追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第14話 暗躍歓迎ですわ

悪魔の襲撃により帝都が火の海となった日から2日後。特に追加の襲撃もなく、無事に結界制御装置は稼働し、第一皇女が攫われたこと以外は特に問題もなく、徐々に一般人は元の生活に戻っていった。

 

またリディアが今回の襲撃に関して、責任は全て私にありますと言い、多額の寄付を行ったことで帝都内での知名度は飛躍的に向上した。今回の火災で帝都が1区画分、丸々全焼したが、その地域の家々を全て建て直して、家財を揃えてもなおお釣りが出る金額である。

 

入学式以降、自宅待機の指示を無視して外出し、ひたすら無駄遣いしても貯蓄が減らない絶望感に浸っていたリディアは、学園生活が再開されることを心待ちにする。それまでの期間は、気になる学園の先輩達について調べていた。

 

「あの馬鹿王子は気に入らない人物を見つけると退学するまで追い込んでいたのですか……」

 

まず1人目は、入学前に襲撃を受けたリンデン=ハインであり、残念そうに、怒りも込めているような声色で呟いているリディアだが、内心とても気に入っていた。これまでに何人もの従わなかった学生を、退学にまで追い込んでいるリンデン。追放系お嬢様として、目指すべき目標であるからだ。

 

リンデンはハイン王国の第一後継者であり、今持っている権力自体はさほど強くない。しかし親がリディア達の住むロウレット帝国の宰相であり、広大な直轄地を持つ王だ。またリンデン自身もハイン王国内の公爵であり、ハイン王国自体が非常に食糧生産量の多い豊かな国のため、咎められる存在は少ない。

 

もちろん、リディアはリンデンを咎めることが出来る方の存在だ。領地は圧倒的な経済力を誇り、軍は精強。たとえ戦争にまで発展したとしても勝てる。しかしリディアは、リンデンと共に追放する側に立つことを考える。こちらの方が、より多くの人間を追放出来ると考えたからだ。

 

そしてリディアは、そのリンデンに付き纏っていた女性、マリアについてをよく調べていた。ハイン王国の田舎にある一教区を牛耳る孤児院。その主に12歳の若さでなっているのだから異常性の塊のような存在だ。そして確証こそないが、日本からの転生者の可能性がある以上、リディアを嵌めることが出来る存在である可能性も高い。

 

要するに、リディアを破滅の未来へ導くことが出来るかもしれない存在なのだ。そのような存在を、リディアは当然歓迎する。

 

「リンデンは1000万クレジットをマリアに融資したみたいですわね。随分と金遣いの荒い王子様ですわ」

「それだけではないです。リンデン派閥から細々と貰っているのを合計すると……1億クレジット!?」

「……あり得ない。じゃあ何で、孤児院の子供達も働いてるの?」

 

リディアはマキアとマキナにもクレシアの集めた資料を漁らせ、情報を集める。すると浮かび上がるのが、マリアが大量のお金を貯め込んでいる疑いであり、その額は最低でも3000万クレジット以上となった。

 

「思っていた以上にヤバい奴ですわ。関所の通行記録から、マリアの住むタヌタ教区にマーガレット商会が入った記録がありますわよ」

「マーガレット商会?って、どこの商会?」

「……お姉ちゃん、武器の商会で1番大きなところの名前ぐらい憶えて。大衆向けだと1番規模が大きい」

「冒険者や探検家が良い武器を買うとしたら、まずここ。という商会ですわね。これは浮いたお金で、剣とか鎧とか買ってそうですわ」

 

さらに細かく調べると、マリアの元へ武器防具専門の隊商が入っていた形跡があり、それがリンデンから融資を受けた直後の時期だと判明する。確証こそないものの、リディアはこれを黒だと断定した。

 

そして黒だと断定したからこそ、テンションも上がり、内心ウキウキにリディアはなってしまう。将来的に、マリアはこの国で革命を起こしてくれるのではないかと期待もし始めた。革命が起きれば、革命軍が勝利すれば、革命前に統治をしていた者達の末路は悲惨だ。その未来を心待ちにしているリディアにとって、マリアはとても素晴らしい存在に思えた。

 

「マリアへは、1億クレジットほど渡しますわ。マキアとマキナはこの1億クレジットがどう動くか確認して来なさいですわ」

「い、1億クレジット……。

……わかりました。きっちりと追いかけていきます」

「……最近、お金使いが凄いけど、経済を回すってやつなのかな?」

「マキナは良いことを言いますわね。お金を使い続けないと、お金がどんどん貯まって腐ってしまう状態になってますの」

 

さっそくリディアは、マリアの孤児院に1億クレジットの寄付をすることにして、どんなことに使われているかマキア、マキナの姉妹へ調べるよう伝達する。その指示を受け取った2人は神妙な顔をした後、覚悟を決めたような表情で了承した。


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