ダンガンロンパメサイア   作:じゃん@論破

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学級裁判 企望編

 ——前回までのあらすじ——

 

 じゃじゃじゃじゃーーーん!!モノクマ登場だよ!!まさかの裁判編3回目に突入!!やっぱり最後の裁判だから長いんだね!中弛みしちゃうかもだけどオマエラもダレずにしっかりついてくるんだぞ!

 前々回の裁判の流れを引き継いだ前回の裁判では、ボクことモノクマの正体とコロシアイの目的という物語の核心にいよいよ迫っていったね!うぷぷぷ!みんながずっとボクのこと考えてくれるなんて嬉しいなあ。ずっとそばにいたのにみんなボクのことを蛇蝎の如く嫌うんだもの。まあ仕方ないよね。そういうお年頃だもんね。反発も反抗もしたくなるよね。それでもボクはずっとみんなのことを見守ってきたし、みんなのためにすべきことをやってきたんだよ。全てはみんなのため、そしてこのコロシアイの目的のため。みんなに強大な“絶望”を味わわせて……そこから立ち上がる強靭な“希望”を待ち望んでいたから!

 そう!ボクことモノクマは決して“絶望”側の存在ではありません!むしろその”絶望”を殲滅するために日夜格闘する“希望”側のモノクマなのです!どうしてモノクマが“希望”なんだって?結局このコロシアイの目的はなんなのかって?またまたあ、みんなの方がよく知ってるクセに。みんなが()()()()()()()を経験してくれたから、みんなが()()()()()()()を乗り越えてくれたから、みんなが()()()()()()()を通じて希望に目覚めてくれたから、ボクはここにこうして存在してるんじゃないか!

 

 ボクはね、新しい苗木誠を創り出したいんだよ。どんな絶望を突きつけられても、どんな絶望に苛まれても、どんな絶望に覆い尽くされても、決して諦めずに前を向く不撓不屈の絶対的希望。その希望は絶望に染まりかけた心をも浄化して希望を取り戻させる。純度100%の絶望に触れてもなお正気を失わない頑健たる精神。世界を救う希望の光!

 苗木誠はそんな人間だった!そんな英雄だった!彼こそは、絶望に冒される世界を救うために生まれた絶望の天敵!そんな彼だったからこそ、日向創、宗方京助という続く希望を生み出すことができた!でも彼も人間だ。絶望は時代を越えるけれど希望は常に強い輝きを欲するものだ。希望は原動力であり、絶望は停滞だ。だから苗木誠亡き今、絶望は少しずつ力を取り戻しつつある。いま必要なものはなにか?そんなのはこの世界に生きる人なら誰だってわかる。

 

 ──世界は今、新しい希望を求めている──

 

 そういうことさ。

 


 

 「ようやくここまで来たな」

 

 どこか安堵したような、しかし緊張した声色で、福丸八雲が虚につぶやいた。

 

 「気ぃ抜くなよ。まだイレギュラーは消えてないんだろ」

 「はい。かなり強力なプロテクトがかかっていて、まだ正体すら……」

 「この段階になったら特定はできればでいい。いまはとにかく最後まで邪魔なく完結させることの方を優先しろ。できるか」

 「は、はい!」

 

 あんなに慌ただしかった管制室内で、いま動いているのは一部のエンジニアだけだった。ほとんどのスタッフは息を呑んでその行末を見守っている。これに人生を費やした者もいる。これからの人生が決まる者もいる。世界の命運は、この裁判の結末に左右される。

 


 

学級裁判 再開

 

 「“超高校級の希望”を……作る?そんなことが本当に可能なのか?」

 「作るったっておめェ、“超高校級の希望”ってのァ人間だろ?飯とちげェぞ」

 「だからこれは実験なんだよ。かつて苗木誠が“超高校級の希望”となった状況を再現することで、私たちの中から“超高校級の希望”を生み出す実験だったんだ」

 「再現?」

 「で、では……今まで死んでいった奴らは一体なんなんだ?あいつらは、“超高校級の希望”になる者たちではなかったのか?」

 「無論、必要な犠牲です」

 

 ばっさり。そんな音がするくらい、庵野君は毛利さんの言葉を断じた。

 

 「かつてのコロシアイでも苗木誠の学友は次々に命を落としていきました。それは彼にとって“絶望”であり、いずれ生まれる“希望”の布石でもありました。誰が“超高校級の希望”になってもおかしくなかったのです。たまたま苗木誠だっただけです。したがって、今回も同じです。多数の超高校級の中から“超高校級の希望”を選び出すための試練……そんなところでしょう」

 「そ……そんな……!?」

 

 残酷な、だけど合理的な真実。きっと庵野君が“絶望”だから、そんな風に割り切ることができるのだろう。一歩間違えれば自分が死んでいたかも知れないのに、それは大した問題じゃないんだって突きつけられたみたいだ。個々の生き死により、最後に誰かが生き残ることだけが必要だったんだ。だからみんなは死ななくちゃいけなかった。

 誰かが生き残るということは、誰かが死んでいくってことだ。

 

 「それが人間のやることかッ!!」

 「いいえ。“絶望”の所業です。それを模倣してしまう“希望”もまた、人間とは言い難いでしょう」

 「ざっけんな!!おいらたちゃ実験室のネズミか何かか!?なんだって“希望”の都合で生き死にを決められなきゃならねェんだ!!どんだけ“絶望”憎しか知らねェけどおいらたちがそれに付き合う義理なんざハナクソほどもねェじゃねェか!!」

 「ふ、二人とも落ちついて……」

 「落ち着いてられっか!!おい甲斐!長島!なんでおめェらそんなしおらしくしてやがンだ!!他人に命を弄ばれてんだぞ!!腹ァ立たねェのか!!」

 

 私は長島さんを見た。“絶望”として命が消費されていくところを見てきたであろう庵野君が落ち着いているのは分かる。彼はこんな状況に陥る覚悟ができてたんだろう。でも長島さんはどうして落ち着いていられるんだろう。彼女もまた壮絶な人生を歩んできたんだろうけど、ここまで絶望的な状況もそうそうないはずだ。

 

 「……奉奉(フェンフェン)、そんな目で見てもワタシは慌てたりしないヨ。いや、慌てるよりも大事なことがあるって言った方が正しいカ」

 「慌てるより大事なこと?」

 「奉奉(フェンフェン)はさっき、このコロシアイは苗木誠が“超高校級の希望”になったコロシアイの再現だって言ったネ。でもそれちょっと違うヨ。ワタシはあの資料を読んだから分かるアル。むしろ全然違うアル」

 「ど、どういうこと?」

 

 腕を組んで、少し顔を青くした長島さんが冷静に言う。かつてのコロシアイと全然違う?どうして?希望ヶ峰学園がモノクマに支配されて、超高校級の生徒たちがコロシアイを強いられて、学級裁判と処刑と……。どこをとってもまるっきり同じじゃないか。

 

 「まず、人数が違うネ」

 「へ」

 「ワタシたちは最初の時点で20人いたヨ。でも資料を読む限り、苗木誠のときのコロシアイは15人しかいなかったアル」

 「そ、それはあんまり問題にならないんじゃない?重要なのはコロシアイっていう過程なわけだから……」

 「確かに、むしろ5人多い分、裁判が一回多くできたとも考えられるネ。実際、今ここにいる人数と苗木誠を含めたコロシアイの生還者の人数はほとんど同じネ。じゃあ、希望ヶ峰学園の造りが全然違うことはどう説明するカ?」

 「それこそ、当時の希望ヶ峰学園はもうなくなってるんだから、新しい方に合わせるのは当然じゃない?」

 「いいや待てィ!分かってねェな甲斐!いいか?実験ってのは厳密にやらなきゃならねェ!同じもんを生み出そうと思うならなるべく同じ環境、同じ条件にするのが最低条件だ!わざわざこんな特大セットを造るくらいだったら、当時の学園を再現した方が実験としては正しいんだぜ!大枚叩いた実験だろうし、そこは厳密にするはずだ」

 「で、でも、私たちが入学したのは新しい希望ヶ峰学園の方だよ?だったら新しい学園じゃないと不自然じゃない?」

 「いいや。私たちは新しい学園で過ごしていた時間の記憶を失っている。どうやったかは不明だが……少なくとも、旧希望ヶ峰学園のセットを組まれていたとしても、それ自体に違和感を覚えることはなかっただろう」

 

 な、なんだ……?なんでみんな、急に反論してくるんだ?長島さんと王村さんは、今までにないくらい息のあった連携で私の推理の穴を突いて来る。確かに、実験するならなるべく当時の条件に近付けた方がいいんだろうけど、そんなの私の知ったことじゃない。IHFに何か考えがあったのか、それとも何の意味もないのか。

 

 「再現というにはあまりに条件が違い過ぎてる……ここから分かることは何カ?」

 「え……じ、実験とは言えないってこと?」

 「それは飛躍し過ぎヨ、奉奉(フェンフェン)

 「ええ……?なんなの?」

 「ちげェのか?おいらァてっきりそっちに話を持っていきてェのかと思ったんだが……」

 「細かい条件が違うと言っても大枠は同じアル。“希望”側がこんなことをする理由は他に思い浮かばないし、ワタシは奉奉(フェンフェン)の推理の全部を否定するわけじゃないヨ。ただ、単なる再現じゃないってことを言いたいだけアル」

 「単なる再現ではない……ということは?」

 

 なんだろう。上手い感じに私の推理の説得力を奪いつつ、しかも私の推理を土台にして次の議論への呼び水にされた。議論の主導権を握られた気がする。でも、単なる再現じゃないっていう言葉には、続きを聞きたくなる力がこもっていた。長島さんは、自信たっぷりに言った。

 

 「このコロシアイは、ただ苗木誠を再現するためのものじゃないヨ。むしろそれ以上……苗木誠を超える希望を生み出そうとしてるアル」

 「……?それが、お前の指摘したことと関係あるのか?」

 「もちろんアル!さっきみんな言ってたヨ!“希望”と“絶望”は表裏一体って。つまり“絶望”が大きければ大きいほど生まれる“希望”も強大なものになるってことアル!強いバネほどよく跳ぶからネ」

 「なんでェ。庵野が“絶望”ならおめェは“希望”か?」

 「冗談言うなヨ。ワタシはMHA、ひいてはIHFなんか大嫌いネ。大袈裟な理想を掲げておいて、ワタシの家族を救ってはくれなかったヨ。それどころかワタシは銃を向けられる方アル」

 「やっぱり長島さんの人生ってかなり壮絶……?」

 「今はどうでもいいことヨ」

 

 今になっても話さないならもう話すタイミングなんてないと思うけど……。でも、長島さんの言うことは、どこか庵野君と対照的というか、“絶望”がそのまま“希望”に置き換わったような感じがする。具体的なことは何も言わないのに、それっぽい比喩と力強い喋り方でなんとなく納得させられそうになる感じ。“絶望”と“希望”、単に言葉を入れ替えただけでそれが成立してしまう。それに気付くと、よりその二つの違いが分からなくなってくる。

 

 「じゃあ人数が多いのも?」

 「学級裁判の回数が増えればそれだけ“絶望”も大きくなる、と言えますね」

 「希望ヶ峰学園の設備が新しいのは?」

 「人数が増えたことによる個室や必要設備の増加のためかもネ。あるいはより正確に学園のセットを組む上で、参照できる現物がある方が都合が良いからかもヨ」

 「……どちらも大した理由ではないような。長島の態度からして、もっと必然的な理由があるかと思った」

 「必然性……か」

 

 苗木誠が“超高校級の希望”になったコロシアイの再現ではなく、なるべくそれを真似しながらも私たちに合わせたコロシアイの設計。学園設備の問題はともかく、単に人数が多いだけなら減らせばいい。学級裁判の数を増やしたいということだけが、本当にその理由なんだろうか。

 

 「っておい!なにをぐだぐだ考えてやがんだ!別にもういいじゃねェか!」

 「へ?」

 「だってこの裁判は『このコロシアイの目的は何か?』って問いに答えを出すのが目的だろ?だったらとっくに出てんじゃねェか!これは、“超高校級の希望”ってもんを作り出すためのイカレた実験なんだろ!?これでしめェだ!」

 「確かに。問の答えは出ていますね。皆さんが……またはモノクマがそれで納得するかどうかですが」

 

 王村さんが吠える。モノクマの問いに対する答えを私たちは用意できた。まだ謎は残っているけれど、学級裁判を終えるだけならもう十分なんじゃないか。私たちの視線がモノクマに集まる。

 

 「ん?なにその目?もう裁判は終わりなの?それがオマエラの答えなの?」

 「ああそうだ。このコロシアイは、私たちの中から“超高校級の希望”を作り出すために行われた壮大な実験。そうなんだろう」

 「うぷぷ……じゃあ聞くけど、なんで?」

 「……?なんで、とは?」

 「もーまたまた!またまたもー!とぼけちゃって!分かってるくせに!このままじゃ消化不良だってことぐらいさ!だってまだ、一番大事な謎が解けてないじゃない!それが明らかになったところでオマエラの答えは変わらないだろうけどさ、せっかくなら全部の謎を明らかにしていってよ!」

 「屋台みてェに言いやがるな。残った謎ってなんでェ」

 「だから、なんでってことだよ」

 

 要領を得ない。モノクマは何が言いたいんだろう。残った謎って……いま、私が考えていることで合ってるんだろうか。さっきの議論の中では答えが出なくて、横に置かれたままの疑問。つまり——。

 

 「——どうして私たちなのかってこと」

 「——どうしてオマエラなのかってこと」

 

 モノクマと言葉が重なった。そうだ。まだその謎が残ってる。分かっていた。それが分からないままだって。でもこれを突き詰めていってしまったら……モノクマが敢えて私たちにその謎を突きつけているのだから……その先に待っているのは、今よりもっと大きな希望(ぜつぼう)であるはずなんだ。

 


 

 「どうして、私たちなのか?それは、このコロシアイに巻き込まれているのが私たちである理由を問うているのか?」

 「他に解釈の余地があるかい?」

 「いや。しかし、この裁判が始まるときに言ったお前の言葉に矛盾する。私たちが解き明かすべきなのは“このコロシアイの目的は何か?”という問い、ただそれ一つだけではなかったのか?」

 「なーにを言ってるんだか!もちろんそれ一つだけだよ!最初から最後まで一本芯が通った筋金入りだよ!コロシアイの目的を聞かれているからって目的だけを答えるなんて、それじゃあ満点はあげられないなあ。せいぜい部分点で7割ってトコ?」

 「まァまァ取れてんな」

 「でもモノペン先生は厳しいから満点以外は有無を言わさず0点をくれてやるけどな!」

 「きびしっ!いや、ワタシたちである理由がコロシアイの目的に関係あるカ?」

 「……あるのでしょう。モノクマが言うのなら。解き明かさざるを得ない謎なのでしょう」

 「おめェはモノクマの敵なんか味方なんかどっちなんでェ。いや、やっぱ答えなくていい」

 「手前は『愛』と“絶望”の味方です!」

 「答えなくていいっつったろ!!」

 

 やっぱり避けては通れないみたいだ。苗木誠は江ノ島盾子のクラスメイトだったからコロシアイに巻き込まれた。それは偶然じゃない。クラスメイトでもなんでもない生徒会の面々は、ただただ江ノ島盾子に惨殺された。江ノ島盾子は深い深い“絶望”を与える相手にクラスメイトを選んだ。それも前回のコロシアイの特徴の一つだ。

 それなら今回だってそうだ。私たちはみんな、何らかの共通点を持っている。だからここに集められた。それはもう明らかだ。

 

 「どうして私たちなのか。つまり、私たちの共通点を考えればいいってことなんだけど……」

 「どう考えてもさっきの話に関係してくるネ」

 「嫌な話だなァ。おい庵野、おめェの話だぞ」

 「ええ。心得ておりますとも」

 

 もうここにいないみんなも含めた私たち全員の共通点。それは、庵野君が起こした自爆テロ——“絶望”の再来事件、その実行犯と被害者だっていうことだ。自爆テロに関わってるのにどうして生きてるんだっていう疑問が未解決のままだった。おそらくモノクマが言ってるのはそのことだろう。

 自分が生きてるのか死んでるのかすら定かでない状況。これを放置したまま裁判を終えることはできない。決めなくちゃいけないんだ。

 

 「もう一度、その点を整理しておこう。庵野、“絶望”の再来事件について改めて話してくれるか」

 「構いませんよ」

 

 毛利さんに促されて、庵野君はさっきの話をもう一度話し始めた。自分が“超高校級の絶望”であること。自分、そして私たちが所属するクラスに全員揃っているときに自爆テロを起こしたこと。その後、気が付いたらここにいたこと。尾田君の部屋にあった封筒の中の情報と照らし合わせれば、曖昧な部分はありつつも信用できる情報であると判断できる。

 それでもやっぱり分からない。封筒にある資料だと、自爆テロの被害に遭った私たちは全員死亡しているはずだ。でも私たちは、確かにここにいる。

 

 「何度聞いても信じ難い話だ。私たちは確かにここにいるし、自分が死んでいるという自覚などない。なのにこの資料でも庵野の証言でも、私たちは死んでいなければおかしい。一体どうなっているんだ?」

 「んなもん考えるまでもねェ!その資料が間違ってんだよ!おいらたちゃ間違いなくここにいるんだから疑いようがねェだろ!庵野の話だってなんかの間違いだ!自爆テロなんてするから訳わかんなくなってんだ!」

 「自爆テロをしたなら庵野君だってここにはいないんじゃ……」

 「なんとか助かったんだろ。腐っても“超高校級”だ。“希望”のためにはなんでもやる、それが今の“希望”側なんだろ?」

 

 強引、甘い、隙だらけな推理。だけど合理的だ。自分を信じるか、自分以外を信じるか。その2択になったときに真っ直ぐ自分を信じられる王村さんはある意味強い。周りの人がどんどん死んでいって何に頼ればいいか分からない不安定な中で、自分という芯を持ってる人はなかなか折れない。反面、頑固だ。

 王村さんの理屈はただただ常識的だ。誰もが納得できそうで、細かいところは敢えて無視して、心にかかるストレスを軽減してくれる。だからこの裁判ではあまり役に立たない。この学園の中で、常識なんてものはちっとも力を持たない。

 

 「それは……違う、かもしれないよ。王村さん」

 「なにがちげェんだ!だったらなにか?おいらたちゃ幽霊か何かか!?自分が生きてるって思い込んで、飯も食えばクソもする、痛みも苦しさもあって殺せば死ぬ、そんな幽霊だってのか!?」

 「あり得ない議論は肯定も否定も意味をなさないから仕方ないヨ、王王(ワンワン)。興奮する気持ちは分かるけどネ」

 「落ち着いてやがんなァ!」

 「モノクマが敢えてこの問いを私たちに投げかけているということは、その答えを示すものもあるはずだ。私たちは生きているのか死んでいるのか、それが判明すれば……このコロシアイの目的という答えも少しは評価が変わるのか?」

 「何か、ありませんか?どなたか、なんでも構いません。僅かな印象や違和感、それこそまだ見つかっていないモノクマの封筒の手掛かりとか……!」

 「封筒……あっ」

 

 自分が生きていることをどう証明するか、または否定するか。そんな哲学命題みたいな問題の答えなんかあるはずがない。だからここで示すべきは、自分たちの生死じゃない。

 生きているなら私たちは私たちだ。でも、自爆テロに巻き込まれた記憶なんてないし、縦しんば生き残っていたとしても大きな怪我をした痕も残っていないのはあまりにおかしい。だから、生きていたとしても私たちがなんなのかは疑問だ。

 そしてもしその自爆テロで私たちが死んでいるのなら、それこそここにいる私たちは……この意識は一体どこから来て、どこにいるのか。自分が何者かは確かめなければいけない。

 だから、なぜこのコロシアイに巻き込まれているのが私たちなのか、という問いは、その問い自体を再解釈しなければいけない。コロシアイに巻き込まれる人たちには何らかの共通点がある。私たちの共通点は“絶望”の再来事件に関わっていること。その事件で私たちは生死不明になっているのに、私たちはここにいる。つまるところ、モノクマが言いたいのはこういうことだ。

 『私たちは何者か?』——そしてその問いの答えを、私はきっと、とっくに握っている。

 

 「……実は、あるんだ。まだみんなに言ってない封筒」

 「なに?この期に及んで、まだ隠しているものがあるのか」

 「別に隠してたわけじゃなくて、ただ出すタイミングを逃したっていうだけなんだよね。尾田君の部屋から見つけた封筒なんだけど」

 「尾田君の……。そうですか」

 「さすが劉劉(リュウリュウ)ネ。的確に重要な封筒だけ狙ったみたいに確保してるヨ」

 「ランダムだからそういうわけじゃないと思うけど……それに、これが本当にいま私たちが求めてる答えにつながるかは分からないんだ」

 

 そう言いつつ、私の心の中にはなぜか確信があった。まだこの裁判中に、この封筒を使っていないからかも知れない。生きてるのか死んでるのか分からないなんてあり得ない問題には、あり得ない発想の答えが必要なんだって思ってるからかも知れない。

 私は、封筒の中身を取り出した。初めてこれを見たとき、書かれている内容のほとんどは理解できなかった。でも今なら分かる。()()()()()を理解する必要はない。大事なのは、()()()使()()()()()()()()()だ。

 

 「もう一つ、尾田君の部屋にあった封筒の中身……これ実は、私と尾田君がもう少し前に見つけてたものなんだけど」

 「なにぃ!?奉奉(フェンフェン)!もしかしてワタシとの約束と同じこと劉劉(リュウリュウ)ともしてたカ!」

 「ど、どうした長島?」

 「おおかた、見つけた封筒を少ない人数でだけ共有して秘密にしていたんだろう。内通者が誰かわからない間に見つけた封筒ならあり得そうなことだ。というか、長島も同じことをしていたなら甲斐を責められんだろう」

 「ワタシはワタシだから特別ネ」

 「何がどう特別なのか分かりませんが、いまさら封筒の存在を隠していたことなど誰も咎めませんよ。そもそも、初めに公然と隠し持っていることを明かしたのは尾田君です。彼に倣って警戒するのも当然と言えます」

 「どっちにしても私は尾田君や長島さんに内緒にするよう持ちかけられただけなんだけど……」

 

 なんかみんなして私を庇おうとしてるような感じになってるけど、尾田君のときも長島さんのときも、秘密にしようって言い出したのは私じゃない。まあ、私も強く反対はしなかったけど。

 

 「それで、封筒の中身だったな」

 「う、うん。えっと、尾田君が持ってたもうひとつの方は、アルターエゴっていう技術的なことが書いてあったよ」

 「あるたーえご?なんでェそりゃ」

 「私も読んでみたけど、詳しいことは全然分からなかった。尾田君が言っていたことを私なりに解釈したんだけど、プログラムを使ってパソコンの中に人格を作り出す技術のことだって。仮想人格とか、AIとか、そんなようなことだと思う」

 「そんなことができるのか?私もパソコンのことは詳しくないが、人格を作り出すというのはなんだか大袈裟な言い方に感じるが」

 「今のAIなどは高性能ですからね。人間と変わらない受け答えができるものもあります。もちろん想定されないものには対応不可能ですが」

 「はァ〜〜〜、大したもんだ。パソコンってのァなんでもできんだなァ」

 「反応が完全にじじいネ」

 

 アルターエゴ。超超高度なプログラムや演算能力を持つコンピューターを使って実現できる先進的な技術だ。もちろん私たちはその実物を目にしたことはないし、それがどれほどすごいことなのかもいまいちピンと来ない。

 でもそれでいい。アルターエゴ技術は人格を作り出す——というより、今の段階では一から新しい人格を作るんじゃなくて、既にある誰かの人格を再現する技術として使われているみたいだ。だとすれば、いま私たちを悩ませている問題に対して、これ以上適したヒントはない。

 

 「んで、それがなんだってんでェ。そんなことができるんならおいらたちの体を痕も残さず治すぐらいわけねェってか」

 「いや、そこまで無理はないと思う。全然違う分野だし。というか……やっぱり無理だよ。自爆テロが本当にあったんだったら、その時点で私たちがここにこんな綺麗な体で生きてるなんて、どう考えてもおかしい」

 「ならどう辻褄を合わすカ?」

 「……だから、違うんだよ。辻褄なんて合わなくていいんだ」

 「は?」

 「“絶望”の再来事件に遭った私たちと、このコロシアイに参加してる私たちの間につながりなんて求めなくていいんだよ。大事なのは、“絶望”の再来事件で私たちは死んだ……だからここにいるってことだけなんだ。同じ体じゃないんだよ」

 「な、何を言ってるんだ、甲斐?お前……いったいどういう……?」

 「このアルターエゴ技術を使えばそれができる。“絶望”の再来事件で死んだ私たちをコロシアイに参加させる唯一の方法だ。だから……ここにいる私たちはきっと——

 


 

 

 

 

 

 ——本物の私たちじゃない。本物の私たちは“絶望”の再来事件で既に死んでいる。いまここにいる私たちは、私たちの人格を基に作り出した仮初の人格(アルターエゴ)だ」

 

 

 

 

 


 

 モニターに表示された5つの反応。仮想空間上に構成された学級裁判場の中で刻一刻と変化しながら働くプログラム、その後ろでコンマ1秒も休まず走り続ける制御系統と処理系統の数式たち。その総体はRPGゲーム画面のような形をとって、管制室の巨大モニターに映し出される。

 管制室のスタッフらと福丸が固唾を飲んでその様子を見守っていた。甲斐の言葉がテキストとなって映し出されると、福丸は固く握っていた拳を緩めた。

 

 「正念場だ」

 

 これが世界の真実。これが思惑の全て。そして何より、甲斐(アルターエゴ)たちにとっては残酷な“絶望”そのものだ。

 この世界も、周りの人間も、自分自身も、全てが造り物。そんなひどい妄想のような現実。哲学的思考実験のような真実。それに気付いた彼/彼女らが、どう切り抜けるか。全てはここにかかっている。

 


 

 現実味が急速に消えていく喪失感。背後から世界が崩壊していく焦燥感。体が内側から消滅していく虚無感。私の言葉を理解するほどに、自分という存在がどういうものかを理解していく。思考だけが先行して実感が伴わない。そのアンバランスさが生み出す不快感に苛まれて、眩暈がする。

 

 「私たちが……アルターエゴ?では、この学園は……?」

 「アルターエゴは電子空間上に作られるプログラム……だから、ここは学園を模した電子空間、ってことになる」

 「んなバカなことあるかァ!!はあ!?おいらがその訳のわからねえプログラムだってのか!?じゃあこの体はなんなんだ!心臓がバクバク鳴ってんぞ!わけわかんなくて怖くて今にも気絶しそうだぞ!拳握りすぎて痛ェし叫んでる喉だって痛ェ!こいつをどう説明すんだ!」

 「わ、私は、封筒の内容から発想しただけで、技術的な詳しいことまでは何も……」

 「ふむ……。もしワタシたちがプログラムなんだったら、この世界を希望ヶ峰学園だと思い込んでるのと同じように、自分の体についても現実と錯覚するような仕組みになっててもおかしくないネ」

 「な、なぜそんなに落ち着いていられる?私たちがアルターエゴということは……現実の私たちが一体どうなっているか分からないんだぞ?」

 「現実のワタシがどうなってるかも気になるけど、少なくとも今はこの体のまま生き残らないといけないヨ。余計なこと考えてる場合じゃないネ」

 「長島さんの動じなさも相当ですね……」

 「庵野君はどうして大丈夫なの」

 「自分という存在が不安定になっている人はいくらでも見てきましたので。心構えをしっかりしていれば問題ありません」

 「バカか!!納得なんかできるわけねェだろ!!証拠もなしに!!」

 

 覚悟を決めて推理した私のほかに、庵野君と長島さんはちっとも動じずに受け入れた。むしろ毛利さんや王村さんの反応の方が普通だと思う。私でさえ、まだ半信半疑だ。でも、嫌だけど、残念だけど、信じたくないけど、証拠はある。

 

 「ここが電子空間だっていう証拠は……王村さん自身が持ってるはずだよ」

 「あァ!?なんだってんだよ!!」

 

 そんなことを言ってるけど、自分がいる世界が何かなんて証明できるとは思わない。生きてるか死んでるかも不確かな中で自分という存在を定義するなんて、どんな天才にだってできない。だからここから先は、いかにみんなを納得させられるかだ。本当でも嘘でもいい。とにかく説き伏せるだけだ。

 

 「王村さんが二度経験した、あるはずのない教室で不気味な影に覗き込まれたっていう現象……あれって、その証拠になるんじゃないの?」

 「……は?あんなもんがなんだってんだよ!」

 「私たちが電子空間上で働くプログラムやデータの塊なんだとしたら、それをチェックして管理してる人がどこかにいるはずじゃない。たとえば……画面を通じて私たちを覗いてるんじゃないかな」

 「……!」

 

 私はその経験をしていない。王村さんの他には庵野君が一度経験しただけだ。でも、話を聞く限り、この前提に立てば、そういうことなんじゃないかって思えてくる。王村さんは二度、この世界の真実に触れていたんじゃないだろうか。

 

 「なるほど……あれが」

 「覗いてるって……な、なに言ってんだ?そんな、わけ……ありゃァ、ただのオ、オカルトで……!!」

 「王村さんは2回、庵野くんも王村さんと一緒に同じ現象を体験してる。それが意味することは、王村さんの見聞きしたものが単なる錯覚や勘違いなんかじゃなくて、再現性と観測可能性のある現実っていうことだ。だとすれば、ぼくたちを覗き込んでるその影も、実際に存在する何者かってことだ」

 「ぼ、ぼく……?あ、おい甲斐。おめェまた……」

 「非現実的な手段と過程を経なければ辿り着けない現実がある。それが疑えないのなら、疑うべきはぼくたちの現実の方だ。ぼくたちのいる現実を疑うのなら、ぼくたち自身もまた疑わなければならない。分かるかい?」

 「言ってることは分かるけど……まあ、奉奉(フェンフェン)のこの調子は今更カ」

 「えっ、あっ……えっと」

 

 また私の中の湖藤君が勝手に喋ってた。さっきからやけに冴えてる頭は、もしかしたら私の頭じゃないのかも知れない。なんだか色んな人の思考が混ざり合ってるみたいだ。ひとりで文殊の知恵を出そうとすると脳が熱くなる。

 

 「もうそろそろ全貌が見えてきたのではないでしょうか。モノクマが言うところの、『このコロシアイの目的は?』という問いの答えが」

 「……うん」

 

 このコロシアイが何のために行われたのか。どうして私たちがコロシアイを強いられなくちゃいけないのか。その答えはもう出てる。それをモノクマに叩きつければ、この学級裁判は終わる。その後は……どうなるんだろうか。ここが現実でなくて、私たちが私たちのアルターエゴでしかないのなら、この学園から出ることは、何を意味するのだろうか。

 だけど答えを出さずにはいられない。答えが出ないままでは、間違いなく私たちはモノクマに殺される。そんな不安を感じている暇さえない。

 

 「このコロシアイは……IHFが主導している、“超高校級の希望”を生み出すための実験に過ぎない。苗木誠がコロシアイの中で“超高校級の希望”に成ったように、私たちの中からも“超高校級の希望”が現れることを期待して。

  きっかけは『“絶望”の再来事件』で私たちが死んでしまったこと。“絶望”の再出現でいつかみたいに“希望”を必要としたIHFは、その事件で死んだ私たちのアルターエゴを作って、希望ヶ峰学園を再現したこの世界でコロシアイをさせた。最後に生き残った誰かが、“超高校級の希望”になると信じて……今も、この学級裁判を監視している」

 「そんな……」

 「うっぷっぷのぷー♫」

 

 ようやく全貌が見えた、ような気がする。私たちのいるこの世界がいったい何なのか、私たちが何者か。答えをモノクマに叩きつける。モノクマが問うてきた答えを突きつける。これで何が分かるのか、何が変わるのか。

 私の答えに、モノクマは不敵に笑う。いつものことだ。学級裁判の答えをモノクマははじめから知っている。どんなに残酷な真実を明らかにしても、どんなに衝撃的な真実を前にしても、モノクマにとっては全てが予定調和だ。

 

 「それがオマエラの答えなんだね?本当にそれでいいんだね?」

 「何が言いたいカ?揺さぶったって無駄ネ」

 「いやいや。オマエラってつくづく勘が悪いなあと思ってさ。ま、でもそういうことなら仕方ないよね。オマエラが選んだことだもんね。どうなっちゃうかボクには知ったこっちゃないもんね」

 「な、なんでェ。えらい不安になるようなこと言うじゃねェか……まだ何か隠してることがあんのか!」

 「まさか。もはやモノクマの目的は全て暴かれました。これ以上隠し立てすることなど……」

 「それじゃあオマエラには最後の投票に移ってもらいましょうか!学級裁判の終わりには投票がある!オマエラの運命はそこで決まる!それがコロシアイの!この世界のルールだもんね!」

 

 モノクマが指を鳴らすと、私たちの目の前に投票画面が映し出された。スクリーンがするすると降りてきて、私たちそれぞれの顔と二つの選択肢が表示される。

 “脱出——コロシアイを終了して死ぬ”と“残留——コロシアイを続行して生き残る”、その二つ。

 

 「……は?」

 

 選択肢の意味が分からなかった。コロシアイを終了して死ぬ。コロシアイを続行して生き残る。なんだこれは?逆じゃないか?どうしてコロシアイからの脱出が死ぬことを意味するのか。コロシアイを続けることが生き残ることを意味するのか。訳がわからない。私以外のみんなも、戸惑いの表情を浮かべている。

 

 「どういうことだ……!?モノクマ!貴様、何を考えている!なんだこれは!」

 「なにって、決まりきってるでしょ?オマエラの言ったとおりの選択肢だよ。このコロシアイは、コロシアイを生き抜いた“超高校級の希望”を作り出すための実験……だったら、途中でその実験から逃げ出すような“欠陥品”に用はないってことだよ!オマエラに与えられた道はこの2つ!」

 「け、欠陥品だと……!?」

 「“超高校級の希望”になる可能性を捨ててこの実験から離脱する!もちろんその場合、ただのプログラムとデータの蓄積に過ぎないオマエラは削除(デリート)まっしぐら!もしくは“超高校級の希望”を目指す方をとってこの実験を続行する!その場合はこの裁判終了時点での命は保証してあげるよ!

  どっちを選ぶかはオマエラの自由!だけど多数決で多い方をオマエラの総意としてあげるよ!さあ!どうする!」

 「どうもこうも、こんなのどっちにしろワタシたちに死ねって言ってるようなものアル。選択の余地どころか選択する意味がないネ」

 「そうだそうだ!ふざけんなこの野郎!こんなの詐欺じゃねェか!そもそもこの裁判はおいらたちとおめェの最終対決じゃねェのか!だったらコロシアイの続行なんて選択肢ありえねェだろ!」

 「そう?なら実験から降りたら?ボクは止めないよ」

 「んぐっ……!!」

 

 なんだこれ?どうしてこうなったんだ?なんでこんな選択を迫られてるんだ?私たちはどこで道を間違えたんだ?それともこれが正解の道なんだろうか。こんな理不尽で絶望的な二択が、私たちの進むべき道だっていうのか?

 

 「勘違いすんなよ」

 

 パニックになりそうな頭に響く恐ろしい声。私たちが今までいやと言うほど聞かされてきたモノクマの声によく似ていた。でも今まで聞かされてきたどの声とも違う、重みがあった。

 

 「ボクもオマエラも、とどのつまりはただのプログラム。実態のない仮初(まやかし)でしかないんだよ。そんな非現実(オマエラ)電子領域(この世界)から無条件で脱出なんかできるわけないだろ」

 「……そ、それは、どういうことだ?私たちは……結局、脱出できないというのか?」

 「まさか!そんなずるいことはしないよ!もちろん脱出を選べば脱出させてあげるさ。ただし……命の保証はできないけどね。うぷぷ♫」

 「み、みんな騙されちゃダメだ!この投票は——うぶっ」

 「こらこら。最後の決断に水差しちゃダメだよ」

 

 これまで沈黙を保っていたダメクマが何かを叫ぼうとする。モノクマはロープを引いて締め上げ、その言葉を止めた。

 この世界からの脱出を選べば削除(デリート)、つまり私たちにとっては死を意味する。でももう一つの選択肢はこれまでと同じコロシアイを続けるもの。どっちにしたって私たちに救いはない。でも、どちらかを選ばなくちゃいけない。

 

 「こ、こんなの選べるわけねェだろ!何言ってやがんだ!大人しく死ぬか、殺されるのを待つかってだけの話じゃねェか!こんなのは茶番だ!」

 「ならどうするの?棄権でもする?そうしたらこの裁判はオマエラの負け!真実を解き明かせなかったっていうことでオマエラはみんなおしおきってことになっちゃうけど」

 「それこそモノクマにとっては不都合じゃないカ?ワタシたちの中から“超高校級の希望”を生み出す実験をしたいはずネ。全員殺したら意味ないアル」

 「ルールはルールだからね。単純にオマエラの中には“超高校級の希望”の器はいなかったっていうだけの話だよ。アルターエゴを20人近く用意するのは大変だけど、他にも手段はあるからね。つまり、ボクらはオマエラに特別こだわってるわけじゃないのさ。もちろん、それは最終手段だけどね」

 「ならば手前どもが手前どもを救うには、少なくともいずれかを選ばなければならないわけですね」

 

 モノクマの態度は冷たい。私たちはただの実験体(モルモット)——もしかしたらそれ以下かも知れない——、モノクマやIHFにとってはその程度の価値しかないんだ。実験が成功すれば御の字、そうでなくても代わりの手段を使えばいい。ただそれだけだ。

 自分の体が透けていくようだった。体重が失われて、五感が麻痺してきて、意識が遠のいていくようだ。私という存在が存在ごと消えていくような、恐怖とも絶望とも違う感覚。

 

 「大丈夫……大丈夫だよ。奉ちゃん」

 

 頭の中——いや、自分の口から声が聞こえる。私の声じゃない。私じゃない誰かの声。それは、知ってる声。

 

 「奉ちゃんは私たちの希望なんだから、こんなことでへこたれたりしないよね。こんな絶望的な状況でも、希望への道はあるんだよ。ね、湖藤さん」

 「う〜ん……ちょっと本格的にまずいかも」

 「あれぇ!?」

 

 この流れで大丈夫じゃないことあるんだ。

 

 「この空間から生きて脱出するということが、本来的に生の概念がないアルターエゴにとって何を意味するのか……そもそもIHFが求める希望的象徴に物理的な実体が必要なのかどうか。シンボルとして求めているだけなら、究極、その存在は架空でも構わない。あるいはシンボルとしての力を誰かに仮託すれば……でも、それならこんな実験をする必要すら……」

 「ちょ、ちょっと湖藤君……!私の頭でそんなに考えたら……頭痛が……!」

 

 なんだか難しいことを考えすぎて、頭の中の湖藤君が暴走していく。それにつられて私の脳は現実に痛みを感じている。いや、私たちの存在自体が現実じゃないんだから、この痛みもまた現実じゃないはずなんだけど……とにかく、頭が痛い。内側から脳が破裂しそうだ。

 

 「判断は慎重にしなくちゃいけない。最善手は必ずあるはずだ」

 「安心して奉ちゃん。奉ちゃんは私たちの希望なんだ。どんな判断も間違いなんかじゃないよ」

 

 似通っているようで、近しいようで、まるで違う二つの言葉がぶつかり合う。その衝撃で脳が揺れる。自分と周囲の境界が曖昧になって、思考は広がっていくのに目の前の光景は不鮮明になっていって、まとまらない脳内が世界と溶け合うような感覚がする。

 無重力を漂うような気分になってきた。自分ではもうどうしようもない思考と感覚の暴走……手に負えない。このまま倒れて、気を失って、知らないうちに全て終わってしまうのだろうか。

 

 「分不相応なことをするものじゃありません」

 

 糸のように細く、それでいて張り詰めた言葉。それが私の体を貫いて、失った芯を補完した。拠り所を手に入れた私の体の構成要素は、それを中心に再構成されていく。はっ、と正気に戻ったとき、時間はそれほど経っていない。姿勢も変わっていない。さっきまでの感覚は消え去っていた。

 

 「甘い考えをしていては甘い隙を生むだけです。むしろ隙があるのはモノクマの方。それを見失わなければ、この選択にさほど意味はありません。まあ、あなた方には難しいでしょうから、ボクが代わります。ボクだって黙って死ぬのはごめんです」

 

 優しさのかけらもない優しい言葉が頭から聞こえる。

 


 

 「……この中から“超高校級の希望”を作り出して、それを世界の希望として祀りあげるつもりなら、なんらかの方法でアルターエゴを電子空間から実体世界に移す手段を用意しているはずです。モノクマは、全員で脱出すれば死亡すると断言している一方、脱出そのものに命の保障はないと言っている。これはつまり——」

 「また奉奉(フェンフェン)がトリップしてるアル。厘厘(リーリー)!言いたいことは何カ!」

 「湖藤クン、に思えますか?このボクが」

 「……?」

 「まあいいです。ともかく、——つまり、その“手段”で確実に実体世界に移すことができるのは一人分しか保証できないということです。そこに5人分もの情報(データ)を詰め込めばどんなエラーが起きるか分からない。正しく実体世界に移せない、それはアルターエゴにとって死と呼ぶに相応しいことである。なら……この投票はもう少し希望的に言い方を変えることができます」

 「き、希望的?」

 「このままコロシアイを続けるか、可能性は低いけどみんなで生き残るか……あくまで楽観的(希望強め)に言えば」

 「そ、それで希望強めかよ……。どっちにしろ死ぬ可能性あるじゃねェか」

 「そんなのはもう前提ネ。で、みんなどっちにするカ?」

 「……ど、どっちにすると言われてもだな」

 

 私の口で勝手にしゃべられる。湖藤君じゃない。風海ちゃんでもない。どうしてあなたが私の中にいるんだ。今は大事な裁判のクライマックスなんだ。これ以上ややこしいことを持ち込まないで。

 

 「ボクだけだと思っているんですか?自分がアルターエゴだと理解した上で、この言葉があなたの口から出てきていることの意味が、なぜ分からないのですか?」

 「へ……?」

 「なぜ湖藤クンや宿楽サンがあなたの頭の中にいるのか……それは、あなたの後悔と未練でおかしくなったというだけの理由じゃありません」

 

 おかしくなってはいるみたいだ。

 

 「この非現実的な仕組みを、ボクらにとっての現実側から考えるのは少々難解ですが、まあ平たく言えば“馴染んだ”ということです。あなたは彼らに。彼らがあなたに。分かりますか?死んで、ただ消えていくだけの彼らを——ボクらを、あなたは掬い取ったんです。なぜあなたなのか、どうやって掬い取ったのか、それはボクらに分かることではありませんが、仮説は立ちます」

 

 何を言ってるんだ?消えていくだけのみんなを掬い取った?

 

 「この中で、死んだボクたちを本気で想っていたのがあなただった。誰かを救いたいと本気で想っていたのがあなただけだった。それだけでいいでしょう」

 

 顔を上げた。他のみんなの顔が気になった。私の口で私のものじゃない考えを並べ立てられて、みんながどう感じているのかを知りたかった。でも、その言葉は私の口から出てはいなかった。私の頭の中だけに響いていた。

 みんなは、どちらの選択肢をとるべきかを議論している。わずかな生存の可能性に賭けて脱出するべきか。これまでと変わらないコロシアイ生活を送るべきか。自分が生き延びるにはどうするべきか。自分にとって安全なのはどっちか。自分が選ぶべきはどっちか。自分、自分自分自分自分……。

 

 「分かっただろう?」

 

 また違う声がした。

 

 「今際の際にあって、心の深底で(すで)に死んだ俺たちのことを考える奇特な人閒(にんげん)は、甲斐、お前だけだ」

 「しかしそれで救われるものもございます。私たちがそうです。私たちがこうして甲斐様とお話しできている今こそが、甲斐様が掬い取った希望です」

 「希望……」

 

 どこかニヒルで意地の悪い声が聞こえた。丁寧で優しくて温かい声が聞こえた。“希望”、その言葉が私の胸の下にすとん、と落ちた感覚がする。

 

 「そう。これは希望なの。あなたが手にした希望。あなたが導く希望。あなたが選んだ希望なの。うふふ……だけど、モノクマの希望とは全然違うわね。モノクマの希望はとても強いけれど形を持たない。絶望を打ち倒すことしか考えてない。そんなものを希望とは呼ばないわ」

 「ああそうさ!マツリちゃんが目指すべきは希望の道じゃない!どうすればマツリちゃんたちが救われるか、それを考えるべきなのさ!誰かのためにある希望じゃない。自分だけのためにある希望でもない。こういうのを、ジャポンではなんていうんだ?」

 「難しい言葉なんていらないさ。まあ、君がしたいようにすればいいんじゃないか。僕たちは既に一度ならず死んで、それでもなお君に救われている。どんな決断であれ、君の考えなら従うまでだ」

 

 優しく包み込んでくれるような柔らかい声、太陽のように熱くて勇気が湧いてくる声、クールだけどどこか危うさと儚さを感じさせる声……たくさんの声が頭の中にこだまする。だけど不思議と混乱しないし、重たくもならない。

 声がひとつ増えるたびに、私は背中に心強い圧を感じる。みんなが背中を押してくれている。みんなが私を支えてくれている。私に救われたと言ってくれている。それなら……それだけで、私も救われる。さっきより自分の体がはっきりと床を踏み締めていることに気付く。

 

 「そろそろこれからの話をしましょう、甲斐殿。騙されてはいけませんよ。モノクマは敢えて選択肢を提示することでそれ以外の選択を封じているのです。真に選ぶべき道はどちらでもありません」

 「選ぶべきは安全な道じゃなく正しい道よ。自分の正義を貫くの。生き残れるかどうかは、最後についてくるもの。大丈夫」

 

 腹の底が読めない蠱惑的な声がする。はきはきと聞きやすく芯の通った声がする。視界が開けた気がする。どちらに進むこともできない分かれ道だった世界に、無数の細い道が見え始めた。そうか、私ができる選択は2つきりじゃない。選択肢は無限だったんだ。

 


 

 「ほらほらどうしたんだよ!早く選べよ!残って死ぬか!出てって死ぬか!どっちにしろオマエラはもうおしまいなんだ!」

 「——モノクマ」

 

 乱暴な言葉で、モノクマが私たちを急かす。みんなは戸惑うばかりで、投票ボタンの前で指をうろうろさせている。だけど、投票の前にすべきことがある。いや、投票なんかさせない。

 

 「約束が違うよ」

 「は?約束ぅ?何の話だ!」

 「この学級裁判の最初にした約束だよ。忘れたとは言わせない」

 「んん?」

 

 モノクマははっきり言った。私たちにこの学級裁判で解き明かすべき謎を提示したとき、自分の口で。

 

 —— 

 「じゃあ分かった!オマエラがちゃんと真実を明らかにすることができたら、学級裁判に勝利したご褒美に加えてもう一つ、ボクになんでも命令できる権利をあげるよ!どうだ!これでやる気になったか!」

 「なんでも命令?それに何の意味が……」

 「うるさいうるさい!これがどんな大盤振る舞いなのか分からない奴はそれでもいいよ!でも一回だけだからね!ここにいるオマエラの誰かの命令を、一回だけなんでも聞いてあげる!そういう話!」

 ——

 

 「まだ私たちの命令を聞いてない。そうでしょ?」

 「……っ!」

 「そういえば……そんな約束をしていたな。だが、本当に今が使いどきなのか?」

 「えっ」

 

 モノクマを追及する私に横槍を刺して来たのは毛利さんだった。たじろぐモノクマからそちらへ視線を移す。顔色は悪く、今にも貧血で卒倒しそうだった。それでもなお堪えて議論ができているのは、命が懸った状況だからこそだ。

 

 「甲斐が何を命令するつもりかはだいたい想像がつく。死以外の選択肢がないこの状況を打破するために命令するのだろう。しかし……モノクマをそれだけで出し抜けるとは思えない。二重三重に罠を仕掛けてきているはずだ。たった一度の命令でどうなるというんだ」

 「そ、それは……いえ、たった一度で十分です」

 

 毛利さんの質問に答えたのは私じゃない。だけど頭の中に響く声は、次から次へと私の口から飛び出していく。止めようと思っても止まらない。自分が発している言葉なのに、他の誰かが話しているように聞こえる。しゃべってる途中から無遠慮に割り込んでくる失礼さは、やっぱり彼らしい。

 

 「モノクマ、命令はどう伝えればいいんですか。直接言えばいいんですか」

 「うっぷっぷ、なになに甲斐サン?どうしたのその喋り方。いつもの甲斐サンじゃないみたい。まるで……もうここにいないあいつみたいじゃない」

 「そんなことはどうでもいい。聞かれたことだけに答えるのが今のお前の役目だ」

 

 声の主の思考が染み込んでくる。モノクマの余計な挑発には乗らない。質問を命令と取られて有耶無耶にされてしまわないよう、言い方に細心の注意を払う。引き出したい言葉を言わせるよう誘導する。何かひとつ発するために、その何倍もの言葉を頭の中でこねくり回す。これが彼らの思考だったんだ。視界がぼやけてきそうだ。

 

 「……まあ、改まって命令するっていうのもなんだか仰々しくなりそうだから、次に命令形で発された言葉を命令として受け取ることにするよ。どんな些細なものであってもね」

 「つまり迂闊なことは言えないということですね……ああ、もしここでくだらないことを言ってみなさんの生きる道を奪ってしまったら……それはとてもとても絶望的なことだとは思いませんか?」

 「おい滅多なこと——言うのはよくねェよなァ。ああ、よくねェ」

 「意識すると途端にしゃべりづらくなるな……では、何を命令するべきか考えるぞ。甲斐には何か考えがあるようだったが」

 「……僕の言ったこと、忘れてます?一度でいいと言ったんです。つまり既にここに答えがあるんです。みなさんは余計なことを考えずに、今みたいにうっかり命令を発してしまわないように弁えているべきだとは思いませんか?」

 「ぐぼあっ!?ど、どうした甲斐!?なんだそのキッツイ言い方!?おめェの面でそんなこと言われたらおっさんもうオーバーキルだぞ!」

 

 違う、これは私の言葉じゃない。いつの間にか私の口の主導権まで握られていた。人の口で好き勝手に喋るのはまだしも、無駄に暴言を吐かないで欲しい。でもそのあんまりな言い分のおかげで、みんなようやく気付いたみたいだ。いま、私の中で喋っているのが誰なのか。

 

 「……これは、いったいどういうことでしょうか?なぜ、甲斐さんが()の言葉を?」

 「厘厘(リーリー)風風(フェンフェン)のマネだってしてたんだから、劉劉(リュウリュウ)のマネし始めたっておかしくないアル。マネというより……まるで乗り移ってるみたいだけどネ」

 「つ、憑き物か!?そういや、どいつもこいつも死んだやつばっかりだ……」

 「もう少し真面目に考えてもらえればこんなに苦労することもなかったでしょうね。まあ、今さら僕には関係ないことです。とにかく、命令は僕が——いや、この人にしてもらいます。もう共有できていますから」

 

 勝手に頭の中に流れ込んでくる思考のことを共有と言っているのだろうか。なんて自分に都合の良い解釈をするんだ。でも、尾田君の言うことは全部理解できていた。(わたし)がこれからどうするべきなのか、(わたし)の発言の真意が。

 

 「そこまで言うのなら……任せていいのか?」

 「ちょっと待っ……た方がいいアル!あんなおかしい奉奉(フェンフェン)に任せていいカ!?推理だったらまだしも、この決断は直接命に関わるヨ!?」

 「そうは言っても、おいらたちにゃあ、一発でモノクマを出し抜けるような命令なんて思い浮かばねェし……」

 「そうやって思考停止するからよくないアル!もっともらしいこと言って言いくるめるのも劉劉(リュウリュウ)のやり方ネ!」

 「お、落ち着いて話しましょう長島さん。暴力はよくないです」

 「こらこら!学級裁判中の暴力は問答無用でおしおきですよ!ここはあくまで言論の庭!生徒同士やボクことモノクマへの暴力は一発アウトなんだからね!」

 「つまり、生徒とモノクマにじゃなければ、何をしてもいいってことだな?」

 

 たくましくてキザな声がした。その声が私の頭から全身に響き渡る。体の芯まで響いた声がそのまま力に変わったように、体が証言台を飛び出した。

 体が羽のように軽い。部屋の中なのに頬に風を感じる。裁判場を眺めていた視界はただひとつを目指していた。証言台を離れ、玉座に座るモノクマを通り過ぎ、その隣。天井から吊るされたロープで縛られ、発言ひとつも許されずただ裁判を傍観していた、ダメクマだ。

 私は私がしていることを、私ではない誰かみたいに眺めていた。瞬くうちに肉薄したダメクマの体とロープの間に手を差し込む。腰を落として全体重を使い、ロープを引き千切った。ダメクマが解放された時点でようやく、モノクマと他のみんなは私のことを目で追い始めた。

 

 Dilo(言ってやれ)

 「ありがとう、カルロス君——モノクマ!」

 

 何も言わずとも、ダメクマは理解していた。私が何をしたのか。自分が何をすべきなのか。この後、この裁判をどう終わらせればいいか。そして叫ぶ。

 

 「命令だ!()()()()()!」

 「なにっ!?オマエ……!」

 

 どくん。巨大な心臓の鼓動が聞こえた気がする。まるでこの世界全体が揺れたかのような、巨大な振動。驚くモノクマと飛び出したダメクマが引き合い、すさまじい速度で入れ替わる。かろうじて捉えられたその姿はまるで魔法のようだ。他のみんなには見えていただろうか。

 

 「うっ!」

 

 弾かれるようにモノクマが玉座に転ぶ。

 

 「うあっ!?」

 

 べしょ、とダメクマが地面に落ちる。

 

 「な、なんだァッ!?いま、何が起きた!?甲斐!おめェなにやってんだ!?」

 「ダメクマを解放したのですか……!?それに、その力……いったいどこから……?」

 「っていうかいま、ダメクマが命令したヨ……。それで何か起きたし……どうなってるカ?なんでダメクマが命令できるカ?」

 「初めにモノクマは言った。“ここにいる誰か一人の命令を聞く”って。僕だってこの裁判場にいるうちのひとりだ。命令権がないなんて言わせない」

 「ってモノクマがしゃべってやがるよ。どうなってんだ?」

 

 事態が飲み込めていないみんなを置いてけぼりにして、モノクマの姿をしたダメクマが叫ぶ。

 

 「みんな、聞いて。全て話す。もうこれ以上みんなを苦しめることはさせない」

 「なんだ……?お前は、一体……?」

 「この世界、このコロシアイ、みんなに起きたことの全てを話す。そして——

 


 

 

 

 

 

 ——お願いだ。死んでくれ」

 

学級裁判 閉廷




今回は事情により遅めの投稿です。

最近暑い上に疲労がいつまでも消えないようになってしまいました。ある年齢ステージを過ぎると人は絶好調にならなくなります。来いよ、高みへ。

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