長耳転生 異世界行ったらシたい事全部する   作:瑠韋

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救出作戦(前編)

懐かしい心地がする。

長い夢を見ていたようだ。

異世界に飛ばされるという夢。

よくある妄想のような夢を見た。

俺は二階建ての自宅の一室の自分の部屋で目を覚ました。

俺の部屋には所狭しとラノベやマンガが置かれている。

本に埋もれて死ぬのならば本望だと思っていた時期もあった。

ふと、床に一冊の本が落ちていることに気がついた。

 

『無職転生25巻』

 

たしか次の巻が待てなくてweb版で読んでたっけ。

俺はそう思いつつ中のイラストを見た。

イラストには剣神ガルと鬼神マルタ。

そして、ルーデウスよりも主人公ぽい北神三世アレクサンダーが載っていた。そう、彼らはヒトガミの使徒であるギースにより集められた敵達だ。全員が個性豊かだったのを覚えている。

俺はさらにページをめくろうとすると空間が歪み、意識が浮上する。

 

 

───────

 

目を覚ますと辺りはすでに暗闇になっており、少し肌寒い。近くで焚き火が焚かれているおかげで多少は寒さが軽減されている。

どうやら俺は砂漠から森まで運ばれたようだ。

よく魔物に襲われずここまで来れたものだ。

砂漠の夜は冷える。昼間はあんなに暑いのに、夜間はとてつもなく寒くなるのだ。寒暖差が激しく、体の弱い人は死んでしまうのではないか。

もっとも、体の弱い人が来るような場所ではないが。

起きあがろうとすると、身体が異様に重たくて起き上がれない。

魔力切れでここまでなったことなんてないぞと思って下半身を見るとポチとテチが俺の上に覆っていた。虎は元々ネコ科だからか懐かれると可愛いものだ。

そして、テチは口に黒い球を咥えている。

俺が起きるまでの間ずっと咥えていたのか。いい子だヨシヨシ。

ゼニスの救出が終わったら美味しい肉をたくさん食わしてやるからな。

テチからベヒーモスの球を受け取るとポチと共に球に戻した。

それにしても前世の夢を見るなんてなにか正夢でも起こるんだろうか。

 

「……どういう仕組みなんですか?それ」

 

俺は声のする方に顔を向けた。

夢で見たイラストにそっくりな人物がいた。

どうやら正夢だったらしい。

目の前には北神三世もとい、アレクサンダー・カールマン・ライバックがいた。

 

 

 

───────

 

「僕の名前はロイ。あなたが僕をここまで運んでくださったんですか?」

ここは先手必勝自己紹介。話の主導権を握る。

もしかしたら既にヒトガミの使徒になっている可能性がある。

イレギュラーが起こりうる可能性が高いからだ。

幸い、ヒトガミがまだ俺に接触してきていない。現れるならゼニスを救出した後だろうか。

従う気なんてさらさらないが。

 

「そういえばまだ名乗っていなかったですね。僕の名は北神三世アレクサンダー・カールマン・ライバック。いずれ父を越え、英雄になる男です。以後お見知り置きを。あなたを運んだのは僕です。英雄として困っている人は助けないといけないですからね。」

 

そう言って、アレクサンダーは握手を求めてきたので俺は握手をした。

 

「それで、アレクサンダーさんは何しにしにきたのですか?」

たしか眠りにつく前に俺が英雄とかなんとか言ってたような。

「僕はベヒーモスの下見に来ました。いずれ英雄になるためには倒さなければならない相手だったので、近くをたまたま通りがかったからベヒーモスを見てみようと思ったらまさかの先客がいて、しかもあろうことか僕が見たこともないような魔術でベヒーモスを一瞬にして消し去ったじゃないですか!」

 

そうだ、思い出した。

この北神三世は英雄という単語に踊らされているやつだった。

そして、すぐに騙されやすい。英雄詐欺なんてあったら一目散に引っかかるだろう。

だが、その性格は俺に好都合だ。

これからマナタイトヒュドラを倒しに行くのに火力が足りないのだ。

北神であるアレクサンダーに助力を願えばベヒーモスを迷宮の中で解き放つという脳筋作戦を使わずに済むのだ。

ならばやる事は一つ。

アレクを今のうちにこちら側陣営に取り入れる事だ。

こちら側陣営にずっと取り入れておけばヒトガミに唆されることもなくなるだろう。

…そう思いたい。

 

「あれは僕特有の魔法です。3体までなら魔物を自分の意のままに操れるのです。」

 

本当は何体でも可能だが、嘘を練り混ぜて話した。

人は真実に嘘を混ぜて話すとあたかも全てが真実のように聞こえるってどこかで聞いた記憶がある。

また、オルステッドもルーデウスを信頼していなかった初期の頃は自分のループ能力を隠そうともしていた。

ヒトガミの使徒になりやすいアレクなら尚更慎重に話していかなければいけない。

 

「なんと!では、ベヒーモスはまだ死んでいないくロイ君の思い通りに動かすことが出来ると?」

 

「ええ、そうですが。」

 

「ならば今すぐベヒーモスを放して僕と戦わせてください!」

 

ヤバい。面倒臭いことになった。

父親の北神二世はベヒーモスを倒したという逸話を持っている。きっとアレクはそれに対抗したいのだと思う。見た目は爽やかな青年だが、もう四十歳近かったんじゃなかったっけ。いい歳して我儘言うなよ。

と、俺はだんだん呆れてきて、一瞬ほんとにベヒーモスを放ってやろうか考えたが、やめた。

その代わり、俺はある提案をした。

 

「たしかあなたの父は北神二世で各地に色々な逸話を残して英雄となってますよね?」

 

「その通りだ!」

 

「そしてあなたはそんな父を越えて英雄になりたいと言いましたよね?」

 

「そうだ!」

 

「では、あなたが北神二世と同じ道を進んでも果たして英雄になれるのでしょうか?僕はそうは思わない。」

 

アレクサンダーはさっきまでハキハキと返答をしていたが、途端に口を噤んだ。

そして、熟考し始めた。

次に口を開いたのは朝日が昇り始めた頃だった。

 

「…同じことをしても英雄にはなれないかも…ですね…」

 

それにしても、長いこと考えていたな。でも、不死身の血を引く者からしたら速いのか?と思いながら俺はその言葉を待ってましたと言わんばかりの返答をした。

 

「では、ベヒーモスも倒すことより凄いことをすれば北神二世を越えたと言ってもいいのでは?」

 

「…!そうだ!その手があった!」

 

急に嬉しそうな顔しやがって、犬みたいだな。

 

「それで、その方法とは一体なんですか!?」

 

「それは、僕と二人でS級難易度の転移迷宮をクリアすることです。最下層には第二次人魔対戦で消滅したとされているマナタイトヒュドラです。そのS級難易度の迷宮を攻略し、しかもたった二人で攻略したならばその噂はあっという間に広がり、後世に語り継がれる伝説的な英雄となるでしょう!!」

 

少しくさいセリフを言ってしまったが、どうやらアレクサンダーには効果抜群だ。

 

「伝説的な英雄…いいでしょう!僕らでその転移迷宮をクリアして伝説を残しましょう!」

 

「お、おう!」

 

急にやる気がメラメラと湧き上がってきたアレクサンダーを見て俺は苦笑した。

なにがともあれ、アレクを転移迷宮へ連れていくことが出来る。

こうしてはいられない。善は急げだ。

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