追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第16話 孤児院見学ですわ

学園生活が始まり一週間。リディアはまず最初に目を付けていたエイブラハムへの虐めを開始し、エイブラハムは思っていた以上に苦しい立ち位置だと自覚し始めた頃。リディアにポンと1億クレジットを渡されたマリアは、マキアとマキナの2人の監視を受け入れた。

 

普通ならこの手の監視役を、嫌がるのが普通だろう。しかしマリアは積極的に話しかけ、あわよくば取り込もうとすら考える。

 

「週末にはいつも孤児院の方へ帰っています。ほら、もうすぐ迎えが来ますよ」

 

この世界の暦は日本に合わせられており、土曜日と日曜日には休む人間が多い。魔法学園も土曜日と日曜日が休みであり、その2日間でマリアは毎回帰省をしていた。帝都からおよそ120キロほど離れた、ド田舎のタヌタ教区まで。

 

マリアが上空を指差すと、空からワイバーンが2匹降りて来る。人間の指示を素直に聞く成体であれば1匹で1000万クレジットは下らないワイバーンが、番いでやって来た。

 

「マリア様、お2人がリディア公爵の使いですか?」

「ええ。シモンズはマキアさんの方を乗せて下さい」

 

雄のワイバーンの方には人間が乗っており、マキアとマキナの方を確認すると「騎乗したままで申し訳ございません」と言い、降りてからシモンズと名乗る。

 

マキアはそれを見て、イケメンで良い人そうだと思った。

マキナはそれを見て、孤児院の元経営者の子供の名前がシモンズだということを思い出した。

 

マリアはマキナを乗せ、シモンズはマキアを乗せると、ワイバーンは空高く飛ぶ。この世界においてワイバーンは特段珍しい生物ではないが、それでも乗り物として活用しているのは一部のお金持ちだけだ。

 

ワイバーンは簡単に人を襲うため、幼体の頃から根気よく教導して、成体になってようやく指示通りに動く。そして何よりワイバーンの速度が速いため、操縦者には向かい風を打ち消す風属性魔法を継続して使うだけの魔力が必要となる。

 

「すっごーい!街並みがあんなに小さくなってる!」

「しっかり掴まっていて下さいね。もう少し速度を上げますよ」

「マキアさんは楽しそうですわね。

マキナさんは高いところ苦手ですか?」

「……別に、苦手じゃないけど」

 

ワイバーンに乗った4人は、僅か1時間で帝都からタヌタ教区まで辿り着いた。

 

マキアは1時間で着いたことで、ワイバーンはとても速い乗り物だと思った。

マキナは1時間で着いたことで、ワイバーンの平均最高速度が80キロ程度だったことを思い出し、マリアは凄まじく優れた個体のワイバーンを飼っていると認識した。

 

「マリアが只今戻りましたよー。今日はお客様も来ていますから失礼のないようにー!」

 

そしてマキアとマキナの2人は孤児院の門から飛び出して来た子供の数の多さに驚愕する。この世界の普通の孤児院の子供の数は10人から、多くて20人ほど。一桁の孤児院も珍しくないが、国や領主からお金が出るほどの孤児院だと50人規模も珍しくはない。

 

しかしマリアの孤児院は、バッと飛び出して来た数だけで100人を超えていた。もはやマリアは子供の山に埋もれているようであり、その子供達が全員、痩せ細っていることもマキアとマキナの2人は認識する。マキアが子供の数を確認すると現時点で506人との返答がシモンズからあり、2人は更に驚愕した。

 

その後、マリアはマキアとマキナの2人について、お金を出してくれたリディア公爵の使いであることを伝えると子供達は揃ってお礼を言う。マキアとマキナにとっては自分でお金を出したわけではないためむずがゆい気持ちになった。

 

「では、近くのお店にお金を渡してきますのでマキアさんとマキナさんはついて来ます?」

「はい」

「……もちろん」

 

マリアは孤児院に到着し一段落するとシモンズが持って来た大きな鞄を背負い、近くの商店街まで移動する。当然マキアとマキナの2人も一緒に移動し、マリアが肉屋や八百屋へお金を払っていくのを確認していく。

 

「ちょっと最近はツケが大きくなってきていたので、纏めて返せて良かったです。これもすべてリディア様のお蔭なので、孤児院一同とても感謝していることを伝えて下さい」

「……八百屋への900万クレジットって、何ヶ月分なの?」

「これまでの1ヵ月分とこれからの2ヵ月分、合計3ヵ月分ですよ」

 

マキナは八百屋へ払った900万が何ヵ月分か確認し、マリアは3ヵ月分だという返答をする。

 

マキアはそれを聞いて、1ヵ月300万、1日10万クレジットと計算し、キャベツのような野菜が一玉500クレジットであることを確認する。これは帝都内と比較しても平常な価格であり、これを毎日200玉と考えても、500人以上いるのであれば簡単に消費してしまうことだろうと考えた。

 

マキナはそれを聞いて、あり得ない額だと考えた。月に300万クレジットという額は、あまりにも高額だったからだ。孤児院の子供達が帝都で売られているような野菜を食べていること自体がおかしく、何かしらの裏もあると考えた。


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