真っ暗だ。何も見えない。
幸い、痛みは一切感じなかった。
どうやら即死だったみたいだ。
それもそうだろうあんな巨大なものに轢かれて即死じゃなかったら自らの身体の頑丈さを褒めなければならない。最終的にはどうせ死ぬのだが。
そして、ここがおそらく死後の世界だろう。何か音が聞こえるように感じるが、気味が悪いとは思わない。
俺はこの後どうなるんだろうか。無宗教だったため死後の世界についてどうとは思わなかったが、それでも少しは気になってしまう。天国に行くのか、地獄に行くのか。天国だったら最高だが、地獄なら最悪だ。そんな悪いことしてないのに!はたまた異世界転生でもするのか。と冗談を思いながら光が入ってきた。
その光に耐えきれず目を細めてしまう。
そしてやっと目が光になれて身を開けると
「≡▼∠Ⅲ♭∪∝∴☆‡≠∵?」
聞き馴染みのない言葉が聞こえた。
俺は助かったのか…?あんな物に真正面からぶつかったのになんで俺は生きているんだ?
そもそも何が起こったんだ…
それにしてもなんて言ってるんだ?
英検3級だがこんな言葉聞いたことがない。
「○≧□¥≦〒&¶∨≪!」
そしてその言葉が聞こえてくる方を見ると驚くべき事に気づいた。
俺を持ち上げているらしき人を見るとなんと耳が尖っているではないか!
間違いない。
十八年の短い人生の俺の経験則がこう言っている。
長耳族だと。
会話を試みようと思ったが、
「あー、うあー」
口から出てきたのは判別のつかない音だった。
体も動かない。
指先や腕が動く感触はあるのだが、上半身が起こせない。
そしてどうもこの空間は日本とは思えない。
(ほんとに異世界‥?)
ーーーーーーー
1週間程時が進んで俺は気づいた。
やはりここは異世界だと。
しかも前世の記憶を引き継いでいるので転生ではないかということも。
どうやら俺は長耳族の両親との間に産まれた子供らしい。
もしこれで両親が長耳族のコスプレをした人間だったらと思って、耳を引っ張ってみたがなんの変化もなかった。
前世ではある程度人気のある異世界物のラノベやアニメを見てきたが、いざ自分がその世界に入るとあまり実感が湧かない。この世界は一体どこなんだろう…
と思いつつ、こういった世界でのお決まり事みたいなことを思い出した。
そう剣と魔法の世界だ。
設定としては中世をイメージしてもらったら早いのではないか。
だが、今いる場所は森に囲まれていて外の世界がどうなっているか分からない。しかも赤ん坊だから動くことすら出来ない。
今はとりあえず言語習得に勤しむとしよう。両親の会話が聞き取れないとなにかと不便ではあるからな。そうなるとここでの言語は第二外国語みたいなものなのか?
けど、ここの世界で過ごすとなるとこれが母国語になるのかな?
何がともあれ前世でやり残したことが沢山あって、しかもやれることは制限されてると思うが、この世界では前世のやり残した事をやるようにしよう。