ペルソナ:PD   作:萊轟@前サルン

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第一章 "現実"を守る者
1.I'm you and you're me.


4月10日(月)

 

 

地方のトレセン学園のトレーナー寮から車を走らせて約4時間経っていた。長時間の運転で疲れている俺はトレセン学園までの経路案内が描かれた道路標識を見て"あともう少しだ"と自分に言い聞かせる。

 

そこから数分後、中央トレセン学園に着いた。車を降りて辺りを見るが、地方のトレセン学園とは大違いだ。全てが大きいし、新しい。

 

 

「やっと着いたぁ…!」

 

「あれ、見ない顔だ…もしかして、お前が地方から異動してきた氷室か?」

 

 

俺が身体を伸ばしながら一息ついていると、俺より歳が上の男性が俺に声をかけてきた。

 

 おいっす〜

→はい、そうです!

 そうですが、何か?

 

 

「はい、そうです!」

 

「写真で見るよりも男前だな!俺は中央トレセン学園のトレーナー寮の管理人の榊原章文(さかきばらあきふみ)だ。よろしく」

 

→よろしくお願いします!

 よろしくな!

 よろたん!ウェーイ!

 

 

「よろしくお願いします!」

 

「うむ。じゃあ早速、部屋まで案内するよ」

 

 

俺はある程度の荷物を持ってから章文あきふみさんについていく。トレーナー寮はすぐ近くにあり、エレベーターも完備されている為、部屋に行くまでにあまり時間はかからなかった。

 

 

「この301号室がお前の部屋だ」

 

「案内ありがとうございます!」

 

「どういたしまして。これ、部屋の鍵な」

 

 

章文さんは俺に301号室の鍵を渡してくれた。俺は早速、鍵を開けて部屋の中へ入る。

 

 

中も綺麗だった。新築かと思うくらいに綺麗なフローリングと窓、壁、天井、そして備え付けの家具。

 

 

「どうだ、流石は中央って感じだろ?」

 

 

 流石だ

→綺麗です

 ヤバイですね☆

 

 

「綺麗です」

 

「だろ!…んじゃ、俺はこの後仕事あるからここら辺で失礼するぞ!敦、中央での新生活を楽しんでくれよ!」

 

「はーい!」

 

 

章文さんは自分の仕事に戻っていった。俺は持ってきた荷物を置き、また自分の車へ持ちきれなかった荷物を持ちに行くのだった。

 

車に戻る途中、寮の掲示板に何かが貼られているのが見えた。それは"行方不明者に関する情報提供のお願い"だった。どうやら、グラスワンダーというウマ娘が行方不明のようだ。"地方とは違い、都会なのでこんな事もあるのか…誘拐ではないといいんだけど"と思いながら自分の車へ向かう。

 

 

 

自分の車から残りの荷物を持って再びトレーナー寮へ向かおうとすると、トレーナー寮駐車場の近くの道を走るブルネットのボブカットで前髪の白いウマ娘がいた。俺は"なんていう名前の()なんだろう?と思いながら、寮の自分の部屋へと戻り、戻ったあとは荷物を綺麗に置いたり、部屋の掃除を済ませたりして今日の残りの時間を過ごす。

 

 

 

4月11日(火)

 

 

 

遂に今日から俺は中央のトレセン学園で働く。朝食や歯磨き、着替えを済ませて俺はトレセン学園へと向かっていく。

 

トレセン学園はトレーナー寮の近くにあり、行くのには徒歩でもそんなに時間が掛からなかった。トレセン学園の中に入った俺はまず、理事長への挨拶をする為に理事長室を目指す。

 

……とは言ったものの、理事長室が分からず学園内の案内図を見ながら進んでいく。理事長室に向かっている途中、俺は前を見ておらず、反対側から来た誰かとぶつかってしまう。

 

 

「あっ、すいません!」

 

 

俺がぶつかったのは昨日のウマ娘だった。そのウマ娘は俺に軽く頭を下げる。

 

 

「俺の方こそぶつかってしまってごめんな。何しろ学園に来たのは今日が初めてで理事長室がどこにあるか分からなくてな…」

 

「そうなんですか!なら、私が案内しましょうか?」

 

「いいのか?」

 

「はい!まだ始業までは時間あるので‼︎…あっ、申し遅れました!私、スペシャルウィークです‼︎」

 

「俺は氷室敦、地方のトレセン学園から来たトレーナーだ」

 

「トレーナーさんですか…!よろしくお願いしますね!」

 

 

互いに自己紹介を済ませた後、俺はスペシャルウィークとともに理事長室へと向かう。

 

その道中、俺は廊下で他のウマ娘達が何か話しているのを見て歩きながらウマ娘達の会話に耳をすませる。

 

「ねぇ、知ってる?VRウマレーターを使ったウマ娘が次々と行方不明になっちゃう事件」

 

「知ってる!確か、グラスちゃんもVRウマレーターを使った後にいなくなっちゃったんだよね…」

 

 

行方不明のグラスワンダーが行方不明になる前にVRウマレーターを使っていた…どうやら、VRウマレーターには何かが隠されている気がする。

 

 

「グラスちゃんがいなくなって今日で2日…私、寂しいです」

 

 

スペシャルウィークは何だか悲しい様子。平常時はピンと立っている両耳がへの字に曲がっていた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「あ、はい…」

 

 

スペシャルウィークはそう言うものの両耳がずっとへの字に曲がったままなので悲しい気持ちなのがバレバレだ。

 

そうこうしているうちに理事長室の前に着いた。

 

 

「案内ありがとう」

 

「いえ!では、私は授業があるので失礼します!」

 

 

スペシャルウィークはそう言って自分の教室へと歩いていった。俺は扉に軽いノックを三回してから中へと入る。

 

中へ入るとそこには理事長ではなく、女の子がいた。

 

 

「お、おはようございます…」

 

「やっと来たようだな!」

 

「へっ?」

 

「歓迎ッ!ようこそ、我がトレセン学園へ!」

 

→君は誰?

 迷子か?

 

 

「君は誰?」

 

「私はここのトレセン学園の理事長、秋川やよいだ!」

 

「えぇー⁉︎」

 

「氷室君、ウマ娘達の夢を叶えてあげれるようトレーナーとして日々、精進していってくれ!」

 

 

この女の子が理事長なのには驚いた。俺は秋川理事長に挨拶をする。

 

 

「秋川理事長、俺は中央のトレーナーとして恥じない指導をしていきます!なのでこれからよろしくお願いします!」

 

「うむ、よろしくな!」

 

 

俺は理事長に挨拶を済ませた後、自分のトレーナー室へ行く。

 

トレーナー室に入ると、当たり前だが備え付けのもの以外は何もない。俺はとりあえず、デスクの上に自分のノートパソコンを置き、椅子に座ってからノートパソコンを起動して早速、仕事に取り掛かる。

 

俺は最近、入学して来たウマ娘達の能力についてをまとめた資料の作成をしていた。資料を作成し始めてから時間が経ち、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。それと同時に誰かが俺のトレーナー室へと入って来た。

 

 

「空き教室にいるのは誰だ⁉︎」

 

 

トレーナー室へ入ってきたのは黒髪ショートカットのウマ娘だ。

 

 

「ここは俺のトレーナー室だが…?」

 

「き、貴様…何者だ?」

 

 

→トレーナーだ

 泥棒だ

 君の運命の人だ

 

 

「トレーナーだ」

 

「トレーナー……そういえば、今日、この中央トレセン学園に異動してきたトレーナーいたんだっけかな…勘違いしてしまい申し訳ない」

 

「大丈夫、それより君の名前は?」

 

「私はエアグルーヴ。この学園の生徒会副会長をしている」

 

 

このウマ娘はエアグルーヴというらしい。俺は一瞬、エアグルーヴをスカウトしてみたいと思ったが、エアグルーヴから"副会長"というのを聞いて"副会長"ならもうトレーナーはいると思い、少し残念な気持ちになる。

 

 

「俺は氷室敦だ。よろしくな、エアグルーヴ」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

俺はエアグルーヴと固い握手を交わし、エアグルーヴがトレーナー室から去った後、仕事を再開しようとノートパソコンの画面を見てみると、画面には激安のVRウマレーターの販売ページが開かれていた。俺はウィルスの仕業と思いながらページを消して仕事の続きをする。だが、VRウマレーターの事を思い出してしまったせいでさっきのウマ娘達の会話とグラスワンダーの行方不明の紙の事を連想してしまう。

 

 

「確か、VRウマレーターは体育館にあるはずだ…噂の真相を確かめに行ってみるか」

 

 

俺はそう思いながらも今日の仕事をこなしていき、気がつくとウマ娘達の放課後のトレーニングの時間になっていた。昼飯を食べていないため、空腹だが担当ウマ娘がまだいないので自由があるので今からどこかに食べに行こうと思えば食べにいけるが、今日の放課後は噂の真相を確かめにいくのでそれが終わってからたっぷり食べる事にした。

 

俺は体育館に行く。体育館の中には誰もいない。俺は体育館のVRウマレーターがある場所まで小走りで向かう。

 

体育館には気配がしなかったため、誰もいないはずだったが、VRウマレーターの置いてある付近に何故かスペシャルウィークがいた。

 

 

「スペシャルウィーク⁉︎ここで何をしてるんだ?トレーニングは?」

 

「い、いや…私にはトレーナーさんがまだついていないので体育館でトレーニングをしようかと思いまして…」

 

「……グラスワンダーの事だろ?」

 

「…はい」

 

「同じ事をすればグラスワンダーのいる場所へ辿り着ける…だからVRウマレーターのある体育館にいるんだろ?」

 

「…早く見つけてあげたいんです。グラスちゃん、きっと一人ぼっちで寂しがっているはずです。だから…!」

 

「なら、俺と行こう。君をグラスワンダーと同じ目には遭わせたくないからな」

 

「トレーナーさん…!」

 

「そうと決まれば早速、VRウマレーターを使うぞ」

 

「はい!」

 

 

俺とスペシャルウィークは一つずつVRウマレーターを手に取り、頭からかぶる。VRウマレーターを被った瞬間、目の前の景色が歪み始め、その後眩い光に包まれた。

 

 

「うっ…スペシャルウィーク大丈夫か⁉︎」

 

「大丈夫です…って何ですか、ここは!」

 

 

スペシャルウィークは無事なようだ。だが、目の前に広がる景色に驚いている様子。スペシャルウィークの驚く声を聞いて俺も恐る恐る目を開けてみるとそこはトレセン学園の体育館ではなく、和風の城の前だった。

 

 

「えぇー‼︎」

 

「でも、なんとなくグラスちゃんの匂いがします!」

 

「…って事はまさか、この城の中に?」

 

「いるかもしれません」

 

 

グラスワンダーはこの白の中にいる…かもしれないが、どこかも分からない場所を迂闊に動くのは危険だ。

 

 

「スペシャルウィーク、俺の後ろにいろ」

 

「えっ…何でですか?」

 

「君を傷つけられたくないからだ」

 

「トレーナーさん…」

 

 

俺はスペシャルウィークを自分の後ろにいるよう伝え、城の中へと侵入していく。

 

中は薄暗く、俺の後ろにいたはずのスペシャルウィークは俺の右腕に抱きつき、プルプルと震えている。

 

 

「な、なな何もいません…よね?」

 

 

 いるよ…後ろに

→いないと思う

 プリンニシテヤルノ

 

 

「いないと思う」

 

「でっ、ですよね!」

 

 

と、スペシャルウィークが行った瞬間、前方から足音がした。

 

 

「ひゃあああ‼︎」

 

「誰だ⁉︎」

 

 

俺はスペシャルウィークを守りながら慎重に足音のする方へ進む。するとそこには不気味な仮面を被り、侍のような鎧を着た黒い人型が数体いた。

 

 

「な、ななな何ですか、あれは‼︎」

 

「分からない、だがアイツらに襲われたら危ない。一旦、退こう」

 

 

足早に城から出ようとした俺とスペシャルウィークだったが、俺たちのいた廊下がうぐいす張りだった為、音が鎧を着た黒い人型に聞こえてしまった。

 

鎧を着た黒い人型は次から次へと現れ、俺とスペシャルウィークは鎧を着た黒い人型に囲まれてしまう。

 

 

 

「こんなことならもっとニンジン食べとけばよかったぁ!!」

 

「チッ、ここまでか…」

 

 

俺とスペシャルウィークは絶対絶命の危機に陥っていた。だがそんな時、俺の頭の中に声が聞こえてくる。

 

 

 

我は汝、汝は我…

 

 

汝、己が双眸を見開き、今こそ発せよ!

 

 

「この声は……?……ペ…ル……ソナ‼︎」

 

 

俺は"ペルソナ"という言葉を発するのとともに自分の化身のようなものを召喚した。何故か分からないが化身の名を知っている。化身の名は"イフリート"

 

 

「こ、これは一体…」

 

「燃え盛れ、イフリート‼︎」

 

 

スペシャルウィークは俺の突然の覚醒に驚いている。俺はスペシャルウィークを攻撃しないように気をつけながら自分のペルソナで鎧を着た黒い人型を一掃していく。

 

 

「アギラオ‼︎」

 

 

俺はアギラオという炎魔法で周辺にいた鎧を着た黒い人型を焼き払い、危機を脱する。

 

 

「あ、あの…トレーナーさん、これは一体…?」

 

「俺にも分からんが、今はここから脱出するぞ!」

 

 

俺とスペシャルウィークは駆け足で城から出ていき、この世界の出口へ向かう。

 

 

「あれ?出口がありませんよ⁉︎」

 

「クソッ!どうすれば…」

 

 

俺とスペシャルウィークがここから出られなくて困っていると、どこからか商人らしき人物がやってくる。

 

 

「お困りですか?」

 

「あぁ。ここから出る方法が分からないんだ」

 

「そういう事でしたら、こちらをお使い下さい」

 

 

商人らしき人物はそう言いながら、分厚い本を渡してきた。俺は本を受け取り、スペシャルウィークの近くで本を開く。貰った分厚い本のページは全て白紙だったが、少しすると2ページ目にここの城の絵が描かれた。それと共に俺とスペシャルウィークはここに来た時のように眩い光に包まれる。

 

 

「うっ…」

 

「眩…しいです…」

 

 

眩い光に包まれた俺たちが目を開けると、そこは城ではなくトレセン学園だった。

 

 

「私達、戻って……来れたんですか?」

 

「戻って来れたみたいだ」

 

「良かったぁ〜‼︎私、日本一のウマ娘になる夢を叶えられないまま死んじゃうのかと思いました」

 

「夢も何も君、トレーナーいないよね?」

 

「あっ、そうでした…」

 

 

日本一のウマ娘になるという大きな夢を持っているにも関わらず、トレーナーがいないという理由でその夢が叶わないというのは可哀想なので俺がスペシャルウィークのトレーナーになろうと思う。

 

 

「なら、俺がなってやるよ。お前のトレーナーに」

 

「えっ…いいんですか⁉︎」

 

「勿論だ!よろしくな、スペシャルウィーク‼︎」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

とりあえず、近々、開催されるメイクデビュー戦に勝つことから始めよう。…なんて思っていたが、その前にグラスワンダー行方不明とは別の事件が起こるのだった…

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