十二歳になった。
前世の歳の三分のニが過ぎた。
当時は何をしてたかというとたしか狂ったように◯ケモンをしていた記憶がある。小学生なので努力値なんてものは知らずただただ伝説をゲットしてはその辺にいる短パン小僧をコテンパンにしたものだ。
話が逸れてしまったが、俺は生憎長耳族なので人生百年時代ならぬ千年時代だ。まだまだこれからだ。
けれど、人間としての価値観みたいなのが残っていて、それはどうにも拭えないものだが。
何か変化があったかといえば同い年の友達ができた。
名前はアンディという。男だ。
長耳族は長命であるため子供が出来にくいので、同い年の子がいるのは大変珍しいことなんだと父親が教えてくれた。アンディは最初こそは人見知りで話しかけてもすぐどこかへ行ってしまったが、時が経つにつれ仲良くなり、今では大親友と言っていい程仲良くなった。親同士の仲も良く、我が家に対しての偏見なんて微塵も無かった。
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ある日俺達は親に黙って探検をしに森の中に入った。長耳族は精確な方向感覚を持ち、深い森の中だろうが何も無い砂漠の上だろうが目的地にたどり着くことが出来る。そのため子供二人で森に入ったとしても迷子になることはなく、家に帰ることができるのだ。
探検をしようと提案したのは俺だ。両親が過保護過ぎるためか滅多に村を離れて森の中へ連れて行ってはくれなかった。それが不満であったために森の中へ入ったのが表面上の理由だ。
本当の目的は生きている魔物を見ることだ。村にもときたま魔物が現れることもあるのだが、俺が見つけた時にはすでに死骸だ。そうした魔物を見るうちに生きている魔物に興味を持ち、アンディを誘って行こうとなったのだ。
アンディは初めこそ危ないから行きたくないと言っていたが俺の懇願によりなんとか折れて連れてくることに成功した。
探検は一人より二人の方が楽しいからね!!
なんかあったら上級魔法をぶっ放せばいいだけだしね。上級魔法を使えるようになってからは精度を上げることに力を入れてきた。その結果威力の強弱、射出速度の増減などを可能にした。前世は理系科目がてんで駄目だったので文系に逃げたのだが、実際に魔術を使っていると多少は理解できるようになった。魔術の練習は物理などの実験に似たようなものだからっていうこともあるだろう。
そんなこんなで俺達一行は村からある程度離れた所まで来た。
「暗くなってきたしそろそろ帰ろうよ」
アンディが少し不安そうな顔で聞いてきた。
たしかに陽が傾いてきておりあまり遅くなっても父親に見つかって怒られるだろう。目当ての魔物は見ることができなかったが、また別日にすればいいだけだ。
「そうだな。そろそろ帰ろうか」
そう言って村のある方向へ進路を変えた時に背後から嫌な感覚に襲われた。
俺は咄嗟にアンディを抱きしめて横に跳んだ。
瞬間元いた場所は大きくな音とともに地面を抉っていた。
見るとそこには毒々しい色をした虎がいた。
以前父親から大森林に潜む魔物を教えてもらった時に特にこいつには気をつけろと言われていた魔物だ。
(名前はたしか…緑葉虎《リーフタイガー》だ)
斑模様の緑を下地に茶色の模様が入った身体で森の中では迷彩になる。その隠密性の高さと集団で行動することから危険度はBランクとされている。
(よりにもよって1番出会いたくないやつと出会ったな)
予定では低ランクの魔物を見てすぐに帰ろうと思っていただけに出鼻を挫かれた気持ちだ。
幸い俺達の背後に潜んでいる可能性はなく、群れも少数だ。
(目眩しをしてアンディと走って逃げるか)
そう思ってアンディの方を見ると、恐怖で立つことすらできず震えている。それもそうだ、友人と軽い気持ちで外に行ったら恐ろしい虎が目の前に五匹もいるのだ。その立場に俺がなっていたら絶交するかもしれない。
この失態は俺にある。せめてアンディだけでも逃してやりたいと思っていると一匹の虎がアンディに向かって飛び込んできた。
「…っ!『風裂《ウインドスライス》』!」
刃のようになった風が襲い掛かる緑葉虎にあたり血が滝のように流れ出す。
「ヒッ…」
アンディは声にもならない叫びを出す。
だが、魔物達はそんなアンディを待ってはくれない。
今度は三匹同時に飛び掛かってきて二匹はアンディの方へ、もう一匹は俺の方へ向かってきた。
(弱い方から狙う…賢いな…)
緑葉虎達は本能でやっているのだが、この事こそが弱肉強食の世界では当たり前なのだ。
(まずはアンディの方に向かっている二匹を同時に処理し、俺の方へ向かってくるのは剣で対応しよう)
そう思いまずはアンディと襲い掛かる二匹の緑葉虎の間に向けて、
「『土壁《アースウォール》』!」
アンディを囲むように土製の壁が現れ緑葉虎の爪は壁によって弾かれた。アンディを守ることでヘイトを俺に集める作戦だ。
「…っ!『流』!」
俺の方に向かってきた一匹の虎を完璧とは言えない水神流の技でなんとか攻撃を躱した。
と思ってた矢先、隠れていた一匹の緑葉虎が俺の腕を爪で引っ掻いた。なんとか腕を引いて擦り傷になったかと思ったが、身体はまだ十二歳。大きな虎の爪は思っていたよりずっと腕を掠めており、腕の半分ぐらいが抉れてしまっていた。その傷を認識した瞬間、今まで感じたことのない激しい痛み襲われ俺は立っていることすらままならなくなっていた。
(痛い痛い痛い痛いッッ!しくじった!早く治療魔術を早く!)まとまらない思考回路がグルグル回って気がつくと緑葉虎が一斉に俺に襲い掛かってきた。
(ああ、俺また死ぬのかな。父さんの言いつけを破ったせいでこうなってしまった。自業自得だろう。けど死ぬのは怖い。生きたい。生ぎたいっ!!)
俺は最後の力を振り絞りあるだけの魔力を放とうとした。その時、今まで感じたことのない魔力の流れを感じた。
「いっけえええぇぇェェ!!!」
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カールロイス視点
夜になっても息子が帰ってこない。
村でアンディと遊ぶと言ったっきりだ。
アンディの家に行くとどうやらアンディも帰ってきてないらしい。
まさか二人で森の中に入ったんじゃないか。そう思い俺は他の長耳族の仲間達すら呼ばず一人で森の中へ駆け出していった。長耳族は方向感覚が優れているためなにか問題が起こらない限りは村まで帰ってくるのだ。それなのに帰って来ないということはなにか問題が起こったのだ。この辺りでは最近緑葉虎の小さな群れが目撃されており、昼間に村の男たちが総出で討伐しようと試みたが、失敗に終わった。
俺は最悪の事態を想定していた。長耳族はたしかに寿命が長いが、身体は強くなく、人間とさほど差はないだろう。死ぬ時はあっという間に死んでしまうのだ。だから俺は走りながら祈るしかなかったのだ。
「頼む…生きていてくれ…ロイ!」
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ある程度村から距離が離れた所に差し掛かった時、どこからか泣く声が聴こえてきた。子供の泣き声だ。俺はすぐさまその泣き声がするところまで行くと土壁が何かを囲むように生成されていた。俺はその壁を壊してみると中にはアンディがいた。
「アンディ、助けに来たぞ。もう大丈夫だ。」
「ヒックッ…ロイが…」
ロイと聞いて俺はすぐさまあたりを見回した。そうすると片腕から大量の出血をしている息子を見つけた。
「ロイ!!!!」
俺はすぐさま駆け寄って息をしているか確かめた。少し脈が弱いがまだ息をしている。
「…ッ!良かった…」
俺は安堵すると共に、すぐさまサーナのところへ戻りロイを治してもらおうとした。
ふとロイを担ぐ時に地面を見ると真っ黒な小さな球体が四つ転がっていた。
「なんだこれ」
俺は不思議に思いつつ、その不思議な球体をポケットに突っ込んで村へと戻った。
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目を覚ますと馴染みのある天井が見えた。
どうやら緑葉虎に襲われそうになった後感じたことのない魔力をぶっ放し終えた途端に倒れて自分の家まで運び込まれたらしい。
久しぶりの魔力枯渇だ。身体がダルいし髪ががメッシュのように白くなっているところもある。そして横を見るとずっと俺の看病をしてくれていたのか少し疲れた顔をしている両親が見えた。俺が目を覚ましたことに気づくとすぐさま俺を抱きしめ泣きながら、
「ロイ…良かった…全然目を覚まさないからこのまま目を覚まさなかったら俺達…」
自分のしでかしたことを改めて反省した。
一歩間違えればもう両親とは会えなかったのだ。前世の両親もこういった気持ちだったのだろう。だが、向こうの世界では俺は助からなかった。きっと泣くにしても後悔や悲しみといった涙だろう。死んでしまってからでは遅いのだ。俺はもう親を泣かせない。そう心に決めたのだ。
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俺はどうして森に入ったのかということを全部洗いざらい話した。父からは盛大に怒られるだろうと思ったが、お前一人でも魔物を無傷で討伐するまでは絶対に父の許可なしに森へ入ることは許さないと言われたが、その代わりに父の狩りに同伴することが決まったのだ。逆に母親からは見たこともない形相で怒られてしまった。まさか緑葉虎より恐ろしいものがいるなんて!!
アンディはというと俺に助けてくれてありがとうと言った。俺の失態だというのに俺を責めることなどはせず、僕にも魔術を教えて欲しいと言われた。罪滅ぼしではないが魔術を教えることで仲良しが保たれるなら俺はいくらでも魔術を教えよう。
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「この黒い球体ロイの近くに転がっていたんだ。これはなんだ?」
そう言って父から黒い球体を渡された。四つもある。俺も見覚えがないが四つという数には憶えがある。一斉に襲い掛かってきた緑葉虎の数だ。俺は回復してきた魔力を球体に流し込むと
球体が光り、俺は慌てて投げて部屋の隅に落ちた。そうするとどこからともなく緑葉虎が一体現れた。父は突如として家に現れた魔物を動揺しつつ、俺のことを庇いながら剣を構えていた。しかし、緑葉虎は一向に動かない。
試しに物を投げてもビクリともしない。俺は不思議に思い、
「こっちに来い」と命令してみた。そしたらなんと命令通りに動くではないか。俺はさらに不思議に思い、お手、おすわり、ちんちん、寝転びゴロンと命令したら全て命令通りに動いた。
父も不意をつかれたような顔をしておりこの状況が如何にあり得ない光景かを教えてくれている。
(まさか手懐けたのか…?)
俺はとりあえずこの虎をポチと名付けた。
次で幼年期ラストの予定です。