い、時間がない。ポットを投下するまで辛抱してく」

「っぐふ。なるたけ早くしてくれ。ほんとに持たない」

パニックを起こした人を見るとむしろ冷静になるという、心理作用があるらしい。本音はまさにその作用が働き、冷静にインカムのスイッチを入れた。

「かんちゃん!」

『本音?』

インカムから簪の声が聞こえる。明らかに数分前より消沈していた。

「カウントダウン。10、9……」

用務員がポットを固定するタイダウンベルトの留め金に手を掛けた。

「ほんの少しだけ、後ほんの少し待って。必ず丹陽が…馬鹿が降ってくるから」

「4、3、2、1」

ベルトの留め金が外れる。ポットは重力に引かれ、後部ハッチから機外の投げ出される。後は主を待つのみ。

その時、班長が一際大きな声を張った。

「くたばれ!丹陽!」

 

 

高高度の上空。

自由落下を続ける丹陽は、24秒という限られた時間の中。横風を考慮して翼を後退させた飛鯨より投下されたポットめがけて滑空していた。

ポットは丹陽よりも若干先に落下していて、縦横に回転を続けていた。だがある時よりロープに繋がれたかの様に揺れながらも直立する。そしてドローグが開き抵抗を受け、相対的にゆっくり浮かんできた。

ポットが徐々に丹陽と同高度になりつつある。丹陽は身を捻り、少しでも近づこうとした。

だが、上手くいかず歩くには近いが、人間が飛ぶには遠すぎる距離を開けたまま、同高度になる。このままでは落下速度の遅いポットに抜かれ、一生辿りつけない。

丹陽は必死に手を伸ばした。

その時、ポット側の動翼が駆動。ポットか急速に丹陽に接近した。

一瞬すれ違う。

その刹那、丹陽はポットのフックを掴む。すかさず、ロープで自身とつながったカラビナをフックに掛ける。

次に端末から、学園に信号を送信した。途端、ポットのパラシュートが開き、急減速。丹陽は手を滑らせてしまい、ポットの外郭に叩きつけられる。

あと15秒ほどで墜落するという、コンマ秒も無駄出来ない極限状態とはいえ、合図ぐらい欲しい。と肩を摩りながら丹陽は思った。

丹陽はポットの外殻の僅かな出っ張りに捕まり、外部に備えられた開閉レバーに手を掛けた。レバーを引く。

「ヴェッ?」

開かない。本来ならポットが花びらの様に開くはずである。

「ひっ開かない」

 

 

IS学園。ポットへの搭載作業を終えた整備班たちが、雑談に興じていた。

「そういえばさぁ。あのポット欠陥なかったっけ?」

「あったあった。10個に1個、突然開閉レバーが効かなくなるやつ」

「でもいつも班長がどうやってか対処して、問題なしって判断されたんだっけ」

「そうそう、大昔のテレビと同じ方法使えば治ったらしいよ」

 

 

丹陽はフックを両手で掴み、外殻に足の裏を押し当てた。そして力の限りで蹴った。

「このぉぉ!阿婆擦れがぁ!股開けってんだよ!」

蹴りの衝撃で、ポットの接触不良を起こしていた回路がつながる。

重たい駆動音を発しながら、ポットが開いた。

「本当に開いちゃった……」

丹陽は開いた外殻をつたい、中心部で宙ぶらりんのISの元に向かった。

ISは力なくぶら下っている。丹陽は片耳のヘルメットをISの首に据えた。するとISの脊椎の頂点がヘルメットに連結、機体の一部とした。ポットと自身を繋げるロープを外す。

IS、モンテビアンコに身を寄せ、脊椎に背中を当てた。途端、生体認証を経て、機体に体を据え付けられ胸部装甲がせり上がる。ビアンコの脊椎が、丹陽の頚椎から腰椎まで補強するように密着。固定器具が閉まり強固に丹陽の体をビアンコに結んだ。四肢をビアンコの四肢に寄せると、こちらも固定器具が閉まる。仕上げにヘルメットが自動的に頭を覆い隠した。

「んっ」

ビアンコの脊髄側から無数の細針が背中のコネクターからスーツ内に侵入、皮膚を破り骨の合間を縫い丹陽の脊髄に侵入、丹陽の神経とビアンコに搭載された補助脳を介してISを繋げた。

あいつは言っていた。脳が処理する情報量が莫大に膨れ上がるから、重く感じるかもしれないと。だが実際は逆だ。

五感はマスクを外した直後の様に解放感に満ち、体感は疲労困憊の状態を差し引いても軽い。煩わしく網膜に投影されるヘッドアップディスプレイもない。機体や外界の情報は補助脳が的確に整理し数値的に感覚的に頭に入ってくる。それでも脳への負担を考慮して、身体の方の五感を切った。

自身と同化したビアンコの右手を使い、天井にあるコンソールを操作。ビアンコをポットに縛る固定器具を外すために。電子音を立てて固定器具が外れる。が丹陽は落ちなかった。固定器具に掴まったからだ。そのまま懸垂の要領で起き上がり、腕の力で身体を上下反転。足をポットの天井につけた。

風で流されポットがアリーナからだいぶ離れた位置有った。

天井を蹴り、反動で丹陽はアリーナに跳ぶ。

だが、不安定な足場が悪るかったのだろう。このままでは届かない。

 

 

「勘違いしないでよね」

ISを展開。

「あなたの為じゃないんだかね」

自身の能力で水を集め、巨大な渦を生成した。

「だから、あの子の前でマヌケな負け方したら承知しないだから」

水の渦は鞭のよう細長くてしなり、自由落下を続けること丹陽を打った。

打たれた丹陽は、簪の待つアリーナに大きく軌道を変えた。

 

「来たな。山田先生、遮断シールドを解除してください」

「え?」

「いいから早く!」

「はっはい」

 

 

楯無に背中押されお陰で、丹陽はアリーナへの落下軌道に乗る。

片手でISスーツの肩に備えられたハンドルを摘み、もう片手で唯一の得物である斧槍を展開し始める。

斧槍が実体化するより早く、丹陽がアリーナの縁に差し掛かる。

ハンドルを引いた。ISスーツの肩よりエアバッグが膨らみビアンコを包んだ。次の瞬間には、アリーナの砂地に身の丈を超える土煙を立て強行着陸。凄まじい衝撃を生み出したが、エアバッグが緩衝しビアンコは無傷だった。

エアバッグの中、斧槍は完全に実体化。続いてエアバッグが窄む。中からモンテ ビアンコが、丹陽が姿を現した。

さっきまでの喧騒が幻かののように、アリーナは静まり返っていた。1人も漏れず、様々な感情を入り交じった視線をアリーナに佇むにISに送っていた。

「無骨で品がありませんわ」

とセシリアがビアンコを評した。

「でもなんかやばそう」

と鈴が。

「あれが丹陽の専用機」

ビアンコは所々で、通常のISとは違う意匠が見て取れた。

未塗装で地色である灰色のボディ。一回り長い手足の部位は独立しておらず、背中の基部から伸びるフレームで繋がっており。関節には回転式アクチュエータが、背中の基部には腱で手足と腱で結ばれ連動しているシリンダー式アクチュエータが備えられている。フレームは主に太腿、上腕を形成し、太腿と上腕は仮初めの装甲しかなく隙間からフレームと丹陽の全ての手足が完全に収まっているのがわかる。さらには太腿と上腕は、中に収まる丹陽の手足の節に合わせ中程に関節がもう一つ有った。腕は3本指とはいえ常識の範疇だったが、脚は膝下が肥大化しており、さらには脛から杭打ち機を彷彿させる円柱が上前方に伸びている。ビアンコのシルエットを大きく模るのは、大きな盾。盾は機体を背中から伸びる太く幾つもの稼働関節を持つフレキシブルアームにマウントされ、機体を隠せるほどに大きく飾りっ気のない菱形だった。そして、丹陽の顔を唇から上を隠すヘルメット。カメラの類いは無く、代わりに額にある逆三角形の点灯と左頬から伸びるブレードアンテナだけだった。武器は、剣と傭兵の時代を飾った斧槍。持ち手同様に飾りっ気がなく質朴な面持ちがある。

騎士というよりは、日雇い兵士を彷彿とさせると風貌。

『派手な登場だな。ピエロにでも転向するのか?』

ピットから千冬の嫌味が流れてくる。

「格好付けさせてくれ。男なんだ」

丹陽は手でヘルメットの縁を下から持ち上げ、素顔を彼女に見せた。

 

 

「ありがとう。簪」

「え?えっと何が?」

混濁とした感情の整理でいっぱいで、言葉を発することの出来なかった簪は、素っ気ない返事をしてしまった。

「俺なんかを信じてくれて」

「いや…そんな。約束してくれたから」

「でもありがとう、そしてごめん。遅刻して。だから、後は任せてくれ」

丹陽は簪をじっと視線を向けた。

まただ。簪は自分の胸の奥から焦れったい痛みが広がるのを感じた。これからの正体は、今の自分にはわからない。

「…うん…」

でもそれで良い気がする。取り返しのつかない事案かもしれない。でも彼が居てくれるなら。

「丹陽、頑張ってね」

簪はピットに棄権通告を発信。それを受けてかラウラ拘束を解く。自由になった簪はピット帰投。彼の健闘を見届けることにする。

 

 

丹陽が登場してから、ラウラと箒の2人は日動き一つ取れずにいた。物理的では無く、情状的に。

丹陽が突飛つに現れ、しかも実力未知数の専用機を纏っている。

「なんだ対戦相手、お前だったか」

ハードタイプのISスーツに袖を通しビアンコを纏った為に、元の華奢な体躯の面影も無くなった丹陽は軽い調子でそう切り出した。

「なら余裕だな」

「なっ」

ラウラに憤慨の兆しが。

「だってそうだろう。この前練習機で勝ったし」

「あれは…私が…油断してたんだ」

「じゃあその分は俺が専用機ってことで、また勝てるな」

「だが貴様のは第1世代機だ」

「一夏へのビンタといい、俺とのことといい。不意打ち対策は十分だ。しかし驚いたな、千冬…織斑先生の教え子が後ろから撃つのが得意なんて」

フレキシブルアームの盾をぶらぶらと振って見せた。

「いい加減しろ。確かにラウラは貴様を後ろから撃ったが、そこまでネチネチと言葉責めする必要は無いだろ」

箒が先に我慢の限界を超え、丹陽に苦言を呈した。

対する丹陽は地雷原を突っ走る。

「姉しかない取り柄のない奴は割り込んでくるなよ」

「なっ! どうゆう意味だ」

「篠ノ之束博士の妹さん……名前なんだっけ?」

箒は実体剣を握り直し、感触を確かめた。次の瞬間には地面を蹴り跳躍、丹陽に猛進。

「泉ぃぃぃぃぃ!貴様に何が分かるか!」

簪が啖呵をきり、丹陽にぶつけた。数年間溜まりに溜まった鬱憤が爆発、今の箒の原動力と化す。ラウラは箒に続き、アイゼンを下ろし砲撃体勢を取る。

丹陽はヘルメットを下げ着用。首部装甲がせり上がり、唯一露出していた首回りを隠す。片足を引き、斧槍を両手で保持し石突きを箒を向け、穂先を下げる形で構える。ラウラにはフレキシブルアームの盾を構える。

「沸点低くて助かる」

補助神経を介し、ビアンコのカウントダウンが脳内に直接インポートされた。

残り5分半。

「光の戦士よりは良条件」

決定打の無い、ビアンコには絶望的な数値だった。

「でもビアンコ、締めのビーム出せないじゃん」




ビアンコ「いきなり阿婆擦れって呼ばれた……」


モンテビアンコの名前の由来は特に有りません。ただ、相方の機体がアレで、ビアンコも無骨なため。せめて名前だけでも華があればと。
あと、オリ主が素顔を晒し簪をみつめていましたが。五感を切っていたので、裸眼では簪を見てません。見れませんでした。怖くて。
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