DQ3 いろは伝奇   作:越路遼介

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第三十八話 魔の島上陸

 リムルダール北西端、ここにいろはとアレル一行は到着した。今、彼らの立っている岬から魔の島に及ぶ海峡。それはまさに荒れ狂う大海原だった。しぶきをあげる激流、水面に煽られ逆巻く強風。痛いほどの轟音がいろはたちの鼓膜に響いた。

「すげえ激流だ。こりゃ確かに橋でもないと渡れないな」

 岬の上から激流に息を呑み見つめるホンフゥ。そしてアレルは自分の道具袋から『虹のしずく』を取り出した。

「いよいよですね…」

『虹のしずく』を握りしめるアレルにいろははつぶやく。

「ああ…いよいよだ…」

『虹のしずく』を両手で握り、アレルはルビスに祈りを捧げた。

 

(大地の精霊ルビスよ。我らを魔の島に導きたまえ!!)

 

『虹のしずく』はアレルの祈りに応えるがごとく、七色の光を放ち始めた。

「行くぞみんな! 目指すはゾーマの首ひとぉつッ!」

「「おおッ!!」」

 五人の仲間たちはそれぞれの武器を掲げた。もう後戻りは出来ない。今、自分たちはこの世界の運命を左右する戦いに身を投じるのだ。ステラはサスケより新たな力を与えられた『イナホの剣』をギュッと握った。

(偉大な先輩! 私に力を!)

 そしてカンダタは道具袋と別の袋に入れてある何かに触れた。

(すまねえな…ガライ…)

 

『虹のしずく』から放たれた七色の光は、やがて虹の橋となり、暗闇のアレフガルドを七色に照らす。魔の島とリムルダール大陸は今、繋がったのである。

「すごい光だ…。親父がこれを見て、この橋で魔の島に渡ってくれればいいんだがな。いや、今は親父のことはあとだ、あと!」

 

 パーティーはアレルを先頭に橋を渡り始めた。虹の橋だが、この橋はまるで丈夫な石橋を思わせるように強固だった。マリスは思わずスキップをしてしまう。

「虹の橋を渡るなんて、もう一生ないよね。味わっておかないと!」

 しかし、視力のいいホンフゥとカンダタは額から脂汗を落としていた。魔神の斧の柄をギュッと握り、カンダタはツバを呑んだ。

「のん気なこと言っている場合じゃないぞ。見ろ!!」

 

 魔の島、北東端の岬が橋の上から見え出した頃、アレルたちは戦慄した。そこには無数の赤い光が見える。勇者一行の到着を今か今かと待ち構えているモンスターの群れであった。

「ちっ、橋の上を登ってきやがらねえ。橋が手狭で俺たちと相対できる数も限られてしまう事を心得ていやがる」

 忌々しそうにホンフゥは言葉を吐いた。モンスターたちはこの聖なる力で作られた橋に足を踏み出すことができないのかもしれないが、この幅が広いとは言えない橋に登り、アレルたちを橋の上で迎え撃とうとはしなかった。ジッといろはとアレルの到着を待っていた。到着と同時に一斉攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。

 

 先頭のアレルは立ち止まった。

「どうするいろは、ここからミナデインで連中を掃討するか」

「無理ですアレル。あの赤い光から言って、魔物の数は三百以上かと。全力のミナデインを使っても半数程度の掃討が限度。その後、力を大きく削がれた我らが残りの魔物に倒されるは必定、ここでは使えません」

「アレル、俺たちは魔の島北東端に陣取り、円陣を以って迎え撃とう。背後にこの激流があるのは仕方ないが、モンスターに背後に回られるよりはいいだろう」

 ホンフゥ、マリス、ステラもカンダタの意見に賛成し、うなずいた。

「よし、あの岬に陣取り、円陣を以ってモンスターを倒す。マリス、いろは、今のうちに俺たちに攻撃、防御補助呪文を」

「分かりました」

 いろははパーティーにピオリムとフバーハを唱えた。

「みんな、いっちょ気張ろう! 敵城の入り口でつまずくなんて、私嫌だよ」

 マリスもパーティーにスクルトとバイキルトを唱えた。

「行くぞお!」

 アレルの号令と共に、仲間たちは魔の島北東端の岬に陣取り、瞬時に円陣を執った。

 

「ギャオオオ!!」

「クエエエッッ!!」

 モンスターの大軍がパーティーを襲う。あらかじめ攻撃、防御の補助呪文を唱えていたことが功を奏し、最初の第一撃のモンスターたちは一瞬でアレルとステラの剣の前に倒れた。さすがはサスケが造り上げた名剣である。

 しかし、この一撃を見てモンスターの大群はやみくもにパーティーに突出しなかった。そしてアレルは戦場をキョロキョロと見渡している。

「何をしているアレル! 第二波に備えろ!」

 カンダタが落ち着かない様子のアレルを叱る。もしかしてこの戦場においても父親のことを気にしているのではと思ったからだ。しかし、アレルは今までこの五人を率いて修羅場を潜り抜けてきた勇者。アレルが戦場を見渡しているのは違う理由だった。

「モンスターの統率が取れている。指揮官を探すぞ! 見つけられれば離れていようがピンポイントで俺がギガデインお見舞いしてやる! マリス、カンダタ、指揮官を検索してくれ!」

「ラジャー!」

 マリスは『タカの目』を応用して、周辺を見る。

「よし分かった」

 アレルを見くびったことを心の中で詫びたカンダタもまた、大将アレルの指示に従い、『タカの目』を使い魔の島の様子を伺った。

 

 だが続いて第二波、第三波、第四波、そして怒涛の波状攻撃が開始された。敵の指揮官はアレルがカンダタ、マリスに自分を探させていると察し、『タカの目』を使うゆとりを与えようとしない。しかもモンスターの数は一向に減らない。いや、実際にはアレル、ステラ、ホンフゥ、カンダタの剣、拳、斧。いろは、マリスの呪文で倒されているモンスターはいる。死体も転がっている。だがいろは側はたった六名。モンスター側は三百以上の大群である。アレルたちが敵の数の減少を認められないのも無理はない。

「くそっ ゴメン、アレル! とてもじゃないけど指揮官を見つけられるゆとりがないよ!」

 肩でゼイゼイと息を切らすマリス。カンダタも『タカの目』を使うゆとりはもうない。目の前の敵を倒す事で精一杯である。アレルは仲間たちに指示を出す合間もなく、魔法力を温存しながら戦っていたマリス、いろはの魔法力も見る見るうちに減少している。

「アレル! やはり敵が多すぎます。撤退を!」

 いろはが苦渋の選択をアレルに訴えた。いろはの魔法力は残り少なく、あれほど手になじんでいた『クシナダの薙刀』も重く感じてきた。

 

「やむをえない! ルーラ!」

 だが魔法が発動しない。

「な、なんだ? ルーラ!」

「ア、アレル、あなたマホトーンを!?」

 パーティーの士気が一気に落ち始めた。アレルがマホトーンを被っている以上、もはやミナデインも使えない。いろはが周囲を見渡すと、マントゴーアが数体見える。並みの魔法使いよりはるかに効果が強大なマホトーンを使う事はルビスの封印を解いた、あの塔で知っている。

「くッ、あれが戦いの喧騒にまぎれてアレルにマホトーンを…それではマリスや私も」

 イヤな予感が当たった。アレルが呪文を唱える事ができないと知ったパーティーに一瞬の隙が生じたのをマントゴーア数体は見逃さなかった。いろは、マリスも呪文を封じられた。

 道具袋からキメラの翼をさがすゆとりも無い。その時、追い討ちをかけるように、ドラゴン五頭がパーティーを急襲した。しかし、ドラゴンの狙いはアレルたちを倒すことではなかった。炎を吐きながら突撃してくるドラゴンに思わず身をそらす六人。アレルの指示も間に合わなかった。その隙を逃さず、ドラゴンの腹部に張り付いていたソードイドがパーティーの円陣に入り込んだ! パーティーは分断されてしまったのだ。

「しまった! 間に!?」

 アレルがそう叫んだ瞬間だった。

「キャアッッ!!」

 ドラゴンの炎で体勢を崩していたステラめがけてソードイドは六本の剣を素早く振り下ろした!

「そうはさせるか!」

 カンダタがステラの前に立つ。

 

 ズバアアアッッ!

 

「ぐああッッ!!」

「兄貴!」

 マリスの目に、剛勇な兄カンダタの切り裂かれる光景が見えた。カンダタは五本の剣ははじき返したが、残る一本の斬撃を防げなかった。しかもその一本の剣撃は痛恨の一撃となり、カンダタの左足を切り裂いたのだ。

「ぐ…左足が…」

 左足の大腿部が鋭く切り裂かれ、骨も露出している。出血もはげしい。

「カンダタ! 私のために!」

 あまりの事態に自分が魔法を封じ込まれているのも忘れて、回復魔法を持ついろは、アレルがベホマの呪文の詠唱を始めるが、モンスターに阻まれ最後まで唱えられない。カンダタに回復呪文を唱える事ができない。マリスも『賢者の石』を使うゆとりが与えられない。

 

「くそ! ゾーマの城は目の前だと言うのに!」

 無念そうにホンフゥは叫ぶ。その時だった。カンダタが言った。

「おまえら…先にいけ…」

「バカなこと言わないで!」

 カンダタの左足に包帯を巻くステラは思わず怒鳴った。

「いいから行け!」

 そのステラをカンダタは突き飛ばす。

「カンダタ…」

「俺がこれで敵を引きつける…」

 フラフラと立ち上がり、カンダタは皮袋からあるものを出した。

 

 いろはは驚愕してそれを見た。

「…! カ、カンダタ、もしや、それ…!?」

「すまねえ…いろは…。もう盗みはしないという、お前との約束を破っちまった…。大盗賊カンダタ…最後の獲物よ!」

「ガライの『銀の竪琴』…カンダタ…まさか!?」

 アレルは強烈にガライの言葉を思い出す。ガライ以外の者が演奏すれば、敵を退かせるどころか、その身に引きつけてしまうことを。実際にカンダタを始め、アレルたちも試しているのだ。そして例外なくモンスターを引き寄せてしまった。ガライに『だから言ったでしょう』と言われながら。

だから、この局面でそれを使えばどうなるか。

「や、やめろ! それを使うな!」

「兄貴やめてよ!」

 マリスは泣きながらカンダタを止めた。フラフラと岬の端に歩くカンダタを彼女はすがりついてでも止めたい。しかしモンスターに邪魔されてそれもできない。ホンフゥは殴ってでもカンダタの行為を止めたかった。しかし彼もアレルもいろはもマリスも、モンスターに道を阻まれできない。

 一番近くにいたステラは立ち上がり止めようとする。しかし大魔神がそれを阻む。

「くそ! どけこのデカブツ!」

 イナホの剣で大魔神を両断するが、大魔神は後から後に続いてくる。

「ちくしょう! どけ! どけよおお!!」

 

 カンダタは止まらない。竪琴を弾いて自分にモンスターを寄せて、海に飛び込み道連れにする気なんだと分かった。

「カンダタ…やめて…私を一人にしないで…」

「すまねえ…もうこれしかねえ…。こいつを使うしかここを突破する術はねえんだ…」

 

 カンダタにもモンスターが迫る。だが彼は片足を引きずりながらも魔神の斧を振り、竪琴を弾く間を作った。

「俺はもう戦えねえ…。ならば…」

 血に染まる手で不器用にカンダタは『銀の竪琴』を弾いた。整っていない旋律が戦場に流れた。

 

 モンスターの瞳が一層に怒りの色を示し、一斉にカンダタを睨みつけた。

「グアオオオオッッ!!」

「ギャオオオ!!」

「クエエエエッッッ!!」

 

 アレル、いろはの周りにいたモンスターも一斉にカンダタに突進した。

「へっ…やっぱり…仲間との誓いを破り、盗んだ竪琴じゃ、だめだよなぁ…」

 フラフラとカンダタは岬の突端に立った。

「この激流に飲まれりゃあ…モンスターどもも終わりだろう…」

「兄貴! だめだよ! 死ぬならみんな一緒でないと意味ないじゃんかあ!!」

「そうもいかねえよマリス…」

「兄貴ィ…」

「先に逝く兄を許せ…。アレルと幸せになるんだぞ…」

「カンダタ…やめて…やめてえ!」

 泣き叫ぶステラにカンダタは振り向いた。そしてニコリと笑って言った。

「ステラ! お前に会えて、最高の人生だった! じゃあな!」

 

 シュッ!

 

 カンダタは海に飛び込んだ。モンスターもそれを追い、次々と激流に飛び込んだ。カンダタもモンスターもこの激流に呑まれていった。

「「ああっ!」」

 カンダタを止めようと急いで駆けたアレルとホンフゥ。しかし間に合わなかった。

「カンダタ――ッッ!!」

「兄貴――ッッ!!」

 ステラとマリスは泣きながら絶叫した。

 

 クシナダの薙刀を地面にボトリと落とし、いろはは膝を折った。涙が頬を伝わる。

「う、ううう…」

 今までの喧騒が嘘のように、魔の島は静かだった。

「な、なんてこった…」

 ホンフゥはガクリと大地に手をつき、そして泣いた。アレルは呆然とカンダタが最後に立っていた岬の突端を見つめていた。そして崩れる。

「俺が…俺が…マホトーンなんて食わなければ…」

 冒険時、一度も涙を見せなかったアレルは泣き崩れた。

「ちくしょう…ちっきしょう…」

 

「バカ…バカ―――ッッ!!」

 初めて自分が好きになったカンダタ。彼は自分をかばい負傷し、そして仲間のため散った。ステラは許せなかった。カンダタと自分自身が。思わず出てしまった『バカ』と云う言葉。それは彼女が自分自身にも言っている言葉なのだろう。

 マリスは涙も出なかった。ただ呆然としている。幼い自分を拾い妹にしてくれて可愛がってくれた兄カンダタ。貧しく食べ物が無いときは何も食べずに笑って自分にパンをくれた優しく強い兄。

 彼女はその兄が死んだと信じたくなかったのだろう。カンダタの流し落とした血痕を見つめて、立ち尽くしていた。

 

 しかし、そんなパーティーの心痛をあざ笑うかのように、『銀の竪琴』にただ一人踊らされなかったモンスターがイオナズンをパーティーに放った。

 

 ドオオオン!

 

 いち早くそれに気づいたアレルが『勇者の盾』でそれを防いだ。

「クックククク…まさか『銀の竪琴』をお持ちとはね…」

 赤い法衣に身を包む魔道士が戦場の中心に立っていた。

「貴様がモンスターの指揮官か!」

「いかにも…我が名はアークマージのゼルスト。以後、お見知りおきを」

 怒りに身を震わせるアレルとホンフゥがゼルストに対した。

「以後なんてねえよ…。貴様はここで死ぬ…」

「仲間が死んだ恨みとでも? だとしたら筋が違うのじゃないかね? 彼は自ら死を選んだのだよ。君たち仲間を助けるため? 馬鹿馬鹿しい。そんな三文芝居の美談なんて耳と目が腐るわ!」

 

「もういっぺん言ってごらん…」

 ステラは静かに立ち上がり、ゼルストを睨む。

「何度でも言ってやろう。あの男のやった事はただの三文芝居のクソ美談モドキだ。それにどうせ、お前たちはここで死ぬ。あの男は犬死さ! フッハハハハッ!」

 

 ゴオオオオッッ!

 

 ドオオオン!

 

「グアア!」

 マホトーンが解けていたマリスのメラゾーマがゼルストに直撃した。

「言いたいことはそれだけか。クソ野郎!」

 ゼルストが自分の衣服についた炎を消し、アレル一行を睨むと、彼らはもうゼルストを見ておらず付近の海辺を見渡し、必死になってカンダタを探していた。

「ふん、我を無視するか。それもよかろう。我もこの場は退くしかあるまい。次にあった時がキサマらの最期だ」

 いろはがジロリとゼルストを睨んだ。

「次などありません。あなたはすでに死んでいます」

「なに?」

「メラゾーマ直撃と同時にステラの剣があなたを斬り裂いたことを気づかなかったのですか?」

「…ふん、そんなつまらんコケおどしにひっかかると思うか小娘。城の中で改めて貴様らを迎え討ってやる。その時こそが…」

 ゼルストは急に目が見えなくなった。

「な、なんだ?」

 ゼルストの体は縦から真っ二つに切れ始めた。

「そ、そんな! 我がこんなところで! グアアアッッ!!」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ステラとマリス、アレルとホンフゥもカンダタの飛び降りた岬と海辺を必死に探し回っていた。しかし魔の島周辺の海は言語に絶する荒波。あれだけ多数いたモンスターさえ一頭も浮かんでこないのに、足に重傷を負っていたカンダタが浮かんでこようはずもない。

 認めるしかない現実がパーティーにのしかかった。兄カンダタの血痕のついた地をマリスは握り締めた。

 

「ステラのため…仲間のために死ぬなんて兄貴間違っているよ…。残された者の痛みなんか分かっていないじゃない! 兄貴のバカ! バカ…!」

 ステラは岬の突端で海を見つめていた。

「ねえカンダタ…私たち騙されないわよ…。本当はどこかに隠れていて、私たちを驚かせようとしているんでしょ? 全く子供なんだから…もう気が済んだでしょ? 私たち十分驚いたから…ね?」

「ステラ…」

 いろははステラの後姿を見ることが出来なかった。自分ももしホンフゥがあんな最期を遂げたらどう思うだろう…。かける言葉も見つからなかった。

「ねえカンダタ出てきなさいよ!お願いだから『なんちゃって、驚いたか?』と笑って出てきてよお! 出てきてよお…う、ううう…」

 号泣するステラを無念に見つめるパーティー。誰もが自分を責めた。だがカンダタが作り出してくれたゾーマの城への道。無駄には出来ない。これで撤退したらゾーマは再び魔の島にモンスターを配備するだろう。この機を逃すわけにはいかない。アレルは心を鬼にした。

「ステラ、マリス…カンダタが作ってくれたゾーマの城への道を無駄にするわけにはいかない。前進するぞ」

「…うん、そうだね兄貴が必死になって作ってくれた道だもの…進まなきゃ…」

 自分のマントにマリスは兄カンダタの血痕をつけた。悲しみを振り払い、マリスはアレルに応える。しかしステラはまだ岬に座ったままである。

「……」

 マリスが歩み寄った。

「ねえステラ…兄貴が命を賭けて私たちに道を作ってくれたんだよ…行かなくちゃ…進まなきゃ…」

「…分かった…」

 フラリとステラは立ち上がった。顔に生気は感じられない。魂の抜け殻のようだった。

 

「ホンフゥ」

 アレルはホンフゥに耳打ちをした。

「分かった」

 パーティーは悲しみを引きずりながら城へと歩き出した。ホンフゥはステラの脇に位置した。ステラは今、戦える状態ではない。しかしこの地に置いていくわけにもいかない。アレルはゾーマと対峙するまでステラが覇気を取り戻してくれることを祈り、ホンフゥをステラのフォローに配置した。

 カンダタの死はアレルたちに深い悲しみを与えたが、ゾーマやその配下のモンスターはそんな彼らにも残酷に襲ってくるだろう。いろははカンダタの最期の地となった岬に祈りを捧げた。

「カンダタ…私たちを見守っていて下さい…」




 カンダタが銀の竪琴を奏でて、モンスターを引き寄せて海に飛び込むシーンはドラクエ3のCDシアターより、そのまま使わせていただきました。カンダタ役の神谷明さんの熱演に痺れた私は、どうしても作中に入れたかったシーンなんです。
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