DQ3 いろは伝奇   作:越路遼介

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第七話 戦士ステラ

 いろははようやく、ルイーダの店への登録が出来るほどの僧侶となった。この頃にはルイーダの酒場の居候ではなく、修道院の寄宿舎へと移り住んでいたが相変わらず僧侶としての修行のかたわら、酒場の給仕をしていた。ここで魔王を倒すための仲間を見つけるためであるが、一向にそれに相応しい冒険者は現れなかった。

 正しく言うと一人は決まっていた。アレルである。しかし『勇者』はルイーダの酒場に冒険者として登録不可。だから僧侶のいろははルイーダの酒場を経てアレルを仲間に出来ない。

 

 いろはもアレルの武勇は伝え聞き、知っていた。齢十五歳で、先の海戦では武勲随一であるほどの戦闘能力。その強さにさらに場数と経験が加われば、まさに一騎当千の剛の者となり、加えて三番船で見たアレルの人柄。ことさら自分の強さを誇らない彼は若年にありながらも将器を備えていると、天性の王佐の才を持ついろはは見ていた。

 だが、そこまでの力を持ちながら彼はどうして魔王打倒に立たないのだろうと少しじれったくも感じていた。ジパングにも伝わる勇者オルテガの武勇、いろはもひみこ、サスケも敬意を払っていたものだった。その一人息子のアレルも武勇はまさに『勇者』の父の名に恥じない。だがアレルは動かない。彼が魔王討伐に立つのなら、喜んで犬馬の労を取ろうとしている彼女にとっては歯がゆくてならなかった。無論、自分の目的を遂げるためでもあるのだが。

 

 実を云うと、アレルは十四歳の時に旅立とうとしたことがあったのだ。それはオルテガの従者がアリアハン城にもたらした『勇者オルテガ様はネクロゴンドの火口に落ち、亡くなられた』と云う、あまりに悲しい知らせ。従者はそれを国王ゴードンに報告すると絶命した。

 そして、その悲報を城の使者より聞かされた時であった。アレルは泣き崩れる母のルシアに目もくれず、剣を握り単身でアリアハンを飛び出していった。それをロイスやかつてオルテガの部下だった兵が慌てて連れ戻したのだ。

 アリアハンでは十六歳で『成人』と見なされる。父の無念を晴らしたいと願うアレルに国王ゴードンは二年後の旅立ちを許したのだ。そんなアレルの事情をいろはは知るよしもない。

 

 アレルは現在、十六歳の誕生日を心待ちにしながら、日々稽古に励んだ。もはやロイスの元を離れ、自宅で行っている。夜は世界の国々について書物を読んで過ごし、気晴らしには釣りをやっていた。

 

 そんなある日、酒場の入口を掃除していたいろはの元にアレルが訪れた。とうとう魔王打倒の旅に発つのだろうか!と、いろはは一瞬期待に喜ぶがそれは見事に破られた。

「ルイーダいる? 魚買って欲しいのだけど」

 大漁だったのだろう。魚籠に入りきらないほどの魚をぶら下げている顔は得意気だった。

「…マダムは留守です」

「あ、そう。弱ったな。魚痛んじゃうよ」

「…アレル」

「ん?」

 いろははアレルを静かに見つめた。

「貴方はどうして強き者の役割を果たそうとしないのですか?」

「…………」

 この言葉でアレルはいろはの言いたいことが分かった。

「そっか、君がジパングから出てアリアハンを目指した理由はそれか」

「…我がジパングは魔王バラモスの手下の邪竜に滅ぼされました。姉と…兄、父、師とも思っていた方までも死にました。邪竜はもちろんのこと魔王バラモスも絶対に許せない」

「そのためには仲間が必要だ。君は、ここルイーダの酒場でそれをしようと」

 いろはは頷く。

「それじゃ今のままではダメだ」

「今のまま?」

 アレルは語った。かつて父の無念を晴らすべく旅立とうとして止められたこと。そして国王から十六歳になったら旅に出てよいと許可を得ていること。そして今、その誕生日に向けて色々準備をしていること。ただ難点はいろはと同様に過酷な旅を同行しえる仲間の目星が無いことであった。

 

「ならば、私を仲間にして下さい。回復呪文に加えて薬草知識は自負するものがあります。さらに真空呪文も修行して…」

「だから、今のままではダメというのは」

 アレルは一瞬で腰に差していた剣を抜き、いろはの喉元に切っ先をつけた。そればかりか、いろはの持っていたほうきの柄の部分が綺麗に切れていた。全く見えなかった。アレルの剣。

「あ…」

「こういうことだ。いかに回復呪文、攻撃補助呪文を身につけても、肉弾戦で全く戦えない者に用は無い。こちらの命が危くなるからな。俺が旅立つまであと四ヶ月。『頼れる仲間』に何としてでもなってもらう。明日から修行だ」

 アレルは剣を収めた。

「それじゃ酒場にいるルイーダにこの魚を渡しておいてくれ」

 アレルは立ち去った。そしていろははそのアレルの背中を見て確信した。

(サスケ…見つけました。仲間を。彼となら、彼とならバラモス、オロチを倒せます! 天から見守っていて下さい…)

 

 

 いろはは翌日からアレルと修行に入った。昨日はふいをつかれアレルに不覚を取ったものの、いろはも戦闘には心得があった。ジパング伝統の武芸である『柔術』を上級者とまではいかないが体得していたのだ。サスケがこの柔術の達人であったので少なからず教えを受けていたのである。

 アレルの剣術はオルテガ流であり、剣と呪文を同時に操り、盾をも突進してくる敵に対して打撃の武具として使う。そして蹴り技と、攻防一体となったものである。

 いろはに蹴りを放った瞬間、軸足にあっさり足払いを受け、バランスを崩した時にいろははアレルの懐に入り担ぎ上げて投げ落とした。『背負い投げ』である。そして倒れたアレルの左腕を取り関節を極めた。

「イタタタタタッッ!!」

 いろははアレルの左腕を離してニコリと笑った。

「合格かは分かりませんが、こうして貴方の云う『肉弾戦』の心得もあります」

 アレルは一瞬あっけにとられたが、すぐ興奮気味に立ち上がり

「すごい、すごいよいろは! 今の武術なんて言うのかな! 教えてくれよ!」

 アレルは素直にいろはの実力を認め、柔術を教えてほしいと頼み、さらに、

「俺の方からお願いするよ。いろは、俺と一緒にバラモスを倒そう。今はお互い未熟で、とうていヤツには敵わないけど、修行と経験を踏めば勝機はある。いや勝たなくてはいけないんだ。そのためには是非いろはの協力が必要だ。頼む、俺の仲間となってほしい」

「は、はい! 喜んで!」

 二人はお互いの手を握り、仲間として固い絆を誓った。後の世に『最強のナンバー2』と称される僧侶いろはは勇者の仲間となったのである。

 

 

 旅立ちに向けて、二人の修行は続いた。現時点ではバギ系の呪文を使うことができないいろははアレルから剣と蹴り技を学び、アレルはいろはから柔術を学んだ。

 そして棚上げしていた問題、仲間が見つからない。二人だけの旅では心もと無いのだが、相変わらずルイーダの酒場にバラモス討伐の旅を共に出来る冒険者は現れなかった。

 アレルは『道中で探すのもいいだろう』と楽観的に構えているが、冒険者の基本行軍と言われている四人編成パーティーでいろはは旅立ちたいのである。冒険の序盤でも何が起こるか分からない。

 

 それにアリアハンの情勢は風雲急を告げていた。ある晩にアリアハン船団の船やその他の民間船すべてが焼き払われてしまった。マーマン族の残党による報復であった。いろはがジパングから乗ってきた小船に至るまで燃やすと云う徹底ぶりであった。

 船を作ってもらう金を二人が持っているはずもなく、アリアハン大陸のどこかに点在すると云われる『旅の扉』を使って大陸から出るしか方法は無い。文献から所在地はある程度判明しているものの、そこに至るまでの道のりは容易ではないだろう。二人では危険だといろはは感じていた。

 

 いろはの思案を聞き、もっともだと思ったアレルは騎士や兵士のいる城で探してみようといろはに提案し、二人は城に向かった。

「この国に来て初めてお城に来ましたが…立派なものですね…」

 城の荘厳さに、いろはは見とれていた。だが兵士たちは船を燃やされたショックで元気が無かった。アレルはその様子を見てため息をついた。

「これじゃ一緒に旅をしてほしい、なんて言いづらいな…」

 いろはも同意見なのか、無言でうなずいた。二人はしばらく城内を歩いていたが、あまり騎士や兵士に会うことが出来なかった。

「あ、そういえば今は昼食時だ。みんな食堂かな、行ってみよう。ついでに俺たちも食べようぜ。食券なら持ってきたからいろはにもご馳走するよ」

 そういえば、いろはも空腹だった。

「ええ、ご馳走になります」

 

 

 アレルの見込み通り、城内の騎士や兵士は食堂で食事をとっていた。アレルは配膳のカウンターから料理を持ってきてテーブルについていたいろはに渡した。

「美味しそう…」

「そうだろう? アリアハン城の料理は美味いんだぜ。さ、食べよう」

 アレルは食堂に入るとロイスとステラを探したが姿が見えなかった。もう食べ終わってしまったのかなと思いながら料理を食べていた。いろはも美味しそうに食べている。なんかデートみたいだな、とアレルは考え、少し微笑んだ。

 

 食べ終わり、アレルといろはが食後のお茶を飲んでいる時であった。隣のテーブルに座っていた騎士たち、アレルにとって聞き捨てなら無い会話が聞こえてきた。

「しかし団長も気の毒にな…。三番船を焼失しただけでも辛いのに、奥さんがあんな大病を患ってよ。もう長くないんだろ?」

「らしいな。団長が蓄えを放出して、国中の医師に見させたがダメだったそうだからな。娘のステラも元気が無くてな…。見てられなかったぜ」

 その会話を聞くとアレルは思わず茶を吹き出した。

「きゃあ!!」

 いろはに少しかかってしまった。

「あ、ご、ごめん!」

 アレルはいろはに軽く謝ると、すぐに会話の主たちに詰め寄った。

「おい! 今の話は本当か!!」

 いきなり隣のテーブルから詰め寄ってきた少年に騎士たちは驚いた。

「な、なんだお前は?」

「だから師匠、じゃなくてロイス団長の奥さんが大病って本当なのか!?」

「…本当だよ」

 アレルはアリアハン海戦以後、ロイスとは会っていなかった。今度会う時は冒険出発を報告する時と決めていたからだ。

「なんてこった!!」

 アレルはいろはを食堂に置きっぱなしで飛び出して行った。

「あ! アレルちょっと!!」

 あわてていろはも追いかけていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ハアハア…あなた…もう苦しむのは嫌…一思いに殺して…」

「エレナ…」

「母さん…」

 ロイスの妻、そしてステラの母、エレナは大病に苦しんでいた。高熱を発し、激しい下痢と嘔吐。刺すような激痛が全身を走り、みるみる痩せていった。

「お願い…あなた…もう殺して…」

 意を決し、ロイスは剣を握った。

「わかった…。今、楽にしてやるぞ…」

 ステラはロイスを止めた。

「ダメ! ダメだよ父さん! そんなの嫌だよ!!」

「…どけ、ステラ、俺はもうこれ以上見ていられない…。母さんを楽にしてやりたいんだ」

 ステラは退き、ロイスは剣の切っ先をエレナの喉元に突きつけた。だがロイスにはできなかった。望まれようと、苦しみから解放してあげたかろうと、ロイスにはできなかった。

「く…」

 剣が床に落ちた。

「すまん…エレナ…」

 ステラがその剣を拾い、そして床に叩きつけた。

「ちくしょう! いくら剣が強くなったって母さんを苦しめる病魔を倒すことができないじゃないか! 何が戦士だ! 何が戦士ステラだ! ちっきしょう…!」

 ステラとロイスは病魔を退けてやれない無念さに泣いた。病魔はそんな二人をあざ笑うかのように、エレナに激しい苦痛と吐血を与えた。

「グハッ、ゲホッ、あ、あなた…お願い…」

 ロイスは再び剣を握った。

「エレナ!」

 剣の切っ先が喉めがけて飛んでいくその時だった。アレルがその手を掴んだ。

 

「アレル…?」

「早まってはダメだ師匠! 最後まであきらめるなといつも言っていたじゃないか!」

 ステラはアレルと同行してきた少女を見て激怒した。

「アレル! アンタ、シスター連れてくるなんてどういう了見よ! 母さんは死んでなんかいない! 死ぬもんか!!」

 いろはは自分の衣服がシスターの装束だったので、いらぬ誤解を受けたことを恥じた。

「いえ、私はアレルの仲間で…」

「そんなことはどうでもいい! 縁起でもない! とっとと帰れ!!」

 ステラには取りつく島もない。誤解を解くことをあきらめたいろははエレナを見つめた。

「…良ければ、私に奥様を診させてはもらえませんか?」

「…君が? 見たところシスターのようだが、エレナは回復呪文さえ受け付けない体となっているのだぞ。無理だ。帰ってくれ」

「ならば回復呪文を受け付けられる状態にいたします。アレル、熱湯と水差しを用意して」

 

 アレルは台所へと駆けて行った。いろはは自分が携行している袋から何やら取り出し、そして苦痛に暴れるエレナの左手首をギュッと握った。するとエレナは暴れなくなった。激痛も少し引いたのか、やや安堵の表情が見えた。

「な、何をしたのよ!」

 ステラはまるでマジックでも見たかのように驚き、いろはに詰め寄った。

「ジパングに伝わる体術です。苦痛で暴れる患者はこうしておとなしくさせるのです」

 あらゆる体術を会得しているロイスでさえ知らない技であった。魔法のようで魔法ではない技。

「君は…」

「私はアレルの仲間でいろはと云います。今は僧侶となっていますが故郷ジパングでは医者をやっておりました」

 

 アレルが鍋に水を入れて持ってきて魔力ですぐ熱湯にした。水差しが見つからなかったので、また台所に戻ろうとするアレルに『鍋をもうひとつ』といろはは指示を出した。いろはは折りたたんだ圧布から『針』を取り出し、熱湯に入れて消毒をした。

「針なんか…何に使うのかね?」

「こうするのです」

「な、何するの!」

 いろははエレナの体に針を刺し始めた。止めようとするステラにいろはは

「黙って見ていなさい」

 思わず気圧されてステラは何も言えなかった。彼女が自分より年少の女性に気圧されることなんて初めてのことであった。

 

「…呼吸が…呼吸が整ってきている…」

 ロイスは唖然として いろはの治療を見つめている。

「気脈が通り始めたわ…」

 やがてアレルが水差しと、もうひとつの鍋を持ってきた。鍋の中に、いろはは袋から出した乾燥した木の実の種、樹皮、木の根、薬草、キノコ等をいれて水を張り

「アレル、沸騰しない程度に熱して」

「分かった」

 薬湯ができ上がり、飲みやすい温度にするため少しの水を入れて白湯に。水差しに入れた。

「アレル、奥さんを座位にしてくれる」

 ロイスとステラは淡々と治療を行ういろはをただ茫然として見つめていた。見たことも聞いたこともない治療方法だった。

「と、父さん、見て。水を飲む力さえ無くしていた母さんが…飲んでいる…」

「あ、ああ…」

「い、いろは! 奥さんの顔に赤みが!」

「うん、もういいわ。横にさせて」

 いろははエレナに手をかざし、呪文を唱えた。

「解毒呪文キアリー。そして回復呪文ホイミ」

 

「…ん…ううん…あ…あら?」

 エレナはムクリと起き上がった。

「ど、どうしちゃったの…私の病気…? 苦しくも…痛くもなくなっているわ…」

「エレナ!!」

「母さん!!」

 二人はエレナに抱きついた。

「あなた…ステラ…。私、私、助かったのね…」

 いろはは、少し汗のにじんだ額を拭いた。

「お疲れさん」

「アレルも」

「さあ、また城に戻ろう。仲間を探すと云う用事すっかり忘れちゃったよ」

「ああ、そうでした。行きましょう」

 袋から出した針一式とジパングに伝わる方法で作った秘薬『カンポウ』を整理し終えると、彼らは部屋を後にした。そしてアレルといろはがロイスの家から出て行った時であった。

 

「お待ちください!」

 ロイスが呼び止めた。

「いろは様、でございましたね。ありがとうございます。このご恩は一生忘れません! これはわずかですが、お礼でございます。お受け取り下さい」

 いろはは微笑んだ。

「いりません。ロイスさんはアレルの師匠なのでしょう? アレルは我が仲間にて師。貴方は私にとっても師同様です。困られた時にお助けするのは当然です」

「しかし、それでは…」

「それに私は漂流しているのを貴方が船長をなさっていた三番船に救われました。そのご恩を少しお返ししただけです。私に差し出すより、そのお金で奥様に滋養のつくものを食べさせてあげて下さい。今日のところは、野菜を軟らかく煮たスープがちょうど良いでしょう」

「いろは様…」

「それではここで失礼します。奥様をお大事に」

 

 アレルといろははロイス宅を後にして城に戻っていった。部屋に戻ろうとするとドアのところでロイスはステラとエレナにはち合わせた。

「と、父さん。彼女とアレルは?」

「城に戻っていったよ。礼も受け取らずに…な」

 ステラの後にいたエレナは少し困った顔で言った。

「嫌だわ私ったら、お礼も言わずに…」

「エレナ、歩いて大丈夫なのか?」

「ええ、もうすっかり」

「そうか。しかしすごいものだなあ…。ジパングの治療方法は…。まるで神がかりだった」

 ロイスは腕を組んでしみじみと、いろはの治療を振り返った。

「私もちゃんとお礼が言いたいよ。興奮して帰れなんて言った事もお詫びしたいし…」

「明日にでも、みんなでアレルの家に行こう。彼がいろは様の居場所を知っているはずだ。三人で、ちゃんとお礼を言おう」

 

 

 その二日後であった。いつものように、二人はアレル宅の庭にて稽古をしていた。

 そこにステラが訪ねて来た。昨日、いろはに礼を言いに来た時のような普段着ではなく、鎧、兜、盾、そして剣を装備してアレルといろはの前に現れたのだ。

 

「ステラさん、どうされたのです。その格好は?」

 ステラはいろはにひざまずいた。

「お二人の魔王バラモスを倒す旅に、このステラをお連れ下さい。いろは様こそ我が剣の主。母の命を助けて下された礼を、戦士としてお返ししたいのです。いろは様の大願成就のため、そしてこの世界をバラモスから救うため、粉骨砕身、務める所存にございます」

「ステラさん…」

「いろは、ステラの剣の腕前は俺よりも上だよ。強さは俺が保証する」

 アレルが言うと、いろははうなずいた。そしてひざまずくステラの腕を取った。

「辛い戦いの連続となるでしょうが、私と一緒に来て下さいますか?」

「はい」

 ステラはいろはの目を見つめて答えた。アレルはニコニコとして二人を見ていた。両手に花の冒険なんて、俺は幸せ者だと思っているのかもしれない。それをステラは察したか、ギロリと睨んだ。

「アレル、アンタいろは様と、こうして毎日お会いしているようだけど、妙な気を起こしてないでしょうね。もしいろは様に変な真似したら、チョン切るよ」

 ステラはアレルの股間を指して言った。

「馬鹿、いろはの強さを知らないから、そんなこと言うんだよ。いらん心配だ。いろはは大切な仲間。ステラ、君もな」

 アレルの言葉の最後が気に入ったのか。珍しくアレルに笑いかけるように言った。

「ならばいい」

「ステラさん、一つだけ良いでしょうか」

「何でしょう?」

「私と貴女は、もう仲間です。ですから私を呼ぶ時には『様』なんてつけないで下さい。他人行儀ではないですか」

「わかりました。それでは私のこともステラと」

「ステラ…」

「いろは…」

 二人は確認するように互いを呼び合い、手を握り合った。

 

『侶士の交わり』と云う言葉が、故事として後世に残ることとなる。いろはとステラのことを語る言葉であるが、それは女同士の強い友情を表す時、女が女に対して強固な忠誠心を持った時に用いられる言葉となったのである。

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