長耳転生 異世界行ったらシたい事全部する   作:瑠韋

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後処理

「はぁ……はぁ……」

 

 倒した。

 倒したのだ。

 

「よしっ……っつぅ!」

 

 そう認識した瞬間、アドレナリンが切れたのか、右腕に激しい痛みを感じた。

 見てみると、右肘から下が無く、血がボタボタと滴り落ちている。

 先程のヒュドラのがむしゃらな攻撃を躱し損ねたのが原因だ。

 だが、あの攻撃をまともにくらっていたらと思うとぞっとする。

 安いもんだ腕の一本くらい…

 

「ロイ君!腕見つかりましたよ!」

 

 アレクがヒュドラによって吹き飛ばされた肘から下の部分を持ってこちらへ来た。

 見てみると、切り傷がついているものの、原型はきちんと残っている。

 これならまだ腕をつなぎ治せるかもしれない。

 俺はそう思い、アレクから腕をもらい、見るだけで血の気のひく切断面を肘に押し当てた。

 まあ、血は着実に切断された部分から無くなっているが。

 俺は習得している中で最上級の治療魔術である『シャインヒーリング』を使った。

 腕と肘がみるみるうちにつながっていき、血が止まった。

 ついでに、体についていた他の切り傷もすっかり治っていた。

 俺はつながった右手の動作確認を行う。

 グー、パー、グー、パー。

 よし、問題なく動かせる。

 特に神経にも異常がなさそうだ。

 あれだけの死闘をして一瞬で傷がなくなり、五体満足だと少し寂しいな。

 俺はそんな寂寥感を抱きながら、アレクの傷も治してあげた。

 

 「それにしても、迷宮の最奥にまさか人が閉じ込められているなんて思いもよらなかったですよ」

 

 山積みになった宝のある部屋の中心に、マナタイトヒュドラを倒した影響で魔力結晶が消滅し、そのまま地面に倒れている人がいる。

 

「実はあの人、俺の知り合いの奥様なんですよ。俺は彼女を救うために転移迷宮に潜ったんです」

 

 別にここで嘘をつくメリットがないので、正直に言った。

 

 「なるほど…知人の奥様ためにはるばるここまでやってきたと…どんな状況になったとしても人を助ける。僕も見習うべきですね…」

 

 アレクが都合よく解釈をしてくれたおかげで感心されたが、正直、アレクがいなければ勝てるか怪しかった。

たとえ勝てたとしても、倍以上の時間がかかっていただろう。

 

 「いえ、アレクがいてくれたから勝てたんですよ。部屋にある宝は差し上げます」

 

 「ダメだ!僕もロイ君がいなかったら、まずここまでたどり着けなかった!しかも、僕は父と同じ事をしていれば英雄になれると思っていた。それが間違いだと教えてくれたのは君だよ、ロイ君。だから、僕は君に感謝している!宝をもらってくれ!」

 

 それから何度かお互いに譲り合って、最終的には俺が持ち分六とヒュドラの素材、アレクは持ち分四となった。

 少しもらいすぎだと感じるが、もらえる分はありがたくもらっておこう。

 土魔術で軽くて丈夫な箱を三つ作り、一つはアレクに渡し、残りの二つには宝とヒュドラから剥ぎ取った戦利品を分けて入れていった。

 箱は使役している魔物に運ばせ、俺はゼニスを抱えて最奥の部屋から出た。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

地上に出ると空は真っ暗で、上を見上げると満天の星空が見える。

ちょうど迷宮に潜って五ヶ月ぐらいか。 

外に街灯があるわけがなく、月の光にのみ照らされている。

 前世の時から星を見るのが好きで、いつか町の光が届かない場所で星空を見てみたいと夢見ていたのだ。

(まさかしたかった事が異世界で叶うなんて)

 初めの頃は、意気込んで、前世でやれなかったことをやろうと思っていたが、月日が経つごとに、そうした夢も忘れていた。

 それはきっと今の人生に満足しているからだと思う。

 好きだったラノベの世界に入れて、それなりの力も手に入れて、こうして旅だってしている。

 それなら今のままでも別にいいじゃないかと思うかもしれない。

 だが、逆に、まだ向こうの世界で生き続けていたら、もっと楽しいことがあったかも知れない。

 俺は向こうの世界でたくさんの未知を残して死んだのだ。

 ゲームでいうところの実績解除をほとんど行わずして別のゲームを始めたのだ。

 やりこみ続けていれば、新たな発見があったかもしれないのに。

 だが、そのゲームはもうすることが出来ない。

 先に進むしかないのだ。

 人生は何度でもやり直せる。

 俺の場合は本当に人生をやり直しているが。

 ならばこの人生を思う存分楽しもうじゃないか。

 これまでしたかったことは勿論しよう。

 この先、したいことができたらそれもしよう。

 傲慢かもしれない。

 だが、それで人生が豊かになるのだからいいだろう。

 

 ひと段落したらやることリストでも作ろうか。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 「ロイ君はこれからどうするんですか?」

 

 「とりあえず知人を家族のもとへ送り届けに行きますね。遅くなっても仕方がないので、今すぐにでも出発する予定です」

 

迷宮の外に出ても眠ったままのゼニスを見た。

 何かあってはいけないので、お姫様抱っこで運んでいる。

 おんぶだと色々まずいのでお姫様抱っこしかなかったのだ。信じてほしい。

 目を覚まさないと容体がわからないが、息はしているので大丈夫だろう。

 アンリによる空の旅をする予定だが、ゼニスがいるので行きよりは時間がかかってしまう。

 できることならミリスに着いてから目を覚ましてもらいたい…

 

 「では、それが終わったら?」

 

 「特には決めてないです」

 

 「ならば僕と一緒に冒険をしませんか?この世界にはまだ突破されていない迷宮があります。僕とロイ君ならきっと攻略出来ます!英雄にだってなれる!」

 

 まさかの俺にドラフト指名がきた。

 誰かに必要とされるのは嬉しいし、トレジャーハンターも楽しそうだ。

 

「ありがたい話ですけど、やめときます」

 

アレクは一気に耳が下に垂れてしまった。

 

「どうして!」

 

「俺には目的があります。それが達成できるのは一年や二年という短いスパンではなく、十年、もしくは百年かかるかもしれない大きな目標です。そのための準備をしたいんです。」

 

「それは、英雄になるよりも?」

 

「ええ、少なくとも俺はそう思っています」

 

「…分かりました。僕も手伝えることがあれば微力ながら力になりますよ」

 

 どこが微力じゃい。手に負えない力の間違えやい。

 

「ありがとうございます!俺もアレクの助けになります」

 

 こういうのは持ちつ持たれつの関係でいよう。

 この五ヶ月でアレクとの親密度は爆上がりした。

 なんせ男二人寝食を共にしたのだ。

 親友といって差し支えないだろう。

 アレクに言われて気づいたのだが、これから何をしようか。

 ルーデウスとはミリスで会う予定をたてているので、特に何かする必要はないだろう。

 となると、先にラノアで生活をして、後にルーデウスが来たときのサポートでもしようか。

 そして、なによりラノア魔法大学に入りたい。

 前世では華の大学ライフを送れなかったから大学生を満喫したいのだ。

 

「俺は北方地域の『ラノア王国』に行こうと思うので、なにかあったら来てください」

「分かりました!では、なにかあったら行きますね」

 

 そう言って、アレクは立ち去ろうとしていた。

 何か言い忘れているような…

 そうそう思い出した。

 ヒトガミのことだ。

 

「アレク!言い忘れていたけど、夢の中で英雄になれるとか言われてそそのかされてはいけませんよ!もし夢でそんな奴に出会ったら俺に教えて下さいね!」

 

 アレクは立ち去りながら手を高くあげた。

 了解したとうけとっておこう。

 俺はゼニスを抱えて、アレクとは反対方向へと歩き出した。

 

 

 

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