ダンガンロンパメサイア   作:じゃん@論破

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(非)日常編2

 

 学園のあちこちを歩き回って、ようやく私は目的の人を見つけた。彼はまるで私たちを避けるように、あるいは自分がしたことを後悔しているかのように、最上階の隅で黙祷していた。あまりに整った佇まいに、私はしばらくその姿を眺めたまま、声をかけられなかった。

 私がやっと自分の目的を思い出したのは、庵野君が黙祷をやめて顔を上げたときだった。

 

 「おや、甲斐さん。こんなところまで何をしに来られたのですか」

 「庵野君を探してたんだよ」

 「手前を?それはまたどうして」

 「聞きたいことがあるんだ。言っておくけど、しらばっくれたり誤魔化したりはナシだからね」

 「はあ、手前がそんなことをするような人間に見えますか?」

 「あと変に胡乱な言い回しで煙に巻くのもナシ!」

 「ずいぶん嫌われてしまいましたね」

 

 庵野君は無骨な手で自分の頭をポリポリと掻く。そして、庵野君はゆっくりと小さな階段まで近寄って言った。

 

 「こんなところではなんです。座れるところまで行きませんか?」

 「え……その階段の先ってこと?」

 「ええ。この後の学級裁判には、この先の景色を見ているかどうかがとても重要です。甲斐さんがここに来られたのは、それを見越してのことかと思ったのですが」

 「……」

 「ご安心を。手前はもう殺人は致しません」

 「……()()、ね」

 

 きっと大丈夫だろう。確証はないけど確信はあった。合理的に考えてもこの状況で私を殺す理由が、庵野君にはない。私たちと庵野君は、モノクマの敵ということで利害が一致してる。少なくとも今はそのはずだ。私は庵野君の案内に従って、尾田君が死んでいた先の階段を昇った。

 ちょうど人ひとり分の幅しかない階段は、何度も折れ曲がって先の景色が分かりづらくなっている。長い廊下が現れたと思ったら急な階段に変わったり、ときには庵野君に手伝ってもらわないと上り下りできない段差が現れたりした。なんだろう、この変な通路。通路というか、人が通ることなんか想定してないみたいだ。たまたま壁に開いていた隙間を辿っているような、そんな無作為を感じる。

 

 「本当に大丈夫かな?これ、自力で帰れなくない?」

 「甲斐さんには自分の足があるから大丈夫だよ。それにしてもひどいなあ、歩道の幅は2m以上確保することって、法律で決まってるんだよ。もちろん、ぼくみたいな人たちが通れるようにするためにね」

 「階段があるんだから幅とか関係なく湖藤さんは通れないでしょ」

 「ま、いざとなったら体が小さくて小回りのきく甲斐さんの方が逃げるのには有利だね。問題は、庵野君の方がこの道を通り慣れてるっていうことだけど」

 「どんどん奉ちゃんが窮地に向かって行く!戻ってえええっ!!」

 「あだっ!!?」

 

 突然おでこに強い衝撃が走って、天井に頭をぶつけたんだと気付いた。涙がちょちょぎれる目で自分がいま頭をぶつけた天井を検めると、その奥に呆れた様子の庵野君がいた。

 

 「頭にお気を付けください、と言ったところですのに」

 「うぅ……血が出た」

 「にじむ程度ですね。これで拭いてください。あいにく冷やすものがありませんので、唾でも付けておいてください」

 「庵野君がいつになく雑だ……」

 「申し訳ありません」

 

 ジンジン痛む頭を押さえながら、私は頭上と足元に気を付けつつ小さな入り口をくぐった。その先は狭い廊下から一変して体を伸ばしても問題ないくらいのスペースがあった。決して広いわけじゃない。ある程度の余裕を持った空間に、少しばかりの機械設備と椅子とテーブルがあるばかりのこざっぱりした部屋だった。庵野君はその真ん中に立って私を迎え入れて、紳士的に椅子を勧めてくれた。

 

 「どうぞ。飲み物はありませんが」

 「いいよ。なんなのここ?」

 「モノクマの秘密監視基地、とでも言いましょうか」

 「監視基地?ここが?」

 「はい。ここは、モノクマが皆さんのコロシアイを監視するために設けられたスペースです。ついでに、手前が内通者としてモノクマと密会するときに使っていたスペースでもありますね」

 「こんなところで?っていうか、4回目の学級裁判が終わるまでここって入れなかったはずじゃ……」

 「通常の学園生活においては皆様とそう変わりありませんが、皆様が寝静まった後は少し特別な立場になるのですよ」

 

 まるでロマンチックな作り話を子供に言い聞かせるみたいに、庵野君は気取った感じでそう言った。状況に合ってないせいか、なんだかイラッときてしまった。

 

 「でも、こんなところで私たちのコロシアイを監視してたって……それにしてはなんだか設備が簡単すぎじゃない?モニターもなにもないじゃん」

 「所詮モノクマはお飾りですから。真の黒幕は別の場所で、より詳細な監視をしているのでしょう。あくまでここは手前に知られても問題ないところなんです」

 「そんなものなんだ」

 

 私は大人しく椅子に腰掛け、庵野君もその向かいに座った。これまで庵野君が内通者として、こんな風にモノクマと密会してたんだ。こんな狭い廊下を、庵野君の大きな体で行ったり来たりするのはさぞかし大変だっただろう、なんてどうでもいいことに思いを馳せたりする。

 

 「それで、甲斐さん。手前に用があったのでは」

 「あ、そうそう。色々聞きたいことがあるんだよ、まだ私は、庵野君が“超高校級の絶望”なんだってことからよく分かってないんだから」

 「申し訳ありませんが、それは学級裁判でも説明できることです。今は少しでも捜査時間を有意義に使うべきかと思うので、できれば後ほど」

 「それじゃあ、ひとつだけ教えてよ」

 

 来たばっかりなのに早々と切り上げようとした庵野君を、その裾を掴んで引き留めた。引っ張られた服が肌に張り付いて筋肉質な体格がうっすら浮かび上がる。なんで下着着てないの。いやそんなことより、ここで庵野君を逃すわけにはいかない。頭に怪我までしてここに来たんだ。話すべきことは話してもらわないと帰れない。

 

 「これについて……知ってるよね?教えて」

 

 私は、尾田君の部屋で見つけた封筒の中身をテーブルの上に広げた。『“絶望”の再来事件』。デカデカと踊るその文字に、庵野君は眉を釣り上げた。やっぱり知ってるらしい。それも、普段のポーカーフェイスが少し崩れるくらいには、彼の中で衝撃的な事件だったみたいだ。

 

 「……これは、尾田君の部屋で見つけられたので?」

 「うん、そうだよ。ゴミ箱に隠してあった」

 「それは捨ててあったのでは?」

 「ううん。CO2ガスまで浴びたんだから、これは隠してあったんだよ」

 「左様で」

 

 それっきり、庵野君はじっと黙って考えていた。これを私に話すべきかどうか迷っているのか、それとも何か思い出そうとしてるのか。時間は貴重だと言っていた庵野君が、その時間をたっぷり使ってから、ようやく口を開いた。

 

 「いずれ皆様にも話しますが……甲斐さんには先に話しておくのもいいかも知れませんね。今のあなたなら、この話も冷静に聞くことができるでしょう」

 「うん」

 

 すう、と彼の周りの空気が冷たく落ち着いたのを感じた。独特の緊張感が私たちを包み込む。まるで時間の進みが遅くなったのを肌で感じているみたいだ。

 

 「『“絶望”の再来事件』とは、そこに書かれているとおり、希望ヶ峰学園で起きた凄惨な事件です。黒塗りで隠されていますが、手前は確かに全てを知っています。なぜなら……」

 「庵野君が、この事件を起こしたからだね」

 「……さすがです、甲斐さん。その通りです」

 

 驚きの色もなく、庵野君はすんなり認めた。黒塗りされていない、「“絶望”との関わりを持つ」という一文は、私に庵野君を思い起こさせるのに十分な情報を持っていた。それはつまり、庵野君がこの事件の関係者だということ、ひいては私たち自身もそうだということをどうしようもなく突きつけることでもあった。

 

 「手前は“超高校級の絶望”として、かつて江ノ島盾子様がそうされたように、あるいは手前の同胞たちがそうしたように、希望ヶ峰学園でテロを起こしました。それが手前の“絶望”であると心から信じていたためです」

 「テロ……それって?」

 「自爆です」

 「じ、じばく……!?で、でも……!」

 

 覚悟はしていた。ここに書かれていることのほとんどは塗りつぶされていて読めないけれど、文章全体から漂ってくる破滅的で絶望的な雰囲気は、その向こうに隠れた意味の存在をどうしようもなく主張していた。だからよっぽどひどい事実を覚悟していた。それこそ、自爆テロなんて真っ先に考えた可能性だ。

 でも、そうなると冷静な私が割り込んでくる。庵野君が自爆テロをしたんだとすれば、今ここにいる彼はいったい誰なんだ。これまで一緒に過ごしてきた彼はいったい誰なんだ。自爆したと言っても必ず死んでしまうことはないかも知れない。だけど、五体満足で、火傷の跡ひとつも残さずにいるなんて、どれだけ楽観的に考えても不可能だ。自分だけは完全防備した自爆テロなんてのも考えにくい。

 

 「お気持ちは分かります。ですが、一旦それはさておきましょう。手前はその点について何もお話しできることはないのです」

 「ええ……」

 

 だったらもっと疑問に持とうよ。自分のことでしょ。

 

 「手前は特製の爆弾を持って、いつもの教室に向かいました。そこに皆さんがいるだろう時間に教室に入り、迷いが生まれる前に、爆弾を起動させました。それから後のことは……あまり覚えていません。気が付けば、手前はここにいました」

 「え?い、いきなり?」

 「はい。目が覚めたときには皆さんと同じように自分の部屋で眠っていました。ですから、体育館でモノクマの姿を見たときはひどく驚きました。なぜ、いったい誰が、モノクマを動かしているのか、とても興味がありました。内通者として暗躍するように持ちかけられたのはその少し後です。“絶望”としての役目を果たしたばかりで高揚していた手前には、願ってもない誘いでした」

 

 その場面を想像してみる。きっと『“絶望”の再来事件』を起こす前の庵野君は、それまでの人生にないくらい興奮していたはずだ。そしてその役目を果たした後……気が付いたら、“絶望”の象徴であるモノクマに協力を持ちかけられる。彼にしてみれば、まるで天命を果たしたご褒美に神様に会えたような気分だったんだろう。そう考えたら、彼が内通者として暗躍することを選んだことも、いまこうして神様(モノクマ)を裏切って私たちに協力してくれていることも、どれほどの覚悟なのだろうと思う。

 

 「でも、庵野君の話をそのまま信じるわけにはいかない。だってそうしたら……」

 「ええ。おっしゃりたいことは分かります。手前も今の甲斐さんが考えていることと同じ疑問を抱いています。ただ、少しだけ手前はそれを考えないようにできる知恵があったに過ぎません。今となってはそれももう失ってしまいましたが」

 「……まだもう少し調べる必要があるんだね。()()()()()()()()

 「はい」

 

 具体的に口にしなくても、私と庵野君は同じ疑問、同じ方針を持っていたみたいだ。モノクマが用意している以上、この封筒の中身は()()()()()()()()。だけど、その至る所に、私たちを欺くための罠が仕掛けられている。いつか尾田君が言っていたことだ。大事なのは信じるかどうかじゃない。何を信じて何を疑うか、どれだけの根拠を積み上げて何を明らかにすべきか、その選択だって。

 どうやら、この後の学級裁判で私たちが明らかにすべきこと、モノクマが抱えている大きな謎と真実が分かってきたみたいだ。掴みどころのない黒いモヤのようだった“真相”が、今は途方もなく大きな黒い塊のように思えた。少なくとも、私はそれに触れることができる。それを見ることができる。前進はしていない。目標の姿を知っただけだ。それでも私には大きな一歩に思えた。

 

 「そういえば、王村さんにはお会いになられましたか」

 「え?うん、会ったけど……あっ!忘れてた!」

 「手前が彼に預けたものが役に立ったか、聞いていらっしゃらないかと思ったのですが」

 「そう!そのことすっかり忘れてた!あれ、一体なんだったの?」

 「……今まさに、甲斐さんが抱かれたばかりの疑問のヒントを与えてくれるものです。きっとそうだと、手前は信じております」

 「曖昧なこと言うなあ。庵野君にだって、答えは分からないんでしょ?なんであれが役に立つってことが分かるの」

 「モノクマからくすねたものですので」

 「え!?」

 「正直どうやって使うのかもさっぱり分かりませんが、なんらかをどうにかできるものなのではないでしょうか」

 「そんな強度の確信であんな感じで託したの!?無責任すぎるよ!私たちが忘れてたからいいものの!王村さんがあれの使い方に悩んで捜査が手につかなかったらどうするつもりなの!」

 「忘れてたんですよね?」

 

 まさかそんないい加減なものだとは思わなかった。てっきり、モノクマとの裁判で使える切り札を隠してある部屋の鍵とか、そういうようなものだと思ってた。庵野君がそこまでざっくりしたことをするとも思ってなかった。

 

 「心当たりがないわけではありません」

 「な、なに?」

 「手前があれを王村さんに託したのは、彼が手前たちとは違う経験をされている方だからです。以前におっしゃっていたでしょう。誰かに見られているような気がするとか……」

 「ああ、うん。私もその話をしたんだけど、すっかり怯えちゃって話したくないって言われて」

 「その状況を再現することができれば、あれにも何らか意味が生まれるかと思います。それはおそらく、この学園の正体を示す答えの一端だと思いますので」

 「ううん……庵野君が自分で王村さんを説得してくれればいいのに」

 「この体で迫っては強要するようなことになってしまうかと思いまして。しかし、王村さんが怯えてしまっているのなら、きちんと真意を話さなければなりませんね」

 「うん。お願いだからこんな宙ぶらりんにさせておかないで。王村さんのところに行ってあげて」

 

 頭をポリポリ掻いて、庵野君は自分がしたことを反省したみたいだ。どうも庵野君は庵野君で、あのとき割とテンションが上がってしまっていたらしい。最後の学級裁判を目前に控えているっていうのに、緊張感があるんだかないんだか……。

 

 「それともう一つ、これは手前が“超高校級の絶望”だからこそ感じることだと思うのでお伝えしておきます」

 「……なに?」

 「図書室に行ってみてください。モノクマは“絶望”のような顔をしていますが、その本質は“絶望”のそれとは全く異なります。甲斐さんには、手前がどこに違和感を覚えているのかを知っていていただきたいのです。ですから、図書室に参考になりそうな本を集めておきました。主に“希望”と“絶望”の戦いの歴史ですが」

 「そうなんだ。うん……ありがとう。見てみるよ」

 


 

 「あれ?」

 

 秘密の部屋から庵野君と一緒に脱出した後、私は図書室に向かった。庵野君が言っていた“希望”と“絶望”の戦いの歴史を知るために。庵野君の言葉を丸ごと信じるわけじゃないけど、モノクマが本当に“絶望”なのか、っていう疑問は私もちょうど感じていたところだ。もしかしたらその答えがあるかも知れない。そんな気持ちが私の足を早めた。

 図書室の近くまでくると、扉が開きっぱなしになってることに気付いた。庵野君が締め忘れたのかと思って中を覗いてみたら、山積みになった本の真ん中に、長島さんが足を広げて座っていた。一瞬ドキッとしたけど、きちんとしたにズボンを履いてた。

 

 「長島さん?こんなところで何してるの?」

 「お!奉奉(フェンフェン)!もしかしてフェンフェンも図書室に封筒があると思って来たクチカ?残念だったネ。ここには何にもないアル」

 「何か読んでるように見えるけど」

 「そこのテーブルの上に山盛りになってたアル。調べてみたら、“希望”だの“絶望”だのの話ばっかりだったアル。宣宣(シェンシェン)は“超高校級の絶望”って言ってたから、何かのヒントにならないかと思って調べてたところヨ」

 

 なんという勘の良さというか間の良さというか……長島さんが図書室に来たのは偶然だと思うけど、庵野君が用意していた大量の本は、私に伝えなくても長島さんの役に立っていたんだ。

 

 「調べた成果を聞きたいカ?私も、自分の中で整理するために、誰かに話したい気分アル」

 「う、うん。聞かせて」

 

 なんだか機嫌が良さそうだから、庵野君が用意したことは言わないでおこう。もしかしたら長島さんはモノクマが用意したと思い込んでるかも知れない。別にそれでも問題ない。問題ないよね?

 

 「“超高校級の絶望”がテロ組織っていうことはもはや常識ネ。はじまりは希望ヶ峰学園に入学した江ノ島盾子と戦刃むくろという双子。中でも江ノ島盾子の方は“超高校級の絶望”のシンボルになって、今は名前や顔写真、肖像画なんかも取扱大注意になる激ヤバ人物アル」

 「庵野君も江ノ島盾子って名前は出してたね。希望ヶ峰学園の生徒だったんだ」

 「”超高校級のギャル”として入学したみたいネ。いつから“絶望”の思想に染まってたのかは分からないけど、あるとき江ノ島盾子は、希望ヶ峰学園の研究成果を利用して、当時の生徒会全員を惨殺するっていう事件を起こしたアル」

 「えっ……い、いきなりそんな大事件を……?」

 「これをきっかけに希望ヶ峰学園では江ノ島盾子の思想に共鳴した“超高校級の絶望”が広がっていき、人類の希望である希望ヶ峰学園が犯されたことで人類全体に“絶望”が広がって……世界は終わっちゃいました、ちゃんちゃん」

 「ちゃんちゃん、じゃなくない?」

 

 まるでおもしろ話のような語り口で長島さんはカラッと笑う。こんな状況でなければそれも気にならなかったと思うけど、今はとても笑う気にならない。長島さんは状況を分かってるのか、それとも何も考えてないのか。

 

 「一回世界が終わってから今の社会になるまでは、絶望の残党と希望の戦いの歴史だったアル。戦いと言っても、希望が世界を復興するのを絶望の残党が嫌がらせをしてきて、そのたびに希望が絶望をぶっ殺すって流れが基本ネ」

 「え?ぶっころ……」

 「希望ヶ峰学園の卒業生が集まって作った未来機関という組織が世界の復興をリードしたヨ。まあ最初の未来機関は絶望のせいで内部崩壊して、後に人類の英雄として讃えられる苗木誠と宗方京介がそれぞれ復興させた機関が後の時代で合流して、なんだかんだあって今のIHFになったネ」

 「なんだか雑な説明だなあ」

 「その辺の歴史は面倒臭いアル。立場がある人間ってややこしいネ」

 

 苗木誠と宗方京介……確か、IHFの教育ビデオにも同じ名前のキャラクターが出て来ていた。あのキャラクターはその二人をモデルにしてるってことか。後にIHFを作ることになる人だから、確かにモデルとして相応しいかもしれない。あとひとりキャラクターがいたような気がするけど。

 

 「一方、“絶望”側はと言うと、世界を滅ぼし未来機関を崩壊させて勝利を確信したのか、勝手に自滅してったアル」

 「え?なんで自滅?」

 「さあ?ここに書いてあるのは、“絶望”はそれぞれが“絶望”を信奉し追い求める気の触れたテロ集団だから、周囲に散々“絶望”を撒き散らした末に自分も死ぬ奴が多いアル」

 「ええ……めちゃくちゃだよ……」

 「これはまさに時間をかけた世界規模の自爆テロ、ってことネ」

 「って書いてあったんだ」

 「はい」

 「じゃあなんで庵野君は生きてるの?絶望は自滅したんじゃなかったの?」

 「そういう奴が多いってだけで、みんながみんなそうってわけじゃないみたいネ。つまり、自殺する奴もいれば、変わらずIHFにちょっかいをかけたり、逃げ隠れしたり……なんだかやってることがちぐはぐな連中アル。そういう不条理さも“絶望”の特徴って書いてあったヨ」

 「そういうことなら、庵野君と“絶望”のイメージのギャップにもちょっと説明がつくかも。要するに宗教みたいなものってことだよね。だから、おおよその方向性はみんな同じだけど、どう信じるか、信じた上でどうするかは個人の自由ってことなんだ」

 「ガッチガチの宗教もあるヨ」

 「今はそういうセンシティブなのはいいの」

 

 意外にも長島さんの説明は端的で分かりやすかった。端的過ぎたような気もするけど。はっきり言って“絶望”は傍迷惑なテロ集団、“希望”は絶望に対抗する人類正義の味方って感じがする。だけどこれを用意したのは“絶望”である庵野君だし、この本をこの図書室に揃えたのは同じく“絶望”である(はずの)モノクマだ。それなら、客観的に正しい事実として受け取っていいのかな。

 

 「こんなものがかつて世界にのさばってたなんて、今でも信じられないアル。ワタシはこういうやばい集団より、その辺にいる顔見知りに銃を向けられることの怖さの方がよっぽど身に染みてるネ」

 「長島さんの経験は分かりにくいんだよなあ……言いたいことは分かるけど」

 「ここまで自由って言っても、宣宣(シェンシェン)がモノクマに歯向かうのは流石に自由では片付けられないヨ。でもだからと言って宣宣(シェンシェン)が“絶望”じゃないっていうのも納得できないアル。他人のための偽装工作や殺人の身代わりなんて、“絶望”的な行動としか思えないネ」

 「じゃあ、やっぱり問題は……」

 「モノクマは“絶望”じゃない、じゃあなんなのか。ってことアル」

 

 長島さんも私と同じ疑問に行き着いていた。庵野君の話を聞く限りでは、ここに来てからモノクマが庵野君を取り込んだってことになってる。もしモノクマが“絶望”じゃないなら、どうしてモノクマは“絶望”だと分かって庵野君を内通者に使おうとしたんだろう。どうしてモノクマは“絶望”のふりをしてるんだろう。

 

 「それだけじゃないヨ。モノクマが“絶望”じゃないなら、もっと問題なのがいるネ」

 「もっと問題なの?」

 「ダメクマヨ」

 「ダメクマ……」

 「あいつは明らかにモノクマとは違うところから来てるやつアル。はじめのうちはモノクマと敵対するようなこともしてたヨ。ってことは、モノクマが“絶望”じゃないなら、ダメクマの方が”絶望”である可能性だってあるネ」

 「確かに……モノクマと同じくらい、あれもよく分かんないよね」

 「目的が分からない分、モノクマよりもっとタチが悪いアル。ワタシたちの味方だったりポンコツみたいに振る舞ってる節もあるけど、それだってワタシたちを騙すための演技の可能性だってあるヨ。もしかしたら、モノクマともワタシとも敵対する立場で、漁夫の利を狙ってるかもしれないネ」

 「な、なんだかだんだんダメクマの方がやばいように思えてきた……長島さん、そんなにダメクマのことを危険視してたの?」

 「ここの本を読んでモノクマの正体がますます分からなくなって、ダメクマの方も余計に分からなくなっただけアル。奉奉(フェンフェン)は人を信じるために疑うタイプだから、どこかで疑うことを諦めちゃうのが良くないところヨ。物事は徹底的に疑って疑って疑って、疑い尽くしてからもまだ疑って、もう疑えなくなったから仕方なく信じたふりをするものヨ」

 「えぇ……な、長島さん、いつになったら人を信じるの?」

 「だから信じないヨ。疑わなくなるだけアル」

 

 なんか前に長島さんに信じるって言われたような気がするけど、いったいどっちが本心なんだろう。なんだかその時その時で都合の良いことを言ってるような気がする。こういう得体の知れなさは、長島さんもモノクマに負けてない。ただ、今は私たちと目的が一致してるから、いたずらに危険視するわけじゃないけど。でももし、私たちが長島さんと対峙するようなことになったら……そのときは、そういう覚悟もしなくちゃいけないのかも知れない。

 

 「まあ奉奉(フェンフェン)を敵に回すメリットなんてないから今は疑わないでいてあげるヨ!一緒にモノクマを倒すために協力するヨロシ!」

 「不安だなあ……」

 

 やっぱりどこまで冗談でどこから本気なのかが分からない。こういうこと言われると警戒しなくちゃいけなくなるから、本音でも心のうちに留めておいてほしかった。

 


 

 図書室で庵野君が用意してくれた本を確かめてからも、モノクマからの呼び出しまでは時間がありそうだ。もう少し学園内を調べてみようと思って、ふと、庵野君と王村さんが無事に合流できたかが気になった。庵野君は自分から“絶望”を名乗ってるから、王村さんが怯えてまともに会話になってないんじゃないか、なんてことを考え始めたら、途端に心配が雪だるま式に増えていって、私は急いで二人を探すことにした。少なくとも庵野君が王村さんに預けたあのケーブルの使い方くらいは明らかにしておきたい。

 階段を駆け降りて、王村さんと話した階まで降りる。さすがに王村さんも同じ場所に留まってはいない。食堂に行ったかも知れないと思って向かったけど、そこにも姿はない。

 

 「甲斐さんが行ったところで何ができるのさ。あのケーブルの使い方はモノクマしか知らないんだよ。どこでどうやって使うのかも分からないのに、時間をかけてる場合かな?」

 

 ああ、まただ。頭の中で湖藤君がいじわるを言う。

 

 「大事なのはとにかく足を動かすことだよ!空振りでもなんでも行動することに意味があるんだよ!だいたい今は他に手掛かりもないんだし、やるっきゃないをやらなくちゃ!」

 「ぼくは足を動かせないからなあ」

 「屁理屈言わない!」

 

 湖藤君のいじわるに風海ちゃんが茶々のようなツッコミを入れる。二人が私の口を借りて出てくるのは、私の気持ちが不安定になってるときだ。経験則でそれはもう分かる。どうせ抑えられないならそのことを冷静に自覚して、上手く利用する方がいい。

 

 「王村さんはどこに行ったのかな。どこになら行く可能性が高いかな」

 「きっと庵野君に怯えてるからすぐには会話にならないと思うね。かと言って逃げ回っても仕方ないことも分かってるから、きっとどこかで腰を落ち着けて話してるんじゃないかな」

 「王村さんは封筒を抱えながらだからそこまで遠くには行ってなかったりして!あと殺人があった場所にも近付きたがらないから、その辺の教室とかにいるんじゃない?」

 「なるほど……」

 

 これは私が頭の中で考えたことなのか。それとも本当に湖藤君や風海ちゃんが囁いてくれたことなのか。哲学的な問いになりそうだからそんな疑問は振り切って、とにかく王村さんと会った場所の近くの教室から順番に見て回った。

 そういえば、確か前に王村さんがおかしな現象に遭遇した場所が近くにあった。あるはずのない扉を開けたら真っ暗な謎の場所に通じていて、そこで誰かに見られてるような気がしたっていうあの……。あんなに怯えていた王村さんがわざわざそんなところに近づくとは思えないけど、なんだかその偶然に運命的なものを感じて、私はそっちの方に歩みを進めてみた。

 


 

 「あ?なんだこれ?」

 

 管制室では、妙な反応を示すデータの出現で混乱が起きていた。本来あり得るはずのない挙動をする反応は、まるでこちら側に何かを訴えかけるように明滅を繰り返す。それをどう解釈するべきか、その行方は室内で最も権力を持つ福丸に委ねられた。

 

 「俺が知るか。お前ら技術畑の人間に分からないんじゃ素人に判断できないだろ。せめてなんか手掛かりをよこせ」

 「手掛かりと言われましても……この妙な反応以外に有害なプログラムが組まれているわけもなく……」

 「リジェクトできないのか」

 「そ、それは……今の段階ですべきではないかと」

 「じゃあ対処のしようがないんだな。なら様子見するしかない。で、原因は。イレギュラーの影響か?」

 「イレギュラーはまだ見つかっていません。全く否定はできませんが、可能性は低いです」

 「ふぅん……」

 

 質問すれば答えは返ってくる。だがそれが究極的に意味するところを福丸は知る由もない。じっと画面を見つめて頭をひねる。何が起きているのか。何が起きているとしても、最終の目標さえ達成できれば問題ない。大事なのは、この反応がそれを阻害する要因にならないか、という点だ。

 

 「ま、何もできないんだったら何もしなくていい。こういうのも含めてこのプロジェクトは進められてんだ。記録だけは絶やすなよ」

 「はいっ」

 

 ひとまず、福丸はその場しのぎさえせず、ただ流れに身を任せることにした。余計なことをして、結果の純粋さを失いたくなかった。

 


 

 「お」

 

 前に王村さんから話を聞いたあたりまで来た。ぱっと見える扉の向こうは教室ばかりで、特別おかしなことはないし、何も起きない。場所を勘違いしてたかな、なんて思い始めてきたところで、デコボコな背丈の二人が並んでるところを見つけた。私たちの中で一番背が高い庵野君と一番背が低い王村さんが並んで、同じ立ち姿でぼーっとしてるのを見ると、なんだか面白い。

 

 「よかった。庵野君と王村さん、合流できたんだね……なに見てんの?」

 「……」

 「王村さん?庵野君?うん?」

 

 私の呼びかけに二人は何の反応も返さない。まさかの無視?聞こえてなかった?二人が呆気に取られたように眺めてる方を見てみるけど、ただの天井が見えるだけだった。どれだけ目を凝らしてみても、おかしなものは見えない。

 不思議に思って二人の顔を覗き込んでみると、瞬きすらしていない。まるで二人をモデルにした精巧な蝋人形みたいに、心臓さえ止まってしまったかのように静止していた。

 

 「ちょ、ちょっと二人とも?ねえ、本当に大丈夫?ねえってば……!」

 

 あまりに異常な状態に、たまらず肩を叩こうと手を出した。そのとき起きたことが……少し経ってからも、まだ信じられない。

 私の手は、庵野君の肩には触れず、そのまま彼の背中の方に飛び出した。そのとき起きた不気味な現象が、反射的に私の手を引っ込めさせた。

 

 「えっ……!?は、はっ……!?」

 

 見間違い?いや、そんなはずはない。でもそんなはずないわけがない。蝋人形どころじゃない……庵野君も王村さんも、まるでただの立体映像みたいに、そこに姿だけがある。

 

 「な、なにこれ……!?二人とも……ねえ!?大丈夫!?」

 

 返事はない。こちらから触れることもできず、相手からの反応もない。目の前にいるのにここじゃない遠くにいるみたいな。見えないほど薄くて、だけど絶対的な壁に阻まれているような断絶感がある。もしかして、本当にただの立体映像で、二人はもっと別の場所にいる?じゃあこれはいったい……?

 その異質さに気付いて感じていた気味悪さが薄まってくると、今度は好奇心が湧き上がってきた。何かが分かることを期待して、ホログラムの王村さんを覗き込んでみる。

 

 「ぶほあっ!?おわあああっ!?」

 「うおっ!?」

 「きゃああっ!?いたあっ!?」

 

 私が覗き込んだタイミングを見計らったように、王村さんは突然実体を取り戻して叫び声をあげた。至近距離でその大音声を聞いた私は吹き飛ばされるように飛び退いて、思いっきり尻餅をついた。なぜか王村さんもひっくり返った。

 

 「な、なに!?なんなの一体!?いい加減にしてよ!」

 「おっ……おおっ……!?はっ!?こ、ここは……!か、甲斐!?オメェいつの間に!?」

 「いま来たところだよ!王村さんがここでぼーっとしてるからどうしたんだろうと思って……!」

 「い、いやそんなことより……!?庵野ォ!おい庵野ォ!」

 「はい」

 「くっそ落ち着いてやがらァ!!テメェこの野郎!!やっぱおいらのことハメやがったな!!怖ェじゃねェか!!二度とあんな思いは御免だっつったよなおいら!!」

 「まさか本当にこんなことになるとは……軽率でした。しかし収穫はあったのではないでしょうか」

 「なにが収穫だ!!こちとら魂が死神に持ってかれるところだったわボケェ!!」

 「な、なに言ってんの?二人とも……どうしたの?」

 

 ついさっきまで得体の知れない立体映像になっていたとは思えないほど、王村さんは元気いっぱいだし、庵野君はいつも通り飄々と落ち着いている。まるで私が見ていたのは全て幻だったみたい。まあ、現実だったとしても二人の幻みたいなものなんだけど。

 じんじん痛むお尻を押さえながら立ち上がって、私は二人にいま見たことを伝える。まるで立体映像のように実体を失っていた二人の影。それこそ魂が抜けたような呆然とした表情だったこと。それが突然息を吹き返して実体を持って、今は普通に触れることができること。

 私の話を聞きながら、庵野君は不思議そうに頷き、王村さんはどんどん顔色が青くなっていった。

 

 「な、な、なに言ってやがんでェおめェは!こちとら23年間この体で生きて来てんでェ!どんだけびっくりしたって写真に撮られたって魂はここんとこに根っこが生えてらァ!ほれ!触れるだろ!」

 「だから、さっきまでそうだったって言ってるのに」

 「甲斐さんを疑うわけではありませんが、にわかには信じ難いことですね。手前どもがつい先ほどまでしていた認識とはまるで異なります」

 「二人は……ついさっきまでの記憶があるの?」

 「ったりめェだ!こちとらシラフだぞ!」

 「そういうことじゃなくて」

 「……端的に言えば、手前どもはたった今、いつか王村さんがされたような摩訶不思議な体験をしていました。神秘体験といいますか、奇跡的体験といいますか……」

 「恐怖体験でしかねェわ!冗談ぬかせ!」

 「怒ってるなあ」

 

 ともかくとんでもない体験をしたことは間違いないみたいだ。王村さんはまだまだ興奮冷めやらぬようで、頭の血管が切れちゃうんじゃないかってくらい怒ってた。私に怒られてもしょうがないんだけどな。

 

 「それもこれも庵野がよこして来たあの訳わからんケーブルのせいだ!おいこら!いったいなんなんでェあれは!」

 「さて。モノクマのところからかっぱらってきたものなので手前にもさっぱり。しかし今の現象に関係していることは間違いないでしょう」

 「とんでもねェ人体実験しやがってこの野郎!」

 「まあまあ。庵野君も一緒になって体験したんだから、そこは怒りをおさめて」

 「ったくよォ。で、なんだ?甲斐にゃァおいらたちがここでぼーっとしてるだけに見えてたんだろ?どういうこったこりゃ」

 「……なんだかまるで、ここに二人の影だけがあるような、そんな感じだったよ」

 「影……ふむ、言い得て妙なのでしょうか。なにか共通点のようなものを感じますね」

 「どういうこと?」

 「手前と王村さんは、たった今、以前王村さんがおっしゃっていたような体験をしました。存在しないはずのドアを開いたら四方八方が暗黒の謎の場所に迷い込み、いくつもの影に覗き込まれるような幻覚を見た……」

 

 影というキーワードでつながる、私と庵野君が見た二つの違う異常現象。でもそれはモノの例えで、それらの実態がなんなのか、私たちは何も分かってない。でも間違いなく、この世界の真相に関わるものであるはずだ。

 

 「王村さん、怖いことを思い出させるようで悪いんだけど、今の話、裁判でまた話してもらっていい?」

 「ぐえーっ!?マジかよ!?いやマジなんだろうなァ!くっそ!わあったよ話すよ!」

 「聞き分けが良くて助かるなあ」

 

 嫌がっても仕方ないって分かってくれたのか、王村さんは文句たらたらで快諾してくれた。これが他のどんなことと関係してくるのか、ここから何が分かるのか、何の目処も立ってないけど、情報はあればあるだけいい。混乱してしまわないように気をつけさえすれば、それらは全て武器になる。

 


 

 『ピンポンパンポ〜〜〜ン!!え〜!オマエラ、学園中を走り回って駆けずり回って大変ご苦労なことです。ボクとの決戦のためにそんなに汗をかいてくれて、ボクも準備した甲斐があるってもんです。本当はもう少し多い人数でここまで来る予定だったんですけど、くだらない邪魔が入ってしまいました。しかしそれもまるで無駄!無駄無駄無駄ァ!!こうして無事にオマエラとの最終決戦のときを迎えることができるようになったわけであります。いや〜長かったね!たくさんのトラブルもあったし、オマエラに煮湯を飲まされたこともあったよ。自分の偽物との戦いもあったし、飼い犬に手を噛まれたりもしたね!だけどそれもこれもこのときまるっと報われる!最後の最後の最終決戦だよ!さあさあさあ!泣いても笑っても怒っても喜んでも逃げるのだけはNoNoNo!いつもの学級裁判場へ向かうエレベーター前に、大集合〜〜〜!!ハリアーッ!!』

 

 いつもより少しだけテンション高めで長尺なモノクマのアナウンスが鳴る。いよいよこの時が来た。いつかはこうなると分かっていたんだけど、いざその時間の中に自分がいると思うと、なんというか、自分の体が軽くなったような不安感に襲われた。それは王村さんも、庵野君も、ここにはいない長島さんや毛利さんもきっと同じだろう。

 内通者の正体はすでに分かってる。庵野君だ。もうモノクマが私たちを中から突き崩すことはできないはずだ。ここからは、私たちとモノクマの真っ向勝負。まだモノクマの目的も、正体も分かってない。証拠や手掛かりから真実が見えないのなら、後は私たちが頑張るしかない。

 

 「く、くっそ……もうかよ。っていうか、マジで……」

 「不安を口にしてもご自分を追い込むだけです。ただ、信じるのです。手前どもには『愛』ある“絶望”がついています」

 「ついてもらいたかねェやそんなもん!」

 「ではご自分の足で歩かれますよう」

 「でェいちくしょう!」

 

 庵野君に上手く丸め込まれたのかな?王村さんはぷりぷりしながらエレベーターの方へ向かっていく。私もその後に続く。

 

 「大丈夫かなあ。なんだか手掛かりも少ないような気がするけど」

 「少ないね。はっきり言って。だけど不可能なわけじゃない。モノクマが要求してるのは、この学園の謎を解き明かすことだ。その謎がなんなのか、甲斐さんたちがどう定義するか、そこが大事な部分だね」

 「そこまで分かってるなら手を貸してよ……」

 「ぼくたち私たち、手がないからなあ」

 「もう!」

 

 そう言えば頭の中にもう二人、役に立つんだか立たないんだか分からないのがいるんだった。この二人がこうもはっきり私の頭の中に居座り続けてるのが、明らかに異常なことなのは分かってる。けどまあ、今はいいか。こうなったらこの二人にも助けてもらうしかない。

 自分の独り言に期待するなんていうのも異常な話だ。だけど、こんな異常な世界ならそれもいいんじゃないかな。




湿気という魔物がおる。

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