堕ちた提督   作:Yasoshima kakeru

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英雄の限界点

竹野が立てた作戦は承認された。

それが逆に不自然に思える。

確かに苦労してひねり出したそれっぽい理由だったがまさかここまですぐに承認されるとは思わなかった。

実体のよくわからない何かがうごめいているような感覚に陥るが、竹野にはその実体のない何かを知るすべなどなかった。

 

「提督!遠征の準備が出来ました。」

 

遠征準備を指示した吹雪がそう報告してくる。

 

「ご苦労。すぐに出発してくれ。くれぐれも目標を見誤るな。バリクパパンで私の到着を待ってくれ。」

 

出来ることなら竹野もすぐに出発したかったが鎮守府の指揮権の一時委譲などに手間取りすぐには出発できそうになかった。

 

「了解。出撃します。」

 

吹雪が敬礼をして部屋を去る。竹野も慌てて敬礼を返し吹雪を見送る。

敬礼したのは久しぶりだった。

その間にも加賀が無言で山のような書類を着々と処理していた。

再び沈黙が流れキーボードへの入力音とペンの音だけが執務室には響いていた。

それから数時間の間無言で作業を進めようやく一通りの書類作業が終了した。

引継ぎのために本土へ戻る必要もありそれだけで終わりではなかったが。

 

「それじゃあ行って来る。戻るのは一週間後ぐらいだ。」

 

本土からそのまま東ティモールへ向かうため大荷物の竹野を加賀は

 

「どうかご無事で。私達だけを残されても困りますから。」

 

そんな可愛げのない言葉で見送る。

可愛げがあっても心がない言葉よりはうれしいものだ。

 

「わかってる。」

 

そう言って、竹野はいつものように輸送機に乗り南鳥島を後にした。

 

 

ラッコエは机の裏に銃でも設置しておけばと後悔しながら吸い込まれそうなムーンの目を見つめる。

 

「もう一度聞く。何があり得ないことなのだ?」

 

ムーンの言葉には圧があった。

 

「あり得ないことばかりの世界であり得ないと言ってなにが悪いんでしょうか。」

 

「あり得ないと嘆くことは許されるだろうが、あなたが知ったその事実は非常に不本意な結果をもたらしかねない。」

 

「何があり得ないことなのか知っているのにわざわざ聞くなんて性の悪い女ね。」

 

ラッコエは机に置いてある資料をムーンの方に投げつける。

ムーンは銃を取り出そうと動くがその書類を見て動きを止める。

 

「なる程。これが流出することを恐れていたのか。」

 

ムーンは納得したようにうなづいて、銃を取り出し何の躊躇もなく発砲した。

 

発砲音を聞きつけた警備兵がラッコエの部屋に入るとその部屋は激しく燃えていた。

 

 

3日後 バリクパパン

「無事に到着できたようで何よりだ。」

 

竹野は先に出発していた部隊と合流して最後の打ち合わせをしていた。

 

「現時点でマカッサルは上陸こそされなかったものの沿岸砲撃で甚大な被害が出ており補給以外には使えない基地となっています。」

 

「展開中の航空戦力は?」

 

「艦娘の艦載機と無人偵察機が60機程です。」

 

相変わらず蒼龍の仕事は早かった。

 

「厳しい戦いになるな。」

 

分かってはいたことではあるが

 

「どうした村上そんな弱気になって?」

 

「私は竹野だ間違えるな。」

 

「俺たちにとっては村上だ。命を投げ出しても構わないと俺たちに思わせるのは村上という男だけだ。」

 

そう言うのは昔の仲間だ。艦娘が登場するまでの地獄の一年をともに戦った戦友たちだった。少し手を貸してもらうために呼び出したのだ。

今思ってもただの官僚上がりによくついてきてくれたものだ。

 

「わかったよ。」

 

竹野は苦笑いしてそのむさくるしい男たちを見る。

 

到着した時からすでに沈みかけていた日が完全に消え作戦前の晩餐をして夜は更けていく。

晩餐と言っても体調を万全に保つため、雰囲気だけのごちそうだったが。

 

翌朝、そのむさくるしい男たちに見送られ竹野は最低限の装備を積んだ小柄なコルベットに乗艦して海に出る。

こうして海に出るが、それは伝統的にそうしているだけで本当は竹野が現場に行く必要などなかった。

三十年ほど前、国連が環境に関する研究を最優先するよう各国に通達するまで人々は宇宙の時代が来ることを信じていた。

その遺物として地球軌道上には光速通信用衛星が多数存在しており地球の裏と通信することになってもほとんどラグはない。

戦線がそれなりに安定していた一時期、安全な場所で指示を出していた士官たちは戦場がわからなくなり艦娘の被害を拡大させた。

そうならないための自戒という意味もあるのだろう。

竹野はそこまでかたくなに出撃しようとせずに態度ではなく実力で責任を果たすタイプの指揮官だったが、戦場でなければ気が付けないことがあることや戦場でなければ発揮できない能力があることもまたわかっていた。

 

「手早く済ませるぞ。ティモール島に上陸後すぐに昨晩の男たちが降下してくる。彼らが調査を終えるまで深海棲艦を抑えつけろ。」

 

「どれだけの間耐えればいいのでしょうか?」

 

朝潮がそう聞いてくる。

至極当然の疑問ではあったがこの作戦で最も憂慮すべき不確定要素について竹野は明確な回答ができなかった。

 

「作戦に先立って銀行の図面を探したが見つからなかった。だから捜索にどれだけ時間がかかるかわからない。」

 

「わかりました。そうであるなら命令あるまで彼らを援護します。」

 

朝潮はそう力強く言ってくれるが、竹野はそうもかたくなではなかった。

損害を出さないことが最優先の目標であり最悪何も見つからなくてもいいのだ。

足跡は消えてしまうかもしれないが、飛龍を調べたあの医師も何かを知っている。

次はそこを当たればいいと楽観的に見ていた。

 

「気負うな。俺たちはドロップアウトした部隊だ。失敗してもひどいことはおこらんさ。」

 

そう適当なことを言う竹野だったが艦内のディスプレーを注意深く見ながら最も気を張っていた。

 

 

予想通りマカッサルはひどいものだった。

燃料タンクは破損しすでに部隊を駐屯させておく能力を失っていた。

 

コルベットは港内に散らばっている残骸を押しのけながら接岸し、竹野は軍施設に向かう

 

「第991派遣軍司令官の竹野です状況は?」

 

「マカッサル基地司令のマカードです。ほとんどの設備は使い物にならなくなり砲撃陣地も破壊されましたが、一度補給を約束した限り責任は果たします。」

 

マカードはまだ若い司令官だったがそうはっきりと言い切った。

竹野は大丈夫だと言い少しいい顔をしたかったがそういう訳にもいかなかった。

この基地が自分たちが復路に着いた時まだ機能している保証などなかった。

復路では補給ができないのであれば、ここで燃料を満載にしておかなければティモール島での戦闘に大きな制約がかかる。

 

「大変なところ申し訳ない。」

 

苦労して送り出した部隊の目的がティモール島の奪還ではないと知った時あの基地司令は何というだろうか?

 

「司令!敵部隊がまた接近中です!」

 

悲鳴を上げながら兵士が一人駆け込んでくる。

竹野は腰の無線をとり

 

「吹雪。そっちの状況は。」

 

と聞く。

 

「補給のために装備を解除したところです。」

 

「出撃できるか?」

 

「港湾設備が破壊され再武装には少し時間がかかります。すみません。」

 

「よし聞け。動ける艦は全て堤防に向かえ。」

 

竹野は階段を駆け上り屋上に向かう。

マカード司令もついてくる。

 

「無茶です!補給中の艦が動かせないのに応戦するなんて。」

 

「前の攻撃の時、敵は何隻いましたか?」

 

「八十から百十隻程度でした。」

 

「なる程。」

 

正直情報不足で何とも言えないが不利であることだけはすぐに分かった。

 

「赤城です。動ける艦は12隻しかいませんが本当に応戦を?」

 

「応戦しなければ補給中の無防備な艦が攻撃にさらされるだけだ。コルベット!3D戦闘支援システムを展開してくれ。」

 

「ハミルトン、砲術長だ。了解した。システム展開完了まで5分かかる。」

 

赤城をはじめとした12隻は拳を握り地平線に目を凝らす。

 

戦闘はすぐに始まった。赤城から発艦した雷撃隊が接敵後すぐに戦闘状態に突入したのだ。

赤城以外に千代田も艦載機を上げていたが千代田の初撃は回避されてしまった。

 

「ハミルトンだ。展開を完了した。」

 

ハミルトンから連絡が入るなりすぐに竹野は端末を立ち上げ詳細を確認する。

半径五キロ程度しか監視できないため多くの場合有用ではないが今回は違った。

レーダー設備が破壊されたこの基地は敵が接近するまで気が付くことができなかった。

すでに交戦が始まっている状況ではゲームチェンジャになり得るほどに性能だけは優れていた。

しかし性能だけいい兵器が役に立たないことは戦争ではよくあることだ。

 

「確認した。赤城、敵は93体だ。いずれも脅威は低いがなにせ数が多い。慎重に対処してくれ。」

 

そうはいったが九対一ではいくら練度があっても分が悪い。

 

「比叡射撃開始します。」

 

敵はすぐに砲戦圏内に侵入して堤防の方でしきりに煙と水柱が上がる。

 

比叡は初弾を的確に命中させた。だが彼女の視界の先に移ったのは沈みかけた敵ではなかった。

 

「おかしい。」

 

比叡は堤防を飛び降り急いでその場を離れる。赤城も動く、間一髪のところですべての艦娘は攻撃をよけたが堤防は跡形もなく吹き飛んでいた。

 

「ハミルトン。被弾した、浸水を確認3D戦闘支援システムの展開維持は困難!」

 

「待ってくれもう少しだけ。」

 

そんな竹野の願いもむなしく遠くから何かが飛来してくる。

 

「シェルターに急げ!」

 

竹野がそう叫ぶころには工廠への爆撃と機銃掃射が開始されていた。

 

「吹雪対空戦闘!」

 

「開始しました。」

 

基地内のサイレンが響き渡り対空砲の展開が急がれたがほとんどが無駄だった。

展開される前に対空砲の多くが破壊され戦闘要員が機銃掃射で殺されたからだ。

 

「赤城状況を報告!」

 

「敵の数は不明です。艦載機の損耗が激しく私自身も発着艦に支障はないですが被弾しました。」

 

絶対的な情報優勢が防衛連合軍唯一の勝ち筋にも関わらず敵に奇襲を許し、敵戦力を見誤り、とにかく防衛連合軍の監視網はずさんな管理でその能力を発揮できていなかった。

 

「ハミルトン砲戦用意!」

 

「了解。ハミルトン砲戦準備」

 

「マカード基地司令!陸戦用意」

 

「ああ分かった。」

 

敵はすでに揚陸を開始していた。

赤城をはじめとした最前線の部隊も善戦はしていたが数の不利があまりにも決定的すぎた。

 

「赤城。後退しろ。」

 

「了解。」

 

竹野は階段を駆け下りながら指示を出す。

 

「吹雪。当初の目的は忘れて出撃しろ。」

 

実体の分からない何かを探すためにティモール島へ部隊を派遣する余裕などすでになかった。

 

マカッサルはそれなりに大きい町だった。

それは今の状況ではマイナス意外何の要素も持っていなかった。

人間が深海棲艦への憎悪を増せば増すほど深海棲艦の人間に対する憎悪も大きくなっていた。

最初から深海棲艦は無抵抗の市民を惨殺していた。だがそれは彼らにとっても不本意な使命だったように思えた。

しかし近頃の深海棲艦はその使命以上の憎悪によって突き動かされていた。

逃げまどう市民に対してその体が飛び散る程大きな弾丸を打ち込みたった一発で人は死ぬにも関わらず深海棲艦はその頭が砕け散るまで打撃をやめはしなかった。

陸戦を開始した防衛連合軍の部隊もその侵攻を止めることはできず、防衛陣地の形成すらままならないうちに死者をひたすらに増やしていった。

すでにハミルトンとの通信は途絶したが先ほどの93体の敵が偵察部隊に過ぎなかったことはすぐに分かった。

少なくとも一万を超える深海棲艦の大部隊が攻撃してきていた。その大きな流れの中で竹野が連れてきた百にも満たない部隊では何もできなかった。

竹野は優れた戦術家ではあったがそれは全戦全勝の神のような力を持った人間であるという意味ではなかった。

 

「赤城。撤退準備だ。」

 

「ですが!」

 

「撤退だ!聞こえたな!全部隊撤退準備!ここをいち早く離れる」

 

「竹野提督。輸送ヘリを要請しましたお急ぎを。ヘリは可能な限りの市民を乗せてここを離れます。」

 

マカードは地下の戦闘指揮室で竹野に言う。

 

「あなたはここに残るんですか?」

 

「何もできないからと言って守るべき人を見捨てて逃げることなどできない。あなただってここが自分の基地であればそうするでしょう?」

 

マカードの意思は固かった。

竹野は何も言わずに敬礼をして地下壕を出る。

 

輸送ヘリに乗り込んだ軍服の竹野を市民は鋭い目で見ていた。

軍人が戦場から逃げるのを良しとする市民などいないことは分かっていた。

しかしそうして多くの優秀な指揮官が死んでいくのを竹野は見てきた。

そうして指揮官を失った艦娘たちの悲惨な結末も。

竹野はコックピットに移動して無線を借りる。

 

「吹雪。準備は?」

 

「全艦再武装完了。本当にこれでいいんですか?」

 

「私たちがここで玉砕したとしても結果は同じだ。取り残された市民の余命が少し伸びるだけだ。」

 

マカッサルを母港にする部隊すら帰ってこない。大スンダ列島で敗北したことなど戦闘報告を読まずともわかった。時間を稼いでも無駄だった。

ヘリが離陸し窓からは街のあちこちから煙が上がっているのが見える。

竹野が無線機を調整していると50代の女がコックピットに入ってきた。

 

「お願いです!どうか!どうか!あの船を守ってください!」

 

女はそう叫ぶのだ。竹野が窓から港の方を見ると古臭い赤い船が港を出ようとしていた。

 

「お願いです!あなたに少しでも軍人としてのプライドがあるならあの船を。」

 

叫んでいた女は搭乗していた兵士にコックピットを追い出される。

 

「私の娘があの船に乗っているかもしれないんです!」

 

そう後ろで叫ぶ声が聞こえるが、竹野の意思は船を見つけた時点で決まっていた。

 

「吹雪。赤い船が見えるか?」

 

「見えますけど。これを護衛しろと?」

 

「物分かりが良くて助かる。」

 

例えその船が遅く護衛が困難だろうとも、ここで絶望的な防衛線することとは違った。

 

「今の燃料でここにとどまれるのはどのぐらいだ?」

 

「風向きが変わることなども考慮した安全圏に収めるなら30分が限界です。」

 

「わかったありがとう。」

 

「聞いたな?三十分で敵の包囲網を食い破ってその船を沖に出す。」

 

「了解。」

 

「そこの赤い船。こちらは第991派遣軍司令官の竹野だ。応答せよ。」

 

「こちらファロ。用件は?」

 

「脱出を支援する。現在の周波数を維持。タイミングはこちらで指示する。」

 

「支援感謝する。だがそう長くは待てないぞ。こっちはけが人を山ほど乗せてるんだ。」

 

「のんびりやってるとこっちの部隊も壊滅しかねない。信じてくれ。」

 

「了解した。」

 

「千歳ハミルトンからの偵察情報が切れたのは知ってるな?」

 

「偵察機ですね任してください。」

 

竹野は端末を開き映像を確認するがこの端末の電池にも制約があり本当に時間の余裕がなかった。

 

「よし。敵の攻撃部隊は町全体に砲撃を加え、一部の地区に上陸を開始している。知っての通り艦娘だろうが深海棲艦だろうが陸上に上がればいい的だ。だが航空隊の攻撃力は変わらない。無茶な注文をするが空母各艦は魚雷の信管を時限式に切り替えて上陸した敵の足元に滑り込ませろ。圧倒的な数的有利を持った敵は数で抑えようとしてくるだろうからそのすきをついて一点突破する。敵が引き付けられたら全火力を持って敵を攻撃!ほんの一瞬しか防衛網を破れないがそのすきに船を逃がす。わかったか?」

 

「了解しました。空母の皆さん、訓練の成果を今こそ提督に認めさせる時ですよ。」

 

「ああそうだ。たのむぞ。」

 

竹野の指示のあとすぐに作戦は開始された。

赤城は発艦させた雷撃隊を家屋の間を縫うように移動させ攻撃機の実際の数をごまかす。

航空隊が見えない以上敵は被害の大きさからしか部隊の規模を把握できない。一発で一体倒せば敵は大部隊だと誤解してより作戦の精度が高まる。

飛行隊がようやく敵を捕らえた時、そこに移ったのは目をそらしたくなるような地獄だった。

恐らく人間であっただろう肉塊がそこら中に散乱しており腕を引きちぎられているにも関わらずかろうじて生きていた人間を深海棲艦は処刑した。片腕を失って逃げようとする人を踏みつけ脳天に人を撃ち殺すにはあまりに大きすぎる銃弾を撃ち込んだ。

だがそうやって感情的に動いていた深海棲艦達はあり得ない敵の襲来に驚愕した。自分たちの目線の先には爆撃機でも戦闘機でもなく雷撃機がいたのだ。そこで彼らが回避しようとしていたら少しは変わったかもしれないが彼らはなめ腐った様子で雷撃機に攻撃を浴びせた。

だがそんな甘い攻撃が竹野にしごかれた艦娘の放つ雷撃隊に当たるはずがなかった。魚雷投射後さらに高度を下げて地面すれすれを飛び深海棲艦の背中の方に抜けていく。

彼らが安心したのもつかの間。自分たちの足元に魚雷があることに気が付いた時にはもう遅すぎた。

自分たちが処刑した人々と同じように彼らもただの肉塊となった。

 

「攻撃成功。」

 

「千歳?」

 

「敵部隊の一部が移動したのを確認しました。」

 

「よし第二段階に移行する。比叡、榛名敵防衛網を食い破れ!」

 

そうして、さっきまでの一方的な航空戦とは打って変わって敵味方が入り交じる混戦に突入した。

 

「主砲。撃ちます!」

 

比叡は苛烈な砲撃で遠くの敵を吹き飛ばし強靭な拳で近寄ってきた敵の小型艦を薙ぎ払う。

近づいてきた戦艦には容赦なく魚雷をねじ込んだ。

空母たちも混戦の中でも誤爆なしで攻撃を続け機銃掃射で敵をかき乱した。

ただ、蒼龍の戦い方は全く他とは違った。

艦載機を自分の支援に全く使わななかったのだ。

蒼龍には竹野が見込んだ素晴らしい戦闘センスがあった。艦載機の練度も南鳥島鎮守府でも上位10人に入るほど高かったがそれでも蒼龍にとっては艦載機は足手まといにしかならなかった。

どこから持ち出したかわからない短刀で敵を切り刻み、まるで重力などないといわんばかりに水上で跳躍しあっという間に周囲を深海棲艦の遺骸で埋め尽くした。

それが蒼龍の教えられた戦い方だった。

しかし深海棲艦はその遺骸をよけながら蒼龍にまた接近してくる。

蒼龍は水上でまた跳び接近してきた深海棲艦の脳天を水面にたたきつける。暴れる深海棲艦の口に爆撃機用の爆弾をねじ込み敵がいるほうに蹴り飛ばす。その深海棲艦が吐き出した爆弾で周囲の深海棲艦も被弾した。混乱する中に蒼龍は突貫しまた死骸の積み上げる。

蒼龍が異常な戦い方をしている間も着実に部隊は防衛網の傷を広げていく。

 

「そろそろだ。ファロ、道は作った全速力で離脱せよ。」

 

「感謝する。」

 

船が港を出ると、敵の攻撃はより一層激しさをましたが船尾を追いかけるようにして部隊は徐々に撤退し防衛範囲を狭くすることで対応した。船が港を離れてしばらくすると敵はあきらめたのか、それとも損害が割に合わないと思ったのか攻撃をやめた。

だが、その日、マカッサルでは70万人の民間人と4700人以上の防衛連合軍軍人が死んだ。

竹野が救えたのはあの船に乗っていた1398人だけだった。

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