白銀の城のラビュリンスは破壊神を召喚したようです 作:ナメクジ次郎
ここは白銀の城。多くの勇者、冒険者が挑んでは返り討ちに遭い、時には散って行く魔の迷宮。
そんな迷宮城の中で、似つかわしくないお気楽な声が上がっていた。
「なーなーツルハシ、いつもの勇者が来る前によわっちくていいから冒険者を何人か呼べって。何する気なんだー?」
コケを移動させる為に迷宮を弄りまわしている破壊神に声をかけるのは、桃色の羽を持ったこの城の
「アリアーヌ、あまりツルハシを困らせるものではありませんよ」
その背後から近づき声をかけるのは、もう一人の召使い、アリアンナだ。
「とはいえ、確かに不思議ではありますね。奥の
「あの勇者以外が来ると姫様機嫌悪くなるからあんまり呼びたくないんだけどねー」
「アリアーヌ。それ、姫様の前では言ってはいけませんよ」
まあ見ていればわかる、と言わんばかりに破壊神は縦に揺れる。
「そうですか……まあ何やら姫様も悪だくみをしているようですし。頑張ってくださいね」
「私達が楽できるならそれでいーよ! 勇者が来る日はいつも大変だしね、ほぼ毎日だけど!」
▽
「……変な気配がする。それに……いつもより罠が少ない?」
白銀の城の前に立った勇者は、中に入るまでもなく今日の迷宮の異様さを感じ取っていた。
罠の気配も、直前まで準備で走り回る愉快な姉妹の気配も感じない。つまり、準備は完璧ということか。
「面白い……」
ニヤリと勇者の口角が持ち上がる。
破壊神がメンバーに加わって罠の種類やモンスターの種類が増えたとはいえ、勇者にとってはどれも簡単なものだった。
だけど今日は一味違う、今までのハードルを優に超えてくるようなものが出てくるという予感を、感じていた。
「……?」
しかし、扉を開けた勇者を待っていたのは静寂。
コケ地獄も無ければ、襲ってくるモンスターも居ない。
エントランスをずんずん進んでいっても、そこにはいつも居るメンツが存在しなかった。
「魔神像……居ない……」
姫の間の前まで来ても、それは変わらず。なんだかんだで楽しみにしている
「……」
もしかしてからかわれているのか? と勇者は思いながら最後の扉を乱暴に開き、姫の間へと侵入した。
「ひぃっ! 今日の勇者ちゃん怖い!」
部屋に入るとびっくりした姫の声が木霊する。
「今日は……何も無かった……からかってる……?」
「ち、違うわよ! これから、これから秘策があるのだわ!」
無意識に威圧感を出している勇者に対して、姫は怯えながらもあくまでいつもの態度を崩さずそう答える。
「今日は破壊神だけじゃない、別の神様も呼んだのだからね、見ていなさいよ!」
姫の部屋に設置された魔法陣、そこに向かい呪文を唱えると力の奔流が巻き起こり。巨大な何かが姿を現していく。
「人々の魂を生贄に、降臨せよ! 地縛神 Ccapac Apu!」
そこに現れ出るは、巨人……否、巨神。
そして姫の仕掛けはこれだけではない。
「もう一体……」
先ほど勇者が入ってきた扉を壊して入ってきたのは、浮いているツルハシとずんぐりむっくりとした青い体躯に翼を持った異形の存在。
邪神……否、じゃしんだった。
「さあ勇者! 魔界のじゃしんと巨神の二重攻撃に勝てるかしら! 今日こそ引導を渡してやるのだわ!」
▽
「勝った……ぶい」
巨神とじゃしん、二つの神との長い攻防の結果、勝利を収めたのは勇者であった。
しかしそのダメージは大きく、鎧は壊れ体は傷だらけ、いつもの迷宮攻略では見せない疲れの色も出ていた。
「それじゃあ……捲くね」
そして伝統的な様式に従い、姫を簀巻にしようと近づいたところで、限界が訪れる。
「ちょ、ちょっと勇者!? だ、大丈夫なのかしら!?」
ふらりとバランスを崩した勇者を、姫は受け止め、肩を貸して倒れないよう支えてやる。
「……今日は……私の負け、かも」
「とっておきの罠も全部破られてあなたの負けなんてそんな事あるわけないでしょう? ほら肩貸すからこのまま外まで送るわよ」
「……ありがと」
今日の勝敗、姫の負け?