堕ちた提督   作:Yasoshima kakeru

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鎮守府の歩むべき道

竹野が南鳥島に帰ったのはかなり夜が更けた頃だった。

輸送機を見送りながら執務室に向かう。最初にここに来た時のことを思い出す。

あの時は寂しさよりも驚きの方が大きかった。艦娘の多くはこちらから距離を詰めようとせずとも向こうから寄ってきていた。

人間であるならばゴマすりだとか言われる行為だが、無垢な艦娘たちはそんな下心があったわけではなく。前提に人間に対する好意があった。

だが、今考えてみればおかしな話だ。人間が彼女らにしたことを見れば、人間に対する好意はを持つのはおかしい。どちらかと言えば、彼女らは抵抗してしかるべきだ。

確かに、この鎮守府には抵抗した艦娘が多くいる。だが外を見ればそんなことはない。今全世界には数百万の艦娘がいるが、抵抗した艦娘はその中の数パーセント、いやそれ以下かもしれない。

特異なのはここにいる艦娘たちだ。

 

「飛龍。あの話覚えてるか?」

 

「心理分析?」

 

「そうだ。空いてる時間を後で教えてくれ。」

 

「わざわざ本土まで行くの?」

 

と飛龍は聞くが、とんだ時間の無駄だ。

 

「行きたいならいってきてもいいがさすがに私は同行できんよ。」

 

「ならアンケートでも書いて送信するの?」

 

「紙のアンケートで実態がわかるならこうはなってない。」

 

竹野は苦笑いして、そう答える。

 

「わかった。時間空けとくね。あと、はいこれ。」

 

そう飛龍は竹野の荷物を彼に押し付け空母宿舎の方に歩いて行く。

竹野は荷物を持ち直し、波音を数回聞くと再び歩き出し執務室に向かう。

ふとした時に、寂しさがこみ上げてくる。

こう思うならどこかのタイミングで結婚しておけばよかったと今更なことを思いつつこれからのことを考える。

何とかして協力者を見つけなければならない。

最悪のパターンは二サエルが敵になることで、そうなってしまえば裏の世界を知らない竹野では太刀打ちできない。

それまでに何とかして裏の世界の詳しく、二サエルに忠誠を誓っていない人物を探さなければいけない。

官僚時代に友人にでも声をかければどこかの国の諜報員を紹介してくれるだろうか?

いや、それよりも反米のテロリストの方が確実だろうか?

そんなことを考えながら執務室に入り電気をつけ荷物をソファーにおき上着を脱ぐ。

机の上にはかなりの数の書類は置かれているかどれも後は竹野が確認の印を押せばいいだけだった。

窓を開け首元を緩め腕をまくってもまだ少し暑いぐらいだったが、テキパキと書類に目を通し今の状況を確認する。

さいわいなことに、竹野が不在だった間に何かトラブルが起きた記録はなく、何度か通商航路の安全確保のために出撃が行われただけだった。指揮官はいずれも長門が務めたようで若干言いたいことはあるが、かなり理想的な指揮を執ったようだ。

ひとまず安堵した竹野は書類をかたずけそのままソファーに横になると寝てしまった。

 

翌朝、総員起こしがかかり竹野が立ち上がると天龍が

 

「帰ったなら言えよ。」

 

と不満げな顔でこちらを見ている。

 

「夜遅かったからみんなを起こすのはどうかと思ってな。」

 

「一応心配したんだぞ。ヨーロッパでの同時多発テロがあったんだろ。大丈夫だったのか?」

 

「ああ。それよりもソファーで寝たせいで全身が痛いことのほうが問題だ。」

 

そう返しながら、流れるような情報統制に呆れ返る。

そうは思うが、あの複雑な状況を納得が行くように説明するのは難しかったのも事実だ。

ことの全容を理解しているのはおそらくごく限られた人間だけで、あの場にいた竹野もよくわかっていなかった。

 

「ならいいけど。それと、風呂入って来い。適当に着替え置いとくから。」

 

「助かる。」

 

そう言うと竹野は執務室の横の自室に戻りシャワーを浴びる。さすがに総員起こしがかかっているにもかかわらずのんびり風呂に入るわけにはいかず五分もたたずに風呂を出る。

外には天龍が用意してくれたであろう着替えがおいてあった。

適当に用意するといいながら、天龍が用意していたのは軍服一式。

気が利くな、と思いつつ素早く着替えをすまして部屋を出る。

外では艦娘たちがランニングをしている。いつからかわからないが彼女たちは竹野が指示することもなく自主的に朝の課業をしていた。

竹野は意欲的に訓練をしてくれる彼女たちを見て、うれしくもあったが、彼女たちから抵抗する力を奪ってしまったいるような気がしてならなかった。

自分がするべきなのは彼女たちを従順になるよう手懐け、飼いならすことではない。

そう、ヨーロッパで無残な姿の艦娘を見たさらに強く思うようになった。

 

「おはよう。」

 

執務室に入り天龍に軽く挨拶をしてすぐに仕事に取り掛かった。

深夜に一通りの仕事を済ませていたため、それほどすることが山積みというわけでもないが、司令部からの命令以外にもこなさなければいけない、いや司令部が言ってこないからこそ、やらねばならない仕事があった。

 

「提督?いなかった間のこと聞かなくていいのか?」

 

天龍がコーヒーを入れながら聞いてくる。

 

「報告書に書いてないことでもあるのか?」

 

「いや、ないけど。どうしたんだ。今日はより一層殺気立っているというか余裕がないというか。」

 

「そうか?」

 

冷静であろうとすればするほど表面上の温度は下がり内部の温度は上がる。誰かがそんなことを言っていた。

 

「その理由も含めて今日の夜話そう。各級から一人代表を集めてくれ。」

 

「わかった。俺じゃあ頼りないかも知れねぇけど、長門とか赤城とかにも頼れよな。どうせ俺らは端に追いやられた仲間なんだし。」

 

飛龍は顔を崩して笑う。

 

「それもそうだな。」

 

竹野も笑う。

一通り事務作業を終えた竹野はその日は夜戦の訓練まで実施して騙しあいの世界を忘れ、単純な力のぶつかりあいを眺めた。

やはり自分はこちらの世界のほうが好きだ。と思いながら鍛え上げられた艦娘たちの武力の応酬を静かに見ていた。

 

 

さらに世が更けて、じきに日付が変わるころ執務室に艦娘が集められた。

風呂上がりのラフな格好で竹野は机の淵に腰掛けて集まった艦娘たちを見る。

彼女らもジャージなどのラフな格好で集まった。

 

「いつ帰ってきたんだ?」

 

「昨日の深夜だ。訓練で会ったろ?」

 

「それもそうだな。で、どんな要件だ。」

 

長門はそう聞く。

 

「そう焦るな。おい!蒼龍、出てこい。」

 

竹野は天井を見ながらそう言うが、天井からではなく蒼龍は床から出てきた。

 

「ここは二階だぞ?」

 

長門は困惑しているが気にするのは本当にそこであっているのか?

 

「私がいなければあなたはやばい奴になっていましたよ。」

 

と蒼龍は言うがやばい奴はいったいどっちだ?

 

「君がどこかにいる前提で私は動いている。もうあきらめて普通に出てきてくれ。最初から隠す気はない。」

 

蒼龍も床下だとか天井裏だとかではなくまともな席についたところで竹野は話を始める。

 

「最初に言っておくが今から話す内容は絶対に外ではするな。ほかの鎮守府の人間が来た時も同じだ。この鎮守府内だけでとどめておいてくれ。」

 

「青葉には強く言っておく。」

 

那智はそういうが、彼女はよく調べず竹野の過去を流布したと言う言われたくない過去がある。同じようなことはしないだろう。

 

「続ける。私がヨーロッパに研修に行ったこと、そこでテロが発生して騒動があったことまでは知っているかもしれないが、事実はそうじゃない。あれはテロなんかじゃなく何者かが仕組んだ防衛連合軍への明らかな攻撃だった。」

 

「AaronMankindの仕業ではないと?」

 

やはり蒼龍はほかの艦娘たちよりも詳しい事情を知っているようだった。

 

「いや、確かにAaronMankindの信者が各鎮守府を攻撃して多くの艦娘が殺されたのは事実だ。だが同時に行われたヨーロッパ方面軍統括指令センターへの攻撃はカルトの信者ではなく傭兵による計画的な攻撃だった。」

 

「つまり、騒動の裏で何かが行われていたわけですね。」

 

竹野は頷く。

 

「そして、この騒動が起きることを知っているものが防衛連合軍が内にもいた。」

 

「内通者か?」

 

「わからない。ただの内通者ならこちらの動きを妨害してくるだろうが、騒動が起きることを知っていた人物がした行動はその逆で鎮圧の用意をしていた。だからカルトによる蜂起で防衛連合軍がヨーロッパから追い出されるということはなかったし、クーデターではなくテロだと報道されても違和感がなかったわけだ。」

 

長門は首をかしげる。

 

「司令長官ですか?」

 

蒼龍はそう聞いてくる。

 

「確かに現状最も怪しいのは二サエルだ。ただこの件に関してはあまりに不自然なことが多すぎる。どうして知っていたのに止めようとしなかったのか。どうして私をヨーロッパに送ったのか。なぜただのカルトに過ぎないAaronMankindに一時的とはいえヨーロッパ方面軍の心臓部を掌握されたのか。言い出したらきりがない。少なくとも今は誰も信用すべきじゃないことだけは確かだ。」

 

「それを私に言って大丈夫だと?」

 

蒼龍は言うが、彼女が今も二サエルの手駒である可能性は低い。それに、

 

「君が今も二サエルと通じているなら、私が何をしても無駄だ。この時点で投了だ。」

 

「ふーん。」

 

珍しく蒼龍が素の反応を見せる。

 

「で、どうするつもりなの?」

 

「誰も信じられないから独自で動く。一人ではやろうとも思ったが私の得意な舞台で戦うわけじゃない。だから協力してくれ。」

 

「迷惑をかけられるのは今に始まったことじゃないでしょう。あなたは来たこと自体私たちにとってはいい迷惑です。面倒なことが増えようが関係ありません。」

 

相変わらず加賀は素っ気ないのか、それともただ口が悪いだけのか、どちらにせよ協力してくれそうだ。

 

「私たちにできることはよくわかりませんが、頑張ります!」

 

と吹雪もいい反応を示す。

長門は何も言わずにただ頷いた。

那智もどんと来いと言った顔で酒を開けようとする。だがさすがにそれはやめさせる。

議論をするのにアルコールを摂取してどうするのか。

終始首をかしげていた択捉と伊19も....まあ、協力してくれるだろう。

各級とは言ったが海防艦まで呼ぶとは思わなかった。

 

「それでまず最初に何を調べる?」

 

蒼龍は言うまでもないといった感じだ。

 

「よし。まずはこいつを何とかする。」

 

そう言って竹野が取り出したのはポケットポルトガル語と言う本だった。




定期的に来る艦これ要素。
この作品は艦娘よりもオリジナルキャラクターのセリフが多い艦これ二次創作の皮をかぶった何かなので仕方ないね。

あ、イベント始まりましたね。
みんな頑張れー!私は丁難易度でボチボチやります。B25?べっ別にいらないし....
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