堕ちた提督   作:Yasoshima kakeru

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不吉な予兆

戦艦たちの訓練に数時間付き合い耳が使い物にならない状態で竹野は執務室に戻ってきた。

天龍が何か言っているが全く聞き取れない。天龍に筆談を要求すると天龍は何かを書き始めた。

 

 司令部の二サエルから電話

 

一体何の用だろうか。まさかまだ何も動いていないのに何かに気が付いたのか?

そんな考えが思い浮かぶがいくら何でもこちらが脳内だけで怪しんでいることに気が付けばそれは優秀だからで片付けることのできる次元ではない。

何にせよこちらに身に覚えがない以上彼に電話をかけなおすことが一番手っ取り早いだろう。

三十分もすれば竹野の耳は正常に戻り電話を取り司令部に電話を掛ける。

 

「はい、長官室。」

 

「山本か?竹野だ。」

 

「村上提督ですね。少々お待ちを。」

 

必要もないのに本名に言い換えて山本は受話器を二サエルに渡す。

 

「竹野司令。お久しぶりです。二サエルです。」

 

「それは分かっています。わざわざこんな辺境の鎮守府に司令長官殿がどうして直接お電話を?」

 

皮肉をたっぷりと込めて返すがそれを完全に無視して

 

「南鳥島から200キロ程離れた地点に敵の拠点を情報部が発見しました。常時監視体制に入るように衛星を移動させ監視を続けてきましたが依然勢力が拡大を続けているため敵の攻撃が予想されます。ただ、情報部によれば勢力の拡大速度や規模などを見るに敵の侵攻作戦の準備が完了するまでに少なくとも2週間はかかると予想されます。つきましては敵拠点から距離の近い鎮守府から戦力を集めて逆に攻撃する作戦を立案して攻撃を行います。」

 

「つまり、司令部に集合せよとということでよろしいのですか?」

 

「はい。」

 

「しかし、この鎮守府に人間のスタッフは私しかいません。私が不在の間に何かが起きればどうするんでしょう?」

 

「鎮守府で指示を出そうが司令部の指揮室から指示を出そうが変わらないでしょう。いざというときは会議を中止して対応すれば問題ないでしょう。」

 

「わかりましたそれで会議の日程等については?」

 

「会議は二日後に行います。明日そちらに迎えがいきます。仮にも軍の司令官ですから護衛と荷物持ちに誰かを連れてくるように。」

 

「了解しました。」

 

竹野が電話を切るよりも早く電話は切れる。二サエルも忙しいのだろう。受話器をおくと天龍が

 

「何だった?」

 

と聞いてくる。

 

「会議があるから本土に来いだってさ。」

 

天龍が目の色を変えて

 

「じゃあ秘書艦としておれも本土に行くんだな。」

 

と言っているが留守の間にも鎮守府は動いているわけで留守中にできた膨大な書類の山を誰が整理するのだろうか。

 

「いや、天龍は留守番を頼む。」

 

天龍の抗議をBGMにしながら竹野は誰がいいか考える。そういえば青葉が本土に行きたいと何度か言っていたのを思い出し青葉を呼び出す。

 

「恐縮です!提督、それでご用件は?」

 

「本土での用事があるから護衛としてついてきてもらおうかと思ってな。」

 

青葉は一瞬うれしそうな顔をしたが護衛と聞いて少し顔をゆがませる。

 

「護衛と言うことは本土で自由に買い物したりできるわけではないんですよね?」

 

「それはそうだな。」

 

「ならこれはどうでしょうか?私が護衛として頼れそうな人を見つけてくるのでその代わりに私も本土で好きなようにする。どうですか?」

 

公募して集まったわけではなくこちらから声をかけておいて何もなしというのもかわいそうなので竹野はそれを許可する。

いい加減この島にも娯楽が必要だろう。鳳翔が居酒屋をやっている鎮守府もあるらしいし本土で少し鎮守府の娯楽について調べてみるとしよう。

 

 

翌日、竹野をここに送ってきたのと同じパイロットが輸送機を操縦してやってきた。

護衛には加賀が付くことになり竹野は出発した。機内では青葉だけが上機嫌に鼻歌を歌っている。貨物室は少し気まずいので竹野はコックピットに移動する。

 

「大丈夫でした?」

 

「まあ何とか生きてますよ。」

 

「でも案外うまくいってそうじゃないですか。」

 

パイロット扉の隙間から青葉の方を見る。

 

「やっと落ち着いたと思ったら今度は大規模な攻撃が予想されるだとか何とかで本土に呼び戻されたんですからたまったもんじゃありません。」

 

苦笑いをするとパイロットも笑い

 

「提督職もなかなか大変なんですね。」

 

と言って輸送機パイロットのなかなかひどいスケジュールについて話してくれた。

そんな話をしている間にもだんだんと本土は近づいてくる。

港湾の破壊された東京の上を通り過ぎ海岸線から少し離れた場所にあるひと際大きなビル、防衛連合海軍総司令部が見えてきた。

屋上には所狭しとアンテナが並びガラス張りのフロアとフロア全体が外から見えなくなっているフロアが混ざった気持ち悪い縞模様の建物である。

輸送機は垂直着陸モードに入り建物に接近する。ビルは十階までしかフロアがない部分と50数階までフロアのある部分に分かれヘリはその段差になっている十階の屋上に着陸する。

今回は着陸後エンジンが切られ爆風が収まった状態で輸送機を降りる。

加賀に荷物を持ってもらい輸送機を降りる。青葉は声をかけようとしたがすでにどこかに行ってしまっていた。

 

「青葉は?」

 

「帰りの時間がわかり次第私が連絡する手はずになっています。」

 

加賀はそう答える。

 

「そうか。次からは私にも少しは話を通してくれよ。」

 

加賀に少しだけ注意しておく。その間にも別の輸送機がヘリポートに降り立ち提督らしき人が降りてくる。風貌は二十代に見える。

 

「初めまして。私は父島鎮守府の内藤です。今日はよろしくお願いします。」

 

「南鳥島鎮守府の竹野です。今日はよろしく。」

 

父島は南鳥島からかなり離れているがほかに近くの鎮守府がないのだろう。

ちょうど輸送機から降りてすぐの様で若干服装が乱れていたが爽やかな青年だ。同行していたのは雷だがあれは護衛になるのだろうか。

いささか見た目の抑止力がないような気もする。本部のスタッフに案内され会議室に入るとほかにも二人ほど提督らしき人物がいた。

 

「初めまして。南鳥島鎮守府の竹野です。本日はよろしくお願いします。」

 

「南鳥島ですか。はるばる遠いところから。九十九里浜鎮守府のワーグナーです。今回の作戦ではそちらの基地で作戦前の補給を行うかもしれませんよろしくお願いしますよ。」

 

離島の鎮守府では実力不足だということだろう。父島鎮守府の規模は竹野の鎮守府の五分の一ぐらいしかない。

その南鳥島鎮守府も、九十九里浜鎮守府と比べれば十分の一程度の兵力しかなかったが。

 

「Aangenaam 竹野。私は硫黄島鎮守府のマフダです。有益な会議にしましょう。」

 

「オランダ語でしょうか?よろしくお願いします。」

 

竹野はオランダ語が分かるわけではないがデ・ロイテルを連れていたこととオランダで聞いたことのあるような単語だったから適当にそう言ってみる。

 

「オランダ語わかるの?」

 

そう聞かれて、彼は適当に微笑んでおく。今更わからないとも言いたくないし、わかると言ってオランダ語で会話が始まればどうしようもない。

どう逃げようかと考えていると、ちょうどタイミングよく二サエルと軍服を着た数名スーツを着た数名が入ってくる。

 

「私の自己紹介は必要ありませんね。私の隣からから順に司令部戦略課からトマス、戦術研究課からライアン、司令部兵站部から森内、情報部のムーンとマーズとタイタンだ。さて会議を始めましょうか。」




誤字とかそういうレベルではないミスがありましたので修正しました。報告ありがとうございます。
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