ダンガンロンパメサイア   作:じゃん@論破

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学級裁判編1

 

 学級裁判場前のエレベーターホールに人が集まる。全部で9人。とうとう人数は手で数えられるほどになってしまった。初めに体育館に集まったうちの半分は、もういなくなってしまった。全員が集まると余計に人が減ったことを実感してしまい、みんなその現実から目を背けるように視線は下や上を向いていた。

 

 「オーケーオマエラ!しっかり時間までに集まったね!えらいえらい!ボクもこんなしょうもないことでおしおきなんかしたくないし、素直になってくれるのはありがたいよ。うんうん」

 「うぅ……もうこんな人数になっちゃったなんて……」

 「誰のせいだと思ってるんだ。こんなことをさせておいて……!」

 「だれって、オマエラの中の誰かでしょ?オマエラの中の誰かが、あんなひどいことをしたんだよ。だからこうして学級裁判を開くことになってるんだよ。お分かり?」

 「無駄な問答をするつもりはありません。時間が経てば経つほどクロが有利になるんです。さっさとエレベーターを動かしてください」

 「相変わらずクールだね、尾田クン。もしかして自分は物語の主人公の隣にいる名脇役だと思ってる?」

 「ちょっとなに言っているか分かりません」

 「なんで分かんないんだよ!」

 「分かんねェだろ普通」

 

 相変わらずモノクマは不愉快に笑い、ダメクマはめそめそしている。泣きたいのはこっちの方だ。だけど私は泣いてられない。学級裁判をする以上は、必ずこの後、誰かが命を落とす。月浦君と、陽面さんと、理刈さん。3つの命を奪った犯人が、私たちの中にいる。だけど、本当にそうなのか。理刈さんの死体にも、陽面さんの死体にも、月浦君の死体にも、おかしな部分があった。ここでは普通の死に方なんてできないけれど、それにしたって何かがおかしい。それを言葉にする力を持たない自分がもどかしい。

 

 「まあ話したいことがあるなら裁判場でってね!それじゃあオマエラ!乗っちゃってーーー!」

 

 合図にあわせてシャッターが開く。尾田君を先頭に、私たちはエレベーターに乗り込んだ。たった9人を積み込んだだけで、エレベーターは再びシャッターを閉じて動き出した。

 深い深い奈落の底へ。無骨な機械音と、冷たい空気が足元から頭上へ抜けていく虚ろな音だけが聞こえる。誰ひとり口を開かない。私たちの中に殺人犯がいて、それを恐れている。それだけじゃないだろう。もうみんな嫌になってるんだ。殺したり、殺されたり、それを追及して、また誰かが死んだり。目の前で人が死ぬことが、昨日まで話していた人がいなくなることが、当たり前の日常になりつつある。それらの全てにうんざりしている。その繰り返しに絶望してる。

 いっそ、この地獄のような世界から逃げ出すことができたら、どれだけ楽だろう。そんなことを考えてしまうくらいには、みんな疲れていた。

 

 エレベーターは唐突に動きをとめ、目の前の暗闇が二つに割れる。その向こうでは、円形に並んだ証言台と、そこに収まる11の遺影が私たちを待っていた。部屋の装飾はまた変わっていた。艶のある木の柱とえんじ色の壁紙に、ハートマークや星マークが散らされている。かと思えば真っ黒に塗りつぶされた壁が何面かあって、とても目が散る。相変わらずモノクマのひどいセンスが光る内装だ。

 

 「はいはい!それじゃあいつも通り、キリキリ自分の席に着きな!遺影のみんなも待ち遠しそうにしてるよ!」

 

 玉座に腰掛けたモノクマが、待ちきれないとばかりに私たちを急き立てる。私たちは何も言わず、それぞれの席に着く。新しく増えた、月浦君と陽面さんと理刈さんの遺影。3人ともが額縁の向こうでまっすぐ正面を見て穏やかな表情をしている。

 月浦君は狂気的な人だった。初めから最後まで、彼は陽面さんのためだけに生きてきた。あんな事件を起こすまでは微笑ましく思っていたのに、その化けの皮が剥がれた……いや、初めから彼に隠すつもりなんてなかった。私たちが見誤っていただけだ。彼の異常性と、それを可能にする彼の能力を。

 陽面さんは明るく可愛くて、だけど異常な人だった。彼女自身は何もしていない。何もする必要がない。ただ笑顔で、思うままに生きていた。隣にいる月浦君が、全て彼女のために手を尽くしていたから。彼女はその恩恵を無自覚に享受して、自覚してからも全く無批判に受け入れていた。無邪気で、邪悪だった。

 理刈さんは強い人だった。彼女の信じるものとこのコロシアイは全く相容れないもので、気苦労が絶えなかったはずだ。目の前で人が死んでいくことも、それに対して無力な自分が許せないと弱音を吐いていた。それでも、彼女は自分の信念を捨てることはなかった。自分を見失うことは最後までなかった。

 

 そんな3人の命を奪った誰かが……私たちの中にいる。人が少なくなってくるにつれて、それはより信じがたくなる。ここまで一緒にモノクマと戦ってきた仲間だと思っていたのに、それが裏切られた。私がそれが悲しくて、悔しくて……どうして、なんて憤りさえ覚えていた。

 この感情をどうすればいいのか、私は分からない。たとえ誰が犯人でも、人殺しだから処刑されて当然なんて思わない。だけど、その人を許すことだってできないかも知れない。

 曖昧な私を待つことなんてせず、学級裁判の幕は上がる。それが再び閉じられるとき、私はここに立っていられるのか。それさえ考える余裕がなかった。

 


 

学級裁判 開廷

 

 「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう。学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきされます。もし間違った人物をクロとしてしまった場合は、クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となります!」

 

 モノクマがいつもの説明を繰り返す。

 

 「今回は被害者が3人もいるし、そのあたりから話し始めてみたらいかがでしょうか〜!」

 「な、なぜあなたが議題を決めるのですか……?」

 「別にぃ〜?みんな気になってるところだと思ってね!毎度毎度同じ始まりじゃオマエラも飽きるでしょ。オマエラに言ってるんだぞ!」

 「聞こえてるよ」

 「確かに、3人もの殺人は初めてだ。しかも全員が違う殺され方をしてる。ぼくも議論する意義は十分あると思うよ」

 

 なぜか進行を始めたモノクマの流れを引き継いで、湖藤君がみんなに議論を促す。裁判場の頭脳のひとりだった月浦君と、積極的に進行をしてくれていた理刈さんがいなくなった。ただでさえシロの割合が減ってるうえに、思考力はかなり削がれている。なんとか残った人たちでカバーしなくちゃいけない。

 

 「考えられる可能性はいくつかあります。ひとりの人間が3人を殺害したパターン。全く別々の事件がそれぞれ発生したパターン。ある殺人のクロが別の殺人の被害者であるパターン。そんなところでしょうか」

 「クロが自殺しているパターンもあるよ。明らかに他殺の人ばかりだけど、一考の余地はあるんじゃないかな」

 「モノクマに処刑されるくらいだったらてめェで……てのァなかねェ話だとは思うが、だったらそもそも殺人なんざしなきゃいい話だよな」

 「こらーっ!なに当たり前に言ってんだ!自殺は認めてないんだからね!校則にだって書いてあるだろ!ちゃんと読め!」

 「って言ってるけど」

 「まさか、あのアホみたいな校則を真に受けている人がいるんですか?」

 「真に受けるもなにも、校則として存在するのは事実では?」

 

 それを聞いて、尾田君は深くため息を吐いた。早速出た。嫌な感じ。

 

 「こんなこと言うまでもありませんが、自殺を完遂した時点でその人は死亡しているんです。処刑が抑止力になるわけないでしょう。いくらモノクマでも、死者を処刑することはできないでしょう?」

 「うぐぐ……!」

 「そ、そりゃそうだ……言われてみれば……」

 「なら、その校則はいったい何のために存在しているんだ?」

 「さあ?そこまでは知りません」

 

 尾田君は当然のことを言う。確かに、自殺を禁止することそのものはおかしくなくても、そのために処刑を持ち出してくるんじゃ意味がない。モノクマの定めた校則の意味なんて、コロシアイをゲームとして成立させるためのものとしか思えなかったけど、それだけは違う。自殺することがモノクマにとって、どう不都合になるんだろう。

 

 「ともかく、ぼくたちはこれから4つの可能性を同時に追っていかなくちゃいけない。みんな、やれる?」

 「やれるかどうかじゃなくて、やるしかないのだろう」

 「けど、どうすんだよ。別々の事件が起きてたら、ここには最大3人のクロがいるってことになるんだろ。そしたらオレたちは……どうすりゃいいんだ」

 「これはルールの面でしょう。モノクマが答えてください」

 「ぐぬーっ!オマエに指図されるとムカつく!えい!」

 「あーっ!ひどい!」

 

 モノクマがダメクマに八つ当たりして、ダメクマが玉座から転がり落ちて床でぺしゃんこになった。

 

 「だけど学級裁判の根幹に関わることだからきちんとお答えしましょう!学級裁判において指名すべきクロは必ず1人に決定します!別々の事件が独立して起きた場合は、一番最初にクロの条件を満たした人だけがクロとなります!」

 「早い者勝ちってことネ。後から殺された方はたまったもんじゃないアル」

 「じゃ、じゃあ、被害者が他の事件のクロだった場合は?」

 「その場合は最後に殺人を犯した人がクロになりますね。要は、生きて学級裁判に臨んだ中で最も早くクロの条件を満たした人が、その裁判におけるクロになる、ということです!」

 「おいらァもうお手上げだ!」

 「それじゃあ最終的なクロが自殺してるときはどうするの?」

 「……それがボクとしては一番避けたいことなんだよね。つまんねえし」

 「答えは」

 「はあ……生存者の中にクロの条件を満たす者がなくて、かつ自殺者がいる場合は、自殺者がクロと被害者を兼ねるということで、その人がクロになります。でもそれだとおしおきできないし、下手打つと全滅エンドなんてことにもなりかねないから、マジで避けたいんだよね。だから禁止してたのに」

 「どうだか」

 「つまり我々は、そもそもクロがこの中にいるのか、という点から議論をする必要があるわけですね」

 「マジで分かんねェ……」

 「私も……大丈夫かな」

 

 なんだかとんでもないことになってきた。今まで気にしたこともなかったけど、今回みたいな複雑そうな事件になって初めて意識した。そもそもクロが私たちの中にいない可能性だってあるんだ。クロがいるかどうかなんて、捜査のときは考えもしなかった。だって、誰かが殺意を持たないとこんなことにはならないから。そう思い込まされてたのもモノクマの思惑のうちだったのかも知れない。

 

 「とにかく……モノクマファイルから確認してみるのはどうだ。自殺か他殺くらいは推理できるんじゃないのか?」

 「そ、そうだね!できることからやってくしかないよね!うん!やろう!」

 「しかしまず……いえ、結構。どうぞ、進めてください」

 「激烈に気になるところまで言ったんなら最後まで言えよ!」

 「いえ、あなた方のペースに合わせることも大切だと思いますので、思う存分やってください」

 「譲ってるのに棘がある言い方できるのってもはや才能だと思う」

 「そりゃどうも」

 

 嫌味も言っても尾田君はあっさり流す。何を言おうとしたんだろう。学級裁判で尾田君は、無駄な嫌味を言うことはあっても無意味なことは言わない。何か言おうとしたのなら、それは学級裁判を進める上で無視できないことなんだろう。でも、敢えてそれを伏せるっていうことは、まだ何か考えてる途中なんだろうか。

 

 「まずは陽面だ。パーティーホールの中央で、シャンデリアに押し潰されて圧死していた」

 「あんなに大きく重いものが落ちてきたらひとたまりもないでしょう……モノクマファイルには即死とあります。かわいそうに……」

 「検分は私が担当した。体は激しく損傷していた。もはや傷がどうのこうのと言える状態ではないほどに」

 「うえぇ……気色悪ィ」

 「まず、これは他殺で間違いねぇな。自分の頭にシャンデリア落とすなんてことできるわけねえし、やるやつの気がしれねえ」

 「……いいでしょう」

 「上からだなあ」

 

 陽面さんのモノクマファイルは、まだまともに見ることができない。損傷箇所を赤く塗りつぶす図が、陽面さんの全身を染め上げていることの意味を考えると、写真の中で陽面さんがどうなっているかを想像してしまって、お腹の中から込み上げてくるものを耐えられなくなってしまいそうだった。

 モノクマファイルの確認は、次に月浦君に移った。

 

 「月浦さんは首を切られての失血死でした。シャンデリアの下に潜り込んだ状態で発見されてて、手元にはカッターナイフがあった。これは、自殺に見えなくもない……かな」

 「あいつは陽面にべったりだったからな。陽面が死んだショックでヤケになって……ってのもあり得なくねえ」

 「まともな蘇生措置もせずにですか?彼なら、無駄と分かっていてもシャンデリアを動かして陽面さんを助けようとすると思いますが」

 「あんな重てェもん、月浦ひとりで動かせるわけねェやな」

 「奴は陽面のことになると常識が通用しなくなるからな……どこまで冷静でいられたのか分からないが、どちらもパターンも考えられる」

 

 あれだけ私たちを混乱させ、疑心暗鬼にさせ、陽面さんのためだけに3人もの人間の命を奪った月浦君。その最後は、なんだか私が思っていた以上にあっさりしていて……なんだか悲しかった。彼が命をかけて守りたかった陽面さんが殺害されて、彼まで命を落としたなんて。彼の命が消えるとき、何を考えていただろうか。そんなことが気になってしまう。

 

 「最後は理刈だ。パーティーホールの控え室で、腹に槍が刺さった状態で発見された」

 「こんなんどう見てもモノクマの処刑でしょ!?どういうこと!?私たちに手を出さないんじゃなかったの!?」

 「モノクマがぼくたちに手を出すのは、ぼくたちが校則違反を犯したときだけだ。もしこれがルールに則った処刑だと言うのなら、理刈さんは何らかの校則違反を犯したということになる」

 「もっちろーん!ボクはこのコロシアイ生活を取り仕切る立場なんだからね!むやみやたらにオマエラをぶっ殺したりなんてしないよ!そういうのはおしおきか校則違反を罰するためにやむを得ずするときだけ!」

 「どうだか」

 「でもそうなると、法法(ファーファー)が校則違反したってことになるネ!なにしたカ?」

 

 あの、ただでさえルールに厳しい理刈さんが、校則違反が即処刑につながるようなこんなところで敢えて違反するようなことなんてないと思う。かと言って、うっかりで彼女が違反してしまったとも思えない。あんな狭い部屋でできることなんて限られてる。私はあの部屋を思い出してみた。

 何か、手がかりがあるはずだ。どうして理刈さんがモノクマに処刑されなくちゃいけなかったのか。その答えが……。私より先に、庵野君が気付いてくれたみたいだ。

 

 「もしかして……居眠り禁止の校則でしょうか」

 「はあ!?居眠り!?理刈が!?」

 「控室には、白黒の錠剤が散らばってたと聞いています。芭串君が片付けてくれたそうじゃないですか」

 「あ、ああ。そうだ」

 「あれは睡眠薬です。モノクマ製の特別強力なものなので、1粒あればあっという間に眠りこけてしまいます」

 「睡眠薬?庵野よォ、おめェさんはなんでそんなもんを知ってんだ?とても睡眠薬が必要な奴には見えねェぜ?」

 「薬品庫にはたまに足を運びますので、薬はよく目にしているのです」

 「そのことは私が保証する。私も薬品庫でその薬を勧められた」

 「女の子にあんな暗いところで睡眠薬なんか飲ませてどうするつもりですか庵野さん!」

 「なぜ宿楽さんは興奮しているのですか」

 「なんかえっちだからです!」

 「頭ん中ピンク色かよ!下品な話はやめろ!」

 

 なぜか急に鼻息が荒くなった風海ちゃんを芭串君が抑え込んだ。とにかく、控室に睡眠薬が散らばっていたことは間違いないみたいだ。だとすると、庵野君が言う、理刈さんが居眠り禁止の校則に違反したという話も、何が起きたと考えているのかよく分かる。

 

 「安易かも知れませんが、手前はこう思います。理刈さんはあの部屋で睡眠薬を飲んで眠り、それが校則違反と判断されてしまったのではないかと」

 「まあ普通に考えたらそうなるよね。私もそうだと思う」

 「ちょい待ち!個室以外で寝たら校則違反になるのなんて分かりきってるネ!なんでわざわざあんなところで飲む必要あるカ!そんなん遠回しな自殺ヨ!」

 「飲んだのではなく、()()()()()のだとしたらどうだ?犯人が理刈を眠らせて殺害しようとしたとか」

 「そしたら故意の就寝にならねえから処刑されねえだろ」

 「そうだね。芭串くんの言う通りだ。理刈さんが校則違反を犯したんならね」

 「何が言いてえんだよ」

 

 普通に考えたら、理刈さんはあの部屋で睡眠薬を飲んで処刑された。そんな状況に見える。だけどそれはほとんど自殺みたいなもので、理刈さんみたいな人がそんなことをするなんて思えないことを差し引いても、そんな回りくどいことをする意味が分からない。

 だけど、否定するだけの材料もない。だって、そう見えるんだから。否定できない、それは決して肯定ではないけれど、肯定の意味に変わってしまいかねない。

 

 「モノクマファイルにある通り、理刈さんが何らかの薬を服用したことは疑いようがない。だけど、それは本当に睡眠薬だったのかな?」

 「そこ?いや、睡眠薬があったんだろ?じゃァそれしかねェじゃねェか」

 「いいや。睡眠薬は控え室の床に散らばってただけだ。それを理刈さんが飲んだと言い切ってしまうのは、印象で語っているに過ぎないよ」

 「なら、お前は印象ではないことを言えるというのか?」

 「もちろんさ。あんなの、まるで睡眠薬を飲んだんだとアピールするようなものじゃないか。部屋中に薬は散らばっている。だけど薬の瓶はしっかり机の上に残ってる。おまけに理刈さんは椅子に座ってるわけでも椅子から転がり落ちたわけでもなく、床に大の字に倒れてる。おかしいことだらけだ」

 「い、言われてみれば……」

 

 次々と湖藤君があげる違和感を、私は同じものを見たのに考えもしなかった。なんで私はそんなことにも気付けないんだろう。ずっと湖藤君のそばにいるのに。

 

 「どうしてその状況になったのかはまだ分からないけど、少なくとも理刈さんが本当に飲んだ薬は別にあることは分かる。それは理刈さんの胸ポケットにあったよ」

 「む、胸ポケット……!?あ、いえ、失礼」

 「庵野テメエ!テメエも頭ん中ピンク色か!聖職者のクセしてむっつり野郎が!」

 「言葉もございません」

 「どいつもこいつもスケベ野郎ばっかりアル」

 「それで、胸ポケットから何が出てきたと言うんだ」

 「なんてことないよ。ただの錠剤さ。真っ白の小さなものだけどね。長島さんが見つけてくれたんだ」

 「えっへん!」

 「錠剤が2種類?どういうことだ」

 「……ぼくが思うに」

 

 長島さんが見つけた錠剤は、特に何の効果があるか分からないものだった。危険なものではないみたいだけど、薬であることには変わりがない。睡眠薬と違って、この錠剤は一粒だけ理刈さんの胸ポケットに入っていた。それが意味することはなんなんだろう。

 

 「理刈さんが飲んだのはこの小さな錠剤の方だ。睡眠薬はダミーだと思うよ」

 「ダミー、と言うと、ただ紛れたわけではなさそうだな」

 「うん。あんなあからさまに散らされたんじゃ、疑ってくださいと言ってるようなものだよ」

 「印象じゃねえか!」

 「ううん。しっかりした根拠もあるよ。理刈さんの体の下には錠剤がひとつも落ちていなかったからね」

 「ん?な、なんだそりゃ?何の根拠になるんだ?」

 「理刈さんが睡眠薬を飲んで倒れたんなら、薬が散らばったのはそれと同時か少し前だ。なら、体の下に1粒くらい落ちててもおかしくないよね。仮に、偶然、たまたま、倒れた場所に錠剤がなかったんだとしても、瓶が机の上にしっかり置いてあることの説明がつかない」

 「くどいほど根拠があるんだなァ」

 

 相変わらず、湖藤君の説明は周到で反論の余地を残さない。理刈さんの周りに散らばっていた薬は、誰かが偽装工作の目的で散らかしたものだと。本当に理刈さんが飲んだのは、胸ポケットに入っていた錠剤だと、あっという間にみんなを説き伏せてしまった。尾田君が噛み付いてこないところを見ると、どうやら間違ってはいないらしい。

 

 「つまり、理刈さんは睡眠薬なんか飲んでいない。そうすると、さっきまで議論してた、理刈さんが居眠り禁止の校則に触れて処刑されたって説は否定されることになるわけだ」

 「あっ、そ、そっか……え?じゃあ、なんで理刈さんは処刑されたの?」

 「……別の校則に違反したから、か」

 「別の校則?」

 「自殺禁止の校則、ですね」

 

 尾田君が口を挟んできた。

 

 「じ、自殺禁止……!?い、いや……そんなはずありません!尾田さんがさっき、その校則は機能しないとおっしゃっていたではないですか!」

 「そんなこと言ってません。死者はモノクマでも処刑できないだろう、と言ったまでです」

 「同じことじゃないカ?」

 「全然違います」

 

 全然違うことないと思うけど。

 

 「たとえばね、自殺を図った人がいたとして、自殺を決行してから実際に死亡するまでにわずかなりとも時間があるわけだ。その過程で、その人の死が回避できない状況まで進行したら、それは実質的に自殺した人として扱うことができる。そうすれば、自殺者を処刑することもできなくはないんだよ。まあ、現実的かと言うと全然現実的じゃないけど」

 「その前提があったとしても、現に校則違反を犯していない人を違反者と見なしている時点で、かなりグレーな解釈ですけどね。モノクマにとって都合が良すぎます」

 「ヒヒッフ〜♪ホフホフ」

 「ごまかすの下手ァッ!!」

 「でも、湖藤君と尾田君の言うことは分かるよ。睡眠薬を飲んだだけならあんなに散らばることがないし、椅子から転げたわけでもない格好になるはずがない」

 「いやに睡眠薬に詳しいな。詳しくは聞かねェけど」

 

 理刈さんの死の状況は、一見すると単純なのに、観察して考えるほど違和感が露わになる。そこから導き出される結論は、私の手に余るものだった。

 

 「じゃあ結局、理刈さんはなんで処刑されたの?自殺禁止っていったい……」

 「オーバードーズです」

 「オーバーオール?」

 「もうあなたは黙っててください。議論の邪魔です」

 「ひでェ!聞こえたままを言っただけなのに!」

 「酔ってる奴が聞こえたままを言うな。違うんだから」

 「オーバードーズって私知ってるよ!いっぱい薬飲んで気絶するやつ!」

 「気絶っていうかそのまま死んじゃうんだけどね」

 

 理刈さんは自殺した。こんな狂った状況では、自殺を図る人が現れたっておかしいことじゃないと思う。だけど、理刈さんに限ってそんなことをするなんて、考えられなかった。考えたくなかった。あんなにしっかりした人が……なんて思ってしまう。そういう思い込みなんて、この空間じゃ利用されるだけなのに。

 

 「理刈さんは何らかの薬、睡眠薬じゃないなら風邪薬か何かかな。それでオーバードーズを図った。薬効によって死にゆく理刈さんが助からない状況になったところで、モノクマが処刑の判断を下した。今のところではそれが結論かな」

 「う〜ん……要するに、ただの自殺ってことにゃならねェのか?」

 「これがモノクマの処刑による死だとしても、原因は理刈さん自身の服薬にあるなら、自殺と考えてもいいんじゃないかな」

 「なるほどアル!」

 「実質的に自殺か……それよりも、もっと自殺っぽいやつがいるんだけどな」

 「というと?」

 「月浦だよ。あいつ、首切って死んでたんだろ。近くにカッターナイフがあったらしいし、やっぱ陽面が死んでパニクったんじゃねえか?」

 「……ちょっといいか?」

 「どうしたの毛利さん?」

 

 理刈さんだけじゃなく、月浦君の自殺の可能性まで芭串君は提示した。明らかに他殺である陽面さん以外の2人は、自殺かどうかも含めて議論しなくちゃいけない。でも、そこで毛利さんが手を挙げた。

 

 「違う話になってしまうのだが、どうも気になってな」

 「うん、いいよ」

 「月浦が陽面の死を前にしてパニックになったということは、月浦は陽面より後に死んだことになる。それを考えると、ホールの控室で死んでいた理刈はいつ自殺したんだ?モノクマファイルに3人の死亡推定時刻が書いていないから、誰がどういう順番で死亡したのかが分からなくてな」

 「そういえばそうですね。理刈さんの自殺が事件と無関係に起きたのであれば少しは考えるのが楽になりますが、そうとも思えません。理刈さんが自殺した理由が事件に関係しているのなら、死亡順は重要な手がかりになるかも知れません」

 

 ははあ。さすが、毛利さんはこんなときでも冷静だ。モノクマファイルに敢えて書かれてないことが事件の重要な手掛かりになることは、今までの裁判で私は学んだはずだ。気付かないんじゃ意味がないけど。

 毛利さんと庵野君の疑問に答えを与えたのは、意外なようで意外じゃないようで、やっぱり意外な人だった。

 

 「3人の死亡順を考える手掛かりならあります。まだ考えている途中ですが、ちょうど良いので教えてあげましょう」

 

 尾田君はやけににこやかに言った。いつも私たちを必要以上に口撃する彼がにこやかにしてるだけで、なんだか気持ちが悪い。考えてる途中っていうことは、毛利さんが言うより先に同じ疑問を持って自分で答えを出してたってことだ。言ってよ。

 

 「なんだよ」

 「死体発見アナウンスです」

 「……なんだったかなァそりゃ」

 「いくらなんでも役立たず過ぎんだろ!覚えとけよ!」

 

 お酒のせいなのかなんなのか、本当にガヤにしかならない王村さんは放っておいて、尾田君は先を続ける。

 

 「3人以上の人間が死体を発見した際に流れるアナウンスです。シロとクロの立場を公平にするためとモノクマは説明していましたが、むしろ推理に役立てられる重要な情報源と僕は考えます」

 「でも、アナウンスは3人分バラバラに聞こえたよ?それが情報源になるのかな?」

 「逆に、()()()()()()()()()疑問に思いませんか?理刈さんは控室で亡くなっていたからまだしも、陽面さんと月浦君の遺体はすぐそばにありました。なぜ同時に、あるいは連続して流れなかったのでしょうか」

 「……確かにそうだな。谷倉と菊島がほぼ同時に発見されたときは、連続して流れていた」

 「きっと、陽陽(ヤンヤン)はシャンデリアでぺしゃんこになってたから、それが陽陽(ヤンヤン)だと思わなかったんアル!」

 「目視で死体と認識できるか否かは関係ないと、狭山さんの件で立証済みです。それが死体であれば、認識の可否によらずアナウンスは流れるんです」

 「そもそも、3回の死体発見アナウンスはそれぞれ誰の分のアナウンスだったんだろうね?」

 「最後のが理刈さんのは確定だから……あれ?でも、確かに陽面さんと月浦君のは、どっちがどっちか分からない……」

 「発見者の話を聞く必要がありそうだね」

 

 湖藤君の言葉が、私たちの視線を3つに分けた。3人の死体を発見した3人、庵野君と、芭串君と、風海ちゃんだ。

 捜査のときに聞いた話だと、最初に風海ちゃんがパーティーホールで陽面さんと月浦君の死体を発見した。そこに庵野君と芭串君がやってきて、二人が陽面さんと月浦君の死体を発見。その後、控室で理刈さんの死体を発見した。これが一連の流れだ。その中で、アナウンスはバラバラに3回流れた。それぞれが誰のアナウンスなのか、それがこの事件の真相を突き止めるために重要なことだ。

 

 「3回のアナウンスが鳴ったとき、それぞれ死体を発見したのは誰で、どんな状況だったか説明してください。まずは1回目」

 「えっと……さ、最初に鳴ったのは、私がパーティーホールに入ったときだったよ。他に人はいなかった、はず」

 

 おずおずと、風海ちゃんが手を挙げた。なんとなく自信がなさそうな言い方なのは、彼女の性格のせいではないだろう。

 

 「はず、というのは?」

 「なんか、記憶がちょっと飛んでるんだよね……あんまりにもショックで」

 「宿楽の悲鳴を聞いてオレは駆けつけたんだ。途中で庵野に会って、パーティーホールの前で放心してる宿楽を見つけた」

 「肩を揺すってようやく気がつかれたようでしたから、よほどだったのでしょう。倒れていないだけお強いです」

 「そんなことはどうでもいいです。あなた、本当にひとりだったんですか?他に誰か、周りにいなかったんですか?」

 「ううん。ひとりだったよ」

 

 最初のアナウンスが鳴ったとき、風海ちゃんはひとりでパーティーホールの入口にいたらしい。風海ちゃんを疑うわけじゃないけど、それが本当だとすると、いきなりとても重要な証言になる。それくらいのことは、私にだって分かる。

 

 「それは……おかしいよ、風海ちゃん」

 「ええっ!?わ、私を疑うの!?ひどいよ奉ちゃん!」

 「疑ってるわけじゃなくて、風海ちゃんがひとりでパーティーホールに入ったときにアナウンスが鳴ったってことは、風海ちゃんは()()()()()()()ってことになるんだよ?それじゃあ、前の2人はどうしてパーティーホールのことを誰にも言わなかったのってことになるんだよ」

 「……ほんとだ!全然気付かなかった!」

 「白々しい。と言いたいところだが、宿楽なら本当に気付かなかったのも頷けるな」

 「不本意だなあ」

 

 狭山さんを発見したときも、毛利さんと私以外にもうひとり、尾田君が狭山さんの死体を発見していたことを黙っていたことが議題になった。尾田君は狭山さんの死体を損壊したから黙っていたことは、共感はできないけど理解はできる。だけど、今回は2人もそんなことをしてる人がいる。

 でも、モノクマファイルの死因と陽面さんや月浦君の死因が合致してたことから、死体を損壊した可能性は低そうだ。だとしたら、その2人はどうして黙ってるんだろう?

 

 「死体の発見を黙っている2名は気になりますが、まだ宿楽さんに答えてもらわなくてはいけないことがあります」

 「な、なんでしょ……」

 「それは、誰の死体発見アナウンスだったのか、ということです。パーティーホールなら陽面さんか月浦君のどちらかということになるでしょうが」

 「いやあ、そこまではどうだろう。モノクマに聞いてもらわないと」

 「アナウンスに関する質問は基本的に受け付けてないよ!答えるとシロに著しく有利だからね!」

 「詰んだカ?」

 「難しいことじゃないでしょう。先にどちらを視界に入れたかというだけのことです」

 「難しいことだよ!?こちとら一分一秒を全力で生きてるわけじゃないんだよ!」

 

 これ見よがしに尾田君は大きなため息を吐く。そんな理不尽なことってある?陽面さんと月浦君は、どちらもシャンデリアの下の近い位置で亡くなってた。視界に入れるだけでもショッキングな光景なのに、どっちが先に入ってきたかなんて分かるわけがない。

 

 「まあまあ。いじめるのはそれくらいにして、ここは論理で導こうよ。僕は陽面さんの分だと思うよ」

 「そりゃまたなんで?」

 「月浦君は潰れてないからだよ」

 

 事もなげに湖藤君は言う。陽面さんは潰れてて月浦君は潰れてない。それだけで、最初のアナウンスが陽面さんのものであるという結論を導いていく。

 

 「陽面さんの死因はシャンデリアが落下してきたことによる圧死だ。もし月浦君が同じようにシャンデリアの真下にいたのなら、月浦君も同じように潰れているか、少なくとも頭に怪我が残ってるはずだ」

 「確かにな。月浦の体は、首以外に怪我の類はなかった。私が保証する」

 「どう?尾田君。反論はある?」

 「いいえ。まあそれでいいでしょう」

 「上から!?っていうかだったら私のこと詰めなくてよくない!?」

 「念のため確認しただけです。あなたは自分の目もまともに使えないアホだということが確認できました」

 「罵倒に謂れなさ過ぎて草」

 「あっ!ってことは、陽陽(ヤンヤン)の死体を発見した1人は月月(ユエユエ)カ!」

 「そういうことになるね。その時点で陽面さんを発見した人数は月浦君より1人多くなる。だから、先にアナウンスが鳴るのは陽面さんの方なんだよ」

 

 どうやってつながってくるのか分からなかった2つの事実が、あっさり結びついた。なるほど。ということは、陽面さんを発見したのは月浦君と風海ちゃんで2人。1人はまだ分からないけど、この2人に二人も事件のことを黙ってる人がいるわけじゃなかったんだ。

 

 「んじゃァもうひとりは誰だ?同じように死んでる理刈か?」

 「それも可能性の一つだね。そうかもしれないし、ぼくたちの中にいるかもしれない」

 「もしこの中に黙ってる人がいたら、その人がクロ……ってこと!?」

 「いや。そうではないだろう。他に誰もいない中でクロが発見者としてカウントされてしまったら、死体の第一発見者は常にクロということになる」

 「直接殺害したのならまだしも、陽面さんの殺害方法は遠隔でも可能です。第2発見者がクロである可能性はむしろ高いと僕も思います」

 「もしそれがクロだとしたら、月月(ユエユエ)法法(ファーファー)を殺したクロってことネ!法法(ファーファー)は自殺だから、月月(ユエユエ)を殺した犯人アル!」

 「……ちょっと待って?理刈さんが陽面さんの死体を発見してたとしたら、計算が合わないんじゃない?」

 

 頭の中でずっと考えてたから、みんなの議論の流れに横槍を入れる形になってしまった。だけど、私の考えが正しいかどうかはみんなに判断してもらわないと自信がない。

 

 「もし理刈さんが発見者にカウントされてると、陽面さんの死体の発見者は月浦君、理刈さん、風海ちゃんの3人になる。そうすると、理刈さんか月浦君を殺害したクロがいたとして、その人は陽面さんの死体を一切視界に入れずに殺人をしたことになる。月浦君はあんなに陽面さんのそばにいたのに」

 「……ふむ。確かに、そうですね。あなたにしてはまともなことが言えるじゃないですか」

 「おかげさまで」

 「ということは、やはり陽面さんの第2発見者は他2名のいずれか、または両方を殺害したクロということになりますか」

 「陽面さんが事故死、他2人が自殺というオチでさえなければ」

 「またそういうこと言う!」

 「おめェらずっと何言ってっか分かんねェよ!〜なら、とか、〜だとしたら、とか仮定が多いんだよ!何か確定してることはねェのか!」

 「そんなこと言われても」

 

 王村さんじゃないけど、確かにここまでの議論を振り返っても、3人の事件がバラバラに起きたものなのか、本当にこの中にクロがいるのかすら確定してない。私たちはまだ深い霧の中を手探りで進んでる状態なんだ。少しずつ前進してる感じはするけど、それが真相とは全然違う方向でないという確証もないんだ。今までだってそうだったけど、今回は特にだ。目指すべきゴールがどこにあるかさえ分かってない。

 そんな私たちの状況に、さすがのモノクマもとうとう痺れを切らしたようだ。

 

 「ああもうじれったいなあ!王村クンの言う通りだよ!オマエラいつまでああだったらこうだったらって仮定の話をしてんだよ!いつになったら結論が出ておしおきに移れるのさ!」

 「ほう。つまりこの裁判の後にはおしおきがあるんですね?」

 「あァン?当然だろ!裁判とおしおきはセットなの!おしおきのない裁判なんてパイナップルの入ってない酢豚だよ!」

 「世論を二分しそうだなあ」

 「つまり、ここには処刑されうるシロとクロがどちらも存在するんですね?」

 「んああ!?……あっ」

 「これで確定しました。ここにはクロがいます。最終的なクロが自殺した可能性は消滅しました」

 「すげーっ!?まさか尾田さん、こうなることを見越して……!?」

 「いえ、あいつがアホなだけです」

 「くそぅ……」

 

 本気で悔しがるモノクマを横目に、尾田君は私たち全員の顔を蛇が睨むように見つめる。うっかり口を滑らせたおかげで、ここにクロがいることが確定した。それが、陽面さんを殺害したクロなのか、月浦君を殺害したクロなのか、理刈さんを殺害したクロなのか。それはまだ分からない。

 

 「じゃあ長島さんの言うとおり、陽面さんの死体を発見したのは、月浦君と、クロと、風海ちゃんっていうことになるね」

 「えっへん!」

 「……となると、そのクロは陽面さんを殺害したクロとは違うってことになるのかな?」

 「そうなりますね。誰にも見られていない中でクロが死体を見たことを発見者としてカウントする意味はありませんから」

 「……ちょっと待て。そうなると、陽面は誰が殺したんだ?」

 「…………え?」

 

 あまりに素朴な疑問。毛利さんの口から飛び出した、当たり前に抱く疑問。それは当然……と続けようとして、私は口を閉じた。

 尾田君が言ったとおり、モノクマの反応からここにクロがいることは確実だ。その人は陽面さんの死体を2番目に発見した人でもあって……つまり、陽面さんを殺害したクロじゃない。じゃあ、そもそも陽面さんを殺害した人は誰になるんだろう?

 そんな疑問が私の頭の中で反響する。

 

 「簡単なことです」

 

 それに対して、尾田君は簡潔に返す。

 

 「この場にいるクロは、月浦君か理刈さんを殺害したクロです。であれば、陽面さんを殺害したクロはその人より後に殺人を犯しているか、あるいは既に死亡しているかです。モノクマがそのルールを説明したときの反応からして、前者の可能性は棄てていいでしょう。すなわち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「陽面さんを殺したのは……理刈さんか月浦君ってこと……?」

 

学級裁判 中断




一週間ほど寝込んでいたので上半身に大汗疹ができて痒いです。
オオアセモってカタカナで書くと理科の時間に顕微鏡で観察されてそうですね。

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