助けたい想いが強すぎて、とんでもないことになった 作:king
※ヘブンバーンズレッド 2章のネタバレがあります。
今からプレイする予定、もしくは2章をクリアされていない方はブラウザバックを推奨致します。
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蒼井えりかはハイパーサイメシアである。
起きた出来事を全て記憶し、それを忘れることなく、つい先ほど起こったかのように思い浮かべる出来る能力。
いや、どれほど辛い事でも、苦しい事でも、忘れる事の出来ない能力。
ゆえに彼女は、守れなかった仲間の記憶に、常に悩まされている。
考えないように、と意識を飛ばすか、傍らにいる白い相棒に癒しを求めるか。
そうして逃げの思考にある中で、胸の奥でかすかに燻る何かがある。
考えろ。過去の出来事を。そこにある『違和感』を。
何を。
忘れている?
忘れられないはずの自分が、何かを忘れている?
その焦燥が、彼女を突き動かす。
訓練へと。任務へと…。
最近は、逃げ以外にもう一つ、選択肢が増えた。
蒼井を構って離さない、賑やかな仲間。
茅森月歌。
31Aリーダーにして、元伝説的バンドのボーカルという肩書を持つ彼女は、知った事かと周りを巻き込んで、こうして新生バンドを立ち上げてしまった。
今日も乗りと勢いにまかせ新曲を作り上げたところだ。とても良い曲だ。特にタイトルが良い、と蒼井は思う。
しかし、やはりセッションが終わった後になると、記憶が彼女に牙をむく。
今日は特別任務を申請するには遅い。ジムで訓練することにしよう。
そうして一人、蒼井が訓練を行っていると、月歌が追いかけてきた。
まだまだ自分を離してはくれないらしい。
まるで台風みたいな、そう、まるで、『あの人』みたいだ…?
「…蒼井、蒼井。急にどうした?」
「あ… いえ、なんでも、ないです」
話の最中、急にふさぎ込んでしまった蒼井を心配そうに見つめる月歌。
蒼井は慌てて、取り繕うように笑った。
「ならいいけど。で、話の続きだけど、そーゆー時は、あたしなら「あたしが一番強い!」って思うようにしてるけどな」
「茅森さんらしいですね。 私なら何でしょう…?」
うーーーーーん
と、月歌は腕組みをしてうなり始め、頭をぐるぐると回し始めた。
こういう時の月歌は、見ていて面白い。どんな発想が飛び出してくるのか、びっくり箱のようで。
「無敵…」
なるほど、無敵の盾。とてもしっくりくる、と蒼井は感じた。
が…
「なんか違うな。 えーっと… そうだ。 『 』なんてどう?」
あ。
これだ。
まだ『思い出せない』けど、これが私の奥にある『何か』だ。
「とっても、いいと思います。『 』」
蒼井は噛みしめる様に、その言葉を口にした。 何度も、何度も…。
「なぁ蒼井、今日も単独で任務かよ」
後日、同じ31Bの仲間、水瀬いちごが話しかけてきた。
オペレーションプレアデスが近づく中、蒼井は単独行動での特別任務を申請していた。
「すみません」
「そんなにあたしらが頼りにならねぇってのかよ。なぁ」
「違うんです! そうじゃなくて…」
水瀬は、いつものおどおどとした蒼井の姿とは違う何かを感じた。
結局、蒼井を変えたのは31Aで、自分達のやってることは無駄だったのか。
「これは、自分ひとりでやらなきゃいけないんです」
違った。
これは、何かを決意した瞳だ。
絶対に届かない何かを追いかけると、心に誓った顔だった。
切っ掛け確かに、31A、月歌だったのかもしれない。
でも、彼女を変えたのは別の誰かだ。何故だか、水瀬はそう思った。
「なんで、だよ…」
「わかりません」
「分かんねぇのかよ?!」
「でも、やると決めたんです」
「チッ… 勝手にしやがれ」
もう、彼女は止まらないだろう。 嵐のように、駆け抜けていく。
水瀬にはそれが無性に寂しく感じた。
オペレーションプレアデス当日。
運命の日、運命の時。
巨大キャンサー、レッドクリムゾンと相対し、誰もが絶望する中、盾を構え、蒼井えりかが立ち上がる。
「蒼井! もう無理だ!」
「いいえ! ひきません…! 負けません…! ここで背を向けたら、もう『あの人』の前には立てない…から…!」
歯を食いしばり、立ち向かう彼女。
「だ…から…」
と、司令部から緊急通信が入る。
《皆、聞こえてる…ッ? 今、特務中将閣下からの伝令が来たわ》
「こんな時に?!」
《いいから聞きなさい! 特に、蒼井さん。 中将からのお言葉です。
連日の単独討伐任務ご苦労。貴様の功績を称え、特別勲章が授与される。
『絢爛舞踏章』
喜べ、この世界では、貴様が初めての授与者だ。
いずれ、あのバカを追いかけるだろうその日まで、更なる殲滅を期待するものである。
以上だ。ゴッドスピード。 だそうよ》
思い出した。
それは世界から消された、在りし日の記憶。
仲間を失い、くじけそうになった蒼井に、語り掛ける一人の少女。
それは世界を渡って流れ着いた、嵐の如き、恋する乙女。
「私なんか…全然だめで…」
「希望ってのはね、…こう、言い続けるところから始まってくのよ。 言ってみなさい。まずはそこから」
強くなりすぎた故に、人でなくなったモノ。あしきゆめと戦う者。
絢爛舞踏。
そして、世界を渡るがゆえに、人々の記憶から痕跡を消された者。
世界移動存在。
ニーギ・ゴージャスブルー。
彼女が残した、運命に打ち勝つための言葉、それは…
「だから、どうした!」
左手で盾を支えながら、右手を振りかぶる。
世界を漂う精霊達が、蒼い燐光を纏いながら、その右手に集まってゆく。
人でない何かと昇華した蒼井は、かつて自分を一度救った彼女が使っていた技をも、己が理に収めていた。
力の奔流に危機を感じたか、レッドクリムゾンがその狙いを蒼井のみに絞る。
が、それこそが蒼井の狙いである。
「だから、どうしたっ!!」
単独任務をこなす上で重要なのは、継戦能力。
相手の攻撃をずらし、如何にダメージを抑えて、一方的にダメージを与えてゆくか。
その為の体捌き。踊る様に、敵を屠る。
敵が彼女を捕えようと矛先を向けたとて、すでにその射線に彼女はいない。
そして、気が付くと己が懐にまで入り込まれている。
「だから…っ どぉしたぁぁあーーーーーっ!!!」
放たれる右アッパー。
精霊手。
精霊の力を使い、ぶつけることで相手を情報分解させる絶技。
その光に飲まれ、絶望の運命、レッドクリムゾンは消滅した。
希望の担い手、新たな絢爛舞踏、蒼井えりかによって。
「…セラフ関係ねぇじゃん…」
仲間の心には、別の燻るナニカを植え付けてしまったが。
またまた、続かない
短編連作で続けてしまいました。
この後の話は脳内で妄想するのが精いっぱいですが…。
昔好きだったゲーム、ガンパレードマーチ。式神の城。
多分、設定とかめっちゃ間違って解釈してると思いますが、許してください。
ニーギ・ゴージャスブルー大好きです。
今も棚にフィギュアが飾ってあるくらいには。
ちなみに、この話では月歌はガンパレでいうところの『人類の決戦存在』です。
頑張ればHEROになれるかもしれません。