十八歳になった。
前世ならこの歳から成人なのだが、この世界では十五歳で成人なのだという。そして冒険者になるべく村を出る者、そのまま村で過ごす者と様々な選択肢がある。
そして十八歳は節目の年でもある。
俺が前世で死んだ歳だからだ。この世界でもう前世と同じぐらいの時間を過ごしたのだ。精神年齢で言えばいけおじと呼ばれるぐらいの年齢になってきた。
にもかかわらずまだ童貞なのには触れないでおこう。
俺はこの六年間なにをしてきたかというと偶然の産物である黒い球についての研究だ。あの後ポチを実験台にして様々なことをした。実験といっても動物愛護団体に訴えられない程度の実験なので安心して欲しい。
まず最初にもう一度ポチを球状にすることから始めた。これはすぐにできた。一度使った魔法は身体が覚えているものだ。意識して魔力を流すと右手から黒い球体の物が生成され、ポチに向けて発射するとそのまま黒い球がポチにあたりポチは球の中に吸い取られるように入っていきそのまま跡形もなく消えていった。
そして吸い込まれた球にもう一度同じような魔力を流し球を投げると先程と同じように目の前にポチが現れた。少し複雑な◯ンスターボールを想像してもらえたら分かりやすいだろうか。
俺は居ても立っても居られず、
「ポチゲットだぜ!!」
と自分の部屋で大声で叫んでしまい、それを聞いた母親はなんとなく心配そうな目をして俺にヒーリングをかけてくれた。お母さん、ヒーリングで頭のできは治せないんだよ。
次にポチは命令で攻撃をしたりするのかを確かめるべく、父の狩りについて行った。父の普段の狩りはどういうものかというと野うさぎなどが現れたら気づかれない距離で命を奪う最小限の威力の魔術を放ち、狩りをしているそうだ。
野うさぎは小さくすばしっこいので魔術を放つ練習にもなる。
そうこうしているうちに目の前に野うさぎが現れた。俺は音をたてないようにポチを召喚して
「あの野うさぎを仕留めろ。なるべく傷はつけるな」
そう言うとポチは身をかがみ、すぐさま野うさぎをロックオンした。
緑葉虎は元々森の中での擬態を得意とする魔物なのでこうした狩りに適してるのかもしれない。そして狙いを定めてポチは大きく跳び、器用にも一本の爪で野うさぎを刺して仕留めた。
「器用なものだな…」
「そうですね。父さん」
こうして俺はこの魔術を『使役魔法』と呼ぶことにした。アンディにも教えてあげようとしたが、自分自身も偶然に獲得しただけなので感覚だけで教えようとしてもやはり上手く教えることが出来なかった。いずれは理論を組み立てて他の人にも教えていきたいものだ。
アンディはというと父親が村の中で少し立場の偉い方なので村を出るつもりはないのだという。俺が教えたかいがあってかアンディも上級魔術を無詠唱で唱えるぐらいに成長した。
そしてなによりアンディは状況判断が異様に速くて正確である。対戦形式でアンディと魔術の練習をするのだが、俺の先の先の手まで読んで動いていて俺が魔術を放った一秒後ぐらいにはレジストされて攻撃がとんでくる。最近の勝率でいえば6:4ぐらいでなんとか勝ち越せるが、油断は一切できない。俺は十八歳になったら冒険者になりたいのでアンディも誘ったが、断られてしまった。二人で組めばこの世界でいいところまで上り詰めれると思っていただけに残念だ。
剣術の鍛錬も疎かにはしなかった。
父との手合わせに加えてアンディとも手合わせするようになった。
アンディの実力的には俺とあまり変わらないが持ち前の状況判断で俺は大体負け越す。
「どうしてそんなに判断が速いんだ?」
俺は負け越したある日アンディに聞いてみた。
「んー、感覚で動いている部分が多いかな。もともと僕は臆病な性格だから周りを結構見ちゃうんだ。そして見続けてきた成果かどうかはわからないけど相手の身体の細かい動きまで遅く見えるんだ。だから相手をよく見た方がいいと思うよ。」
どうやら相手の先を読んで動くのではなく一つ一つの相手の動作に合わせるように動いてるらしい。それはある意味才能ではないのか?至高の領域に近いのだろう。どっかからお前も鬼にならないかという誘いが来そうだ。
俺は言われた通り相手をよく観察して動くことにした。初めはわからなかったが、鍛錬を続けていくと少しだけコツを掴めた。コツを掴んだらあとは無意識にそれができるように頑張った。
最近ではアンディに勝ち越すことも多くなり、父からはお前はもう水神流と剣神流の上級だと言われた。
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十八歳になった次の日俺は冒険者になるべく家を出発する。前日に荷造りしておいた荷物を持ち、家を出た。
この十八年間色んなことがあった。
だが、どれもこれもいい思い出だった。世界を旅するとなるとあまりこの村へは帰ってこれないかもしれないが両親も友達も長耳族なので寿命で死ぬことはないだろう。使役魔法も緑葉虎だけでなく、雨季の間にも捕まえた。
名前は確か雨群蜥蜴《レインフォースリザード》という。
水の中に巣を作り早いスピードで泳ぐことができ、革はローブの材料にもなるらしい。
陸上では緑葉虎に乗り川や海では雨群蜥蜴に乗ろうと考えている。
出発前に母からは使役魔法の球が分からなくなるだろうからといって種類ごとに分けられるポーチのようなものをもらった。整理整頓が苦手な俺からしたら非常にありがたい品物だ。
父からはペンダントを渡された。なんでも家に伝わる幸運のお守りだそうだ。俺の旅の安全を祈られたものだ。大切に身につけよう。
アンディからは剣を餞としてもらった。アンディの家にあった剣でこの剣を見て僕を思い出して欲しいと言われた。愛してるぜマイブラザー。
「冒険者になるなら一番近いミリス神聖国に行けばなれるぞ。」
ん?父さんミリス神聖国だって?さすがに聞き憶えがある。
俺はまさかと思い、
「父さん。まさかとは思いますが他にも魔大陸とかアスラ王国とかありますか?」
「ん?ああ、言ってなかったか?アスラ王国も魔大陸もあるぞ」
なんてこったい。
俺はこの世界に来て十八年経ってようやくこの世界が『無職転生』の世界だと自覚した。たしかに言われてみたら色々引っかかっていたもんな。転生があるならゲームとかラノベの世界に入り込むことだってあってもおかしなことではないではないか。長耳族の村はとても排他的な生活を送っていたため外部の情報が入ってこなかったのだ。聞けばよかったかもしれないがこの村で全てのことが完結していたのであまり深く考えていなかった。それにしても遅すぎる。この時代が原作の何巻ぐらいなのか分からない。とりあえずミリスに行き情報収集をしよう。
こうして驚愕の事実を知って俺は無職転生の世界に一歩足を踏み出したのだった。
一章終わりです。
オリ主なので主人公の説明を中心に書いてて長くなりました。
次回から原作に繋がります。
疑問点等あればコメントにお願いします。