ペルソナ:PD   作:萊轟@前サルン

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3. The true strength lies in the heart.

4月20日(木)

 

 

朝、いつも通りに学園へ行き、トレーナー室へ入ろうとするとトレーナー室の扉の前にはスペがいた。

 

 

「トレーナーさん‼︎」

 

「焦ってるみたいだが…なんかあったのか?」

 

「トレーナーさん!今日、あの"お城"に行きましょう‼︎」

 

「今日城に行くのか……でも体育館借りられなかったんだよなぁ…」

 

「今日行かないとヤバいです!」

 

「なんでヤバいんだ?」

 

「だって、グラスちゃんの席に別の子が座ってるんですよ⁉︎しかも、なんの違和感もなく」

 

 

確かにそれはヤバい。グラスワンダーの存在が消えかけていてそろそろ消えてしまうというところまできている。

 

 

「……分かった、今日の放課後に体育館使うトレーナーに声をかけてみる。だからスペは行く準備をしておいてくれ」

 

「分かりました‼︎」

 

 

俺はスペにそう言い、早速今日の放課後に体育館を使うトレーナーの元へ向かう。

 

偶然にも近くを歩いている姿が見えて俺はそのトレーナーに駆け足で近づき、背後から左肩をポンポンと軽く叩いてから声をかける。

 

 

「あの、今日の放課後のトレーニングは体育館でしますよね?」

 

「するけど……何か?」

 

「担当ウマ娘のメイクデビュー戦が近く、少し特殊な練習をするのに体育館を使いたいので体育館を使う権利を譲っていただけないでしょうか?」

 

「そんなの明日でも出来るだろ?」

 

 

確かにまだメイクデビュー戦まではあと少し時間があるし"体育館でする特殊な練習"なんて明日でも出来る。だが、グラスワンダーを救うには今日、あの異世界に行く他ない。だから……

 

 

「今日じゃなきゃダメなんです‼︎」

 

「はぁ…エアグルーヴに何て言えばいいんだか…」

 

「あなたが……エアグルーヴのトレーナー?」

 

「そうだ。エアグルーヴにこの日に体育館でやりたいトレーニングメニューがあるから体育館借りておいてと頼まれたから1週間前くらいに予約入れといたんだが…しょうがねぇ、譲ってやんよ」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

「…ところでお前、名前は?」

 

「氷室敦と言います!…あ、もうこんな時間‼︎では、この辺で失礼します!」

 

 

俺は右手首に巻いている腕時計の時間を見て始業まであと少しなのに気づき、急いで自分のトレーナー室へと入る。

 

それにしてもあの大柄で筋肉質なトレーナーがエアグルーヴを教えてるとは…確か胸元の鉄製のネームプレートには"矢波上(やはうえ)"と刻まれていたな。矢波上トレーナー、ありがとう!

 

俺は矢波上トレーナーにすごく感謝をしながら今日の仕事をこなしていく。

 

それから数十分後、一時限目終了の鐘が鳴った。俺は身体を伸ばしながらトイレへ行こうとトレーナー室の扉を開けて廊下へ出る。扉を開けた瞬間、目の前には銀紫の髪の色をしたロングヘアーのウマ娘がいて、俺はそのウマ娘とぶつかってしまい、突き飛ばしてしまった。

 

 

 

イベント:"法王"コミュ

 

 

 

「すっ、すまん!怪我とかないか⁉︎」

 

「いたた……大丈夫ですわ」

 

「よかった…」

 

「あなたは確かスペシャルウィークさんのトレーナーさん…?」

 

「何で知ってるんだ?」

 

「スペシャルウィークさんが私に"自分にトレーナーが付いた"なんて話をしますからそれで…」

 

「なるほど…スペとはよく絡んでるのか?」

 

「勿論、絡んでいますわよ」

 

 

スペがメジロマックイーンと仲良くなっていたのは初知りだ。スペもこんな短期間で友達を作るなんてすごいなぁ…と地方のトレセンでトレーナーの友達がいなかった俺は思う。

 

 

「そうか、ならこれからもスペの事をよろしくな!」

 

「はい!」

 

「そんじゃ俺、トイレ行くから」

 

「分かりました、また機会があればお話ししましょう」

 

「そうだな」

 

俺はメジロマックイーンにそう返答してトイレへと向かった。

 

 

我は汝…、汝は我…

 

汝、新たなる絆を見出したり…

 

 

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

 

 

汝、"法王"のペルソナを生み出せし時、

 

我ら、更なる力の祝福を与えん…

 

 

 

 

2時限目は高等部のウマ娘達に歴史の授業をするので俺はトイレを出た後、高等部の教室へと向かう。

 

高等部のクラスに着いて教室内へ入るとそこにはエアグルーヴがいた。

 

 

エアグルーヴは俺を見てあっ!というような顔をしている。俺は"これは授業後に体育館の件について何か言われる"と思い、授業が終わったらすぐにこの教室から退散しようと企てる。

 

そして約1時間後、授業が終わった。俺は教材を持って目にも留まらぬ速さで教室を出て行き、自分のトレーナー室へ向かうがウマ娘の足には及ばず、エアグルーヴに捕まってしまう。

 

「おい」

 

「なっ…なんだ?エアグルーヴ…」

 

「貴様、予約を入れず、当日にいきなり体育館を人から借りるなんていい度胸してるじゃないか…」

 

 

エアグルーヴは鬼気迫る表情で俺を見ながらそう言う。

 

 

「こっ、これには深い訳があってだな…」

 

「深い訳…?それは何だ、言ってみろ」

 

 

 異世界に行かなきゃならない

→スペの夢を叶えてやりたい

 内緒だ。

 

 

「スペの夢を叶えてやりたい…」

 

「スペシャルウィークの夢…?」

 

 

スペの夢を叶えてやりたいとは言ったものの俺はまだスペの夢を知らない為、ここで詰んでしまう。

 

 

「……まぁ、学園長曰く、ウマ娘達の夢を叶えるまでの支えをするのがトレーナーらしいからな。しょうがない、今回は許してやろう。だが、次に体育館を借りるときはちゃんと事前に予約を入れるようにしてくれ。それじゃ私は失礼する」

 

 

俺はエアグルーヴが去っていくのを見送った後、ホッと一息つく。

 

とりあえず、体育館を借りれたので上手くやれば今日中にグラスワンダーを救える。後は異世界へ行く準備をするだけだ。

 

俺は自分のトレーナー室へ戻り、何か異世界で役に立ちそうな物や装備を鞄に入れる。数十分で準備を一通り終えたが、放課後になるまではまだ時間があったのでセイウンスカイの次にクイーンベレーというウマ娘について調べる。

 

 

「なんかこのウマ娘は雰囲気からしてラフプレイが多そうだな…このウマ娘とだけは争いたくないな…」

 

 

ネットに載せられた画像のクイーンベレーから闘争心が強そうな気配を感じ取った俺はクイーンベレーとは離れてレースが出来れば良いと考えた。ちなみにクイーンベレーも今回がデビュー戦のため、前情報はない。セイウンスカイの時のように実際の走りを視察できればいいなと思っていたが、そんな時間はないので本番で見るしかない。

 

と、クイーンベレーについて考えているうちに時間は過ぎていき、放課後の時間になったので俺は体育館へいき、VRウマレーターのある場所でスペと合流する。

 

 

「トレーナーさん‼︎」

 

「スペ、もういたのか…って何だその格好⁉︎」

 

 

スペは右手にバットを持ち、服は背中にローマ字でYUTAKAと刻まれたTAKESという野球チームのユニフォームを着ている。

 

 

「すみません、グラスちゃんの木刀を借りようともしたんですけどグラスちゃんに関する物はもう無くて…だから代わりにTAKESファンのウマ娘から色々と借りてきました‼︎」

 

「そっ、そうなんだ…」

 

「さて、そろそろ行きましょうか!」

 

「そうだな!」

 

 

俺とスペは一斉にVRウマレーターを被り、異世界へと向かった。

 

 

異世界に着くと、目の前には俺たちが初めて異世界に来た時にいた商人らしき人物が立っている。

 

 

「おやおや、また会いましたね」

 

「なぁ、教えてくれ。ここは何て言う世界なんだ?」

 

「ここ全体を理想世界(スペイス)と呼び、このお城の事はグラス・スペイスと言います」

 

「グラス・スペイス?」

 

「グラスワンダー様が求めている理想がこの理想世界(スペイス)の一部に一つの場所として形成されているからグラス・スペイスと言います。とはいえ、自分の意思ではここには来られない筈なのですが、グラスワンダー様はどうやってここへ…」

 

「なるほどな…連れてこられた感じか。…でも、誰がそんな事を?」

 

ここで俺はこの前、スペが今回のグラスワンダーと同じ様な目に遭っていた事に気づく。

 

 

「そういえば、スペはどうやってここに連れてこられたんだ?」

 

「それなんですが…いきなり、誰かに背後からハンカチで口元を抑えられて気付いたらこの世界にいました」

 

「なるほど…んじゃ、早いとこグラスワンダー助けて話を聞かないとな!」

 

「はい、行きましょう!トレーナーさん‼︎」

 

 

俺とスペは早速、グラス・スペイスのへと向かう。商人らしき人物は俺とスペがグラス・スペイスへと向かっていった後、自分の持っている本の白紙のページに何かを描いていくのだった…

 

 

 

・グラス・スペイス

 

 

 

グラス・スペイスに着いた俺とスペは見張りに見つからぬ様、忍びの様に上手く隠れながら城の中へと入る。

 

そして前に通った鶯張り廊下も何とか無事に通過していく。

 

だが、ここはグラスワンダーの理想の場所(スペイス)なのでグラスワンダーはおそらく本丸にいる筈だ。

 

俺とスペは階段を慎重に登っていく。階段の踊り場から、2階を見てみると俺たちが侵入したのを気付いたのか白い仮面を被った武士のような怪物が辺りをうろうろしている。

 

 

「スペ、準備はいいか?」

 

「はい、いつでもいけます!」

 

 

俺とスペは小声でそうやり取りした後、2階へと上る。俺とスペが上がり切ったところで武士のような怪物は俺らに気づき、襲いかかってくる。

 

 

「来い、イフリート‼︎」

 

「来てください、モモタロウ‼︎」

 

 

俺とスペはそれぞれペルソナを召喚し、怪物へと向かっていく。

 

スペは日本刀を振り下ろしてきた怪物に金属製のバットで対抗する。

 

一方の俺はトレーナー室にあった防犯用の刺又で怪物を攻撃していく。

 

怪物はあまり強くはなく、苦戦はしなかった。

 

 

「トレーナーさん、グラスちゃんのところまではあとどのくらいですか?」

 

「もう少しくらいだ!だから、このまま休憩なしで一気にいくぞ‼︎」

 

「はい‼︎」

 

 

俺とスペはその後、次々と現れる武士の様な怪物を倒していき、城に入ってから約1時間程度で本丸のある場所に着いた。

 

 

「やっと着きましたね…!グラスちゃ〜ん!どこにいるの〜?」

 

「フッフッフ…その声、スペちゃんですね?」

 

「そうだよ!さぁグラスちゃん、私達と一緒に帰ろう‼︎」

 

「帰る?ここは私…いや、グラスワンダー自身が求めた理想の世界。グラスワンダーが理想に飲まれたままでは帰る事はできないのよ」

 

 

スペの呼びかけに対し、グラス(?)はそう言いながら奥の部屋の戸襖を開けてこちらへと歩いてくる。

 

だが、戸襖が開けられた時に見たグラスはいつものグラスとは違い、180cmくらい身長があるのではないかというくらいの大柄で頭に白い頭巾を被っており、背中には数十本の武器が入った籠を背負っている。

 

 

「あ…あなたは…?」

 

「私は天下無双の大和撫子・蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)です」

 

「グラスちゃんじゃない…?」

 

「正確には"もう1人の"グラスワンダーです。あなた達が助けたいグラスワンダーは私の後方にある部屋の中で鍛錬に励まれています」

 

「なら通してください‼︎グラスちゃんを早くここから出さないと‼︎」

 

「グラスワンダーが"自分の理想"に浸っている以上は返すわけにはいきません」

 

 

どうやらグラスワンダーを返す気はない様だ。スペが試しに一歩、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)の方へ歩いてみると蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)は背中から取り出した薙刀を取り出し、構えた。

 

待ってても時間の無駄だ。スペの時の様に実力行使でいくしかないらしい。

 

 

「しょうがない…スペ、こいつを倒してグラスワンダーの元へ行くぞ!」

 

「はい‼︎」

 

 

俺とスペはここで再びペルソナを召喚し、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)へと向かっていく。

 

 

「トレーナーさん、いきます!タルカジャ‼︎」

 

「スペ、ありがとう‼︎いくぞ、イフリート!」

 

 

俺はスペの放ったタルカジャという一定時間、味方の攻撃力を上げるスキルを浴びた後、イフリートの物理攻撃スキルのスラッシュで蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)を攻撃する。

 

しかし、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)はイフリートを上回る程の圧倒的なパワーで攻撃を弾き、薙刀の先端でイフリートの腹部を突く。

 

蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)のカウンターを受け、イフリートが消えてしまう。

 

 

「ぐっ……なら、コイツでいく‼︎来い、スライム‼︎」

 

 

俺は戦車のペルソナのスライムを召喚する。スライムの状態異常スキルのデビルタッチで蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)に恐怖の状態異常を付与する。

 

 

「スペ、決めるぞ‼︎」

 

「はい、トレーナーさん‼︎」

 

 

俺が再びイフリートにペルソナチェンジしている間にスペは蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)に向けて疾風スキルのガルという魔法攻撃を放つ。

 

スペが放ったガルは蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)に当たり、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)は少し体勢が崩れる。

 

「トレーナーさん‼︎」

 

「これで終わりだ‼︎」

 

 

俺はイフリートの物理攻撃スキルのスラッシュで蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)を攻撃する。スペが蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)の体勢を崩してくれていたおかげでスラッシュが蔵洲湾陀阿ぐらすわんだあに当たり、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)はその場に倒れた。

 

 

「終わったか…?」

 

「敵は動いていないですね…今ならグラスちゃんの元へ行けます‼︎」

 

 

俺とスペは蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)が倒れたまま動かないのを何秒か確認した後、グラスワンダーのいる奥の部屋へと向かう。

 

襖を開けて奥の部屋へ入るとそこには数え切れないほどの一位のトロフィーとグラスワンダーがいた。

 

 

「グラスちゃん‼︎」

 

「スペちゃんにスペちゃんのトレーナー…?何しに来たんですか?」

 

「グラスちゃんを現実に連れ戻しに来たの‼︎」

 

「…そう。でも、帰りたくはないわ」

 

「何で⁉︎」

 

「だって現実と違ってこの場所なら私が常に1番強くいられるもの」

 

 

グラスワンダーの理想は"自分が一番強くい続ける事"のようだ。

 

 

「強くい続けてどうするんだ?」

 

「それは勿論、勝ち続けて無敗のウマ娘になります」

 

「そうか……でも、今のグラスワンダーじゃ無敗のウマ娘になるなんて無理だな」

 

「そんな事はありません‼︎私は無敗のウマ娘になれます!」

 

「強くい続けるのなら…無敗のウマ娘になるなら…こんな理想にすがらずに現実で色んな経験を積め‼︎今のグラスワンダーからは"楽して勝ちたい、無敗のウマ娘になりたい"というものしか感じない」

 

 

俺は自分の理想にすがり続けるグラスワンダーに対して少し厳しく強めの口調でそう言った。

 

 

「……言われてみればそうかもしれません。無敗のウマ娘を目指すのであればこんな理想にすがるといった"楽をするような事"はしてはいけませんね。現実で色んな経験を積んで更にそこから努力を重ね、そうやって勝ち続けて無敗のウマ娘へと成っていくんですよね…スペちゃん、スペちゃんのトレーナーさん、ありがとうございます。私、現実に戻ります!」

 

 

俺の言葉が通じたのかグラスワンダーは現実に帰ると言った。

 

 

グラスワンダーのその言葉を聞いた蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)がゆっくりとその場に再び立ち上がる。

 

 

「現実に帰ればもう勝ち続ける事なんて出来ないぞ?」

 

「そんな事はやってみなきゃ分りません。とにかく、私が勝ち続ける為の第一歩としてあなたには消えてもらいます‼︎」

 

 

グラスワンダーは自分の薙刀を構え、蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)へと向かっていく。

 

 

「はぁぁ‼︎」

 

 

蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)はグラスワンダーの攻撃を避けるどころか受け入れていた。グラスワンダーの薙刀は蔵洲湾陀阿ぐらすわんだあの胸部を貫いた。

 

 

「その瞳、その戸惑いなき精神…これこそ理想という名の誘惑を打ち破り強さを得た証拠。グラスワンダー、手に入れたその強さを見失わないようにしてくださいね」

 

「分かりました」

 

 

蔵洲湾陀阿(ぐらすわんだあ)は最後、グラスワンダーを認めてから消えていった。

 

 

「はぁ、はぁ…終わり…ました」

 

「グラスちゃん⁉︎」

 

 

グラスワンダーは疲れからかその場に倒れ込む。俺は前のスペの時と同じようにグラスワンダーを背中に乗せて本を使い、異世界から出た。

 

体育館に着いた後、俺たちは帰路へつく。ウマ娘達の寮の前まできたところで俺はスペにグラスワンダーを任せてトレーナー寮へと帰り、家事を済ませてから眠りについた。

 

 

4月21日(金)

 

 

 

翌朝、アラームを消そうと俺がスマホの画面を見ると、LINEの通知が2件きていた。通知からはメッセージの内容が見れない設定にしているのでLINEアプリを起動してトークの内容を見る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

昼休みは空いているか?というスペからのメッセージだった。特に誰かと昼を過ごす予定はないので俺はスペのメッセージに"空いてるよ"と返す。

 

それから数分後に返信があり、一緒に昼ごはんを食べませんか?とスペが誘ってくる。

 

俺はスペともっと仲を深める絶好のチャンスだと思い、スペの誘いを受ける。

 

 

 

・昼休み…

 

 

「トレーナーさん‼︎」

 

「来たか、んじゃ食堂に行くか」

 

「いや、屋上に行きましょう!私、トレーナーさんの分もお弁当作ってきたので!」

 

「まじで⁉︎それは有難い‼︎」

 

 

俺は食堂でいつものように何かを頼んで適当な席で一緒に昼飯を食べると思っていたが、スペは俺と自分の弁当を作ってきていたようだ。水色の風呂敷に包まれた弁当を受け取り、スペと共にトレセン学園の屋上へ行く。

 

屋上についた俺とスペは屋上の中央にある6つのベンチのうちの一つに座る。

 

 

「お弁当開けてみてください!」

 

「分かった」

 

 

スペがそう言うので俺は風呂敷の結びを解き、弁当の蓋を開けて中身を確認する。

 

俺は全体が茶色な弁当だと予想していたが、その予想に反して中身は彩りがあり、美味しそうな見た目だ。

 

 

「お弁当…どう…ですか?」

 

 

 いまいちだ

 まぁまぁだ

→完璧だ

 

 

「完璧だ」

 

「良かったぁ…いつもより早く起きて作った甲斐がありました!」

 

「スペ自身も色々と大変なのに俺の為に弁当作ってくれてありがとうな!」

 

「いえいえ、トレーナーさんの為なら毎日作りますよ!」

 

「"毎日作ってくれる"かぁ…なんかスペが俺の嫁みたいだな」

 

「とととっ、トレーナーさん⁉︎そんなこと言われたら私、照れちゃいます…///」

 

「すっ、すまんな!とりあえず、スペの弁当食べる‼︎いただきます‼︎」

 

 

俺の不意に出た"嫁"というワードに顔を赤くするスペ。俺はそんなスペから少し妖しい何かを感じ取ったので"このまま話を続けていてはまずい"と話を切ってスペの弁当を食べ始める。

 

 

 

 

"星"のコミュがランク"2"に上がった。"星"のペルソナを生み出す力が増幅された!

 

 

 

 

その後、俺はスペと別れて自分のトレーナー室へと戻るのだがトレーナー室の扉の前にはエアグルーヴがいた。

 

 

「エアグルーヴ、何してるんだ?」

 

「待ってたぞ。貴様に話がある」

 

 

 告白か?

→スペの事か?

 

 

 

「スペの事か?」

 

「……昨日の貴様とスペシャルウィークについての事だ。貴様らは昨日どこにいた?」

 

「どこって…体育館だぞ?」

 

「嘘はつくな。体育館には誰もいなかったぞ」

 

「いなかったって…まさか、お前…」

 

「急に体育館を借りるなんて事をするからどんなトレーニングをするのか気になって体育館の入り口から中を見てみたんだ。そしたら、中には誰もいない」

 

 

どうやら、エアグルーヴは昨日俺とスペが体育館でどんなトレーニングをしているのかを見ていたようだ。

 

 

「えっとな……」

 

「正直に話せ。昨日はどこにいた?」

 

 

エアグルーヴの圧が凄い…人間パラメータの"度胸"がランク2なら圧に耐えられるが、俺はまだ"度胸"ランクが1だ…ここは正直に話すしかない。

 

 

「信じてもらえるかは分からんが、俺とスペは体育館内にあるVRウマレーターを使って異世界に行ってたんだ…」

 

「ふざけてるのか?」

 

「ふざけてはいない」

 

 

エアグルーヴはまともに聞いてくれていないが、その後に俺の泳いでいる様子のない真剣な目を見て少しは俺の話を信じる。

 

 

「まぁいい…次はちゃんとトレーニングするんだぞ」

 

「分かった」

 

「それじゃ私はここら辺で失礼する………また今度でいいが異世界の存在を証明できるものがあるなら見せてくれ」

 

 

エアグルーヴはそう言って俺の前から去っていった。エアグルーヴが理解力のあるウマ娘で助かった…

 

 

 

エアグルーヴとの話が終わり、俺は仕事に戻る為にトレーナー室へと入る。椅子に座り、デスクの上に置かれたパソコンを開くとまたまたVRウマレーターの注文画面が開かれていた。

 

今までならまた胡散臭いものを…なんて思っていたが、よくよく考えてみると買った方が体育館を借りて誰かにバレないように気をつけながらVRウマレーターを装着するというような手間が省けるので俺はVRウマレーターを自分のとスペそして今回、ペルソナの力を得たグラスの分で合計3つのVRウマレーターを購入した。

 

 

俺がVRウマレーターを購入して今日のトレーニングメニューを決めていると、誰かがトレーナー室の扉をコンコンと軽く叩く。

 

 

「入っていいぞ〜」

 

「失礼します」

 

 

入ってきたのはグラスワンダーだった。授業がそろそろ始まるというのに俺のトレーナー室に来てて大丈夫なのだろうか?

 

 

「グラスワンダーか。どうした?」

 

「あの…昨日はありがとうございました」

 

「無事で良かったよ。体の調子はもう大丈夫なのか?」

 

「はい、スペちゃんが献身的にしてくれたおかげで体の調子はすっかり良くなりました!」

 

「そうか、そうか」

 

「…で、なんですがスペちゃんのトレーナーさん。スペちゃんのトレーナーさんはチームというのに興味ありませんか?」

 

「チームか。何となくは聞いたことはあるが…」

 

「とにかく、スペちゃんのトレーナーさんがチームを作ってくれれば私もそこに入れるので…」

 

「要は俺の元でやっていきたいって事か?」

 

「はい…今のトレーナーさんとは既に話はつけました。移籍は認めてくれています」

 

「"既に話はつけてある"って早いな⁉︎…まぁ、それなら俺はチームを作るしお前を歓迎するぞ」

 

「ありがとうございます!ところで、チーム名はどうするんですか?」

 

「それはまた皆集まった時にでも決めよう」

 

「分かりました。あっ、もうこんな時間!私、授業あるので失礼します!」

 

 

グラスワンダーはここでようやく時計を見て今が授業の開始ギリギリである事を知り、トレーナー室から出ていく。

 

 

「…チームか。少しばかり賑やかになりそうだ…」

 

 

俺はそう言いながら理事長に提出する"チームを作るにあたっての申請書"の作成を始めるのだった…

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